コラム
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管理職が変われば組織が変わる~学び直しのカギになる4つの行動と実践例~

最近リスキリング(学び直し)という言葉をよく聞くようになりました。背景にデジタルトランスフォーメーション(DX)などの社会変化があり、一見するとデジタル技術を身に付けていくべき人に限定したことのように捉えられますが、実はそうではありません。

組織運営の中心的存在である管理職(ミドルマネージャー)にも、大きな学び直し(リスキリング)が求められているのです。

本コラムでは、管理職に求められる4つの行動と、その行動のために学び直しを行うにあたって、筆者が講師として関わった3つの実例をご紹介します。

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CHAPTER 01

人的資本経営における管理職の重要性と、求められる「4つの行動」

近年、「人的資本経営の実現」に注目が集まっています。経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート」では、人的資本経営の実現にあたって最も重要なのは、「経営戦略と整合した人材戦略を取ること」とされています。

「経営戦略と整合した人材戦略を取る」とは、自社のビジョンや戦略を実現する人材を拡充していくことです。そのためには、企業の方向性を組織に浸透させ、その方向性に基づいて社員を育成することが重要になります。

また、「人材版伊藤レポート」では、3P5Fモデルと呼ばれる、人的資本経営を現場で実行するうえでのポイントが示されています(図1)。

3P5Fモデルの詳細はこちらのコラムをご覧ください

【関連コラム】人的資本経営で陥りがちな3つの罠と実行上のポイント

図1:人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素
図1:人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素1)

人材戦略を実現する核となるのが、管理職(ミドルマネージャー)です。

管理職が重要である理由は、現場のメンバー1人ひとりとコミュニケーションを取り、彼ら・彼女らの意欲や能力を上げられるポジションにいるからです。

組織におけるホワイトカラーの管理職がマネジメントする適切な人数は5人から10人とされており、これを「スパン・オブ・コントロールの原則」(管理権限範囲)と言います。この人数を超えると、物理的に上司と部下のコミュニケーション頻度が低下するため、組織の方向性が浸透しにくくなり、メンバーの意欲と能力が低下しかねないと言われています。

「スパン・オブ・コントロール」の範囲でマネジメントをしているのが、まさにミドルの管理職なのです。

また、メンバーのワークエンゲージメントを高めるためには、部下本人のストレス耐性や自己効力感、楽観性、レジリエンスなどの「本人の資源」と、「仕事の資源」をバランス良くマッチさせる必要があります。

当人を把握し、どのような仕事を与えるかを個別で考えることになるため、直接的に部下を把握できる管理職の行動が重要となるのです。「JD-R(ジョブデマンドリソースモデル)モデル」(図2)というエンゲージメントに関係する理論でも、この点が述べられています。

図2:JD-Rモデル2)
図2:JD-Rモデル2)

以上から、人的資本経営を進めるうえで、現場のメンバー1人ひとりに目が届くポジションにいて、経営と現場をつなぐ役割を担う管理職に求められる行動として、以下の4つが挙げられると考えます。

人的資本経営を進めるうえで、管理職に求められる4つの行動

  1. 方針(ビジョン・戦略)の浸透
  2. 部下育成
  3. メンバーのキャリア・学習支援
  4. エンゲージメント向上

では、この「4つの行動」を実現するために、管理職にはどのような姿勢が求められるのでしょうか。多くの人がつまずきやすい点とともに、考えていきたいと思います。

CHAPTER 02

4つの行動を成功させるためのポイントと難所

ここからは、筆者が多くの管理職研修や組織開発プロジェクトに携わってきた経験から、4つの行動それぞれにおける、成功のポイントと難所についてお伝えします。

2-1. 方針(ビジョン・戦略)の浸透

全社の方針を組織へ浸透させる際、最も重要なポイントは、管理職が外部環境や競争環境を理解していることです。

外部環境が現在どうなっているのか、そして将来どう変化していくかを、自分の言葉で読み解くことが必要です。そして、特に収益を生み出す部門では、マーケットや顧客、競合がどのように変化しているかも注視し、方針を打ち出す必要があります。

加えて、自分の言葉で語るだけでなく、ビジョンや戦略を共有し、メンバーと一緒に作っていくことも重要です。

図3:方針(ビジョン戦略)浸透のポイント
図3:方針(ビジョン戦略)浸透のポイント

一方で、これらを行う上での難所も存在します。

難所1:全社の方向性をそのまま語るだけ

全社の方向性を、全社発表の文言通りに、そのまま語るだけで終わっている管理職は少なくありません。

特に収益を生み出す部門では、「今年の目標は何億円で、利益は何千万円」というように、数値目標だけを一方的に伝える傾向があります。これでは、メンバーが全社方針の背景や、定性的にどのような状態を目指すのかを理解できないため、活力が湧かないのです。

