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地方創生プロジェクトの成果創出へのコミットメントを通じた、選抜人材育成

経営テーマでもある「地方創生」を、人材育成と絡めながら取り組んでいる東京海上日動火災保険株式会社様。「地方創生プロジェクトを通じた人材育成プログラム」(以下、本プログラム)について、同社の人事企画部 人材開発室 課長代理 能力開発チーム 菊地 謙太郎様にお話を伺いました。(部署・役職はインタビュー当時)

背景と課題

本プログラム前に抱えていた課題感

本プログラム前から抱えていた課題。いくつかありますが、例えば、ビジネスサイドにおいては、当社が注力している地方創生の更なる推進、人材育成の観点では経営リーダーの育成を見据えた、準リーダー層(課長手前の層)の育成です。

人事企画部 人材開発室 課長代理 能力開発チーム 菊地謙太郎様

当社はグローバル展開に取り組むとともに、マザーマーケットである日本での地方創生にも注力しています。

日本が元気にならなければ、日本の企業も、当社も元気にならないと思っています。地方創生では、さまざまな自治体の皆様と協力をしながら取り組みを進めていますが、解決策に明確な答えがあるわけではありませんし、そもそも解くべき課題が適切かも不明瞭です。その点が、推進の難しさであり、奥深さなのかもしれません。

また、人材の面では、経営リーダーを育成するにあたって、課長層一歩手前の準リーダー層への成長機会の提供を増やしていく必要がありました。「将来を担う経営リーダー育成を目的とした準リーダー育成」は、会社としてのミッションでありながらも、工夫の余地がまだ残っていたのです。

そこで、準リーダー層を対象に、地方創生を絡めて育成プログラムができないか、と始まったのが本プログラムです。地方創生をテーマに、準リーダー層が地域の新たなビジネスを考案するプログラムを実施しよう、と。

まさに今、VUCAの時代と言われている通り、当社の社員も答えが一つではない領域での価値創造に立ち向かわねばなりません。地方創生という明確な答えがないテーマに挑戦することは、求められる人材像に向けて、人の成長をより加速させられるのではないかと考えたのです。

この頃にグロービスに相談したところ、「異業種で他の会社も巻き込んだ方が面白いのではないか」と提案をもらい、第一期は電通さん・資生堂さんと一緒に行いました。当社内でも前例がないプログラムでしたので、皆さんと模索しながら前に進めていたことを覚えています。

本プログラム前に考えていたゴール(参加者の目標像)

本プログラムのゴールは2つあります。1つ目はOff-JTのような座学に閉じず、新規事業創出の経験をしてもらうこと。もう1つは越境の苦労を乗り越えてもらうことです。

人事企画部 人材開発室 課長代理 能力開発チーム 菊地謙太郎様

当社では、ゼロから事業を立ち上げるような機会はそう多くありません。だからこそ地方創生をテーマに、各地域をフィールドとして、新規事業の企画を実際に経験しつつ、成功体験や失敗体験を着実に積んでほしいと考えました。

新規事業の企画を実際に経験するため、本プログラムでは「On the Project Training(OnPT)」を採用しています。

【凡例】

地方創生プロジェクトを通じた人材育成プログラム 概要

また、人の成長には、コンフォートゾーンから出ることが大きく影響していると考えています。自分のエッジを超える、その方法として、他企業のメンバーと一緒に取り組む「越境学習」の場を作りました。

当社には、新卒入社からずっと当社で働き続けてきた社員が多いので、正しいと思っていることがどうしても固定化されてきます。越境することで価値観や志を揺さぶられ、一皮むける機会を社員に提供できないかと考えました。

越境学習の効果を最大化するため、本プログラム開始前には、受講者へのマインドセットを丁寧に行なっています。プログラム開始前に参加者を集め、うまくいかない場面に直面するであろうことと、自分のリーダーシップに向き合ってほしいという期待を伝えました。

社内では、良くも悪くも阿吽の呼吸が通用します。越境学習では、そういうものが通じない世界に飛び込むので、色々と悩み苦労するでしょう。その中で自分の成長、他者の成長、そしてチームの成長にコミットし、自分らしいリーダーシップを考えて持ち帰ってほしいのです。

