日本航空株式会社
営業にこそマーケティングを。顧客起点の共通言語がソリューション営業を変え始めた
- インフラ/物流
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航空券販売中心のビジネスから、ソリューション営業への変革期を迎えている日本航空株式会社様。お客さまの真のニーズを起点とした価値を提供するために、部門全員でマーケティングスキルを身に付けようとしています。その取り組みについてお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【日本航空株式会社様】
写真中:ソリューション営業本部 業務部 企画グループ 主任 谷野 薫様
写真右:ソリューション営業本部 東京支社 田替 香菜子様
【グロービス担当者】
写真左:池田 菜々
- 導入前の課題
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- 航空券販売からソリューション営業への転換期に、従来の商品起点(プロダクトアウト)の営業スタイルから、顧客ニーズ起点への切り替えが進みにくかった
- 組織統合を経て営業や販売推進、企画など多様な役割のメンバーが集まる中、共通言語となるマーケティングの視点や用語の理解にばらつきがあった
- 研修内容
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- 「お客さま視点の習得」と「マーケティングの共通言語化」という2つのゴールを設定した
- 年次・職種を問わず、20代の若手から50代の部長層までが同じ場で学ぶ機会を創出した
- 3時間×2日間を1クラスとし、高密度な事前課題を課す設計で、オンラインで9クラスを開催。206名が受講した
- 成果・効果
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- 「お客さまの真のニーズは何か」という会話が日常に定着し、組織知へと進化している
- 入社1年目の受講者が、商談での質問力・提案設計力の向上を実感した
- 役割を跨ぐ共通言語が生まれたことでメンバー間の連携が強まり、組織全体の連帯感が深まった
背景と課題
航空券販売からソリューション営業へ、ビジネスモデル転換の葛藤
谷野さん:
私たち日本航空のソリューション営業本部は、2023年の組織統合を経て始動しました。これまで当社におけるビジネスの主軸は、航空券の販売、つまり移動手段の提供にありました。そこから現在は、JALグループが持つ多種多様なアセットを組み合わせ、お客さまのニーズに応えるソリューション営業への変革を進めています。たとえば自治体向けの地域活性化ソリューションといった非航空券ビジネスの展開は、重要な柱の一つです。
この変革を進める中で、現場の社員たちの「お客さまや社会の役に立ちたい」という熱意は高まっていました。ところがいざ商談となると、これまでの商品起点(プロダクトアウト)の発想が根強く、自社の商品やサービスをいかにわかりやすく説明するかに意識が向きがちでした。お客さまの真のニーズや潜在課題を深掘りして提案を行う「顧客起点の営業スタイル」への転換に、多くの社員が難しさを感じていたのです。
組織統合とソリューション営業への転換がほぼ同じ時期になったため、社員にとっては、新しい環境で未経験の営業スタイルに変革していくことへの戸惑いもあったと感じています。

職種を超えて、全員でマーケティングスキルを磨く必要があった
谷野さん:
加えて、部門内の連携の面でも解決すべき課題がありました。営業や販売推進、企画など多様な役割を担うメンバーが、マーケティングの共通言語を十分に持っていなかったのです。そのため、「この視点でお客さまに提案してはどうか」という新しい切り口が生まれても、共通の物差しがないために議論を深めきれず、現場の活動にうまく活かされないことがありました。
決まった商品を売るのではなく、顧客のニーズに合わせて自社アセットのポジショニングを考え、価値を提案していく。こうしたソリューション営業を実践するにあたり、部門全員でマーケティングの視点を理解する必要がありました。
検討プロセスと実施内容
お客さま視点でソリューション提案ができる自律型人財を育成
谷野さん:
今回の研修を企画するにあたり、2つのゴールを設定しました。1つ目は、受講者全員が営業の原点であるお客さま視点を身に付け、データや顧客理解に基づいて発想し、実践できるようになること。そして2つ目は、マーケティングのフレームワークや用語を誰もが同じ意味で語れる「共通言語」とし、さらに皆で活用できる「組織知」にしていくことです。これらを通じて、本部の目標である地域との「関係・つながり総量の最大化」や、「収入の最大化」をリードできる自律型人財を育成したいと考えました。
また、本研修では、職種や年代を超えて共通言語を獲得するために、対象を部門全体とし、参加する回は各自が自由に選べる形式にしました。20代の若手から50代後半の部長層まで、職種では営業から企画までが同じ場でディスカッションする機会を設けるようにしたのです。
「営業にマーケティングは不要」という先入観を払拭
谷野さん:
本研修を実施するにあたり、営業職の社員から「なぜ、営業にマーケティングが必要なのか?」という戸惑いの声が少なからず挙がりました。
そこで、懸念を払拭するために、ソリューション営業推進部長自らが受講者に向けて「なぜ今、この変革期に営業パーソンがマーケティングを学ぶ必要があるのか」という目的とメッセージを伝えることにしたのです。事務局からも、受講を通して何を得て、どう成果につなげてほしいかといった期待を発信することを重視しました。今回学ぶ内容を「お客さまに選ばれるプロになるための必須スキル」と位置づけることで、研修を前向きなチャレンジとして捉えてもらえるよう、繰り返し意義を伝え、受講に向けた意識づけを行ったのです。
田替さん:
私は、本研修の受講者です。当時は入社1年目でした。この研修の話を聞いたとき、正直なところ、営業とマーケティングがどうつながるのかピンときませんでした。マーケティングというと、広告やプロモーション企画といったイメージがあり、日々の商談とは遠いもののように感じていたのです。
ただ、部長の話を聞いて「営業だからこそ、マーケティングの思考を身に付けるべきだ」と認識できましたし、周囲の同僚からも、「マーケティングは自分たちには関係ないという先入観が薄れた」という声が多くありました。

