【JOLED】役員向けプログラムの最新事例と潮流
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グロービス コーポレート エデュケーション
「次の社長は自分を超える存在でなければ、会社が生き残れない」
変革と混迷の時代の中で、こんな危機感を抱く経営者も少なくありません。役員や社外取締役の選出はこれまで経営の健全さを保つガバナンスの課題と捉えられていました。しかし今、次の経営トップをどのように育成するかは、多くの企業にとって重要課題となっています。
本レポートでは、株式会社JOLED社長の石橋義氏をお迎えして行ったセミナー「役員(エグゼクティブ)向けプログラムの最新事例と潮流~混迷時代を生き抜く決断ができるリーダーとは?」の概要を紹介します。(注:セミナー概要は末尾をご覧ください。文中の氏名肩書きはセミナー開催当時のものです)
周囲の変化や不確定要素から目を背けてはいけない
このセミナーの最大のテーマは、経営リーダー輩出の要諦を掘り下げることです。
まず経営者に求められる要件とは何でしょうか。経営者が何よりも明確にすべきことが「時代認識」です。たとえば、世界の時価総額ランキングを見ると、今やGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や中国企業が上位を占め、四半世紀前に優勢だった日本企業は50位内に1社のみとなりました。経営環境は大きく変化し、企業と取り巻くマクロ環境には不確定要素が増しています。
このような中で、経営リーダーが考えなくてはならない論点は大きく3つあります。第1の視点は、イベント・リスクにどう備えるか。世界がコネクトした(繋がった)現在、様々な要因が絡み合い経済的な危機やバブルが一定頻度で発生することを前提とした構えが求められます。既存事業の生産性を不断に高め続け、収益力をつけ、キャッシュを積めるよう目配りしながら経営しなくてはなりません。 第2の視点は、国内の人口減という現実を前にして持続成長を果たすには、海外に市場機会を求めざるを得ないということです。日本の価値観が必ずしも通用しないシビアな世界で意思決定する必要があり、そうしたタフな決断が求められます。第3の視点は、破壊的・非連続的イノベーションには構造的な大変革が伴うということです。一時的なイベント・リスクへの備えとは違う、より難しい選択を迫られます。
このような時代認識に立つと、客観性や合理性だけで決めきれない経営課題が増え、自分の主観、生き方、使命感に基づく判断が一層重要になってきます。また、絶対に譲れない「自分の軸」を持ちつつも、それが頑迷になり拘泥しすぎてもいけないという、バランス感覚が求められるのです。未体験かつ不透明な状況が増え続ける中で、リーダーとして先頭に立ち、未来を切り拓いていくには、自前主義から脱却し、外部に知を求め、自分を高め続ける成長意欲と、学ぶ力も重要になってきます。
経営の最前線に立ち、トップスピードで走り続ける力を養う
グロービスの「知命社中」は、このようなリーダーの必須要件を「磨き込む」ための場を提供します。プログラム名の「知命」は「50にして天命を知る」という孔子の言葉から引いたもの。「社中」は坂本龍馬の亀山社中から借りてきた言葉で、志を同じくする仲間を意味します。自分の軸となる使命について、一人で考えているだけではインスピレーションは広がりません。各界の第一人者によるエッジの効いたメッセージから刺激を受けつつ、参加者同士との本音の対話を徹底的に行うことで、内省を深め、自分の可能性やパワーの次元をもう一段引き上げるのです。
「知命社中」の特徴の1つは、経営者として考えるべき様々なアジェンダ(問い)に対して、各人が自分なりの立ち位置を決め、仲間との議論をしながら、自らの考えに揺さぶり(問い直し)をかけるという営みを繰り返すところにあります。他者の考えを鵜呑みにするのではなく、微妙に感じる違和感なども重視します。「私たちが違和感を抱くのは、自分の前提と異なっていたり、自分の価値観に抵触するものに触れるときです。違和感の正体を掘り下げていくと、これまでの考えや拘りは、実は手放してもいいと思えるケースもあります。その手放しが、新しい知を取り入れるホワイトスペースになります。外からの刺激を咀嚼し昇華することで、自分の血肉として認識をアップグレードできるのです」と、鎌田は指摘します。
