農林中央金庫
お客様と価値を共創するソリューション提案型営業ができる組織づくり
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お客様へより大きな価値を提供すべく、ソリューション提案型の営業ができる次世代リーダーの育成(以下、本研修)を実施した農林中央金庫 食農法人営業本部様。その取り組みについて、食農法人営業本部 営業企画部長 尾崎 太郎様、同部 熊谷 美里様からお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
背景と課題
研修前に抱えていた課題感
尾崎さん:
当本部では、管理職になる手前の営業職員に対する育成を見直す必要に迫られていました。3年前に人材育成の事務局を立ち上げ、職員の経験に合わせて初級・中級・上級の3段階の育成体系を設け、施策を展開することになったのです。この3段階を経て、専門性をもった営業のプロとなる構想です。
初級・中級の育成内容は決まったものの、上級の育成テーマをどうすべきか悩んでいました。上級に該当する職員は、当本部の未来をつくる次世代リーダー層です。育成施策の重要性も高いため、本部内の上層部や、営業の業務経験が豊富な職員から意見をもらいながら、一人前の営業担当者とは、の定義から検討を始めました。
その結果、営業担当者のあるべき姿とは、貸出の提案に留まらず、お客様の経営課題を捉え、お客様と対話をしながらソリューションの提案にまで踏み込めることだろう、との考えに至りました。
あるべき姿に到達するための育成施策を行うにあたって、今回グロービスを選びました。実は、話を持ちかけた時点では育成テーマがやや曖昧だったのですが、我々の悩みに対して真摯に相談に乗っていただき、ハッと気付かされる意見も多くいただいたのです。食農法人営業本部の担当役員にもお会いいただいたうえで、テーラーメイド型のご提案をいただき、かゆいところに手が届いている育成内容だったことが決め手でした。
研修前に考えていたゴール(受講者の目標像)
尾崎さん:
本研修では2段階のゴールを置きました。まずはソリューション提案によってお客様の経営課題を解決し、価値を共創できる営業担当者になること。そして組織の中核として、受講の成果を周囲に伝播してもらうことです。次世代リーダー層の研修ですので、本人の成果に留めず、組織に波及する成果までを期待しました。研修を研修だけで終わらせないようにしたいと強く意識していましたね。
熊谷さん:
このゴールをふまえて、本研修では約1年をかけて、提案型営業の実践力をつけるためのプログラムを実施しました。その内容は、スキルを習得するセッションと、お客様への提案内容を検討するセッションとを組み合わせたものです。
後者は、実際のお客様の経営課題を分析し、ビジネス機会を探索して、弊金庫ならではのソリューションを構想するという、まさに実践そのもののトレーニングとなります。そのため、中間発表会や最終発表会には、食農法人営業本部の担当役員をはじめ、受講生が所属する各営業部店の部長・支店長クラスが同席し、フィードバックをする場としました。
初回は、管理職や管理職手前の営業職15名が受講しました。組織への波及が期待できる次世代リーダー層に受講してもらうことが最適だろうと考えたためです。
研修プログラム導入にあたり、感じていた心配ごと・懸念点
尾崎さん:
研修の成果に対する心配ごとと、本部全体からの理解・協力を得られるかの懸念。この2つがありました。
まず、実践度の高いゴールを設定したので、研修で学んだことを日常の営業活動に取り入れ、成果を出すところまで至るかは心配でした。
また、お客様への提案内容を考えるワークは3人で1社を担当する形式にしたため、自分の取引先ではない企業を担当する場合、必ずしも情報が十分に揃っているわけではありません。そのような状況で分析を進め、実際にお客様のDMU(Decision Making Unit:意思決定者)が納得するレベルの提案内容を考えられるのかも不安の種でした。
そして、研修と業務とを切り離して捉えている職員も多い中で、受講者のみならず、その上長にも本研修の意義を理解してもらい、協力を得る点でも懸念がありました。本研修は長期に渡って業務と並行して行いますので、上長から見ると負荷の面でも懸念があるでしょう。
こうした心配ごとを抱えたまま研修がスタートしましたが、グロービスには、受講者の理解度や事務局の要望を勘案しながらプログラムを柔軟にチューニングいただいたことに助けられました。講師も情熱をもって受講者と向き合っていただき、全員がアウトプットを仕上げ、成果として取引事例も生まれたので、1つ目の心配ごとは最低限クリアできたことになります。
熊谷さん:
私は本研修に携わるまで、外部の研修会社と協業する際は、受講者と研修会社の間に連絡役として事務局がいて、当日は研修会社にお任せするイメージをもっていました。ところが、グロービスはセッション当日のみならず、絶えず事務局と同じ立場で受講者と向き合い、サポートいただいたことが印象に残っています。
また、当初は対面での研修開催を想定していましたが、コロナ禍により一部オンラインで行うことになりました。グロービスはオンライン研修の知見も豊富で、対面と変わらない質で実施いただける安心感は何物にも代え難かったです。オンライン研修は、弊金庫だけではとても実現できないことでした。
