【ニトリ・セプテーニ】HRテックは「社員のため」に活用を!
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CLO会議事務局
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本記事は、第9回CLO会議パネルディスカッション「HRテクノロジー活用による人材・組織開発」の内容を書き起こしたものです。
CLO会議HP:https://gce.globis.co.jp/clo/index.html
【セミナー概要】
■開催日時:2019年9月10日(火)10:00~20:00
■登壇者:
上野 勇 氏 株式会社セプテーニ・ホールディングス 代表取締役 グループ上席執行役員
永島 寛之 氏 株式会社ニトリホールディングス 組織開発室 室長
■モデレーター:
井上 陽介 株式会社グロービス マネジング・ディレクター
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全社員に「いつでも学べる環境」を提供し、学習データを人材育成に活用

永島寛之氏(以下、敬称略):『GLOBIS 学び放題』を5月から開始していて、社員5,000人全員が勉強し始めたというところです。今、見えてきた点では、「社員の好奇心」。学びの過程を見ていくと、毎日ちゃんと学習する人とか、週に1回だけやる人とか、「絶対にやれ」と言われた時にだけやる人とか。あと、コンピテンシーが意外と見えてくるな、というのが正直なところです。
井上:なるほど。『GLOBIS 学び放題』を前提で少しみなさんにシェアすると、コンテンツとしてはもう300コースぐらいあって、その中でカテゴリが7つに分かれていて、初級、中級みたいなレベル感でも分かれています。たくさんの動画コンテンツがありまして、社員のみなさんは、たとえばマーケティング領域でお仕事をされている人だと、ご自身の専門領域のところだけ学習しているような社員がいたり、全然違う領域のコンテンツも学習する社員がいたりする前提があったりします。その中で、今おっしゃったようなコンピテンシーが見えてくるだとか、学習傾向が見えてくるだとか、このあたりって、どんな感覚で見ていらっしゃるのでしょうか?
永島:コンテンツの数だと3,000動画くらいあって、1動画が5分ぐらいなので、もう勉強しない理由がないですよね。興味があったビジネスの領域について、すぐに手が出せるという状態になっているのがすごく良いです。例えば、法務の人間がマーケティングを勉強したりとか、結構いろいろ見えてきていますね。
井上:その見えてきた社員のコンピテンシーや学習傾向は、具体的にはどう活用するのでしょうか?
永島:IT人材の不足というのはどの企業でもあることだと思うのですけど、僕らの中でIT人材とは「スキルがある」だけではなくて「事業全体のことを知っている」というのが大事なんです。だから、社内で通常業務に入っている社員を、どんどんITの方に移していくということをやっています。公募もしているのですけど、社内でピックアップをしていく時に、やっぱりこの情報が生きてくるのですよね。
井上:なるほど。単にITのスキルが高いだけじゃなくて、事業全体への関心が高い人がどのような学習をしているかが見えてくるということですね。
永島:そうです。だから本人が気づいていない潜在的な好奇心だったり、素質みたいなものが見え始めてきた感じです。
井上:HRテックという文脈で、私は『GLOBIS 学び放題』というサービスの統括をしているのですけど、グロービスって比較的ピンポイントの「幹部育成」というところが、お仕事としてこれまで多かったのですが、ニトリさんでは全社で導入していただき、5,000人の社員の学習行動というのがデータとして表れてきています。このあたりが見えてくると、社員の配置転換だったり、キャリアの示唆を出していく、みたいなことができる可能性が出てくるなと実感しています。
そういった中で、セプテーニさんは、社員のみなさんを「学習行動から人材情報を把握していく」というようなことに取り組んでいらっしゃいます。それ以外の切り口で、どのようにパーソナリティを把握していくのか、また、どんな取り組みがこれまで効果を発揮したかをお伺いしたいと思います。
社員の「パーソナリティ」をデータで確認し確実にフォローする

上野勇氏(以下敬称略):人事全体での取り組みになりますが、やはり取り組みを続けて非常に良かったなと思うことは、我々の経験や我々の見える情報以外で、今まではわからなかったことがわかるようになってきたことです。
たとえば採用においては、エントリーをいただく時点で、その人に「どのような環境を提供すると効率よく戦力化するか」ということがわかるようになってきました。また、人材育成においては、我々の目にはわからない様々な示唆を与えてくれるので、マネジメントには非常に有益に機能してきています。

