選択型研修の活性化に向けた課題把握と9つのチェックポイント
- 次世代リーダー育成
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坂本 美紀
グロービス講師
昨今、広く社内に育成機会を提供するために、選択型研修を導入する企業が増えてきています。一方で、選択型研修をせっかく企画したのに、育成担当者の皆さまからは多くのお悩みをお伺いしています。皆さんはどのような課題意識をお持ちでしょうか。
本コラムでは選択型研修の活用上の課題をチェックリストに照らして確認しながら、選択型研修の活性化に向けて押さえるべきポイントをお伝えします。
第1章
選択型研修の活性化に向けた課題
選択型研修を導入した企業の皆さまからよくお聞きするお悩みを、マーケティングの購買行動モデルAISASというフレームワークをベースに整理しました(図1)。
本コラムでは、認知(Attention)と関心(Interest)における課題について、その対応策をご紹介していきます。選択(Select)、実行(Action)、シェア・継続(Share)については動画でご紹介していますので、そちらもご活用ください。
第2章
選択型研修における、認知(Attention)の課題と押さえるべきポイント
まずはAISASのAttention、社内認知を高める取り組みです。研修自体を知ってもらうという基本中の基本ですが、それでも「社内で研修の存在が認知されていない」という課題意識をお持ちの方は大変多くいらっしゃいます。この課題に対しては、2つのポイントを押さえるとよいでしょう。
社内認知を高めるポイント1:アナウンスの工夫
まず1つ目はアナウンスの工夫です。アナウンスの中身次第で受け手の印象に残るかどうかは大きく変わりますので、印象に残るようポイントを押さえてアナウンスすることが必要です。
アナウンスで押さえておきたいポイントは、まずは選択型研修の目的を明記することです。経営層から社員への期待メッセージを添えるなど、企画の背景や学びの重要性を印象付けることが重要です。
次にプログラムの紹介です。なぜお勧めなのか、具体的なイメージを添えて学ぶイメージをもっていただくことはもちろん、参加者の声や受講者総数などを載せ、学びたい/学ばねばと思わせるような内容を盛り込んでいくことが重要です。
社内認知を高めるポイント2:アナウンスチャネルの活用
次に、アナウンスチャネルの活用です。特に選択型研修の活性化がうまくいっている企業では、メールや掲示などを利用した単なるアナウンスだけではなく、直接接点として役員や上司からの声掛けを行ったり、プログラムの説明会などを行ったりしています。図2に主なアナウンスチャネルを整理しましたので、自社で使えるチャネルが無いか、確認してみてください。
第3章
選択型研修における、関心(Interest)の課題と押さえるべきポイント
次にInterest、研修への関心を高める取り組みについて見ていきましょう。「特定の人しか手を挙げない」、「学びが必要という自己認識が社員にない」という課題が多いようです。ここでも、ポイントを2つご紹介します。
関心を高めるポイント1:学ぶ必要性の理解
まず、なぜ学ぶ必要があるのか、理解/腹落ちしてもらう必要があります。学ぶ必要性を考えるにあたり、外発的動機(危機感)と、内発的動機(好奇心)を両側で押さえていきましょう。
外発的動機については、環境変化の激しいVUCAの時代において、必要とする人材要件が明らかに変わっています。これまでは予測可能な環境下で、経験値をもとに目標達成や問題解決をやり遂げることが求められてきました。一方でVUCAな環境下では、変化を前提として自ら仮説を立て、周囲を巻き込み、アクションしていく力が求められています。
社員自身がこの環境変化を知り、求められる人材像と自身とのギャップを認知して学ばなければという健全な危機感を持つことで、外発的動機が醸成されます。
次に、内発的動機にはどのようなものがあるでしょうか。たとえば今後の目指したいキャリアイメージを具体的に持ってもらうことが有効です。自身のありたい姿が明確になれば、その実現に向けて学習が必要であると気づくかもしれません。未来の自分を明確に描き好奇心を持つことで、具体的なアクション、そして自律的な学習が促されていきます。
そのためには、組織として期待役割を明示するだけではなく、社員各自が自らの強みや思いをもとに、ありたい姿や必要な学びを自分軸で考える機会を提供していくことが重要です。
以上の話を、図3に整理しました。
関心を高めるポイント2:学ぶ場の提供
一方で、外発的動機と内発的動機を社員に持ってもらうための機会を、育成担当の方が全て用意するのは難しいでしょう。その場合、外部の教育ベンダーの活用、特に他社人材とともにディスカッションを交わせる、他流試合型の研修機会の活用をお勧めしています。
他社人材と切磋琢磨し、彼我の差を知ることで、健全な危機意識の醸成や気づきにつながります。また、社外に学びの仲間を得ることで、学びに対してポジティブな関心を醸成することにもつながるでしょう。
昨今は様々な教育ベンダーが他流試合型の研修を提供しています。学びの動機付けの一助として、選択型研修のラインナップに加えてみてはいかがでしょうか。
第4章
最後に
本コラムでは、選択型研修の活性化に向けた課題を整理し、認知と関心を高めるための取組についてご紹介しました。社員本人の主体性が必要となる選択型研修では、単に制度を用意して選択を委ねるだけでは不十分です。育成企画側からの多様な働きかけが、活性化に向けた重要な鍵となります。ぜひ皆さんも、多くの社員に自律的に学びを得ていただけるように、選択型研修を企画・改善してみてはいかがでしょうか。
本コラムではお伝えしきれなかった部分は、動画セミナーでご紹介しています。ご興味がある方は、ぜひご覧ください。
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。
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