管理職は、定量的目標の背景にある、外部環境や競争環境の変化などにも触れつつ、自身の言葉で方針を語りたいものです。

難所2:メンバーの思いを踏まえられていない

次の難所が、メンバーの思いが不在になっているケースです。管理職が、外部環境や競争環境を踏まえ、全社の方針を自身の言葉で語るものの、メンバーの意見を取り入れず一方的に伝えてしまうのです。メンバーは、方針やその背景は理解できるものの、自分事にできないため、納得し意欲をもつまでに至りません。

こうした状態に陥るのを避けるためには、メンバーが組織の方針と自分の仕事を紐付けられるよう、対話する時間を取り入れると良いでしょう。

難所3:ボトムアップに偏る

最近、心理的安全性やサーバントリーダーシップなど、人の心を大切にするリーダー行動が注目されています。そのため、方針を浸透させる際も、まずメンバーの意見や思いを聞いて、それを集約して自組織の方向性を決める方法が正しそうに見えるかもしれません。

しかし、外部環境や競争環境、全社の方向性を考慮せずにボトムアップで決めてしまうと、メンバーのコンフォートゾーン(快適な空間・ストレスや成長がない範囲)内でしか考えられず、会社のビジョン・戦略と合致しない方向性を定めてしまう恐れもあります。

組織の方針を浸透させる際は、外部環境や競争環境、全社の方向性と、メンバーの思いを重ね合わせるコミュニケーションが重要です。

2-2. 部下育成

部下育成で最も重要なポイントは、「育つ」とはどのような状態なのかを定義することです。

筆者は、「本人の能力を少しでも超えた仕事を自ら考え、実行し、一定の成果を出せるようになること」と定義しています。100の能力を持っている人が100の仕事ができたとしても、育ったことにはなりません。101以上のことを自律的にできるようになったら、その人が育ったと言えると考えています。

部下が「育つ」ためには、まず上司が部下の状態を把握し、能力を少し超えたレベルの目標を適切に設定します。本人は上司よりもアクセスできるリソースが少なかったり、経験が少なかったりするので、一緒に計画を立て、本人の能力に合わせた実行支援を行うことが肝心です。

さらに大事なのは、最後に出来たか出来なかったかを評価し、出来ていたらそのように伝え、出来ていなかったら「ここにギャップがあるから、来年度一緒に向き合っていこう」とフィードバックし、次の目標設定を行うことです。

上司がこういった行動をとることで、部下が次第に能力以上のことができるようになるのが、人材育成のポイントです。

図4:部下育成のポイント
図4:部下育成のポイント

一方で、次にご紹介するような難所も存在します。

難所1:部下とのコミュニケーション不足

部下育成における最大の難所は、部下とのコミュニケーションが不足しているがゆえに、本人を把握できていないケースです。そのため、目標設定や、途中経過におけるフォローが、相手の状況を踏まえず一方的になりがちです。本人の能力を大幅に超えた仕事を任せてしまったり、フォローが行き届かなかったりして成果を出せず、成長につながらないことが多くあります。

難所2:社交クラブ化

次の難所は、部下へ寄り添いすぎることです。リーダーシップ理論で有名な「パフォーマンス・メンテナンス理論」(PM理論)では、リーダーには、パフォーマンス(業績・成果)を重視するリーダーと、メンテナンス(メンバーの状態)を重視するリーダーの大きく2種類のタイプがいるとされています。

後者のメンテナンスだけを重視するリーダーは「社交クラブ型」と呼ばれます。優しいことが特徴で、部下に寄り添いすぎる傾向があります。しかし、部下に過度に寄り添ってしまい、ストレッチした目標設定が出来なくなる特徴もあるのです。本来であれば101以上のことを任せるべきところ、優しいリーダーは例えば70程度の、難易度の低い仕事しか与えません。

本人にとって努力を要しない快適な目標は、一時的には部下のモチベーションが上がりますが、最後の評価の際、問題が生じます。「70のことが出来てよかったね」と褒めることはできても、組織の目標値は101以上のため、評価は上げられません。このとき、メンバーの多くは「最初に言ってくださいよ。だったらもっと頑張ったのに」という気持ちを抱き、上司への不信感が生まれてしまいます。

