リーダーが向き合う”問い”が組織の未来を創る -withコロナ時代の「組織開発のカタチ」

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テーマ
  • リーダーシップ
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  • グロービス コーポレート ソリューションのプロフィール

    グロービス コーポレート ソリューション

covid-19は未だ収束の気配が無く、リモートワークやマスク着用を始め、世界が新たな行動様式を取り込むと同様、各企業でも変革の機運は高まっています。 一方、足元では、「これまでの組織をいかに変えるか?」、「リモート下でメンバーの育成やコンディションにどう介入すべきか?」等、リーダーはこれまで以上に、大小様々な難問と向き合っています。

組織・人材の変容が求められるVUCA時代、1人1人のリーダーは今、何と向き合うべきなのでしょうか。組織変革・リーダー育成に向けて、多くの企業のファシリテーターや、グロービス経営大学院でも講師を務める当社ディレクター 加藤康行と、組織変革の専門家であるマネージャー 亀井康晴が、その解に向けた道筋を対話しました。

コロナが突きつける根源的な問い-「あなたの存在価値は何ですか?」

加藤:
コロナショックで各社から様々な悩みが寄せられていますが、亀井さんは、どんな変化を感じていますか?まずは、個人的なところからでも?

亀井:
未来が早くきた感覚がありますね。リモートワークをせざるを得ない環境になり、組織もより自律分散化が進み、否応なしに「この環境で自分は何が出来るのか?」という問いに向き合っている気がします。私の場合、これまでは、クライアントやプログラム受講者の方々と直接関わる中で自分の価値を発揮し、そこにやりがいを感じていました。でも、2020年3月。がらりと環境が一変しました。今までのように「現場」へ行けない。自分の居場所であった「現場」を取られ、クライアントや受講者の方々の状況も見えない。焦燥感に駆られる瞬間もありましたね。そこで頭に浮かんできたのが「そもそも、自分の価値って何なんだろう?何がしたくて、ココにいるんだろう?」って事。様々な業界の方とお話をしていても、共感頂く事が多いですね。

加藤:
「あなたは、何でそれをしていたの?それって本当に必要なの?」という根源的な問いを唐突につきつけられた感じかな?

亀井:
ですね。そこから派生して、例えば、「リアルで集まる意味って何?」、「組織やチームは何のためにある?」など、これまで当たり前だと思っていた事を問い直し、再定義する機会が増えましたね。

加藤:
なるほど。これって、個人だけでなく、企業でも同じだよね。「これまで自社が提供していた価値がなくても、顧客は生活できている」。その現実から、「自分/自社の存在価値とは?」という根源的な問いに向き合うきっかけになりましたね。

今、リーダーに必要な時間-「立ち止まってでも考えるべき事とは?」

亀井:
この環境変化の中で、リーダーや組織はまず何をすれば良いんでしょう?

加藤:
まずは、意図的に5分でも10分でも、しっかりと考える時間をつくることじゃないかな。極端に言うと、敢えて、立ち止まってみる。

亀井:
なるほど。リモートワークであれば移動時間が無く効率的な反面、朝から夜まで隙間なく会議や商談が入る。立ち止まる時間どころか、家にいながらキッチンへ水を取りに行く時間も取れない、なんて日もありますから(笑)。創った時間で、何を考える必要があるんでしょうね?

加藤:
実際の現場では、「どうするか?」というHowの対応になりがちですが、まずは、「今の環境をどう捉えるか、環境認識をどう持つか?」ということと向き合うことじゃないかな。結局、企業にとっても個人にとっても、環境の力にはどうしたって逆らえない部分があるからね。立ち止まるからこそ、動いている環境が見えてくることもある。

亀井:
未来はわかりませんが、「移動自体が減る」、「リモートが増える」というのは、不可逆的な流れかもしれない。一方、そう感じながらもつい、これまでの日常をベースに考えてしまうという事もありますね。

加藤:
人間は慣性で行動する動物だからね。でも、今回のように、例えばリモート勤務が非日常だった世界観が日常化していくようなことは、今後も起こっていくよね。だから、都度、一呼吸おいて、環境を正しく理解し、今までの日常を疑っていくような時間を意図して設けたいよね。

メンタルモデルの自覚が変革の一歩-「常識を疑う事はなぜ難しい?」

加藤:
でも、環境を理解できても、中々、日常や自分の前提を疑うって難しいよね。何か工夫できることあるかな?

亀井:
キーワードの1つは「メンタルモデル」の自覚だと思います。「メンタルモデル」とは、誰もが持っている無意識の前提。例えば、「うちの業界では、このやり方なんで」、「うちの会社でこの行動を取ったら、必ずこうなるに違い無い」といった常識や前提です。変わろうとしても、どうしても従来の価値観や慣性に引き戻されてしまう現実、誰しも心当たりがあるんじゃないでしょうか。

加藤:
たしかに。加えて、知らず知らずに現状維持バイアスも働いてしまうかもね。

亀井:
これまでの日本企業では、メンタルモデルが強固になりやすい構造がありました。長期雇用が前提で、新人から「自社の流儀」として“こうあるべき”を教えてきてますし、会社は家族に近いコミュニティとして、社員のメンタルモデルに強く影響してきたと思います。その在り方での成功体験があるから、無意識に現状維持しようとするんです。

