アサヒビール株式会社
経営課題に真正面から向き合う次世代リーダー育成を通して、事業変革の立役者を輩出する
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将来の国内酒類事業を担う次世代リーダーを育成する目的で、主任層および管理職層の2階層において選抜研修をスタートさせたアサヒビール株式会社様。その取り組みについて、お話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
(写真左から)
・経営創造本部 人事総務部 副課長 村瀬進様
・弊社担当コンサルタント 中西 茉奈美
・弊社担当コンサルタント 末吉 涼
・経営創造本部 人事総務部 次長 竹下伸介様
・経営創造本部 人事総務部 担当課長 仲地唯知様
- 導入前の課題
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- 厳しい環境にある国内酒類事業に対し、変革を推進できる人材が必要だった
- 当時の育成体系には、組織でトップを走るメンバーを更に引き上げる育成施策が多くなかった
- 研修内容
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- 一般社員対象の選抜研修(Basic)と、管理職対象の選抜研修(Advanced)の2種類を立ち上げた
- Basicでは健全な危機感を醸成するため、プログラム構成に他流試合を入れこんだ
- Advancedでは、次世代リーダーに必須のテーマ(DXやテクノロジーなど)のセッションに時間をかけている
- 成果・効果
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- 参加者が支店を巻き込みながら、売上予算と利益予算の両指標をきちんと追う取り組みを進めている
- その取り組みに巻き込まれた若手メンバーが、第2期生としてBasicに参加。良い流れが生まれている
- 経営変革室と担当役員に提案した新規事業案で、テストマーケティングを開始した事例が出てきた
背景と課題
厳しい環境にある国内酒類事業に対し、変革を推進できる人材が必要だった
村瀬さん:
当時の経営課題は、国内酒類事業の変革でした。厳しい環境にある主力事業に対し、全社を引っ張る人材が必要だったのです。一方、当時の育成体系には、組織でトップを走るメンバーを更に引き上げる育成施策が多くありませんでした。かつ、自己研鑽や資格を取得している社員の割合も低く、ビジネススキルを高める機会が少ないと考えていたのです。そこで2018年、次世代リーダー育成の検討を始め、新しい研修プログラムを立ち上げました。
「国内酒類事業を盛り上げ、変革していく立役者になるのはこれからを担う経営者である」と位置付けたこの育成プログラムは「Asahi Change Agent Program」、略して「A-CAP」(エイキャップ)と名付けました。
研修のネーミングには相当こだわりました。ネーミングはブランドのようなもので、その研修に参加することが誇りになるものにしたいと考えたからです。「率先して新たな試みに挑戦し、周囲を活性化できる人たち」、つまり“Change Agent”をつくるプログラムにしたいという想いが、A-CAPと名付けた最後の決め手でした。
A-CAPの育成対象は2階層。2つのプログラムを作りました。一般社員対象の「A-CAP Basic」(以下、Basic)と、プロデューサー(管理職)対象の「A-CAP Advanced」(以下、Advanced)です。
国内酒類事業が縮小し続けている環境をふまえると、管理職はこれまでよりも早い時期から会社全体を牽引することが求められます。さらには長い目で見て、一般社員からも次世代リーダーを輩出する必要があると考えたのです。
Basic(一般社員対象)のゴールは、学んだビジネススキルを実務で活かしてもらうこと
村瀬さん:
Basic(一般社員対象)のゴールは、学んだビジネススキルを実務で活かしてもらうことです。Basicの対象者は、入社6~10年目。管理職になる直前の社員です。現場で先頭に立って実務を回しているメンバーなので、高い専門性やスキルを持っています。実務を回している彼らにビジネススキルを学んでもらい、自部署で実践してもらうことが重要だと考えました。
また、健全な危機感を持ってもらうことも重要です。自分のビジネスレベルを知った上でスキルを高めてもらうため、他の会社の方々とも関わる機会を、プログラム内に設けました。
仲地さん:
Advanced(管理職対象)のゴールは、共通言語や関係性の構築です。Advancedの対象者は、管理職になりたてから所属長手前にあたる、30代後半~45歳くらいの方々。この層の皆さんには、部門を越えて全社視点で変革を担うことを期待しています。影響力を発揮して周りを巻き込むため、共通言語をもつことや、関係性を構築することが重要だったのです。
検討プロセスと実施内容
グロービスが一緒に作り上げていく姿勢を持っていたので、心配事や懸念点はなかった
村瀬さん:
A-CAPの導入においては、心配事や懸念点は多くありませんでした。末吉さん(グロービス担当コンサルタント)が、一緒につくり上げていく姿勢を持っていたからです。お声がけした4社からグロービスに決めたきっかけも、一緒に作り上げていく姿勢でした。
当社の経営課題や育成課題に対して、ゼロから作り上げていくスタンスでいろいろ議論しました。毎回の打ち合わせが楽しかったことを覚えています。「作っていく過程」は他の研修会社にはなかった部分であり、非常にありがたかったですね。
グロービス・マネジメント・スクールへの通学やGLOBIS 学び放題など、グロービスのさまざまなコンテンツをA-CAPのプログラムに取り入れられる柔軟性も、決め手のひとつでした。
懸念点を上げるとすれば、参加者の選定です。A-CAPは全社に公募をかけ、そこから選抜して参加者を決定する形式にしていたので、まず応募者が集まるのか不安でした。ふたを開けてみると、定員の2倍を超える応募があったので杞憂でしたね。次に気を配ったのが、選抜の仕方と落選者へのフォローです。
担当事務局だけで参加者を選ぼうとすると、少なからずバイアスがかかってしまうものです。なので、事務局チーム数名で氏名を伏せたうえで、当プログラムに込める熱意、エントリーシートの論理性、提案課題が会社の重点課題に関連する内容であるかといった観点で点数化して決めました。
残念ながら参加に至らなかった方々へのフォローは、選抜方法以上に気を配りました。A-CAPへの落選=出世コースから外れた、というイメージだけは持たれないようにしたかったのです。だからこそ、単純に「落ちました」とだけ伝える形には、決してしたくありませんでした。
そこで、足りなかった部分を自己学習で補えるよう、別の学習環境を提供することにしたのです。具体的には、点数が足りなかった部分について個別のフィードバックを行い、GLOBIS 学び放題で自己学習できるようにしました。GLOBIS 学び放題の受講料は、一部補助が出ます。
研修がスタートしてからは、Basicの受講者がグロービス・マネジメント・スクールできちんと学べているのか、不安はありました。通学してもらうので、我々事務局は受講の様子を実際には見ていませんから。しかしながら受講結果を見ると、欠席を続けている人もいなく、発言評価においても講師から的確なフィードバックをいただいており、安心しました。
クリティカル・シンキング受講後の成長も感じられました。受講前の集合研修Day0での会話と、受講後に行うDay1以降の会話がガラッと変わったのです。Day0ではディスカッションが発散型になりやすく、議論をしているうちにどんどん論点が変わってしまっていました。ところがDay1では、論点をまとめて話したり、今話している内容の本質を捉えようとしたりするシーンがかなり見受けられました。
クリティカル・シンキングで学んだことを、上司に業務報告するときにも活用しているという話も聞きましたね。実践につなげられていることを知り、安心したことを覚えています。
竹下さん:
Advancedでは、研修の最中でも何回も軌道修正を図っています。講師や末吉さん・中西さん(グロービス担当コンサルタント、2020年度よりBasic担当)の観察力の賜物ですね。受講者の状況をこまめに把握し、懸念点が生じる前に我々に教えてくれます。
末吉さん・中西さんやグロービスの皆さんが、本当に当社の一員として考えていただいていることがいつも伝わってきます。だからこそ受講者も、言われることに対して腹落ちして取り組めているのだと思います。このようにアプローチしていただくことは、弊社の社風にも合っていますね。
仲地さん:
当社の課題をしっかりヒアリングしていただき、本質の部分を柔軟にプログラムへ反映してくださることが本当にありがたいです。末吉さんや中西さんは、アサヒビールのことを「我が社」といいます。まさに当社の一員として、打ち合わせから受講者への発信まで担っていただいて、嬉しく思います。
健全な危機感を醸成するために、他流試合を入れることにこだわった
村瀬さん:
A-CAPの立ち上げ当初からBasicで注力しているのは、自分自身のビジネススキルを高めていく上での健全な危機感を醸成することです。そのため昨年度も今年度も、プログラム構成において他流試合を入れることは必須としました。
昨年よりも重視していることは、実践です。Basicでの実践とは、学んだことや経験したことを実務へ還元していくことを意味しています。実践し終わるまでがBasicだと位置付けて、プログラムを構成しました。実践については、事務局も一部協力しながら進めています。
仲地さん:
Advancedでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)やテクノロジーをテーマにしたセッションにも時間をかけています。弊社にはDX推進室という組織もありますが、次世代経営者にもDXやテクノロジーは重要なテーマです。
竹下さん:
加えてAdvancedでは、研修ではなくプログラムと呼んでいます。自身の行動を変容させるとともに、変容した日々の行動を通して、組織へよい影響を与えることを目指しているからです。とくに自身の行動変容をどう起こしていくかには、一貫して拘りを持っています。
成果と今後の展望
研修後の受講者の変化
村瀬さん:
昨年のBasicに参加したメンバーが、売上予算と利益予算の両指標をきちんと追う取り組みを、支店を巻き込んで進めていると伺っています。自組織に対して、実行できる範囲で行動して還元している成果ですね。
受講者以外への広がりも、見えはじめています。たとえば先ほどの取り組みに巻き込まれた若手メンバーが、第2期生としてBasicに参加しています。実際に行動している人たちを見て、自分もBasicに参加したいと思ったようです。各現場で卒業生が行動を起こし、周囲に伝わり、彼らの背中を見てA-CAPへ応募する。非常によい流れができていると感じます。
仲地さん:
私は昨年Advancedを受講しました。高い意識や視座、メンバー同士の深い関係性が得られたことはもちろん、行動を意識するようになったと思います。学んだだけでは何も生まないですからね。行動に移すことによって周りも影響を受けてよい方向に進んでいく意識は、昨年参加した19名全員に醸成されました。
昨年9月にできた経営変革室へ異動になったメンバーもいて、今まさに変革に取り組んでいます。
竹下さん:
Advancedでは4チームに分かれて事業提案をしてもらいました。経営変革室と担当役員にも提案した結果、テストマーケティングをはじめた事例が出てきたことは、具体的な成果だと思います。
またAdvanced第1期生の同窓会での会話からも、昨年1年間のプログラムを通して各々が考えたことを高いレベルで実践していることが感じ取れました。今後も同窓会は定期的に開く予定です。
今後の取り組み
仲地さん:
第1期生の成果が出てきている一方で、まだできていないこともあります。行動変容にはつながっているものの、卒業生がさらに活躍できる場を提供できていません。個々人がつながり、会社全体へ「うねり」をつくっていくことが、私たち事務局の仕事だと思っています。A-CAPの範疇(はんちゅう)を超えることかもしれませんが、今後の課題として考えています。
竹下さん:
私は次の一歩として、ネットワークの構築を考えています。たとえばBasicとAdvancedの参加者をリンクさせたり、第1期生に第2期生のサポートをしてもらったり、などですね。A-CAPは3年計画の一環としてスタートしているので、2プログラム×3年分の受講者をつなげることができます。ネットワーク構築が不十分だと、やりっ放しでもったいない結果になるだろうと、今つくづく感じているところです。
会社全体への波及は、まさにこれからですね。A-CAPは、本丸の事業である国内酒類事業をどう活性化させるかという経営課題に関連したプログラムなので、経営へよい影響を与えるプログラムでなければなりません。たとえば、昨年立ち上がった経営変革室に対する提案をA-CAP卒業生が行い、実行部隊になっていけば、経営ともうまくリンクさせられると考えています。
3年間で輩出する参加者の皆さんを、会社全体を動かす方向にどう有機的に絡ませていくのかが、これから先求められることだと考えています。
担当コンサルタントの声
本プロジェクトは、アサヒビール様の経営課題に真正面から向き合う施策です。目的の絞り込み、プログラム構成、案内文の作成に至るまで、事務局の皆さまとの認識合わせを入念に行うことを意識しました。
新しい取り組みでもあるので、ご提案内容はあくまでたたき台です。議論して一緒に作り上げていくスタンスを一貫して重視しました。ご提案内容に至るまでの我々の検討プロセスも提示し、提案内容以外の選択肢や、各選択肢のメリット・デメリットもお伝えし、議論したうえで最終的な企画内容に落とし込みました。
研修を開始してからも、セッション中に内容の方向感について細かくご相談しています。参加者の発言を丁寧に見ながら、場の状態に対する認識を事務局の皆さんと都度確認し、より良い方法をご提案させていただきます。もともと予定していた内容もあるので、事務局の皆さまにとってはその場で変える判断が難しい局面もあると思いますが、我々のことを信頼してご提案を受け入れていただけることは非常にありがたいことだと思っています。
2019年度の第1期が終了して、受講者の皆さまのご活躍や具体的な成果をお聴きし、大変嬉しく感じています。私も勝手ながらアサヒビール様の一員だと思って、このプログラムを梃子(てこ)にして組織変革や事業成長に寄与するために何ができるかを常に考えながら取り組ませていただいています。今後も更に貢献できるよう、事務局の皆様と一緒に新しいチャレンジをしていきたいと思います。
私が担当しているBasicでも、事務局の皆さまと対話をし、受講者皆様のコンディションを考えながら、採る施策を決定します。たとえば事前課題の書籍であれば、どこに意識を向けて読んで欲しいか、そのためにどのような説明をするか、渡すタイミングはいつかなど、細部にわたり相談しながら設計をしています。
アサヒビール様の将来を担うプログラムの一部を担当できていることを、大変光栄に思います。Basicのゴール、「学びを行動につなげ、行動を変革につなげる」ことに更にコミットすることが、私の役割です。今後も事務局の皆様とのチャレンジを楽しみながら、伴走していきたいと考えています。
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