【フォトクリエイト】ベンチャー企業がMBAスクールを選ぶ理由
2017.07.25
急速な変化に対応しながらリーダーシップを発揮できる人材の育成は、どの企業にとっても重要な課題となっている。特に、ベンチャー企業では事業が成長するにつれて必要なスキルは変化するうえ、多様な仕事を任されても見習うべき上司はいない。新しいことずくめの中で、手探りで物事を進めていかなくてはならないのだ。
そこで今回は、インターネットメディアを介した写真サービス、フォトクラウド事業、広告・マーケティング支援事業で急成長中の株式会社フォトクリエイト人事総務部長の新井徹平さんに、事業を成長させるための人材育成について語っていただいた。(聞き手:グロービス、2017年)
※文中の役職等は取材当時のものです
グロービスではクライアント企業とともに、世の中の変化に対応できる経営人材を数多く育成し、社会の創造と変革を実現することを目指しています。
多くのクライアント企業との協働を通じて、新しいサービスを創り出し、品質の向上に努め、経営人材育成の課題を共に解決するパートナーとして最適なサービスをご提供してまいります。
目次
自分が成長しないと会社も成長しない
フォトクリエイトは2002年創業、インターネット写真サービス事業などを展開している会社です。私は2006年に新卒で入社。当時は毎週のように物事が変わっていきました。メンバーは20~30代ばかり。自分自身が学んで成長しないと、事業も成長できないので、勉強するのは当たり前。面白い本があれば互いに紹介し合いました。
創業者の白砂晃の言葉で印象に残っているのが「自己解体」というもの。映画監督の北野武さんの言葉だそうですが、作者が命がけで書いた本を読むと、これまでの自分にはない価値観が攻めてきて、自分の価値観が崩される。それを再構築して新しい自分になる。それが本を読むことの意味だと言うのです。
なお、社長が本を選んで推奨するやり方もありますが、当社ではあくまでも自主性を尊重し、型にはまったやり方はとりません。人材育成も当時は、各自が受けたい研修を探してきて、会社が費用を補助する形をとっていました。
その後、人数が増えてくると、若手管理職を育てる必要が生じてきました。周囲にお手本がいないので、会社が指定する外部研修を受けてもらう形を導入。また、新卒者が増えてくると、ビジネスマナーなど基礎部分について外部研修を活用することに。マネジャー、部長、本部長と管理職の幅が広がってきた時点で、より踏み込んだ内容の管理職育成研修を導入し、新人と管理職の2軸の育成システムを徐々に整備してきました。
さらに2年前に、管理職の中から経営幹部を育成しようと、グロービス経営大学院の本科生支援制度を開始。グロービスには、もともと白砂がビジネスを体系的に学ぶために通っていましたし、社内の他のグロービス卒業者も経営メンバーとして活躍していました。初年度に応募をかけたところ、5~6人の部長やマネジャーが手を挙げてくれました。
学びは未知の領域を切り拓く武器になる
私もグロービスで学ぶ1人ですが、学歴やMBAを手に入れたいというよりは、単純に目の前の問題を何とかしたいという思いがありました。会社の成長の速度に自分がついていけずに、壁にぶち当たる。社内で学べることに限界を感じ、外で学ばないと、課題を解決できないのではないかという焦燥感にかられていたのです。
すがるような思いで通学してみると、当然ながら、いろいろな仲間、講師、ケースとの出会いがありました。たくさんの数のケースを読み、そこに登場する課長や部長の様々な悩みを一緒に考えるうちに、これから直面する新たな領域に対する“未知感”が少し薄まりました。不安はあっても、学んだことがきっと助けてくれるという自信がついたのです。
仲間と議論をすると、これまで見えていなかった世界に触れ、自社のビジネスを対外的に説明する機会も増えます。そのせいか、グロービスに通っているメンバーはより客観的に自社の経営環境や課題を語るようになり、会議での発言の質が確実に変わったように感じます。部下に対してクリティカル・シンキングのような授業をする、ファシリテーション・グラフィックの手法を使いながら活発に議論をするなど、自分が学んできたことを若手に伝えるサイクルも回り始めています。自主的な勉強会にはかなり参加者が集まっており、社内講師ができる人材も増えてきました。
とはいえ、忙しい中で学習する難しさがあるのも事実です。上長にすべてお膳立てしてもらって学ぶ時間を確保するのでは、主体性の低下につながります。そこで会社としては、MBO(目標管理制度)に「学ぶ目標設定」という項目を入れて、どのような学びを行ったかを振り返ってもらい、評価制度の形で後押しする形をとっています。
今後の鍵はミドルマネジメントの巻き込み
当社は現在、転換点にあります。プロダクト・ライフサイクルで言うと、創業時の事業は成熟期に差し掛かかり、事業転換を図るのか、さらに掘り起こしていくのか、業務効率を上げるのかという瀬戸際にあります。このため、第2の成長に向けてイノベーションを起こす人材が必要です。それと同時に、写真産業は裾野が広く、チャンスは拡大しています。新規事業の開発に向けて、へこたれないバイタリティを持ち、考え出したアイデアを実現できる人材も必要です。
さらに、当社は2016年にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループの一員となり、グループ経営へと舵を切りました。取り組む事業自体は変わらなくても、グループ経営では、今まで以上に共通の価値観が重要になります。
特に鍵となるのが、ミドルマネジメントです。ビジョンを念頭に置きつつ3カ年、1カ年と目標を分解。リーダーの言葉を理解しつつ、メンバーにかみ砕いて伝える。そういう役割を果たすミドルマネジメントをいかに経営に巻き込み、躍動させるかが課題です。
グロービスで学んだ人間が増えることで、共通言語ができ、難しい経営の話も伝えやすくなるという副次的効果も期待されます。今後は経営会議を拡張して、マネジャーに参加して認識合わせをするなど、新たな試みも行っていきます。
担当コンサルタントから
担当営業の坂本です。
業界問わず、多くの企業を担当させていただいておりますが、近年目立ってご相談が増えているのが、成長フェーズにあるベンチャー企業様です。
事業の成長フェーズに合わせ、必要となる人材の数と質は変化していきますが、プレイヤーとして優秀であっても、マネジメントやリーダーシップについての理解がなく、ミドルマネジャーとして機能しないというのはよくあるご相談です。
今回インタビューをさせていただいたフォトクリエイト様では、創業者様を筆頭に、各自が経営を学び、成長し、事業成長に貢献することで、組織として学びの風土醸成が進んでいます。経営者と同じ視界でビジネス全体像を捉え、事業成長を牽引できる人材をいかに潤沢に確保できるか。私たちも人材育成の側面から、今後も継続成長のお手伝いをさせていただければと考えています。
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※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。