加藤:
メンタルモデルは、環境依存性が高く、かつ無自覚ということだね。成果が出ていると否定もしにくいよね。。

亀井:
だからこそ、正しく環境を捉える上でも、「自分にメンタルモデルがある事を自覚する」こと自体が、変化のスタート地点になると思います。

ファクトに目をむけ、受けいれる勇気が、メンタルモデルを書き換える-「現実を、直視できていますか?」

亀井:
とはいえ、自分の前提に気づいたり、問い直すのは、簡単なことではない。何からはじめたら良いでしょうね。

加藤:
当たり前のことかもしれないけど、「データ・事実とか、人の行動を、きちんと観察し、受けいれる」ことが大事じゃないかな。例えば、業界によっては、コロナの影響で売上ゼロということもあるかもしれないね。その事実を直視するのは、恐いことだと思う。カエサルが言うように、「人間はみな見たいものしか見ようとしない」傾向があるよね。でも、受け入れがたいデータにも、目を背けず事実として向き合うことではじめて、これから(未来)を正しく考えられると思う。

亀井:
たしかに。。。コロナ禍で厳しい環境が続く事は薄々わかってはいても、現実を直視できず、既存の延長線で思考してしまう、という事は起こり得そうですね。

加藤:
そうですね。でも変化は起こる。その要因も、コロナに限らず、例えば、技術革新などの影響も大きいよね。そうしたデータ・事実から、インパクトを考える。すると、生存の為には、自分の思い込みから逃れないといけないことに気づく。厳しい現実だとしても、事実を見て直視することが、問いをたてるきっかけになる。

亀井:
加えて、自分の前提に気づくためには、自組織や自社に閉じず、自分の常識が通用しない外部の人と対話する事も有効ですよね。そんな時間も意図的につくりたいものです。

自ら問い続け、未来への一歩を踏み出す-「今、どのような”問い”に向き合っていますか?」

コロナ禍での変化を皮切りに、組織・人材の変容について紐解いてきた。鍵は、リーダーが置かれた環境をどう認識し、過去の常識に向き合い、問い直す機会の重要性にある。それが、リーダーと企業の変革のスタートとなる。

亀井:
vuca時代は環境変化が前提。自分自身のメンタルモデルも時代に合わせて書き換え続ける必要があります。だからこそ、自らに問い続け、変容し続けることがリーダーには求められそうですね。問い(クエスチョン)の語源は、探索(クエスト)と言われます。終わりなき旅ですが、それを楽しんでいきたいですね。

加藤:
「楽しむ」というマインドセット、大事だよね。環境の力は強大である一方で、我々の行動次第で環境に働きかけることもできる。答えなんて誰も持っていない世の中だから、ありたい姿を問い続け、これまでとは異なることも、勇気をもって行動する事で、新たな環境を創り出していけると良いね。

亀井:
そうですね。未来の環境は、リーダーが「今、どのような問いに向き合うか」に左右される可能性があります。

加藤:
「我々の存在価値は何か?社会の中でどうありたいか?」等の骨太な問いに向き合いたいね。

問いを共有し、対話・行動する事で組織開発は加速する -「チームでどのようなストーリーを描き、実現していきますか?」

亀井:
問いを通じて紡ぎだした「ありたい姿」や「ビジョン」は、自分だけでなく、チームの仲間とも共有することで、組織開発につながりそうですね。

加藤:
自律分散化が進み、価値観も多様化する組織では、チームで問いを共有し、対話しながら、各自がストーリーを腹落ちした上で、行動に移すことが大切かもしれないです。いわゆるセンスメイキング理論に通じる話だね。

亀井:
リーダー研修の中でもセンスメイキング理論を取り入れ、リーダーの方々が「意味づける力」を高めるためのプログラムも実施しています。プログラムを通じて、個々がビジョンを描き、それを他者へ共有するためのトレーニング。

加藤:
組織のリーダーとメンバーという「縦の関係」を結びつけるための営みだね。

亀井:
「縦の関係」という意味では、私の所属するチームでも期初にチームWAYを創り、毎月、メンバーで向き合う問いを決めて活動しています。大事な事は、WAYを創るプロセスをメンバー協働で進めるという事。

加藤:
チーム創りをリーダーが独善的に決めるではなく、メンバー個々を巻き込み、彼ら彼女らにも自分事化してもらうのが大事。この環境では、いずれにせよ何かを変えていく、変え続けていく必要がある。変化って与えられるのは嫌だよね。

亀井:
その上で、形骸化しては意味がないので、「創ったWAYを元に行動できているか?」をチーム共通の問いとして持ち、定期的に対話していくことだと思っています。

加藤:
将来のありたい姿やチーム運営の在り方を、創発的に対話し、行動していくのって、純粋に楽しいよね。

亀井:
はい。そして、リーダーとメンバーという「縦の関係」に加え、リーダー同士「横の関係」にも効果的だと思っています。各リーダー同士が向き合っているチーム課題は近い事が多いし、別のリーダーとの対話を通じて、解決の糸口が見えて来る事はよくあります。

加藤:
組織開発のトリガーは、「縦」と「横」をつなぎ、リーダーが持つ問いを組織共通の問いへと昇華する事。そして、リーダー1人では無く、メンバーと対話し、共にストーリーを描き、変化を創り続ける事に組織の意義があり、より良い組織開発へとつながるのかもしれませんね。

【編集後記】
コロナの世界的パンデミックは、多くの困難をもたらしましたが、「そもそも何のために」という根源的な問いに立ち返るきっかけとなったこともまた事実です。個人/組織が、より本質的な価値の追求に向け、”問い”に向き合い探索を楽しんでいくことで、自発的な未来を創っていきたいと、今、切に感じています。(編集担当:塩谷佳未)

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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