井上:もうひとつ、今日ご説明していただいて、ここまで進んでいるのだなと思ったのは、新入社員や若手の方が数年経ったところで、このあたりでつまずくという想定が出ていることです。さらに、そこに対してのトレーニングが用意されていて、トレーニングを受ける効果も証明されつつある、と。例えば、若手の方が入社して数年経たれて、少しリーダーシップポジションのようなところに引き上げた時や、プロダクト開発みたいなところにも視点を持たせていきたいという時、「このあたりでつまずくんじゃないか?」というような仮説が立てられる、ということですね。
上野:そうですね。この取り組みは未だトライアルの域は脱していませんが、基本的には課題に対する解決の方法論を望んでいる人に提供するので、高い教育効果が確認できていますね。
井上:なるほど。そういったパーソナリティって、以前は漠然と「この人はリーダーシップポジションにつけると、ちょっとまずそうかな」なんて感覚で、人事の勘と経験はあったのですが、それをまさにセプテーニさんの場合はデータで確認できるようになり、そこから確実なフォローをすることができるわけですね。
それでは、永島さんに質問を戻らせていただいて。今、セプテーニさんのお話をお伺いすると、個人の課題を明確にデータで把握しながら、それに対する適切なフォローを人事として打ち込んでいく、こういうサイクルをまさに回していらっしゃるなと思いました。ニトリさんでこれから先、データを活用して「こんなことをやっていきたい」と思っていらっしゃる具体的な取り組みのイメージって、何かありますでしょうか?
永島:基本的には、組織が「どうしたい」というよりかは、個人が「やりたい」「将来成し遂げたい」ということを重視して、そのエンプロイー・エクスペリエンスを個人ひとりひとりに作っていきたいと思います。そうすると、社員5,000人に対して、それぞれ個別のテーマや学習、カウンセリングが必要になってきます。その環境をこれからテクノロジーで作っていきたいと考えています。
井上:そのような「個別のキャリアに合わせたサポートを実現する」ということがHRテックの目的だとした時に、セプテーニさんは何%ぐらい達成できていると感じていらっしゃいますか?
上野:まだやるべきことたくさんあるので、2、3割というところです。
井上:今のお話って、比較的若手層のお話でしたけれども、これがキャリアを経て、例えば10年目でマネジメントに上がっていくような、レイヤーが上がっていったところにおける取り組みというのは、セプテーニさんの場合、どれくらい進んでいらっしゃるのでしょうか?
上野:ベテラン層へのアプローチというのは非常に重要なところだと思っているのですが、進んでいるかという観点で申し上げると、あまり進んでいないのが現状です。理由は、データ量が成熟していないため、精度が運用レベルには達していないので、具体的なアプローチというのは、まだとれていない状況です。
井上:なるほど。ベテラン層へのアプローチは今後のチャレンジ領域なのですね。
自社にないものはテクノロジー化しても生まれてこない
井上:永島さん、突然ですが「メカゴジラ」の比喩の話をぜひ話していただけませんか。
永島:HRテックの導入について、いろいろな方からご質問をいただくことがあるのですが、その時に例え話でするのが「メカゴジラ」の話なんです。
やっぱり「メカゴジラ」になれるのは「ゴジラ」だけなんですよね。「ラドン」は「メカゴジラ」にはなれない。これはどういう意味かというと、結局、「自社にないものは、テクノロジー化しても生まれてはこない」ということです。
井上:なるほど。そもそも「ゴジラ」じゃないと「メカゴジラ」にはなれない、と。逆にいうと、そもそも人事として、テクノロジーありきではなく、HRの仕組みを丁寧に回せているのか、ということに尽きるということですかね?
永島:そうです。だからタレントマネジメントなんかを、効率化を前提に入れたりすると、やっぱり方向性を間違うケースがあるのかなと思います。よくあるのが、タレントマネジメントを入れるときに、組織がすごく複雑で、人為的な要点で配置転換などが行われていて、いろいろな判断で動いているような場合ですと、なかなかデジタル化していっても難しいと思います。デジタルの判断ができない部分になってしまうので、できるだけシンプルな組織にする必要があります。我々は「社長・私・担当」みたいな3層になっているので、これから1兆円、2兆円って言っているような会社にしては少しシンプルすぎるのですが。
あと、HRテックを導入する際に注意すべき点として、これはちょっと余計なお世話かもしれませんが、よく「稟議をどうやって通すのですか?」と聞かれることがあるのですが、この稟議を通すときに「効率化」ってやっちゃうと、だいたいあとでそれに苦しめられます。なぜなら結局そうならないことが多いので。だから結局「人のため」に入れたのに、「会社のため」とか無理やり「効率化」と言ってしまうとあとで苦労すると思います。
井上:最後に上野さん、実際に10年間取り組んでいらっしゃって、その中でHRテックとかタレントマネジメントという観点で、今の話から何か感じることがありますでしょうか?
上野:やっぱりテクノロジーというのは「方法論」であって、「人事の目的」にはなり得ないということです。やはり人事の目的を達成するためのアプローチとして、こういうテクノロジーはどうでしょう、と。そういうやり方を今までもやってきたように思います。
井上:それではお時間になりましたので終わりにしたいと思います。永島さん、上野さん、ありがとうございました。
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※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。
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