武田薬品工業株式会社
グローバルリーダーとしての当事者意識が、自発性と社内の変化を生み出した
- 繊維/化学/化粧品
- 企業内研修
- 課長層
- 日本語
グローバルで活躍できる次世代の経営者候補を日本から継続的に輩出するため、課長層を対象とした選抜研修をスタートさせた武田薬品工業株式会社様。その取り組みについてお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)
【武田薬品工業様】
写真左:グローバルHR 人材・組織開発(日本)ヘッド 赤津 恵美子様
写真右:グローバルHR 人材・組織開発(日本)タレントマネジメントリード 平瀬 慶造様
【グロービス担当コンサルタント】
写真中:尾花 宏之
- 導入前の課題
-
- 日本から当社の経営人材をもっと輩出したいという思いがあった
- 変化をリードする力をもったタレントを、日本で育成する必要があった
- 研修内容
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- グローバルリーダーに必須の、多様な価値観やスタイルを持った人たちとのインタラクションを取り入れた
- 参加者がコンフォートゾーンを飛び出して、覚悟を持ってより高いゴールに向けて厳しいチャレンジをし、何かを成し遂げた喜びや自信を感じるカリキュラムを設計した
- 成果・効果
-
- 参加者同士が強力なネットワークを築いており、今後のイノベーションにも期待がもてる
- 元々の課題であった「変化をリードする」点について、実践が始まっている
- 参加者の視座が上がり、将来の経営候補としての確かなポテンシャルを確認できた
背景と課題
変化をリードする力を持つ経営人材を、日本から輩出したかった
赤津さん:
日本から当社の経営人材をもっと輩出したいという思いがありました。グローバル企業として成長をさらに加速していくためには、未来を描き、社内外の多様な人たちと協働し、実現していく実力あるリーダーが必要です。データから、当社の日本のタレントが最も強化すべきなのは、変化をリードする力でした。戦略を立て、ロジックと熱意をもって周囲を巻き込み、変化を起こす。いわゆる「経営者としての知と軸」。主張もでき、相応の実力もある、日本でそんなタレントを増やしたいとの想いから、本研修をスタートさせました。
研修のゴールは「グローバルリーダーの育成」
赤津さん:
ゴールは「グローバルリーダーの育成」です。流暢な英語でなくても、グローバルの経営者候補と互角に議論し、事業を構想し、世界の人たちと一緒に実行できる、そんな人材の育成が目標でした。今回の対象である課長層に、いかに「経営者としての知と軸」を持ってもらい、力をつけてもらうのか、その研修の手法を構築する必要がありました。
検討プロセス・実施内容
外からの多様な刺激を取り入れながら厳しいチャレンジをし、参加者の達成感や自信につながるカリキュラムを設計
赤津さん:
企画の大枠として、4つの基準を設定しました。カリキュラム、ファシリテーター、多様な刺激、コストです。当社の目指す人材像に向けて必要な能力を強化するためにどのようなカリキュラムを組み、誰にファシリテートしてもらうかは重要な点です。またグローバルリーダーになるには、外からの多様な刺激、つまり、多様な価値観やスタイルを持った人たちとのインタラクションが必要と考えました。そして、これらをクリアしたうえで、コストが現実的な範囲に収まるかを見て判断しました。
企画時に注意していたことは、アカデミックな学びと企業での学びは違うという点で、グロービスの方々と最初に議論しました。私たちが企業として育成したいのは、ビジネスを牽引する経営者であり、経営学の専門家ではない。参加者がコンフォートゾーンを飛び出して、覚悟を持ってより高いゴールに向けて厳しいチャレンジをし、何かを成し遂げた喜びや自信を感じる、そんなカリキュラムの設計をお願いしました。
毎回のセッションで「理想のリーダー行動を自分はとれているのか」を意識するためのグランドルールを設定した
平瀬さん:
研修冒頭では、セッション中のグランドルールを参加者に決めてもらいました。たとえば『質問されたら1秒以内に発信する』『本気で考え、徹底的にチャレンジしあう』『テーブルに患者さんがいると思って議論する』などです。これには、理想のリーダーがとるであろう行動を自分はとれているのか、ということを毎回のセッションで意識してもらうという意図がありました。
嬉しかったことがありまして、参加者の1人がグランドルールをきれいなポスターに仕立ててくれたのです。それをラミネートして、研修のたびに各テーブルに置いていました。ルールを作るというのは事務局からの働きかけだったのですが、参加者が「自分事」として積極的に推進してくれたのがとても嬉しくて。このメンバーでよかったな、と感じた瞬間でした。
初めての試みに対する不安は、グロービスとのディスカッションを通じて払拭されていった
平瀬さん:
はじめて企画するプログラムだったので、どのように仕立てるべきか、どのように研修を進めるべきかなど、気がかりでした。ですが、尾花さん(グロービス担当コンサルタント)やファシリテーターの方とディスカッションすることで、不確定な状態がどんどん少なくなっていったことを覚えています。
赤津さん:
また、グロービスと仕事をするのが初めてだったことも不安材料でした(笑)。知らないことがお互いにたくさんある。たとえば、グローバルリーダーに必要な戦略策定力をつけたいと言っても、私たちが考える戦略策定力と、グロービスの担当者が考えるものは異なるでしょう。当社の戦略や人材のレベル、事務局の意向などをどこまで理解してプログラムに反映してもらえるのか、まったくわからない状態からのスタートでした
かなりチャレンジングなリクエストをしたことも多々あったと思いますが、尾花さんは、「できない。やったことがない」とは決して言わず、こちらの意図をとことん理解しよう、何とか叶えられないかという姿勢で毎回最大限に努力してくださった。企画の修正は数回以上にわたりましたが、この真摯な対応が大きな信頼感につながりました。
研修がスタートしてからもグロービスとの議論は続いた。改善に向けた柔軟な対応が大変有難かった
平瀬さん:
研修がスタートしてからも、尾花さんとのディスカッションは続きました。実施中も常に企画をアップデートしていたからです。たとえば参加者にどれぐらいの熱意があって、どれぐらいの知識量があって、発言量はどれぐらいかなど、初日までわからないですよね。なので、初日の様子を見ながら、「こういう人たちだったら、このセッションはこうしたほうがいいよね」とか「ここはこうしましょう」など尾花さんやファシリテーターの方とディスカッションを続けました。
赤津さん:
7か月間と長いプログラムなので、最初に全体像を描いてスタートしても、想定と違うことが起こります。なので、7ヶ月、全11回のプログラムで毎回PDCAを回し続けました。大変ありがたかったのは、尾花さんやファシリテーターの方と率直な議論ができた点です。要望を伝えると、文脈を理解しながら建設的な姿勢で、何度もカリキュラムのファインチューニングをしてくださいました。
平瀬さん:
本当に大から小まで出した要望に、粘り強く対応してくれました。異文化理解の要素としてグロービスの英語MBAプログラムの学生とセッションを組んでもらったり、参加者の様子を細かに共有してもらったり、最終発表の英語での実施対応や、新たに必要になったセッション・ワークシートの設計など……。
赤津さん:
おそらく通常のメニューにはないことも、尾花さんは一生懸命に応えてくれました。グローバル対応力を強化したいという私たちの要望に応えて、グローバル経験のある講師をアサインし、英語MBAプログラム生との混合授業も実現してくれました。カリキュラムのみならず、講師や多様な学習環境といったリソースの幅広さや柔軟性も心強かったですね。
成果と今後の展望
参加者同士の強力なネットワーク構築が大きな収穫。今後のイノベーションに期待。
平瀬さん:
今回の参加者が口をそろえていうのは、『他部門の優秀な人たちとディスカッションする喜びを強く感じた』ということです。修了後は、参加者でアルムナイ(同窓会)を自発的に作り、研修当初から始まった社内SNSを用いたコミュニケーションも続いています。そこで情報をシェアすることで、研修が終わってからも刺激しあう環境が継続しているわけです。更には、自分たちが経験したことを次期参加者や後輩にも伝えたいという声も聴きました。
