住友理工株式会社
AI時代にこそ、人のマインドが鍵――住友理工が挑む“新規事業を生み出す両利きの経営”の実践
- 自動車/輸送用機器
- 集合研修
- 部長層
- 課長層
- 日本語
- 導入前の課題
-
- 新規事業開発を担うメンバーは既存事業の経験が長く、「両利きの経営」における「知の探索」が進みづらかった
- 事業アイデアが、既存の主力事業である自動車関連のテーマに偏っていることへの課題感もあった
- 研修内容
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- 管理職層が「両利きの経営」を実践できる組織づくりを考えられるようになるための研修を実施
- AIでは補完できない、マインド面に焦点を当てるプログラムを設計した
- あえて上司を研修に同席させない一方、上司向けにアフターフォローを行い、研修の成果と受講者の成長を報告した
- 成果・効果
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- 不確実なことにチャレンジをする社員が増えており、マインドの変化を感じている
- 部門の活動内容として「新規事業の探索」を明確に設定し、仕組みを整備する動きも出てきた
- 今後は担当者層のマインドセットの場も設け、新たな価値を生み出せる組織づくりを進めたい
強い既存事業によって成長してきた組織において、新規事業を生み出すために管理職層のマインド変容に取り組んでいる住友理工株式会社様。その取り組みについてお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【住友理工株式会社様】
写真左:新商品開発センター 久保 雅啓様
写真中:新商品開発センター 領域長 松岡 智毅様
【グロービス担当コンサルタント】
写真右:齋藤 一世
背景と課題
「知の深化」を得意とする組織風土が、新規事業創出の壁に
久保さん:
新商品開発センターは、住友理工において新規事業創出をミッションの一つとする組織です。しかしながら、当センターの管理職層は既存事業部門での業務経験が長く、「両利きの経営」でいう「知の探索」より「知の深化」(※)の思考が根付いています。新規事業のアイデアを出す際も、無意識に「知の深化」の考え方で物事を捉えてしまい、「知の探索」を意識しづらいという課題がありました。
※「知の探索」は、新規事業のアイデアを生み出すために、自社が持つ技術やノウハウとは全く違う分野の知見を探すこと。「知の深化」は既存事業を改善し続け、強化していくことを指す。

松岡さん:
私は、本研修の受講者です。他のメンバーと同様に既存事業のキャリアが長く、新たな分野の知見を求める習慣が身に付いていないことを痛感していました。一方、新商品開発センターには「知の探索」が得意なメンバーもいます。周囲の同僚と仕事をする中で、自分が補うべきことを感じるようになっていました。
「両利きの経営」を実践する組織づくりのパートナーにグロービスを選んだ
久保さん:
グロービスは、国内有数の経営大学院を運営されていますし、以前から人材開発部の人材育成施策でお付き合いがあるので、その存在は認識していました。
本研修の相談を持ちかけたきっかけは、「両利きの経営」を実践する組織づくりについてリサーチする中で、グロービスが発信しているコラムに出合ったことです。まさに私が感じていた課題感にフィットする内容だったため、お声がけしました。
他にも数社へ声をかけたのですが、最終的に本研修のパートナーとしてグロービスを選んだ決め手は、齋藤さん(グロービス担当コンサルタント)が当社の組織風土や社員の特性を深く理解したうえで、最適なプログラムを提案くださったからです。我々にとってベストな研修を実施できるという期待を持つことができました。
検討プロセスと実施内容
「AI時代」だからこそ、マインドに焦点を当てた研修を設計
久保さん:
本研修のゴールは、組織をリードする管理職層が「両利きの経営」を意識しながら、組織をどう変えていくかを考えられる状態になっていることでした。
今の時代におけるリーダーのあり方として、単に指示を出すのではなく、組織を活気づけたり、メンバーを鼓舞したりする行動が重要だと考えています。本研修をきっかけに、管理職層がマインドを変えながら「両利きの経営」を実践する組織になっていくことを目指しました。

久保さん:
ただ、本研修を企画しながら「人は研修では変わらないのではないか」という矛盾した思いも抱いていました。正直なところ、私自身が過去に受講した社内研修は、内容を覚えていないものも多くあります。だからこそ、今回は本当に意味のある研修にしたいと考えていました。
当センターで過去に実施した研修は、新規事業を生み出すためのスキルを習得する内容が中心でしたが、本研修はスキルではなくマインドに重点を置きました。
その大きな背景に、「AIの発達」があります。AIによって、新しいビジネスアイデアを出したり、検証したりすることは以前より容易になったと感じています。個々人のスキルが多少乏しくても、補完できるインフラが整いつつあるという感覚です。一方、AIにできないのは、人の「マインド」の部分。マインドはAIが補完してくれません。そこで本研修では、スキルよりマインド面に焦点を当てることにしたのです。AIにはできない、受講者の心を動かすことに着目してプログラムを設計しました。
マインドの変容を重視する育成施策において、グロービスの研修スタイルである双方向のコミュニケーションはまさにフィットしていましたね。講師が一方的に話す形式ではなく、受講者同士の対話を重視した進め方になるよう、工夫していただいたのが印象的でした。また、プログラムには書籍やケースを用いたセッションだけでなく、当社と同じ製造業の経験が豊富な方の講演も取り入れたことで、受講者は親近感を持ちながら自分事として学べたと思います。

