明治安田生命保険相互会社

現経営陣の大半が受講者。次期役員候補者向けプログラムで「見える世界が変わった」

業種
  • 金融
サービス
  • 企業内研修
研修対象
  • 次期役員候補者
言語
  • 日本語
明治安田生命保険相互会社

経営者としての高い視座と広い視野を養うために、『経営塾』と称した次世代リーダー育成プログラムを行っている明治安田生命保険相互会社様。本プログラムは、役員候補を育成する「エグゼクティブ」、部長クラスを育成する「アドバンス」、課長クラスを育成する「ベーシック」の3階層に分かれています。

その中で最上位となる次期役員候補者向けの「エグゼクティブ」では、書籍や講演などから様々な刺激を受けながら、自らの考えを磨き、経営を担う覚悟を決め、自分の思いを表明するプレゼンテーションを行っています(以下、本研修)。その取り組みについて、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)

【明治安田生命保険相互会社様】
写真右;常務執行役 浅野 芳一様

【グロービス担当コンサルタント】
写真左:寺越 いかる

導入前の課題
  • 時代の変化に合わせて戦略が変わり、リーダーのあるべき姿も変化
  • それに伴い、リーダー育成のあり方を見直し

研修内容
  • 半年間ほどをかけて様々な経営哲学に触れ、受講者同士で議論
  • 最終日に自らの経営哲学を自らの言葉でプレゼンテーション

成果・効果
  • 全社視点・業界全体の視点で物事を考えられるように成長
  • 「見える世界が変わった」と感じ、日々の発言の水準も向上
  • 10年間続けてきた結果、現在の経営陣の大半は本研修の受講者

背景と課題

戦略もリーダーのあるべき姿も変わる中、リーダー育成のあり方も見直しが必要に

私の抱く課題感として、当社が世の中の変化に対応し、お客様が必要とするサービスを提供し続けるうえで、リーダーの育成がますます重要になっているということが挙げられます。

かつては、OJTを中心に個々人はスキルアップし、マネジメントの方法もそれぞれの現場で学んでいました。これまでの積み重ねの中で、当社のマネジメント層は指示命令型や率先垂範型のリーダーが多いことが、アセスメントの結果からも明らかになっています。

今まではその仕組みでうまく回っていました。しかし時代の変化に合わせて、当社の戦略は変わりますし、戦略が変わればリーダーに求められるものも変わります。

近年、当社は生命保険商品のご提供のみならず、お客様の健康増進や地域の活性化にも力を入れる戦略を立てています。経済的価値と社会的価値の双方を追求していくため、「みんなの健活プロジェクト」「地元の元気プロジェクト」という2「大」プロジェクトを掲げ、生命保険商品を超えた貢献にも注力しているところです。

戦略が変われば、リーダーのマネジメントも変わる必要があります。また、コンプライアンス順守の観点や従業員の意識の変化もふまえながら、リーダーのあるべき姿と育成のあり方を見直し、力を入れて施策に取り組むことにしました。

検討プロセスと実施内容

本研修のゴールは、見るべき世界を変え、覚悟を持った次期役員候補者の育成

本研修のゴールは次期役員候補者の「見るべき世界を変え、覚悟を持ってもらう」ことです。

従業員はそれぞれ経験を積んできた分野が異なり、なんらかの偏りがありますが、上位職になればなるほど高い視座と広い視野が必要になります。マネジメントする部下の人数が増えれば、自分が直接関与できる範囲が限られる中で組織を動かしていかなければなりません。さらには社内だけでなく世の中の潮流を察知して、変化に対応する力も求められてきます。

グロービスへ依頼したのは、経営人財育成のノウハウ・経験・実績が豊富だから

グロービスに依頼した大きな理由は、経営人財育成のノウハウや経験、実績が豊富だからです。加えて、当社のニーズをくみ取り、提案をしてくれることも決め手になりました。

日本には人材育成の分野で確かなノウハウと実績をもつ第三者が少なく、その中でグロービスには信頼と実績があります。例えばグロービスはMBAの大学院を有しており、アカデミックな面が他にはない強みだと認識しています。また次世代リーダー育成に関する法人研修も数多く手掛けており、実績という面でも信頼性がありました。

当社に寄り添った提案をしてくれる点も心強かったです。グロービスへは以前から研修を依頼しており、当時から当社の業態や強み・弱みを把握し、当社のニーズをくみ取った研修内容を提案してくれていました。

検討の結果、グロービスへ依頼することが最善だろうと、信頼のうえでお声がけをさせていただきました。

ビジョンを描き、メンバーに腹落ちさせる能力を身に付ける

本研修では、経営者としての視座を高め、視野を広げたうえで、会社のめざすビジョンを自ら描き、メンバーに伝えて腹落ちさせていく能力を身に付けることに重点を置いています。

構成としては、半年ほどをかけて、書籍や講演などを通して業界あるいは時代を超えた様々な経営の考え方に触れ、受講者間でのディスカッションを通じて思考を深め、最終日に自らの経営哲学をプレゼンテーションするというものです。研修を通じて、求められるリーダー像に対して自分はどの点が弱く、何が必要なのかを受講者に気づいていってもらうよう企画・設計をしています。