成果と今後の展望
研修後の受講者の変化
尾崎さん:
先ほど挙げたように、実際に取引事例を生み出せたことが、成果として挙げられます。一件の好事例が出たことで、本研修の意義を本部内の職員にも感じてもらえたのではないかと思います。
昨今はESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)を考慮した投資活動や経営・事業活動)をはじめ、金融機関としてお客様の経営課題に深く入り込めるテーマが出てきています。ファイナンス以外の幅広いニーズを捉えてソリューション提案ができる機会は、これからさらに増えるでしょう。本研修の実施と実績づくりを繰り返し、懸念点の2つ目に挙げた本部内の理解・協力をもっと得られるようにしたいと思います。
熊谷さん:
具体的な事例が生み出せたことはもちろん、受講者の本研修への参加姿勢や感想が前向きだったことも嬉しく思っています。これまで当本部では、実務に直結する研修を実施していなかったので、受講者にとっては本研修の内容が新鮮に感じられたのかもしれません。「研修が終わってしまうのが残念だ」という感想が挙がるほどでした。
また、受講後の営業活動を報告してくれた受講者もいましたね。今後、ソリューション提案型営業を実践して、多くの成果を出してくれることを期待しています。
今後の取り組み
尾崎さん:
現時点では、本研修における成果の芽が出始めた段階だと捉えています。ソリューション提案型の営業活動は、成果が出るまでには時間がかかります。我々が目指す営業とは、お客様の長期的な課題に腰を据えて向き合うものだからです。
成果につなげるには、本研修の受講者へのフォローアップミーティングを行うことに加え、提案型営業へのインセンティブをつけたり、プロダクトを充実させたりするなど、研修以外の仕組みも拡充させなければなりません。これらの施策を進め、お客様の経営課題解決に寄与するとともに、我々の収益につなげていく状態に至らないと、本研修のゴールが達成されたことにはならないと考えています。
ゴールの2つ目に掲げていた組織内への波及も、引き続き向き合うべき課題です。受講者が増えるにつれ、ソリューション提案型の営業を率先するリーダーやマネージャーが生まれてくると思いますので、我々も覚悟をもって、地道に続けることが必要ですね。
本研修の初回受講者は15名でした。この先、年1回のペースで10年開催すれば、150名が受講することになります。食農法人営業本部の営業職は400名ほどですので、150名がソリューション提案型の営業スキルを磨き、実践すれば、組織の風土として根付くのではないかと思います。ただ、10年と言わず、もう少しスピーディーに根付かせたいですね(笑)。
熊谷さん:
本研修のゴールや、スキル習得と実践を組み合わせるプログラム構成は継続しつつ、ゴールの達成に向けて、内容は毎回ブラッシュアップしていきたいと考えています。
加えて、多くの職員に本研修を知ってもらったり、負荷が大きくとも受講する価値を理解してもらったりするための取り組みもまだまだ必要です。過去の受講者が現場でどう活躍しているかを発信していくなど、人事部やグロービスの力を借りながら理解の浸透に努めたいと思います。
尾崎さん:
我々が目指す姿は、お客様から「食や農の分野だったら、まず農林中金に聞いてみよう」と第一想起していただき、弊金庫ならではの提案をして、お客様から信頼いただける存在になることです。そのためには、営業活動を通して、経営課題を議論できるDMUにお会いできている金融機関でなければなりませんね。
そう考えると、本研修は管理職手前の次世代リーダー層を対象としていますが、その上のマネジメント層に対する研修も必要かもしれません。育成体系全体を見渡して、検討を進めたいと思います。
グロービス担当コンサルタントの声
本研修は、テーラーメイド型のプログラムです。テーマを検討するにあたっては、職員の皆さまへヒアリングさせていただき、その内容をもとに事務局様とディスカッションを重ねました。そのおかげで、皆さまのニーズに即したテーマとプログラムにすることができましたし、今後もブラッシュアップを毎年重ねていきたいと思っています。
研修の企画・実施にあたって重要なのは、研修のゴール・事務局様・受講者の3点のバランスを取ることだと思います。そして大きな意思決定をする際には、お客様がどの方向に進む戦略を掲げているのかの理解も欠かせません。いくつもの視点をバランスよくもつことを意識し、これからも農林中央金庫様の人材育成に寄与したいと思います。
研修の企画段階から実施に至るまで、尾崎様、熊谷様、講師も含めて相談しながら進められたことを嬉しく思います。テーラーメイド型の研修は、まず目的や課題をおさえることが重要ですので、事務局様をはじめお客様のご協力がなければ成り立ちません。関係者全員で同じ方向を見て、一緒に取り組めたことで信頼関係も醸成できたように感じています。
そして、本研修のゴールを達成するためには研修を実施して終わりではありません。ソリューション提案型営業を組織へ波及していくためには、本部内のコミュニティづくりも重要だと考えています。そうした組織風土醸成においても末長くサポートさせていただきたいと考えています。
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