検討プロセスと実施内容

本プログラム導入にあたり、感じていた心配ごと・懸念点

まず、本プログラムに共感いただき、同志となってくださる企業が集まるかが心配でした。毎年、澤田さん(グロービス担当コンサルタント)と我々でさまざまな企業へ声をかけています。

また答えのないプログラムなので、受講者の成長にコミットできるかということも、懸念や不安の1つでした。明確にここまでいったら達成、ここまでいったら成長したというのが測りにくいのですよね。

この2つは、回数を重ねても払拭される懸念ではないため、毎回緊張感を持って企画しています。

人事企画部 人材開発室 課長代理 能力開発チーム 菊地謙太郎様

ただ、回数を重ねても払拭される懸念ではないからこそ、面白いのですよね。普通のプログラムではないということですから。

自治体への最終プレゼンを乗り越え、本プログラムが終わった段階で、ようやくスタートラインに立った感覚さえある不安定さに、ワクワクする部分もあります。参加者としては、たまったものじゃないかもしれませんが(笑)。

本プログラム企画にあたり、こだわった点

本プログラムの企画は、グロービス抜きでは実現しませんでした。本プログラムの成功要因は、澤田さんが私を含む人事の方々を巻き込み、推進してくれたことです。

澤田さんは企画の叩きを用意し、我々をファシリテートしながら企画を固めてくれました。決まったことを行うプログラムではないので、参加企業の人事の皆さんが納得いくよう議論しながら進められた点が、本当によかった。

私を含め、好き勝手なことを言う人たちばかりなんですよ(笑)。現地に行ってお昼を食べながら議論したり、セッション後に一緒にタクシーで現地を巡ったりして、苦楽を共にしながらプログラムを作りあげました。

こういう異業種プログラムで起こりがちなのが、人事が社員を派遣して終わりになってしまうことです。ですが私自身、企画段階から関わって、ゴールまで伴走しなければという責任感や使命感も醸成されました。

参加企業の人事同士も深い付き合いになり、意見交換できる仲になっています。人事も異業種交流しているプログラムは珍しいのではないでしょうか。企画段階から、澤田さんがハブになってくださったからこそですね。

人事企画部 人材開発室 課長代理 能力開発チーム 菊地謙太郎様

2020年は新型コロナの影響で参加を見送る企業が出て、さらにプログラムをオンラインで実施することに。この状況下で何ができるかと澤田さんと相談を重ねました。

生意気なことも言って澤田さんを困らせましたが、お互い対等にアイデアを出し合って作るプロセスは本当にありがたく、人事として私自身も成長できる機会になっています。

成果と今後の展望

本プログラム後の受講者の変化

本プログラムも4期目を迎え、アウトプットも人材育成も、成果につながる手ごたえが見えてきました。

アウトプットとしては、自治体や第3セクターに提案内容への興味を持ってもらい、動きが出始めているものがあります。自治体とは良い距離感を保ちながらも、本気で取り組めています。

人事企画部 人材開発室 課長代理 能力開発チーム 菊地謙太郎様

ただし本プログラムの主目的は、人材育成です。

参加者の変化として自己認識が深まり、物事の考え方が変わったことを感じます。参加者自身が、自分の想像以上に当社のカルチャーが染みついていたことを自覚しています。

他社と一緒に取り組むことで、自分が正しいと思うことは当社の中でしか通用しないかもしれない、マーケットにおいてはどうだろうか、という思考が、強く醸成されました。まさに越境学習で意図したことです。

越境学習の可能性は無限大ですね。当社のグローバルコース社員(全国転勤あり)とエリアコース社員(転勤なし)の越境、当社と他社さんの越境、東京と各自治体の越境。いろいろなエッジを超える越境から価値観や考え方が共有され、学びが無限大に広がっていきます。

