鈴与株式会社
激しい環境変化の中で、「ぶれない軸」を持ち自社の成長をけん引する次世代リーダーを育成する
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次世代を担うリーダー層が自身の成し遂げたい事を繰り返し描き、ぶれない軸を作ること、同時に自社の企業理念への理解を深めることを通じて、自己改革をし続けるマインドと社会への変化対応力を養うための育成施策(以下、本プロジェクト)を行っている鈴与株式会社様。その取り組みについてお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【鈴与株式会社様】
写真中央:人財開発部 部長 水野仁志様
写真左:人財開発部 チームリーダー 藤田佳秀様
【グロービス担当者】
写真右:齋藤 一世
- 導入前の課題
-
- VUCAの時代でも変革をけん引できるリーダー育成が急務
- 自社だけの常識で仕事をしがちで、内向きの文化があった
- 研修内容
-
- 経営陣との対話、外部講演、自社の歴史から会社の価値観を理解するセッション、自分の行動計画まで多種多様なアプローチを組み合わせた
- 1日の単発プログラムではなく、数か月をかけて複数回のセッションを実施し、自身や仲間の成長を感じられる設計にした
- 成果・効果
-
- 社内と社外を両方見たうえで部署の課題ややるべきことを考え、メンバーをリードできる社員が増えた
- 研修で学んだことを部下に共有し、「これから、自分はこういうリーダーを目指す」と宣言する受講者もいた
背景と課題
VUCAの時代にも成長していくためには、変革をけん引するリーダー層の育成が急務
水野さん:
コロナ禍や不安定な世界情勢、それらにともなうエネルギー高など、VUCAといわれる外部環境の激しい変化は、物流を主力事業とする当社のビジネスに大きな影響を与えています。その中でこれからも絶えず成長していくには、リーダー層の育成が急務だと考えていました。
当社の220年超の歴史を振り返ると、時代の変化に応じて新規事業を展開する自己改革の連続で、ここまで生き残ってきたように思います。これからの時代も、変革をけん引していくのは事業や組織の要となるリーダー層です。VUCAの時代におけるリーダー育成が必要でした。
藤田さん:
外部環境が変化する時代のリーダーにとって大切なことは何かを考え、2つのポイントがあるとの結論になりました。ひとつ目は、自分達の存在意義です。我々なりのぶれない軸をもっていないと、変化の激しい波に流されるままになってしまいます。
もうひとつは、当社の経営の拠り所である「共生(ともいき)」への理解を深めることです。共生とは、「会社がひとつの企業として自立し、また、社員一人ひとりも個々の社会人として、真に自立し、社会活動を営む中で、我々と地域社会、お客様、お取引先様、そして社員相互間を結びつける精神的な基盤となる」という意味があります。リーダー一人ひとりが自分の言葉で共生を語ることで、組織を強くできると考えました。
リーダー層の知的好奇心を高め、組織の推進力に変えたい
水野さん:
加えて、当社は積極的に外の世界を知る・見に行く知的好奇心を大切にしています。ところが現状に目を向けると、会社の歴史の長さも影響し、自社だけの常識で仕事をしがちであるなど、内向きな文化があることは否めません。本プロジェクトを通してリーダー層の知的好奇心を高め、組織の推進力に変えていきたいと考えていました。
重要な3つのゴールとして、ぶれない軸の構築、価値観の結節点発見、知的好奇心の向上を設定した
水野さん:
当社のリーダー層一人ひとりが自身のぶれない軸を作ること、自分が成し遂げたいことと会社の価値観との結節点を見出すこと、そして知的好奇心を高めることの3点をゴールとしました。
自分は何者であり、どうなりたいのかを掘り下げたうえで、会社の価値観と重ね合わせていく。その重ね合わせが自分で腹落ちしていくような状態に持っていく。そのようなことを目指したいと考えていました。