コンパクトながら高密度な研修設計で、9クラス開催
谷野さん:
本研修のパートナーにグロービスを選んだのは、池田さんや前任の内野さん(ともにグロービス担当者)自身が、まさに私たちが目指すお客さま視点を体現した提案活動を行ってくださった点にあります。ソリューション営業への転換という挑戦の背景や、現場の課題を伴走者として深く理解してくれました。コンテンツを選定する際も、私たちの課題感をふまえたうえで複数の案をご用意いただき、最も効果的な研修プログラムを丁寧に提案してくださる姿勢に共感しました。
最終的な決め手となったのは、プログラムの圧倒的な質の高さです。3時間×2日間というスケジュールは、顧客訪問が多い営業職でも終日予定を空けずに済むので参加しやすくなります。このコンパクトな設計でありながら、事前課題に取り組んだうえで研修に参加するという高密度な内容になっている点が、当社にフィットしていると感じました。
実は導入前、現場の負担を考えて事前課題を減らせないか相談したことがありました。ところが、前任の内野さんは「短い時間で確実に思考力を高めて、実践できるようにするには、事前に考え抜くプロセスが不可欠です」と、その重要性を話してくださったのです。この説明があったからこそ、事前課題の大切さを認識できました。私自身も本研修を受講し、事前課題で悩み抜いて自分なりの仮説を持って当日に臨むからこそ、講師からの質問やフィードバックが腹落ちしていくのだと実感しました。
JALグループでは本研修の他にもグロービスの研修を実施しているため、タフな事前課題があることは口コミで広まっていました。ただ、負荷が大きいのと同時に「とても勉強になる」「大変だったけれど、やってよかった」というポジティブな感想も過去の受講者から多く聞かれていたため、前向きに取り組めたようです。

田替さん:
私も、事前課題の大変さは記憶に残っています。でも、前もって試行錯誤したからこそ、当日のセッションが濃密な時間になりました。講師の方がチャットも活用し、受講者からどんどん意見を引き出していくんです。少しでも思考を止めると置いていかれるようなスピード感と熱気があり、よい意味で逃げ場のない時間でした。
谷野さん:
本研修の企画にあたって一つ懸念していたのは、オンライン研修という形式です。全国の社員が参加しやすいことを重視して選びましたが、対面研修よりモチベーションが上がりにくいのではないか、と感じていました。しかし、これは杞憂でした。開催した9クラスすべてにおいて講師が発言しやすい雰囲気をつくり、意見を引き出してくれたおかげで、しっかりアウトプットしながら学びを深めることができました。
成果と今後の展望
お客さま視点での会話が日常風景になり、「組織知」に向け進化中
谷野さん:
研修を終えて、受講者から「航空券販売をしていたときのように、これまでの慣習に基づいたプロダクトアウトの営業をしていたと気づいた」「お客さまのニーズや潜在課題まで考えきれていなかった」など、自分の改善点に対する気づきの声が多く挙がっています。
今はまだ、実務で成果が出るまでの過渡期ではありますが、普段の会話に変化が現れています。「それはお客さまの真のニーズなのだろうか?」「一度仮説を立てて検証してみよう」といった言葉が飛び交うようになりつつあります。学んだことが共通言語として定着してくると、個人の経験に頼る属人化から脱し、チームで知恵を出し合う組織知になっていくのだろうと、少しずつ手応えを感じているところです。
また、ミドル層以上の受講者からは、「若手の柔軟な発想や視点に触れて、学びになった」という感想が多く聞かれました。さらに営業や販売推進、企画といった多様な役割を担う社員が共通言語を持つことで、連携の精度が上がるという効果も生まれています。参加者の年次や役職をあえて区切らずに研修を実施したことが、組織の連帯感を強めるきっかけになりました。

