SAPジャパン株式会社
AI時代の営業力を底上げ。SAPジャパン約300名が磨いた「問いを立てる力」
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生成AIの普及をはじめとするビジネス環境の変化を受け、社員が持つべきスキルの見直しを行い、組織の基盤強化を目的とした研修を実施したSAPジャパン株式会社様。その取り組みについてお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【SAPジャパン株式会社様】
写真左:Learning Business Partners, APAC SAP Learning 太田 翠様
写真中左:人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 本部長 佐々見 直文様
写真中右:バイスプレジデント ミッドマーケット事業統括本部 統括本部長 田原 隆次様
【グロービス担当者】
写真右:加納 良佑
- 導入前の課題
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- 生成AIの普及によりビジネス環境が激変する中で、人間に求められるスキルとして、本質を見抜く力や課題設定力、他者を巻き込んで物事を推進する力の必要性が高まった
- スピード重視の組織文化や、製品や既存の業務プロセスへの強い信頼ゆえに、課題設定に立ち返って考えるプロセスに、更なる強化余地があった
- 社内で実施したスキル評価分析を踏まえ、「創造的思考」や「問題解決力」を重点的に強化することとした
- 研修内容
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- 社員が強化すべきスキルを整理し、「論理思考の基本」「仮説思考による問題解決」「パワーと影響力」の3科目を実施した
- 部門や役職を問わず参加できる公募形式とし、部門を越えた対話や関係構築の機会になるように設計した
- 東京・大阪の複数拠点で先着順の公募を実施し、約300名が受講した
- 成果・効果
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- 受講者の満足度が高く、研修実施後のアンケートは有益度4.7、理解度4.8(いずれも5点満点)という結果だった
- 研修の学びを実務で実践している社員が多く見られ、共通言語として定着し始めている
- 部門や役職を越えた対話が生まれ、組織内の関係性構築にもつながった
背景と課題
AIが瞬時に答えを出せる今、本質を捉え、自ら課題を設定するスキルが求められている
太田さん:
今、生成AIの急速な普及によってビジネス環境が激変しています。AIが瞬時に答えや具体的な打ち手を出せる時代になったからこそ、社員がどのようなスキルを身に付けるべきなのか、改めて問われています。この点について、COO(最高執行責任者)と深い議論を重ねてきました。
これまでのSAPジャパンは、組織文化や既存の製品・業務プロセスの質への信頼ゆえに、スピード感を持って物事を推し進めることが重視される傾向にありました。一方、目先の打ち手を急ぐあまり、一歩立ち止まって物事の本質を捉え、真に解くべき課題を深掘りしようとする思考がやや希薄になりがちでした。AI時代においては、発生した出来事や問題に素早く対応するだけでなく、よりプロアクティブに課題を設定し、狙いを持って道筋を定め、ゴールに向かって行動する組織へと進化することが求められています。そのために、本質を見抜く力や課題を特定する力、周囲を巻き込んで泥臭く物事を推進する力といった、AIでは代替しきれないスキルの底上げが必要だという結論に至りました。

アセスメント結果から見えた、「創造的思考」と「問題解決力」の成長余地
太田さん:
この課題感の背景には、社内で実施したスキル評価分析の結果もあります。このアセスメントも踏まえ、「Creative Thinking(創造的思考)」や「Complex Problem Solving(複雑な問題解決)」を重点的に強化することとしました。これはまさに、AI時代に求められる能力とも合致しています。