藤田さん:
知的好奇心を高めることは、外部環境が変化し続ける状況において、当社や社員一人ひとりが生き残るために欠かせない要素だと思うのです。変化そのものを楽しみ、柔軟に対応し続け、新しいものに興味をもつ姿勢は、これからのビジネスパーソンに必要なことではないでしょうか。当社のリーダー層には、知的好奇心を高め、興味が湧いたことはまずやってみる姿勢をもってほしいと期待していました。
本プロジェクトは、組織全体でのマインド変革を目指すものです。そのため、まず部課長層で研修を企画・実施し、手応えを感じたので、その後に30代前半と20代後半の層に対象を広げていきました。30代前半、20代後半の若手層は、次世代リーダーとして期待するメンバーです。働きがいを高め、より多くの活躍をしてほしいと思い、本プロジェクトの対象層としました。
3階層でのゴールは共通ながらも、部課長層は経営トップの価値観を深く理解したうえで、鈴与で成し遂げたいことを定める。30代前半は、会社の取組み・価値観を正しく理解した上で、鈴与のリーダーとしての土台固めをする。20代後半は、会社のポテンシャルを理解した上で、鈴与でどのように成長するかを描く。このように、キャリアの段階によってプログラム内容を変えて企画を進めました。
プログラムでは、当社の経営陣や本プロジェクト修了者との対話、外部の企業家の講演、自社の歴史から会社の価値観を理解するセッション、読書会等、多種多様なアプローチを組み合わせています。こうして多くの気づきと学びを得た後、最後に自分自身の行動計画を考えるという構成にしました。
水野さん:
我々は「おせっかいな人事」をスローガンにしています。単に研修を行うだけでなく、人事としてプラスアルファの価値を発揮するために、リーダー層に行動変容を起こしてもらうまで伴走することを意識しました。
検討プロセス・実施内容
受講者の前提意識の違いを考慮して、インターバル期間中のアナウンス内容を工夫した
藤田さん:
受講者がさまざまな部署から集まって研修を行うので、担当事業が異なれば会社に対する捉え方も違う等、前提となる意識が揃っていないことへの対応が必要だと考えていました。この点は事前にグロービスに相談し、事前課題や、研修中のみならずインターバル期間のアナウンス内容・メッセージを工夫しました。
もうひとつは、研修後に行動につながらないことへの懸念です。我々事務局はおせっかいな人事として、1回受講して終わりにならないようにしたいと考えていました。そのため、1日の単発プログラムではなく、数か月をかけて複数回のセッションを実施しながら、期間中に「学びの言語化と行動計画」→「インターバル期間中の行動実践」→「自身の考えのアップデート」と繰り返し、自身や仲間の成長を感じられるようにすることが最適だという結論になったのです。
研修で得た学びを職場で継続するための仕掛けを考え、実践した
水野さん:
研修の場で多くの気づきや学びが得られても、職場に戻ると、どうしてもマインドが元に戻りがちです。研修はあくまできっかけですので、その先の習慣化や成長のためには、継続的な実践が欠かせません。修了後の仕掛けについてもグロービスと議論を重ね、他の階層の研修の様子や、参考動画のご紹介、学びのリマインドの機会を設ける等、リーダーとして持つべきマインドを根付かせることを目指しました。
いずれの懸念についてもグロービスに率直に相談し、議論を重ねて企画を進めたので、大きな心配ごとはない状態で研修をスタートできましたね。
藤田さん:
さらに本プロジェクトは、社長肝入りのプロジェクトで、社長自ら毎回のセッションに参加するとコミットしているほどのものでした。我々事務局はしっかり企画・運営しなければならないというプレッシャーがありましたね。
成果と今後の展望
リーダーとしての自覚が芽生え、会社全体や外部も含めた視点で課題に取り組む姿勢が見られるようになった
藤田さん:
本プロジェクトは継続して何度も実施しており、受講者の変化の兆しを3つ感じています。知的好奇心の高まり、リーダーとしての自覚が芽生えてきたこと、共生の精神の捉え方が変わってきたことです。
