経営に対する理解を得る上で必須の領域だが、リーダー候補にも人事部にも苦手感の強い「会社の数字」。経理部による計数管理講義などの取り組みが少なくないにも関わらず、なぜ苦手感が拭えないのかを、克服のためのアプローチ例と共に考察します。執筆は谷口学です。
多くのビジネスパーソンが苦手な「会社の数字の理解」
「会社の売上・利益などの数字は聞くが実感が湧かない」「普段は意識しなくても日常業務が回ってしまう」「利益管理の研修はあるが、結局よくわからない」
これは、筆者がいる中部圏のメーカー系企業において中堅社員を中心によく聞く声である。当然その裏返しとして、人材開発の担当者からは、対象層の能力開発上の課題として挙がってくるテーマとなる。本稿ではこのような「財務感覚強化」に対する問題意識と、筆者が取り組んできた事例について触れていきたい。
財務感覚が必要な理由は今さら詳しく論じる必要はないだろう。例えばグローバル化。拠点マネジメントを担う日本人が計数管理をおろそかにすると業績に多大な影響を及ぼす。あるいは業界やビジネス環境の構造的な変化。すでに利益率が悪化しているのに「良いものを安く作れば売れる」と思考停止すると“ゆでガエル”のようにじわじわと会社に悪影響を及ぼす。
変化の激しい今のビジネス環境を踏まえると、「実感が湧かない」「よくわからない」は決して看過できるものではなく、会社として対処すべき課題なのである。
経理部の講義が会社の数字の理解につながらない理由
もちろん多くの企業が手をこまねいているわけではない。よくお聞きする答えが「経理部が会社の利益管理(計数管理)について講義する」というものだ。多くの企業が独自の管理会計の仕組みを持っているため、それをしっかりと社員の方々に伝える活動は重要だ。しかし、経理部の計数管理講義が会社の数字の理解につながっているかというと疑問である。それはなぜか。
筆者の経験上、大きく2点の問題があると考える。
1つ目は、教え方、あるいは経理部と受講者の知識ギャップによる問題である。一部の例外を除き、経理部はそもそも伝える・理解させるという活動に慣れていない方が多い。加えて、自分がよく理解しているがゆえに、受講者が何がわかっていないのか、なぜ理解できないのかがわからない。難しい話を難しいまま話せば当然初心者にはわかりにくく、おもしろくもない。
2つ目は、人材開発の方々の利益管理に対する理解不足である。筆者が聞いた話では、人材開発担当者も財務感覚に自信がないため、経理部に適切な要請もフィードバックもできないのだと言う。
つまり、少なくとも経理部に依頼することで「対応している」という状態が存在しており、加えて「わかるでしょ」「わかってよ」という教育のやり方の問題が、冒頭の声につながっているのではないかと筆者は考えている。
思考力を鍛えることで「会社の数字の理解」は高まる
ではどのようにすればよいか。筆者がいくつかのクライアントで提供し、効果実感を得ていただいているアプローチをご紹介したい。
そもそも「会社の数字の理解」には、 “難しい言葉”(専門用語)がつきまとう。もちろん最低限の専門用語の理解は必要だが、その用語の理解よりも、むしろ思考力を鍛えることで計数管理力を磨き「会社の数字の理解」を促すアプローチだ。どういうことか。
まず、教材は“自社”の数字だ。その上で、例えば自社の利益を見てみる。その利益の種類が何であれ、多くの方が目にしている数字で、上がっている、下がっているはわかる。また、その利益が、ざっくりと売上とコストに分解でき、その差で生まれていることもわかる。とすると、そうやって分解しながら自社の利益を見てみると、例えば利益が上がっていることが、売上が上がっているのか、コストが下がっているのか、あるいは両方か、といったことが見えてくる。そんな調子で、さらに売上やコストを分解し、その構成要素のどこが影響しているのかを順に考えながら見ていくのだ。これを「アウトプット-インプット」思考とグロービスでは呼んでいる(グロービスの「クリティカル・シンキング」で学ぶことができる)。
セッションにおいて構成要素をどのような切り口で、どこに着目しながら考えるかは、経理の方と人材開発の方を交えた綿密な打合せで設計していく必要があるが、利益(アウトプット)を分解し続けた結果、最終的に受講者の日々の活動(インプット)につながった時の「会社の数字」に対する理解、および実感の湧き方は、ただ難しい言葉を説明され、計数管理をしろ、利益を上げろと言われていた時の比ではない。
ちなみに、「会社の数字の理解」が高まり計数管理力が上がることは、単に能力開発上の改善ということのみならず、意識面の改善にもつながることが見受けられている。例えばこんな声だ。
「あまりピンとこなかった全社利益と自業務のつながりが理解でき、今後の業務のモチベーション向上につながった」
このアプローチによって副次的に自身の仕事の意味・意義を理解することにつながり、モチベーションにも良い影響を与えることになったと言えるだろう。冒頭の声を聞くことのある人材開発担当者の方は、ぜひこのアプローチをお試しいただきたい。
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。
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評価 2025年3月「テーラーメイド型プログラム」を除く平均値
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社/年受講者数
42
万名/年
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日本生命保険相互会社
「自ら学び、社会から学び、学び続ける」風土改革への取り組み
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