ほかにも、グローバルで開催された社外とのコラボ企画募集へ、参加者数名がチームを組んで応募したことも印象的です。よい意味で目立つことに躊躇しないマインドが彼らの中に生まれたことで、この行動が奮起されたのでしょうね。結果としては落選となったようで残念ですが、『変化をリードする』点に関しては実践が始まっています。彼ら個人が変わるきっかけは作れたので、それをどう周囲のメンバーや組織全体に良いインパクトを与えるか、組織の変化を引き起こしてくれるかというところにも期待しています。
参加者の視座が上がり、将来の経営候補としての確かなポテンシャルを確認できたことも大きな成果
もともと課長以上を対象としたグローバルでの選抜リーダーシッププログラムは数年前から始まっていましたが、選抜要件もあり日本からのタレントが占める割合はあまり高くありませんでした。この日本のプログラムでは、参加者の視座を上げ、将来の経営候補としての確かなポテンシャルも確認できたのは、大きな成果です。
赤津さん:
参加者が強力なネットワークを築いてくれたのも大きな収穫です。今回の参加者は、研究開発や営業など、全く異なる分野で成果を上げてきた人たちです。今後、彼らがさまざまなことにチャレンジしていく中で、厳しくも心あるアドバイスをしあったり、イノベーションにつながるチームができたりするかもしれません。彼らの人的ネットワークは、会社にとっても大きな財産になると考えています。
世の中の変化に合わせ、グローバルリーダーの育成に資する研修をアップデートしていきたい
平瀬さん:
世の中の変化に合わせて研修自体もアップデートしていきたいと考えています。
一口にグローバルリーダーを育てるといっても、グローバルリーダーの要件は変化しています。ゴールであるグローバルリーダーを目指すことは変わらずとも、その中身は日々アップデートしていく必要があるのかな、と。変化をウォッチしながら、その時々で何が必要なのか、どう達成していくか考え続けていきたいです。
赤津さん:
グローバルリーダーへの道はまだまだ続きます。研修を終えて、変化に対して自発的にアプローチできるようになりましたが、それで終わりではないですよね。参加者の皆さんには、さらに高いレベルを目指していってほしいです。
私たちは一年前にベストと思う内容を作りこんでスタートしました。それでも、世の中はどんどん変化し、私たちが解決したい課題もどんどん広範になります。一年前には見えなかったもの、たとえば『戦略策定力の進化系としてこんな力もつけたい』『もっとグローバルに貢献できるリーダーになってもらうために次はこうしたい』といった夢は広がっています。
担当コンサルタントの声
尾花:
本プロジェクトで印象的だったことは、「事務局のお二人との徹底した議論と、ベストを追求し続ける本気の覚悟を感じたこと」でした。
ヒアリング当初から「グローバルリーダー育成」というゴールが具体化されており、課題も明確だった武田薬品工業様。まずは、私自身が武田薬品工業様を取り巻く外部環境の変化、経営の全体像を理解し、同じ目線を持つことを意識しました。その上で、受講者のあるべき状態、そこに到達するために何が必要かを本気で議論することができました。
また、プロジェクト中にも常にPDCAを適切に回し続けることを心掛けました。人の成長は生ものです。変化していく受講者に寄り添いながら、より良い環境を模索し、ブラッシュアップを続けることが重要だと考えています。
結果、研修スタート時よりも高い最終到達地点を設定でき、受講者にとっての学びの質も大きく向上できたと感じています。
受講者のモチベーションが高く、前のめりに研修に参加いただけたことも、良い結果につながった要因だと考えています。多くの受講者は自らが製薬に関わり、成し遂げたい熱い想いをお持ちでした。その想いが様々なビジネスリーダーや役員の方々からのメッセージを受けることで、より強いものとなり、経営リーダーとしての覚悟につながっていきました。
不確実性の高い時代においても、強い想いで組織・社会を牽引するグローバルリーダーを育成するため、お二人と共に引き続きチャレンジを続けていきたいと思います。
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