知的好奇心については、本プロジェクトでのさまざまな対話によって外を見るきっかけがつくられ、その習慣が継続されているものと考えています。そう感じるのは、2点目であるリーダーとしての変化です。これまでのリーダーは、自分の部署のリーダーである視点が強かったと思います。ところが、会社全体や外部も含めて見たうえで部署の課題ややるべきことを考え、メンバーをリードできる社員が増えてきました。知的好奇心が刺激され、物事を捉える視野が広がったのでしょう。
そして3点目の、共生の精神の捉え方については、本プロジェクトで共生とは何かを仲間・講師と議論し、「これぞ、共生の精神」と言える会社のエピソードを共有し、過去のリーダー達が何を大切にしてきたか、を学ぶことが、深い理解につながったように考えます。
複数階層で継続して実施した結果、リーダーのあるべき姿の共通認識づくりや若手社員の研修への意欲につながっている
さらに、複数の階層が本プロジェクトで学んでいる点も、よい効果が見られています。受講者が、これから研修を受ける部下や後輩に対して「この研修は課題も多くて大変だけど、それだけ意義があるものだ」とモチベートしてくれているのです。また、研修で学んだことを部下に共有し、「これから、自分はこういうリーダーを目指す」と宣言した受講者もいました。
こうした動きがいくつもの部署で行われていくと、本プロジェクトで学ぶことが、鈴与のリーダーにおけるあるべき姿だとの共通認識が生まれ、若手社員も研修への意欲が増すでしょう。自分と会社の成長を前向きに捉える文化が、さらに全社に広がっていくことを期待しています。
水野さん:
これらの変化が生まれた要因のひとつには、本プロジェクトに多く取り入れている経営層との対話セッションがあると思います。社長をはじめ、本プロジェクトを過去に受講した役員・部長にも来てもらうので、特に若手の受講者にとっては、普段話す機会がない経営層や先輩と直接コミュニケーションができる貴重な場なのです。
この対話を通して、会社の理念や方針を背景・ニュアンスも含めて理解し、経営を少し近くに感じられていると思います。また、経営層にとっても、自分の言葉で社員に直接メッセージを伝えられる場になっています。
グロービスが社内事情を理解しながら、人材育成の潮流も踏まえた提案と実施を伴走してくれた
藤田さん:
こうした成果が見られているのは、グロービスに当社の社内事情をご理解いただき、外部の潮流も踏まえて本プロジェクトの企画と運営、ブラッシュアップの提案に至るまでご尽力いただいたからだと思っています。我々の課題感をざっくり伝えたところから具体的な企画に落とし込んでいただくだけでなく、改善のご提案もゴールを見据えたものになっており、本当に助けられています。
水野さん:
私も、齋藤さん(グロービス担当コンサルタント)をはじめ、グロービスには絶大な信頼を置いています。毎回のセッションでも「齋藤さんが来てくれるなら、私は顔を出さなくても大丈夫かな」なんて思ってしまうほどですね(笑)。
今後もグロービスの力を借りながら、本プロジェクトは毎回ブラッシュアップしていくつもりです。人事としてやれることはまだまだあるものですね。おせっかいな人事をこれからも実践していきたいと思います。
社長との対話セッションで、リーダーの視座アップデートと行動の継続を促進
藤田さん:
本プロジェクトの受講者に対しては、研修が終わってから1年〜1年半後に社長との対話セッションを追加で実施しています。グロービスのファシリテートの下、受講後のチャレンジや自身の変化について少人数で語り合う場です。各自のチャレンジを通して得た手応え・悩ましい点も含め、社長と対話する取り組みは、リーダーとしての視座・視点のアップデートや行動に継続性が生まれる点で有効だと考えています。
そして、受講者の変化の手応えが感じられているからこそ、本プロジェクトの受講者をもっと増やしていきたいと考えています。ただ、研修で得られる成長よりも負荷の高さが気になり、ネガティブな気持ちを抱く社員もいますので、成長に対して前向きに捉える社員を増やすことも必要ですね。