このように、過度に優しいリーダーは、人を育成する観点において課題が残るのです。

難所3:評価下手、評価不全

最後の難所は、フィードバックが不十分で、評価が不全になっていることです。多くの日本企業で見られるのは、年度末に上司が部下へ評価結果を紙で渡して終わり、というケースです。

ここでの問題は、期初にはしっかり目標設定をして実行支援を行うものの、評価する段階で対話の場がないことです。部下は、自分が目標を達成出来たのか出来なかったのかがわかりません。成長しているのか、そしてこれからどのように行動すればいいのかも見当がつかず、結果として育成が不十分になるのです。

部下が育つためには、目標設定のみならず、評価の際にも深い対話が欠かせません。

2-3. メンバーのキャリア・学習支援

ここで最も重要なポイントは、管理職が社内にあるジョブ(仕事・職種)を理解した上で、本人の意向を踏まえ、キャリアプランの作成を支援することです。また、管理職も自ら成長する姿を見せ、組織に活気をもたらすことも求められます。

近年は、多くの企業が人的資本経営に基づき、人材開発の情報を開示する流れが出てきています。企業側には、社員が学習し、目指すキャリアを実現することへの支援が求められているのです。

その際に、管理職が果たす役割が重要になります。「キャリアは自分で考えればよい」と思われがちですが、メンバーは社歴が浅いほど自社内の情報に疎く、どのようなキャリアの選択肢があるのかわからないため、上司のサポートが必要なのです。

図5:キャリア_学習支援のポイント
図5:キャリア_学習支援のポイント

ところが、上司が以下に挙げる難所に当てはまってしまうと、部下の学習・キャリア支援がうまくいかなくなります。

難所1:部下への理解不足

管理職が社内の仕事や職種を把握し、どのような素養が必要なのかもわかっていたとしても、部下のキャリア観を理解していないために、結果的にキャリアプランニングの支援が出来ないケースがあります。部下と対話を重ね、本人の能力や価値観を把握することが必要です。

難所2:企業内ジョブの理解不足

2つ目は、管理職が部下のキャリア観を理解できているにもかかわらず、今の部門内での成長しか考えないケースです。これは、管理職が他部門の仕事・職種への理解がないために起きうることです。

実は、筆者も、チームマネジメントを始めたばかりの頃はこのケースに当てはまりました。自部門の仕事の素晴らしさばかりを部下に話していたのです。

それはそれで重要ですが、本人が今とは異なる業務をやりたいと言っているのに、それを無視して自分の考えを押し付けないようにするべきでした。この苦い経験から、今は、部下が他部門の仕事に興味があれば積極的に相談に乗るようにしています。

難所3:管理職の成長不足

管理職自身が現状に甘んじて成長や変化がないことも、中長期的に見て若手のキャリア開発に影響を与えます。管理職が過去のやり方を踏襲し、変化しない姿を見た若手は、「今のままでも何とかなる」と感じてしまい、新たなチャレンジをしなくなっていくのです。

部下のキャリアや学習を支援するには、管理職自身の成長も必要だということを付け加えたいと思います。

2-4. エンゲージメント向上

エンゲージメントを向上させるためには、エンゲージメント調査結果など現状がわかる情報をもとに、多くのメンバーで対話を行うことが重要です。

現在の組織エンゲージメントが高いか低いかを把握しないと、どのように改善すべきかが分からないからです。できるだけ短い間隔(例えば1カ月に1回程度)でエンゲージメントについてのデータを取得し、チームミーティングなどの場で課題と対策を議論し、実行することができると、エンゲージメントは高まっていきます。

ここで避けたいのは、従業員満足度調査を代わりに使ったり、2年に1回など実施する間隔が長く空いたりすることです。従業員満足度調査は意味がないわけではありませんが、エンゲージメントサーベイとは質が異なります。

従業員満足度調査は、従業員が会社にどれだけ満足しているかを測定し、満足していないことへの改善要望を出すための調査になります。そして、その主な解決者は経営陣、部門長になります。

一方、エンゲージメントサーベイは、管理職以下の社員のエンゲージメント(会社や仕事へ前向きに貢献している)度合いを測るもので、解決者は管理職であり、メンバーが当事者意識をもって取り組むべきものです。また、測定し、改善行動を取って、また測定し結果を振り返るサイクルが重要なので、なるべく短サイクルでPDCAを回すことが大切です。

図5:キャリア_学習支援のポイント
図6:エンゲージメント向上のポイント

まずは、適切なツールと実施期間を設定した上で、運用する上での難所について触れます。

難所1:管理職/部下間の関係構築の不足

エンゲージメントの状態を可視化し、対話し、向上策を進めるためには、管理職と部下1人ひとりが本音で話し合える信頼関係が必要になります。その上で、チーム全体での相互理解や信頼関係の構築を同時に行うことが重要です。