新たな刺激を得るためにロケーションに拘ることも効果的です。「私にとってターニングポイントの1つが、奈良吉野の世界遺産 金峯山寺を訪問したことでした。修験道は日本独自の考え方ですが、長く続いてきただけの理由があり、自分たちのやっていることにつながっている実感がありました。座禅、滝行、護摩行などを体験する中で、これは自分の本質に近づく手立てだと感じました。特に心に染みたのが、田中利典長臈のお話です。その後、苦手意識のあった人との接し方が変わるなど、多様性を受容しやすくなりました」と、石橋氏は振り返ります。
自己肯定と自己否定を繰り返し、自己を変革する
「知命社中」では、最先端の技術動向から歴史や哲学まで、幅広い知に触れ、課題図書を読んで学ぶだけでなく、「書く」「話す」ことからの学びも重視します。「見聞きしたことを咀嚼し、自分のものにするためには、自分の理解をアウトプット(言語化と対話)が大切です。アウトプットの一環として、エッセイを何度も書き直してもらいます。最初は「借りてきた表層的知性を羅列する」ようなレベルのものも多いのですが、一連の学びのプロセスを繰り返すうちに、知性が自分の精神性と同期し、最終的にエッセイの内容はがらりと変化します」(鎌田)
「知命社中」で重視するのは「自得」という考え方です。「このプログラムは何かを教えてくれるという受動的なものではなく、社中の仲間との対話やエッセイの書き直しなどを通じた本心との対話の反復で、主体的に気付きを得る機会を重視します。正直なところ、私は前社長に命じられて最初は嫌々参加していましたが、3回目くらいから、どんどんはまっていきました。頭を揺さぶられ、自分の軸を改めて考えさせられたのです。自己認識を深めることが、経営者としての自信に繋がったように思います」(石橋氏)
「賢人から学ぶことも大切ですが、最終的には他者への依存心を捨てなくてはなりません。一貫性と柔軟性、合理と情理、個人的利益と社会的利益、外から付与された役割と内発的な本心など、相反するものがせめぎ合う中にあっても、最後は自分で決断しなければならないのです。7カ月間のプログラムを通じて、学んで、学んで、学んで、一度ぶち壊して、再び自分で組み立て直すという新しい学び方を体感していただけるはずです」(鎌田)。
ポイント~役員向けプログラムを考える視点~
不確実な時代のリーダーには、客観性や合理性だけでは決めきれない経営課題に対処するための「使命感に裏打ちされたぶれない軸」や「鍛えられた主観」が不可欠。更に新たな知の獲得を外に求め、自らを高め続ける「学ぶ力」、即ち「自己成長力」が問われている。
学びと成長の鍵は、単なる知識獲得を超え、未知なる刺激に触れつつ、それらを対話を通じ咀嚼・昇華し、自分の血肉としていく「認識と価値観のアップグレード」にある。
使命を「自得」するには、自らが考える使命、自己のあり方、経営哲学などを他者との議論に晒し、自己肯定や自己否定の行き来や葛藤を繰り返しながら熟考・言語化を深めることが肝要なプロセスとなる。
セミナー開催概要:
■開催日時:2018年10月2日
■会場:HRエグゼクティブコンソーシアム
■登壇者
【スピーカー】
鎌田 英治(株式会社グロービス マネジング・ディレクター / 役員向け研修「知命社中」代表 )
北海道大学経済学部卒業、コロンビア大学CSEP(Columbia Senior Executive Program)修了。1999年日本長期信用銀行からグロービスに転じ、名古屋オフィス代表、グループ経営管理本部長、Chief Leadership Officer(CLO)などを経て現職。著書に『自問力のリーダーシップ』(ダイヤモンド社)がある。経済同友会会員。
【ゲストスピーカー】
石橋 義 氏(株式会社JOLED 代表取締役社長 / 「知命社中」第2期修了生 )
1990年学習院大学大学院博士前期課程修了。同年ソニー株式会社に入社、中央研究所へ配属。2008~2011年ソニーモバイルディスプレイ株式会社へ出向。2015年に株式会社JOLEDに転籍し、執行役員 厚木技術開発センター長、製品技術開発部門長(石川技術開発センター長)を経て2018年6月25日より現職。
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。
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