ウェルビーイングや若手社員のキャリア育成など、時流に合わせた取り組みを実施する
水野さん:
マインドの変容や組織文化の醸成は、まさに生き物ですね。今後も、その時々の状況に応じた取り組みを実施し続けることが重要だと考えています。我々事務局は、常に「次を考えなくては」と頭を回転させ続けている状態です。
本プロジェクト以外の取り組みも構想中です。当社は2022年、ウェルビーイングな組織を目指す方針を掲げました。当社が考えるウェルビーイングは、働きやすさと働きがいの両立です。働きやすさについては、人事制度の整備など取り組みが進んでいますが、働きがいももっと高めていくべきだろうと思うのです。
働きがいは人によって感じる要素が異なるものであり、全社員に対して万能な取り組みはないものの、できる打ち手からやっていくつもりです。まずは、リモートワークが進む中でのコミュニケーションのあり方です。上司と部下の1on1ミーティングに取り組むほか、社員と役員が対話をする機会も定期的に開催する予定です。
藤田さん:
若手社員に対しては、キャリアを考える研修も行っています。多くの社員が異動を迎えるタイミングで自身のキャリアを振り返り、自身の今後を考える機会を設けているのです。キャリア研修では、先輩社員がキャリアをどう考えてきたかを話す時間も設けており、実は、ここに本プロジェクトの受講者を意図的にアサインしています。
どのようなマインドで業務に向き合っているかを話してもらうことで、若手社員は貴重な学びが得られるはずです。また本プロジェクトの受講者にとっては、改めて自分の言葉で話すことで新たな気づきがあったり、考えが深まったりする機会になればと考えています。
さまざまな育成企画を担当している立場としては、私自身も働きがいを持ち、幸せに働き、精進しなければなりませんね。鈴与の多くの社員が幸せに働けるよう、人事としてこれからも尽力していきたいと考えています。
担当コンサルタントの声
齋藤:
この次世代リーダー育成のポイントは、「ある階層の研修に終わらせることなく、経営層・部長・課長・若手と組織の縦・横・斜めの関係性をつなぎ、継続的に受講者・修了者の方と学びの刺激・成長感をシェアしながら、『学び続ける組織集団』をつくる」ことだと考えます。
鈴与の皆様はもともと真面目で誠実な方が多く、学びを実直に吸収される素晴らしさがあります。そのような皆様が研修を通して、様々な刺激を受け、「自分とは何か」「共生(理念)とは何か」繰り返し問い、「外に目を向ける重要性」に気づき、リーダーマインドを身に着けていきます。
一般的な研修は、研修が終わったら一旦そこで終わり。ただ、本プロジェクトについては「研修の修了=新たなスタート」とし、その後は各持ち場で自己改革、フォローセッションと進みます。フォローセッションを受ける頃には、各自が更に成長し、新たな課題にチャレンジしている姿を拝見することができます。
この「学び続ける組織集団」をつくるためには、人財開発部の皆様はじめ鈴与の皆様とグロービスが一丸となって、自律的かつ自由に議論・行動を繰り返すことが必要です。そのため、このように自由に議論・チャレンジを前向きに捉えてくださる鈴木社長、鈴木常務、人財開発部の皆様には、言葉で言い尽くせないほどの「感謝」の想いです。
また、それだけではなく、研修の受講者の学びの後押しをしてくださる修了者の皆様にも多大なるご支援をいただいております。「何年か経って、『こんな研修あったな…』と昔を思い出す自分になりたくない」という想いの元、研修が終わった後も積極的に自己改革・組織づくり、そして次の研修受講者の方への後押し等、尽力いただく素晴らしい修了者の方に何人も出会ってきました。まさに「『組織開発』とは、終わりなき全員野球」だと考えます。
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