MIT(マサチューセッツ工科大学)組織学習センターの共同創始者であるダニエル・キムが提唱した「成功循環の法則」では、組織の中で成果を出すために、最初に重要なのは組織内の信頼関係だとされています。信頼関係があるからこそ、対話が活発になり、良いアイデアが生まれ、良い行動につながり、成果へと結びつく可能性が高まるのです。

難所2:価値観(バリュー)や行動規範(ウェイ)の不足

エンゲージメントを高めるには、チーム単位での守るべき価値観(バリュー)や行動規範(ウェイ)をつくり、共有することも大切です。

なぜ必要かというと、(例えば)「チームを良くするために当事者意識を持って発言しよう」などの行動規範を決めずに、議論を行うと、当事者意識が欠如した対話になりがちです。最悪の場合、「管理職にこれをやってほしい」「こうしてほしい」という要望ばかりの議論になりかねません。

エンゲージメントとは「会社や仕事へ前向きに貢献している度合い」なので、メンバー1人ひとりが組織のために行動する主体性を持ち意見を言い行動していることがすなわちエンゲージメントを高める基本スタンスとなります。よって、主体性を引き出すための価値観や行動規範をつくり、メンバーとの対話の場を作れると良いでしょう。

難所3:現状の可視化と活動の不足

最後の難所は、現状の可視化と活動の不足です。まず、エンゲージメントサーベイによって組織の状態を可視化しないと有意義な対話はできません。

さらには、決めたことを実行し、一定期間後に改めて可視化して、良かった点と足りない点を議論し、次の行動につなげていく。このサイクルを愚直に回していくことが重要となります。

CHAPTER 03

事例1:自組織のビジョンを浸透させ、 自律支援型リーダーへの転換を目指す

ここからは、管理職が学び直しを行うにあたって、筆者が講師として関わった実例と取り組みから、3つの事例をご紹介します。

1つ目は、大手製造業A社で実施した、新任管理職を対象とした研修です。今後隆盛を迎える新製品に取り組んでいる方や衰退しつつある製品を担当している方、営業職、生産現場の工場長など、さまざまな立場の方が参加しました。

これらの新任管理職が「組織に活力を与えられるリーダーになること」を目指し、自組織のビジョンを考えて浸透させ、メンバーが自律的に考え行動できるよう育成するための、支援型リーダーとしての行動を学びました。

図5:キャリア_学習支援のポイント
図7:A社の研修プログラム全体像

本研修は、5日間の集合セッションと並行し、インターバル期間中のワークとして、ビジョンの策定と部下育成、モチベーション強化といった実践を重ねたことが特徴です。

図の青色部分が、ビジョン作成に関する取り組みです。集合セッションでは、ビジョンを考える前提となる外部環境や競争環境への理解を深めた上で、自ら考えた部門のビジョンを発表し、お互いにフィードバックをしてブラッシュアップしました。インターバルワークには、現場のチームで検討するプロセスも入れ、メンバーの思いもビジョンに入れることにも取り組みました。

また、図の黄色部分は、部下育成やモチベーション強化を学んだパートです。実際にメンバーの育成やモチベーション強化をどうやって進めるのかをロールプレイなどを通じながら学びつつ、実際に職場のメンバーに適応させ実践しつつ学びを深めています。360度サーベイも行い、自分自身がメンバーからどう見られているかも認識した上で、自身の行動を変化させていきました。

講師を担当した筆者にとって象徴的だったのは、市場が衰退しつつある部門にいる受講者が、ダウントレンドになることが明白な状況でも、明るい未来を描き、熱量をもってビジョンを語っていたことです。自社の工場がもつ技術と未来のニーズを結び付け、ニーズを満たせるようになっていこう、という内容でした。さらに、メンバー1人ひとりのキャリアにも意識を向け、「この能力を身に付ければ、新たなポジションに転身できるから、一緒にがんばろう」とも語っていました。

A社の取り組みは、外部環境や競争環境を見据え、部下の思いも踏まえたビジョンを描きつつ、部下育成にも取り組み、キャリア開発の支援にも踏み込む実践的なものとなりました。

CHAPTER 04

事例2:部課長の2階層が、 リーダーシップスタイルの変化にチャレンジする

数百人規模の日本企業B社は、外資系企業に買収されたことで、求められるリーダーシップスタイルが変化していました。そこで、既存の部課長約30名を対象に、新たなリーダーシップスタイルを身に付け、実践できるようになることを目的とした研修を行いました。