プレゼンテーションは、自分が社長に就任したと仮定して就任演説を行います。就任演説には、現職の会長、社長に加えて社外取締役が出席し、受講者の発表した内容について質疑応答等を行います。

研修プログラム概要

様々な刺激を受けて多くの気づきを得たうえで、本研修の集大成である「就任演説」を通して、自分の視座がどれだけ高まったのか、視野がどれだけ広まったのかを自分の言葉で表現してほしいと考えています。個人でレポートを書いてもらった方が簡単かもしれませんが、次世代の役員を育成するというゴールを見据えて、あえて高いレベルの内容を課しています。

成果と今後の展望

本研修で見える世界が変わり、日々の発言の水準も上がっている

本研修は、かなりのストレスがかかり、覚悟が求められるものです。その分、自分の組織の範囲内で物事を見ていた受講者も、半年間自らと向き合い悩み続けることを通して、自身の視点や価値観が大きく変わる経験をします。

研修には毎年10人前後、それぞれ異なるキャリアをもつ人間が参加します。多様な集団が一緒に時間を過ごし、経営者の視座・視野で語り合うことで、会社の経営に対する多角的な考え方が生まれ、新たな視点や価値観がもたらされます。自分にはなかった考えに触れ、物事の見方が変化する経験をするのです。

自身の担当している組織のみに目が行きがちだった受講者は、本研修を通じて、「この会社・この業界をどのようにしていくか」という全社視点・業界全体の視点で物事を考えられるようになっています。

受講後、「見える世界が変わった」と感じる受講者が多く、日々の発言の水準もおのずと上がっています。私自身も過去受講者のひとりとして、同じ感想を抱いています。

現在の経営陣の大半は、本研修の受講者

本取り組みを10年間続けてきた結果として、現在の経営陣の大半は本研修の受講者という状況になりました。

当社の役員は、「就任演説」に同席いただいている社外取締役が過半数を占める指名委員会によって決まります。社外取締役の皆様も、自分たちが今後指名することになる、将来の役員候補者の思考、哲学に触れているという意識で本研修に関与してくださっているのです。

真剣勝負の場があるからこそ、本研修が良い形で継続しているのだと思います。

“「ひと」中心経営”を今後も推進していく

今後も明治安田生命らしい、中長期の視点に立った“「ひと」中心経営”を進めていきたいと思います。

生命保険業の特徴は、保険契約を通じてお客様へ一生涯にわたりサービスを提供していくことです。そして、ご契約者様が構成員となる相互会社という会社形態を取っており、短期的な利益ではなく、中長期的にお客様に利益還元することを前提にした経営をしています。

目に見えない商品を扱っている生命保険業にとって、価値提供の源泉は「人財が全て」と言ってもいいと考えています。こうした事業の特徴もふまえ、当社ではメンバーシップ型雇用のもと、長い時間をかけて社内で人財育成をしています。このスタンスにこだわりをもっていることから、当社では人的資本経営といわず、“「ひと」中心経営”を掲げて人事戦略を推進しています。

次世代リーダーの育成は、10年間続けてもまだ足りない

本研修は10年間続けている息の長い取り組みですが、10年かけても足りないと思うほど、時間をかけなければならないと考えています。メンバーシップ型雇用を基本とする当社では、長い時間軸で次世代の経営人財を育成すべきと考え、毎年少しずつ内容を進化させながら継続しているのです。

例えば3階層での選抜育成を長年続けてきて、階層ごとの人財の強みや弱みを把握できるようになり、足りないところを補うために何をすべきなのかを可視化できました。試行錯誤しながら育成プログラム全体を毎年進化させており、各階層での研修内容についても着実にレベルアップさせることができていると考えています。

それでも、ようやく、次世代リーダー育成の枠組みが整ってきた段階だと思っています。今後、環境変化に応じて見直すこともあるかもしれませんが、現時点では、今の枠組みの中でリーダー育成を継続していくことが有効だと考えています。

明治安田生命らしい、中長期の視点に立った“「ひと」中心経営”を今後も進めていきたいと思います。

グロービス担当者の声

寺越:
本研修を推進するにあたって意識している点は、長期にわたる取り組みであるからこそ、「変えるもの」と「変えないもの」を決めていくことです。時代の変化に合わせて取り上げるべき経営哲学のテーマを変えつつも、明治安田生命様のフィロソフィーに常に立ち戻りながら、自社や自分自身にとっての意味合いを押さえ続けることが重要です。

そのためにも、自らの視座を高めるというゴールを満たすために、「教える」要素は極力排除したプログラムにしています。各セッションのテーマに対して、講師からの意見は伝えるものの、自分であればどう考えるのかを徹底的に考えていただくスタンスを貫いています。「唯一絶対の正解はない」という前提でセッションを進めることが大きな特徴です。

今後も、明治安田生命様と忌憚なく意見交換をしながら、これからの経営をリードする人財を一人でも多く輩出する場とできるよう、より良い施策にアップデートし続けていきたいと思います。

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