【豊田通商】豊田通商グループウェイを軸に、国境を越えて将来を担う人材を育てる
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グロービス コーポレート エデュケーション
※文中の役職等は取材当時のものです
豊田通商様が、本格的に現在のグローバル人材育成の体系整備に取り組み始めたのは2007年からのことになる。その前年のトーメン様との合併により総合商社として新たなスタートを切ったことに伴い、自動車と非自動車の事業収益比を2015年に50:50にすることを目指す『Vision2015―LEAD THE NEXT―』を策定した。新しいグローバル人材育成体系の整備は、この『Vision2015』を背景としたものである。具体的な取組について同社人事部グローバル人事室のギルモア真裕さんにお話をうかがった。
新豊通グループ発足に伴うグローバル人材育成の見直し
グローバル人材育成は、現地採用社員(以下NS:National Staff)の管理職層の教育から始めたという。
「それまで人事部が行う研修は本社職員のみが対象で、NSには体系だった教育は行われていませんでした。しかし『Vision2015』の実現には、現地に根ざした社員が現地で新しい事業を創り出すことが不可欠であり、そのためにはNSが現地で経営できる力を養わなくてはならない。そこで海外の事業体とそのNS向けにグローバル人材育成体系を整えたのです。新しい体系での研修企画にあたっては、”豊田通商グループウェイ”(以下豊通ウェイ)と問題解決手法である”豊通PDCA”の浸透を核に検討しました」
NSへの研修企画と並行し、彼らの中から、将来の幹部候補者を選抜・育成し、さらなる現地経営力の強化を図るグローバルスタッフ制度を2008年度から始めた。そこで選抜されたグローバルスタッフは、個々に5年後の会社における自分の目標を定め、それに向かってどう能力を高めていけばよいか、上司と話し合いながら業務に取り組んでいく。その取組は豊通ウェイとPDCAに基づいて検証していくのだという。
「この取組を進めるうちに次の課題が見えてきました。NSの上司である日本人駐在員が、豊通ウェイやPDCAをもってNSを指導できないという現象が顕在化したのです」
日本人駐在員は、これまでも豊通PDCAに基づいて仕事をしてきたわけだが、 OJTを通じて暗黙知として身につけていたため、いざ、文化的背景の異なるNSを指導する局面となると、うまく説明や指導ができないという現象が多く見られることとなった。そのため、日本人駐在員の研修もウェイとPDCAのトレーニングを改めて行うことにした。研修という場を活用して、これまでOJTで展開していたウェイやPDCAをより形式知化して浸透を図り2015年のビジョン達成の確度を高めようとしたのである。
長期的視野にたって「その地域に貢献する人を育てる」
ところで、現地採用社員の教育について日本企業では、「すぐに転職で辞めてしまうから、教育投資は無駄になる。本社の戦略的な情報も、競合に漏れる危険があるので共有しにくい」という話をよく聞く。この点、豊田通商様はどう考えているのだろう?
「そこは弊社でも議論になりましたが、基本方針として、まずNS各人に対し、豊通の価値観をしっかり共有し、彼らがキャリア形成できる仕組みを会社として提供するべきだと思います。それが明確になっていれば彼らが当社で希望を持って仕事に取り組めると考えます。それでも会社を辞める人は出ると思いますが、その地域でビジネスをさせてもらっている恩返しとして”地域社会に貢献する人を育てる”というスタンスに立ち、長い目でNSの教育を捉えようと考えたのです。たとえ退職してもその人はいつか弊社のお客様やパートナーになるかもしれないし、その地域に貢献する人材になるかもしれない。また少しでも価値観を共有できる人のネットワークが広がると考えれば、投資は決して無駄ではありません」
外部リソースを戦略的に活用
このように日本人駐在員教育を充実させるだけでなく、現地採用スタッフの経営教育を本格的に始めたわけだが、その際、外部からのサポートを効果的に活用されているのが豊田通商様の特徴だ。
「急速に教育の対象範囲を広げたこともあり、稼動面から外部リソースに頼ったということもありますが、内容によってはあえて外部の方から客観的に見てお話し頂くことで、自社で行うより高い効果を生み出せます。ウェイ教育など根幹の教育は自社で行うのを基本方針とし、外部の教育機関とはその方針と整合しながら施策に落とし込んでいきます」
グロービスが、豊田通商様のグローバル人材育成プログラムのなかで現在担当しているのは、各地域から選抜された将来の経営人材候補を対象としたプログラムである。世界レベルに共通の仕事の進め方としての豊通PDCAを基本として学び、さらに現状の外部環境や将来にわたる戦略について考えるものであり、英語で実施している。豊田通商様の拠点は、51カ国にのぼるが、各国ごとの環境や事業の浸透フェイズにより抱えている課題はさまざまだ。そのため、参加したメンバーは、国を越えて問題意識を共有する仲間という意識や自分の事業体から全体や地域の視点を持つようになる。
「日本では当たり前であるからこそ、文化的背景の異なる人たちに『日本の仕事のやり方』を理解してもらうのは難しい。グロービスさんは、『日本の仕事のやり方』を”豊田通商”の仕事の価値観や仕事の進め方に落とし込み、NSに理解を促す方法に長けています。たとえば、研修では、多様な背景のNS受講者の考えをうまく引き出しながら、無理なく豊通の考え方や方針を腑に落ちるよう、指導いただいています。また、直接の顧客である私たち人事部のニーズを汲み取るだけでなく、受講者の立場に立って、本当に有効なプログラムとは何かを常に提案してくれるので、私たちと同じ目線に立ち、同じゴールをめざしてくれていると感じます」
合併後、非常に急速にグローバル人材育成制度の設計と展開に力を注いできた。今後は、その運用の質を高めることが課題だとギルモアさんは語る。
「当面のゴールは、全世界で豊通の仕事の価値観をしっかりと共有した上で新しいビジネスを創り出し、それをマネジメントできる人材を一人でも多く輩出していくことです。そのために、私たちはNS一人一人のフォローや、彼らを指導する立場の駐在員や現地法人のマネジメントをサポートすることに力を入れています」
「今後は、制度等のハードの運用だけでなく、NS個々人のフォローや,彼らを指導する駐在員のサポートなどのソフト面にも力を入れたいと考えています」
聞き手:(株)グロービス 朝生 容子
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。
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