また、直近ではグローバル共通の研修体系による学習機会が中心となっていましたが、確実な定着のためには、日本法人のビジネス環境や固有の課題に即した形での学びが必要だとも感じていました。このような経緯から、国内社員が強化すべきスキルに合わせた体系的な研修の実施を決めました。
基本に立ち返り、組織全体の土台となる力を鍛える
田原さん:
「Back to Basic 2025」と名付けられた本研修に、営業部門を統括する部門長として期待していたのは、ビジネスを行ううえでの基礎力である、問いを立てる力や思考のフレームワークを個々のメンバーが身に付け、組織全体のケイパビリティを高めることです。
研修で学んだ考え方を土台に、実務の中でもチームで同じフレームワークを共通言語にして対話できる状態を目指しており、私のチームのメンバーには受講を強く推奨しました。ともすればすぐに具体的な打ち手に飛びついてしまいがちな議論を、チームで着実にステップを踏んで進められるようにしたいと考えていました。さらに、メンバーが学んでいる内容を自分も理解したうえで、現場のマネジメントに活かしていきたいと思い、私自身も一緒に受講しています。

佐々見さん:
私が統括する人事部門は、営業部門と一緒にチームを組んで動くことが多くあります。役割が異なるメンバー同士が共通言語を持ち、建設的な議論ができるようになることは、中途採用者が多く多様なバックグラウンドを持つ私たちにとって重要だと考えていました。私自身も、リーダーとしてふさわしい行動を取り、メンバーを育成していくために、学びの機会を求めていたところでした。
検討プロセスと実施内容
「問いを立て、解き、人を動かす」。スキル同士の有機的なつながりを設計
太田さん:
ビジネス環境の変化や社員のスキル評価分析の結果から見えてきた課題感を踏まえ、加納さん(グロービス担当者)と議論を重ねながら本研修の設計を進めました。本質を見抜く力や課題を特定する力、そして周囲を巻き込んで物事を推進する力。AI時代に求められるこれらの力は、当社の事業を前に進めるために欠かせない、ソリューション営業力にほかなりません。つまり、顧客への理解を深めて課題を捉え、問いを立てながら本質に迫り、関係者とのコミュニケーションを設計して合意形成につなげていくために必要な力です。
加納さんのご提案をもとに、これらの力を鍛える具体的なプログラムとして3科目の実施を決めました。事象の本質を捉える「論理思考の基本」、仮説を立てながら問題を解決する「仮説思考による問題解決」、そして多くの人を巻き込んで合意形成するアプローチを学ぶ「パワーと影響力」です。議論から提案までを無駄なくスピーディーに進めていただけたことで、課題感に合わせた科目選定をスムーズに行うことができました。
これらは個別のスキルではなく、明確な流れとしてつながっています。まず「何を論じるべきか」という課題設定を行い、次にその課題を「どう解いて具体的な打ち手に落とし込むか」を考える。そして最後に、導き出した策を「周りの人を巻き込んで効果的に実行する」。この有機的なつながりがあるからこそ、業務での実践に結びつけられます。
入口から出口まで妥協しない、学びの設計に対する信頼
太田さん:
本研修のパートナーとしてグロービスを選んだのは、一言で表現すると「信頼」に尽きます。私自身が過去にグロービスの研修を受講し、その質の高さを実感していましたし、社内の受講経験者からも高い評価を得ています。「自分たちが学びたいことを確実に学べるのは、グロービスの研修だ」と思っていました。
グロービスの特徴の一つは、学びの設計がプロフェッショナルな点にあります。入口から出口まで、受講者を飽きさせず、腹落ちさせるための細部へのこだわりが徹底されている。使用されるケースは秀逸で、一つひとつの問いに無駄がありません。そして、何より講師の質が高い。受講者の状態を踏まえて鋭い問いかけをし、深い議論へ導いてくれるファシリテーションに信頼を寄せていました。
佐々見さん:
私も今回受講してみて、講義・ディスカッション・アウトプットのバランスが絶妙だと感じました。知識のインプットはeラーニングでも可能ですが、対面研修では、他者との議論を通じて自分の思考を俯瞰し、考えを深められる点に大きな価値があると思います。自分の思考の癖を強烈に自覚させられる演習もあり、自然と引き込まれる内容でした。