人事企画部 人材開発室 課長代理 能力開発チーム 菊地謙太郎様

そしてグロービスの講師の問いかけが、厳しいけれども内省を促してくれる。講師の視野、視座、視点が参加者の学びを促進し、心に刺さるファシリテートをしてくださいます。

たとえば提案の発表後に講師から「元々思い描いていたようにできましたか?」と問いかけるのです。「うまくいきましたか?」ではなく、「思い描いていたようにできましたか?」です。

参加者はそう問われると、そもそも自分はどう思い描いていたのか、と深く内省します。経験学習において、自分と対峙することを促される、厳しい問いだと思います。

その裏では、澤田さんの参加者へのきめ細かいケアがあります。講師は揺さぶりながら澤田さんが場を整えてくださる、良いバランスです。

人事企画部 人材開発室 課長代理 能力開発チーム 菊地謙太郎様

グロービスの魅力をまとめると、ロジックとパッションのバランスが取れていること。当社の社員もロジカルなところがあり、かつ熱量があるメンバーが多いので、グロービス講師のファシリテートと相性がいいなと個人的には思います。

アルムナイの交流機会も作ってくださり、これまでの参加者は積極的に参加しています。中には参加していた時は担当者でしたが、今は課長として部下を持つメンバーも増えてきました。

アカデミックなサポートも効果を生んでいます。第2期からは越境学習の効果を図るための質問項目を準備し、プログラムの前後で上長評価と自己評価がどう変化したかを見ています。この評価には、グロービスのファカルティ本部研究員の方にもサポートいただきました。

結果、参加者本人が自分の変化に自覚的になりましたし、事務局にとっても学習の効果が明確に見えるようになりました。研究開発部門を有するグロービスならではのアプローチだと思います。

参加者の上長からは、「プログラムに参加した部下が変わってきた。自分の弱みを自覚し、普段の業務やミーティングの所作からも、変わろうと思考錯誤している様子がうかがえる」と連絡が来ます。そういう声を聞くと、我々もありがたく思いますね。

人材育成の手ごたえもアウトプットの手ごたえもあり、我々企業側も自治体側もWin-Winのプログラムだと思います。

選抜プログラムなので社内に大々的に広報はしていないものの、全社的にもっと発信すべきだとの意見がありますし、公募制にした方がいいという意見も出ています。

今後の取り組み

本プログラムでは、参加者の多様性を増していきたいと考えています。

2021年は長崎市の地方創生がテーマだったので、長崎で働いているエリアコースの社員2名が参加しています。これまでの参加者はグローバルコースの社員が多く、エリアコースの社員も参加できる機会にしたいという思いがありました。

そして経営計画の実現に向けて、自律型社員をいっそう育成していかねばなりません。自分で問いを立て、自分で決める人材の育成です。

澤田さんには育成体系の見直しの相談もしています。我々の課題認識を的確に捉えて、アイデアをフラットに提示してくださいますね。それをベースに議論をするので、当社の思考の解像度を上げるサポートにもなっています。

越境学習は今後も人材育成の大きなテーマです。越境学習の可能性は無限大ですから。

担当コンサルタントの声
マネージャー 澤田茉莉
担当コンサルタントの声

本プログラムの立ち上げは2018年。その時から東京海上日動火災保険様とグロービスは協働で、OnPTによる地方創生に取り組んできました。私は立ち上げ当初から携わっており、菊地様とは二人三脚で、本プログラムの進化に取り組んでいます

本プログラムはプロジェクトの成果創出とメンバーの能力開発、双方へのコミットが求められます。どちらかが欠けても成立しません。その点では私自身も緊張感を持ちながら、参画させていただいています。

菊地様が言われていた通り、本プログラムは地方創生×越境学習です。参加者にとって負荷が大きい要素が多く詰め込まれています。しかし参加者の皆さんは、東京海上日動火災保険様の中でも今後の会社の牽引を担うことを期待された優秀な方です。プログラムを通して外部とのギャップに気づき、半年間で行動をアジャストされていく様子が伺えます。

私は本プログラムだけでなく、ジェンダーギャップに対する取り組みも支援させていただいています。今後もさまざまな角度から、東京海上日動火災保険様と菊地様の活躍を支援できることを、心から楽しみにしています。