プログラム内容は、外部環境を踏まえた上で、組織の方針を浸透させ、メンバーに適切に働きかけて成果創出を支援できるようになることを目指したものです。B社でも、集合セッションとインターバルワークを取り入れました。また、部長層と課長層に分かれて実施するセッションと、合同で行うセッションを織り交ぜながら進めました。

階層ごとに分かれて実施したセッションのうち、部長向けプログラムでは、ビジョンを作成し、全体にメールで発信したり、ツールを介して伝えたりする「間接的に」浸透させる取り組みが行われました。(部長層は管理範囲が数十名単位になり個別での対応が難しくなるため。)また、課長の育成方法も重視しました。

図8:B社部長向けプログラム全体像
図8:B社部長向けプログラム全体像

課長向けプログラムでは、「直接的な」浸透活動を行いました。(課長は管理範囲が10名以下で直接のコミュニケーションが重要となるため。)課長がメンバーと一緒に方針を考えることによって浸透させ、育成することに取り組みました。

図9:B社課長向けプログラム全体像
図9:B社課長向けプログラム全体像

最後の振返りセッションでは、部課長が一堂に会し、組織の問題を共有し、より良い組織にするためにどのような取り組みが必要かを検討しました。

本研修は、部長および課長の2階層が、リーダーシップスタイルの変化に向き合い、課題に取り組むことで、組織が大きく変革することに寄与する事例となりました。プログラム終了後も、自主的に学んで行動を改善し続けるための「ラーニングコミュニティ」が設立され、1年経った現在も活動が続いています。

CHAPTER 05

事例3:筆者自身の事例

3つ目の事例として、筆者の経験談を紹介させていただきます。私がチームマネージャーになった際、エンゲージメントサーベイを月に一度実施することになりました。すると、当時の我がチームは、組織内でもエンゲージメントが低い水準にあることがわかったのです。

そこで、結果をもとにメンバーと対話を行い、チームをより良い状態にするために様々な取り組みを行いました。サーベイの結果では「承認」や「成長実感」などの項目が低かったため、メンバーがお互い承認活動を行うことや、自身の能力を少し超えたチャレンジ目標を設定すること、そしてそれをチームマネージャーである私と一緒に達成していくことなどを実践しました。

一定期間後、再度エンゲージメントの度合いを可視化し、振り返りミーティングを実施。やってよかったことは継続し、進化させるべきことは進化させました。

この活動の根底には、見える化・対話・未来作りといったフレームワークがあり、このフレームに基づいて、行動につなげていったのです。

図10:組織開発の実践的フレームワーク
図10:組織開発の実践的フレームワーク3)

その結果、当初70ポイントほどだったエンゲージメントスコアが1年後には85ポイントほどまで高まり、活力のある組織にすることができたと感じています。

CHAPTER 06

まとめ

管理職に求められる4つの行動は、以下の通りです。

  1. 方針(ビジョン・戦略)の浸透:
    ビジョンを自分自身の言葉で語り、メンバーと共に考え、組織に浸透させていくこと
  2. 部下育成:
    メンバーの状況を踏まえ、企業の方向性を示し、成果創出を支援して、適切な評価を行うこと。それを通じて人材育成を行うこと
  3. メンバーのキャリア・学習支援:
    メンバーのキャリア開発を支援し、自身も成長していくこと
  4. エンゲージメント向上:
    組織のエンゲージメントを可視化し、活動を通じて改善を続けることができるよう、信頼関係や基盤を築くこと

本コラムでは、これら「4つの行動」が注目されている理由と、実践するために学び直しをした事例を3つご紹介しました。講師として、各企業の管理職の方々の成長や組織開発の支援を行ってきて、また自身の経験からも、この4つの行動の重要性を実感しています。

管理職が取り組むべきことは多く、大変そうに感じられるかもしれませんが、管理職が適切に4つの行動に取り組めば、必ず組織全体の成長や発展に繋がります。ぜひ、4つの行動と難所を参考に管理職の皆さまが自身を振り返り、強みは伸ばしつつ課題を改善できるよう、学び直しをするための参考にしていただければと思います。

【関連コラム】成果を生む管理職育成とは?自社に最適な企画をする4ステップ

参考文献

1)参考:経済産業省「人材版伊藤レポート」より抜粋
2)参考:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-報告書より抜粋
3)参考:中原淳、中村和彦著『組織開発の探究』をもとに加筆・修正

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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