先着順の公募型研修で、募集開始当日に全クラスが満席に
太田さん:
今回は時間の制約があり、企画から受講者募集、実施までスピード感を持って進める必要がありました。研修の設計段階から現場のリーダーと意見交換したり、意思決定者である上層部と早めにコミュニケーションを取ったりと、できる限りのことをやりましたね。グロービスと協力し、事前オリエンテーションも開催しました。
準備期間が限られている中でも、より多くの社員に受講してもらうため、受講者の公募はあえて先着順にしました。部門や役職を限定せず、公平にチャンスを提供する一方で、社員の自発性を求めたのです。そのために首都圏以外のメンバーも参加しやすいよう、東京だけでなく大阪でも集合研修を開催しました。
3科目合計で13クラス、さらに複数の拠点で実施するというスケジュールを早急に組めたのは、グロービスの柔軟性と安定的に大規模な研修を提供できる体制あってのものだと思います。加納さんには、必要なスキルの分解からプログラムの選定、スケジュール設定、講師アサインまで幅広くご対応いただきました。当社からのリクエストに対してもスピーディーに応えていただき、心強かったです。
プログラムは、忙しい社員が時間を確保しやすいよう、あえて一日完結型としました。また、なぜこの研修を今やるのか、なぜ先着順なのかという背景を社員にオープンにし、透明性を担保してコミュニケーションを続けたのです。これらの行動が実を結び、研修受講者の募集開始当日に枠が埋まり、約300名が今回の研修を受講しました。
田原さん:
公募を始めてすぐに満席になったと聞いて驚きましたが、納得もしました。ジュニア層の社員にとっても、グロービスの研修に参加できることは大きな魅力ですし、積極的に予定を確保して参加しようとする姿勢がありましたね。私自身も部門のメンバーに「ぜひ、参加を前提にスケジュール調整してほしい」と伝えましたが、指示がなくとも、学びに飢えている社員が多いのは当社の特徴かもしれません。
太田さん:
田原さんや佐々見さんのように、リーダー自身が学び続ける文化が、当社には根付いているように思います。だからこそ社員も、学ぶことに前向きで、機会があれば自ら掴みにいく姿勢があるのかもしれません。
佐々見さん:
私たちの会社には、新しいスキルを身に付けることに積極的な社員が多く、また同時に「学ばなければ置いていかれる」という健全な危機感も持っています。その両面が合わさって、今回の高い参加意欲につながったのだと感じます。
成果と今後の展望
受講者アンケートは有益度・理解度ともに高評価。現場で飛び交い始めた共通言語
太田さん:
定量的なアンケート結果では、有益度4.7、理解度4.8という、極めて高いスコアとなりました。理解力や判断力に優れている一方で、スピードを優先する場面では、論点を十分に深める前に打ち手へ進む傾向も見られるのが、当社の社員の特徴です。講師の方はその特徴を的確に見抜いたうえでファシリテーションしてくださり、受講者に多くの気づきをもたらしてくれました。それが高評価にもつながったのだと考えています。アンケートコメントでも、「経験に頼っていきなり打ち手を出すことを控えるようになった」「思考が明瞭になり、会話もスムーズに進むようになった」といった感想が多く寄せられました。
研修の成果は、目に見える形でも少しずつ現れています。直感や経験に頼るのではなく、イシューの特定や論点整理といったプロセスを立ち止まって考える社員が増えました。また、リーダー層を中心に、権限による指示ではなく相手の立場や利害関係を踏まえた対話を意識するようになっています。
その一例として、先日ある場面で、研修を受講した社員が「今の話のイシューは何ですか?」と自然に問いかける様子を目にしたのです。研修で学んだことが共通言語として実務に溶け込みつつあることを実感しました。

田原さん:
私は「パワーと影響力」を受講しました。我々の仕事は、企業の基幹システムに関わる大型のプロジェクトが中心で、意思決定に関わる相手が多く、さらに経営層の役員であることがほとんどです。当社に長年在籍する中で、そうしたステークホルダーとのコミュニケーションの進め方は、経験を積む中で感覚として身に付けてきた部分でした。「パワーと影響力」では、蓄積してきた感覚一つひとつが体系立てて網羅的に言語化されており、営業はもちろん、ビジネス全般に活きる実践的な学びの多い科目だと感じました。
受講後は、メンバーへのコーチングにおいて、研修で学んだフレームワークを活用しながら対話しています。私も含め、本研修を受講した全員で実践を積み重ねて、知識を「知っている」状態から、実務で「できる」状態にしていきたいと思います。
部門や役職、年齢の壁を越えたネットワーキングも実現
佐々見さん:
本研修は、異なる部門や役職の社員が一緒に学び、交流が図れるようにも設計されていました。普段の業務では関わらないメンバーと深い対話ができましたし、役割によって視点や考え方の傾向が異なることを感じられたのも収穫の一つです。
特に、社歴が浅い社員にとっては、部門を越えた対話そのものが貴重なネットワーキングの機会になります。お互いに共通言語を持ちながら、他者の視点を理解することは、部門間のコミュニケーションをするにあたっての潤滑油になると感じます。業務での連携が、これまで以上にスムーズになることを期待したいです。
太田さん:
全社員にできる限り公平に機会を与えることで、部門間の関係性構築の場にもしたいという点は、企画時点から意識していたことでした。実際に受講した方から、組織全体のインパクトにつながる副次的な効果が生まれたという感想を聞けたのは、嬉しいことです。
本研修での学びを、組織のカルチャーとして定着させたい
太田さん:
今後に向けては、今回の受講機会を得られなかった社員のためにも、継続的な実施を検討しています。次回以降は、組織のコアとなるメンバーが確実に受講できる形にしていきたいと考えています。そして、1on1や定例会議の場でマネージャーが問いを投げかけ、部下の思考を引き出す。そうした形で、本質を見抜く力や課題を特定する力、周囲を巻き込む力を、当社のカルチャーとして根付かせていきたいと思います。
また、日本法人の方針とグローバルのアップスキル方針を連動させ、さらに具体的な人材育成プランに昇華させていきたいと思います。
田原さん:
AIの浸透によって、ルーティンワークや資料作成などの業務は効率化が進んでいきます。こうした時代だからこそ、人間ならではの「問いを立てる力」や「ストーリーを描く力」、「顧客の経営課題に深く入り込む力」が問われますね。これからも、人間が磨くべき能力にフォーカスして皆で学び続けたいと思います。

グロービス担当者の声

加納:
今回、本研修の企画・実施をご支援する中で、まず強く感銘を受けましたのは、太田様をはじめとするリーダー層の圧倒的な推進力と実行力です。社内での丁寧な対話や役員層とのスムーズな合意形成など、熱量の高い事前準備があったからこそ、「公募開始当日に全クラスが満席になる」という結果につながったと感じております。タイトなスケジュールの中、私としてもその推進力をさらに加速させるべく、柔軟かつ迅速に育成施策の設計に伴走させていただきました。
また、田原様や佐々見様のように、ご多忙な重職にありながら自ら受講され、得た学びを現場の1on1やコーチングですぐさま実践される姿勢に、「リーダー自らが学びの背中を見せる」素晴らしい組織風土を強く感じております。真摯に学びと向き合われるお姿は、まさにプロフェッショナルそのものだと思います。
今回の3科目は、現場の皆さまが日々直面する「本質的なイシュー特定」と「多様なステークホルダーの巻き込み」という課題に正面から向き合う内容でした。今後は、こうしたスキルの組織的な浸透・定着に加え、顧客の経営課題を読み解く思考力やストーリーテリングなど、さらに領域を広げた体系的な学びもご支援してまいりたいと考えております。組織の成長を共に牽引する真のパートナーとして、激動のAI時代をリードされるSAPジャパン様のさらなる変革を、これからも「学び」の側面から全力で支援いたします。
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