受講者のマインド変容を第一に考え、あえて上司を同席させない
久保さん:
本研修で重要視したポイントが、もう一つあります。それは、受講者の上司が研修に同席したり、最終報告会に参加したりすることを、あえてやめたことです。本研修は受講者自身のためのものであって、上司に成果報告をすることが目的になってしまうと意味がないと思ったからです。上司向けの形式的な資料作成に時間を使わず、中身を考えることにより多くのリソースをかけてもらいたいと考えました。
ただ、上司が研修の内容や受講者の成長を把握できないのは好ましくないので、プログラム終了後、受講者の上司向けに講師と齋藤さんからフィードバックをいただくアフターフォローを実施しました。研修全体の様子や成果だけでなく、受講者一人ひとりの良かった点やアウトプットの内容などを具体的にフィードバックしてもらったのです。この場があったからこそ、上司の皆さんにも本研修の意義を理解してもらえたと思っています。
成果と今後の展望
「とりあえずやってみよう」の意識が浸透
久保さん:
定量的な成果をすぐに測るのは難しいものですが、新しいことにチャレンジするメンバーが増えた実感があります。特に変化が見られたのは、新しい行動をするときの姿勢です。常に完璧を求めて物事を調べ尽くしてから始めるのではなく、少し不完全でも「とりあえずやってみよう」と動き始める案件が増えました。これはまさに、本研修における学びの一つです。事務局である私自身も、「まずやってみよう」というマインドを持てるようになりました。
上司向けのアフターフォローの場を設け、我々が乗り越えるべき課題と現在地を上層部とも共有できたことも組織に変化が起きている一因です。新商品開発センター全体で不確実性の高いことへのチャレンジが増えましたし、そういったチャレンジに対する組織の理解度も高まっています。
松岡さん:
私はこれまで、グロービスの研修を受講する機会が何度かありました。「クリティカル・シンキング」をはじめスキル面の研修が中心でしたが、どれを取っても、私自身のキャリアにおけるターニングポイントに合わせて、良い刺激を得られたと思っています。今回の研修も、ある程度のスキルと経験を身に付けた次の段階として、今の自分に必要なものでした。

新規事業創出に向け、「知の探索」を行う仕組みを整備
松岡さん:
本研修を終え、私が所属する新商品開発センターに変化がありました。我々は「知の深化」を行っていれば評価される組織だったのですが、私自身、本研修を終えて「深化だけではだめだ」と改めて認識したのです。深化した技術を応用し、新しい価値を生み出す活動を部門として主導しなければならないと考えました。
そこで、部門の活動内容として「新規事業の探索」を明確に設定しました。関心があるテーマを持つ社員にプレゼンテーションしてもらい、その後の進捗を定期的に確認するプロセスを整えたのです。こうした仕組みによって、「知の深化」だけでなく、「知の探索」に対するメンバーのモチベーションが向上しました。
実現が難しいプロジェクトもありますが、まずはチャレンジすることが重要ですし、不確実なアイデアでも発言しやすい雰囲気になったことで、当センター内が活性化してきたと感じます。当社の技術によって新しい価値を生み出せることを、社内外に示していきたいですね。

人間にしかできない営みによって、価値を生み出す組織づくりを進めたい
久保さん:
今回はマインド中心の研修だったので、今後は次のステップに進む必要があります。AIはスキル面を補完してくれますが、実際に新しいものを考え、製品を作って世に出すのは、やはり人間にしかできない営みです。AIが導き出す回答だけではなく、実際に頭や手を動かして価値を生み出すために、組織としての仕組みが必要だと本研修を通じて認識できました。今後は、その仕組みづくりに着手したいと考えています。
また、今回の受講者は管理職層でしたが、その管理職層だけが変わっても組織全体は変わりません。担当者層に向けても、マインドセットの場を設けたいと考えています。学びのモチベーションを醸成するには、会社の中にいるだけではなく、社外の様々な人と出会い、対話することで他者との差に気付くことも重要です。会社の外に出る機会も作っていきたいですね。
今後も、世の中の状況を知り、予測し、社会に必要な製品を作っていくステップの中で、必ず課題が出てくると思います。その課題解決に向け、今後もグロービスに相談していきたいと考えています。

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グロービス担当コンサルタントの声

齋藤:
自動車業界が「100年に一度の大変革期」と言われて久しい昨今、業界や会社にとって持続的な成長に繋がる「次の一手」が求められています。その中で、今回の研修参加者の皆様は日常業務において「知の深化と探索」を同時に進めるという、高度なミッションを担っておられます。深化と探索という「求められるスキルもマインドも異なる」中で、組織として成果を創出することは、プロサッカーとプロ野球の監督を兼任するような難しさがあると考えます。
そのため久保様からご相談をいただいた際は、「グロービスとしてどのようなお手伝いができるのか?」を熟慮し、講師とも「そのソリューションで本当によいのか?」を徹底的に議論しました。加えて、事務局や参加者の上長の皆様とも「参加者や組織のあるべき姿とは?」「あるべき姿に対して、現在地はどのあたりか?」「そもそも参加者の皆様がどのように変容したら、研修は成功と言えるのか?」を何度も議論し、全面的にご協力いただきました。このような協力体制に深く感謝しております。
参加者の皆様には、毎回のセッションで本当に真摯に学び、「組織をどのように変えるのか、また自分はその活動を本当にやりたいのか?」を自問自答し、講師からも問われながら、最終セッションで具体的な行動計画について語っていただきました。またそれだけではなく、他の参加者の発表に対しても、更に良くなるためのアドバイスをお互いにされており、学び・学び合う空気感が醸成されているように見受けられました。
今回の研修で皆様が培われた「両利きのリーダーシップ」に向けてのマインドセットが、今後会社を大きく変革する要となることを心から願っています。
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