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欧米企業と日本企業における「CEO育成」の実態調査

2026.06.25
欧米企業と日本企業における「CEO育成」の実態調査


地政学的リスクの高まりやAIをはじめとするテクノロジーの急速な進化など、企業が対応すべき課題は増え続けています。それに伴いCEOや社長といった経営者に求められる役割も近年ますます複雑化・高度化が進み、従来の「偶然の出会い」や「突然の抜擢」といった属人的なプロセスでは、企業の持続的な成長や競争力の確保が困難になりつつあります。そのような流れの中で、近年はサクセッションプランへの関心が一層高まっています。

コーン・フェリーとグロービスは、日本の大手上場企業を対象に「CEO育成」に関する実態調査を実施しました。

本調査は、欧米の大手企業におけるCEO育成の型を整理した上で、日系企業におけるCEO育成の実態を確認し、今後CEO育成を戦略的に高度化させていくための論点を提示することを目的しています。

※本記事は、調査結果レポートのサマライズ版となります。調査レポートの完全版はこちらからご覧いただけます。

第一章:欧米企業におけるCEO育成の実態

一般的なイメージとは異なり、欧米企業でもCEOは主に内部昇格であり、外部採用は約20%に留まる。外部採用者の在任期間(平均7.0年)が内部昇格者(平均9.3年)より短いことも認識されており、経営戦略の大幅転換や構造改革など特殊な局面に限られる。このため、社内候補者の確保が重要視されている。

CEO育成の基本型:

発掘:欧米企業においてはCEO候補の特定は30代前半までに開始されることが多い。これはCEO平均着任年齢(51.8歳)が早く、育成のための時間を確保する上で必然である。発掘時には瞬間的な実力よりも「成長力(ラーニングアジリティ=学びの俊敏性)」そのものが重視される傾向があり、「CEO細胞」と呼ばれる資質を確認して候補者を選出している。

経験のデザイン:CEO候補に対しては偶然に委ねず意図的に成長機会を設計する必要性が認識され、非連続でストレッチの効くアサインメントの付与が実践されている。長期視点での育成の羅針盤となるのが「サクセスプロファイル」で、自社の経営の方向性と時代が求めるリーダーシップを踏まえて策定されている。事業経営の勘所を体感させることに加えて、事業ポートフォリオ最適化、変革推進、投資家対応、社会との共生などCEOに必要な全社視点を体得させる機会も意図的に用意している。

育成責任者:育成オーナーが高い視座を持つことの重要性が認識され、時々の直属の上長ではなく、経営陣がこの役割を担う場合も多い。各アサインメントで習得すべき視点・能力を明示し、候補者の非連続な成長へのコミットメントを刺激し続けながら、成長度合いを的確に把握することで育成アプローチをタイムリーに更新する。適度な負荷がかかる状況を担保することが成長に大きな影響を与える。また、成長スピードが鈍化した人を候補者プールから外すシビアな判断力も求められる。

育成支援:CEOへの道を歩む上で、階段の間隔が特に大きいのは、機能長⇒事業経営者⇒グループ経営メンバー⇒CEOの3つの移行。それぞれに有効なサポートを提供することの重要性が認識されている。重要なのは「適時性」。欧米企業では職位が上がるほど育成投資額が増えることが特徴。エグゼクティブMBAやエグゼクティブアセスメント&コーチングが典型的な施策。

CEO育成の成否を分けるポイント

濃淡はあれど、上記4つの基本型は広く実装されている。成否を分ける真の差異化要因は、「人材育成を重視する企業文化の醸成」と「候補者と精神的につながるCHROの存在」の2点。文化醸成には、トップのコミットメントと経営陣の評価制度への組み込みが不可欠。実際はこのプロセスを経て成長した人材が経営職に就き、次世代を育成する循環が文化を定着させる。また、プロセスの番人の役割を超え、各候補者との個人的な信頼関係を構築するCHROの存在が、魂のこもった生きた運用を可能にする。

第二章:日本企業がCEO育成を高度化させるための論点

次に、大手日系企業におけるCEO育成の実態を整理し、日本企業がCEO育成を戦略的に深化させていくための論点を提示する。調査インタビューでは、発掘・経験のデザイン・育成責任者・育成支援の4つの枠組みにおける実態が明らかになった。

発掘:経営幹部候補の発掘は仕組み化が進む一方、CEO候補の選定になると現CEOの裁量や限られた経営陣の判断に依存する傾向にある。こうした暗黙知に基づく選抜は一定の合理性を持つものの、どこまでを仕組み化して透明性を担保し、どの部分を裁量として残すかが今後の設計の焦点となる。また、CEOに必要な経験を十分に積ませるために、従来40代以降が中心だった発掘のタイミングを若手層へと早期化する企業も現れ始めている。

経験のデザイン:多くの企業では「P/L責任を伴う事業経験」「海外経験」「複数部門を跨ぐ経験」といった、全社を俯瞰する視座やスキルの獲得が必要だと考えている。さらに「修羅場経験」はCEOに不可欠な胆力を鍛える機会として重視される傾向にある。一方で、優秀な人材を事業部門が囲い込むことで、CEO候補者の育成機会が広がりにくいケースも見られた。CEOに固有の全社視点と胆力を磨く経験をいかに意図的に創出するかが各社共通の課題である。

育成責任者:CEOとCHROの二人三脚体制でCEO育成に取り組むケースが一般化する中、経営幹部候補の育成は経営チーム全体が関与する方向へと進化している。一方で、指名委員会の役割はCEOの最終選抜に限定されることが多い。執行と指名委員会が協働して後継者プールを発掘・育成・選抜するために、透明性と客観性のある仕組みを構築することが今後の焦点となる。

育成支援:CEO育成においては「胆力」や「覚悟」といった非認知能力を養うことが重視され、タフな実践経験と内省を深めるコーチングをメインに行うケースが多い。役員以上になると体系的な研修機会はほぼなくなり、知識インプットが限定的になりがちだが、環境変化が激しい今、欧米企業のように、外部の知見や異なる価値観を取り込み、経営知を獲得する必要性が高まっている。

CEO育成を経営システムとして設計する

ここまで、欧米企業と日本企業のCEO育成の実態についてまとめてきました。
CEO育成に、唯一絶対の解は存在しません。 企業の歴史、戦略、そして組織文化と真摯に向き合いながら、試行錯誤を重ねていくこと―それ自体がCEO育成という営みだと、私たちは考えています。

環境変化が激しさを増す現代において、CEO候補の育成を属人的な判断や慣習に委ね続けることは、企業の持続的成長にとって大きなリスクとなり得ます。だからこそCEO育成を、単なる人事施策ではなく、「未来の経営をつくるための意思決定」として位置づけ、経営の責任において戦略的に高度化していくことが求められています。
同時に、CEO育成は人的資本経営の一要素にとどまるものではありません。経営幹部や次世代リーダーの育成、組織能力の開発と密接に結びつき、企業全体の経営システムとして設計されてこそ、その真価を発揮します。

日本企業は今、CEOを計画的かつ意図的に育成する仕組みへと転換する岐路に立っています。経営者育成と組織づくりを切り離さず、全体像を描きながら取り組む視点が不可欠であると、今回の調査を通じて改めて感じました。

※本記事は、調査結果レポートのサマライズ版となります。調査レポートの完全版はこちらからご覧いただけます。

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