入社1年目の受講が、営業としての視野を180度変えた
田替さん:
私は、入社1年目という早い段階で本研修を受講しました。自分自身のキャリアにおいて、視野を180度変えるほどの転換点になったと思っています。それまでは自社の商品やサービスを覚えることに必死で、商談でも「覚えたことをいかに説明するか」というプロダクト中心の思考になってしまい、熱意が空回りするもどかしさを感じていました。
研修を通じて、マーケティングとは徹底的な顧客理解に基づき、ロジカルに価値提供の仕組みを組み立てるプロセスそのものだと学びました。これは、営業活動の土台となるスキルです。
2年目になった今、実際の商談で変化を実感しています。まずは、お客さまの背景にある課題を深掘りするための質問を意図的に組み立てられるようになりました。表面的な要望の奥にある「なぜ」を問い続け、真のニーズを引き出す。こうして得られた情報をもとに、お客さまにとって本当に価値のある提案を設計する。この一連のプロセスを自分の力で進められるようになってきた実感があります。
受講をきっかけに、顧客視点を持ち続け、お客さまに伴走するパートナーになることが営業パーソンとして目指すべき姿だと、マインドを切り替えることができました。

2035年のビジョンに向け、現場から変革をけん引する
谷野さん:
私たちJALグループは、理想の未来社会として「Sustainable Well-being Future(心はずむつながりが社会全体に広がるサステナブルでウェルビーイングな未来)」を掲げ、「JALグループ経営ビジョン2035」に向けて歩みを進めています。
その中で、我々ソリューション営業本部のミッションは、移動を通じた「関係・つながり」の力でお客さまや地域、社会の課題を解決して、ウェルビーイングな社会を実現していくことです。そのために、これからもマーケティングの視点を活用してお客さまへの価値提供を続けていきたいと思います。
本研修を終えた後、講師や池田さんから、受講者の強みや成長余地について丁寧なフィードバックをいただきました。数多くの先進企業を見てこられたグロービスならではの客観的な視点で、私たちの強みだけでなく、一歩突き抜けるために乗り越えるべき課題まで鮮明に浮き彫りにしてもらいました。今後のリーダー育成を行うにあたって大きな財産となっています。
組織開発においては、本研修で得た共通言語をベースに、本部内で小さな成功体験を共有し、横展開する仕組みをつくりたいと考えています。社員一人ひとりが当事者意識を持ち、自律的に思考して挑戦する。そして得られた学びをお互いに持ち寄り、組織としての強さを高めていく。その積み重ねが、私たちが目指す未来を実現する原動力になると思っています。
田替さん:
私自身は今後、3つの目標を立てています。1つ目は、お客さまの真の課題を引き出すヒアリング力の向上。2つ目は、お客さまに納得いただけるロジカルな提案力・プレゼン力の磨き込み。そして3つ目が、今回得た共通言語を、まだ受講していない周囲のメンバーにも広めていく組織への横展開です。
まだ経験が浅い若手ではありますが、実践で結果を出し続け、変革期にある組織を現場から力強くリードできるような自律型人財を目指して、これからも学び続けていきたいと思います。

グロービス担当者の声

池田:
私は、前任者から引き継ぐ形で、マーケティング研修がスタートするタイミングから日本航空様を担当させていただいています。
ソリューション営業への変革を推進される中、部門全体で「マーケティング」の共通言語化を目指す本施策は、商品・サービスの企画からお客様への提供に至るまで、一貫して「お客様の真のニーズ」に応え、価値を提供し続けるという、日本航空様の強い意思の表れだと感じており、そうした意味でも非常に重要な施策であると考えています。
今回のインタビューを通じ、谷野様と田替様から受講後のリアルなご感想や変化についてお伺いでき、営業担当として大変嬉しく、ありがたく感じております。
本施策において特に素晴らしいと感じたのは、受講者の皆様に対する丁寧かつ徹底した「動機づけ」へのお取り組みです。受講者の皆様がお忙しい日々を過ごされている中で抱く、「なぜマーケティングを学ぶ必要があるのか」という疑問に対して、ソリューション営業推進部長様や事務局の皆様が、学ぶ意義や期待をメッセージとして発信し、受講者の皆様が研修に臨む意欲を高めてくださっていました。
弊社としても、ご期待に応えるべく質の高い研修プログラムの提供に尽力しております。そこに、事務局の皆様によるこうした動機づけのお取り組みが合わさったことで、受講者の皆様が事前課題へ真摯に取り組み、確かな効果と変化をご実感いただけたのだと確信しております。
現在、本施策は2年目を迎えております。今後、受講者の輪が広がることで、ソリューション営業本部様内での共通言語化が進むことはもちろんのこと、研修で獲得された学びの定着と実践に向けても、引き続き全力でご支援させていただく所存です。
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