サクセッションプランとは?基本知識・作り方・成功の秘訣を解説
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加藤 理美



サクセッションプランとは、経営や事業の後継者を育成するための計画のことです。サクセッションとは後継者(Succession)を、プランとは育成計画(Plan)を意味します。

もう少し詳しく説明すると、幹部職など、適任者がいないと事業の進捗に大きな影響が出る重要なポストの後継者を、早めに、計画的に育成する施策です。経営戦略の一環として重要視されています。

サクセッションプランは、以下のような理由から、近年注目されています。
【サクセッションプランが必要とされる理由】
・企業が安定して業績を上げていくために欠かせないため
・投資家などからの信頼を維持するために必要であるため
サクセッションプランを策定し、効果的に運用することで、企業は
・幹部人材の急な退職など、経営に大きな影響を及ぼすリスクに備えられる
・計画的に後継者を育成することによって、経営人材のパイプラインを強化できる
・社内で後継者を育てることによって、良き企業文化を受け継ぐことができる
などのメリットを享受できます。
ただし利点ばかりではなく、
・育成に時間とコストをかけた候補者が辞めてしまい、計画の見直しや追加コストが発生する恐れがある
・選抜から漏れた社員のモチベーションが下がり、生産性の低下や離職に繋がる恐れがある
といった点には注意が必要です。そのため、効果的にサクセッションプランを運用するには、形式的に候補者を選んで育成するのではなく、ポイントを押さえて進めることが重要になります。
この記事では、サクセッションプランを策定する前に知っておきたい、サクセッションプランの目的・メリットと注意点・策定の流れといった基礎知識をわかりやすく解説します。後半ではサクセッションプランを有効に機能させる3つのポイントもご紹介しますので、成果の出る仕組みを確立したい方は、ぜひご一読ください。
最後までお読みいただければ、サクセッションプランの全体像を理解し、策定に向けて迷わず一歩を踏み出せることと思います。
ビジネスチャンスを活かし、予期せぬリスクを回避しながら、企業ならびに事業を持続的に成長させる――そのために役立つのがサクセッションプランです。ぜひこの機会にポイントを押さえ、実効性の高い計画づくりに取り組んでみてください。
1.サクセッションプランとは、企業の持続的成長を目的とした「後継者育成計画」のこと

冒頭でもお伝えした通り、サクセッションプランとは後継者育成計画のことです。経営層や事業責任者など、欠けることで組織の継続性に大きな影響を及ぼすポジションに対して、予めその後継者を選定・育成する取り組みを指します。なお、サクセッション(succession)とは、「継承」や「相続」を意味します。

後継者といっても、あらゆるポストの後継者を育てるわけではありません。重点的に後継者を育てるべきポストについて、厳選して行う取り組みであることに注意しましょう。
例えば、以下のようなものがサクセッションプランです。
【サクセッションプランの一例:大手日用品メーカーの例】
「すぐに後任になれる人材」「1年から3年で後任になれる人材」「3年から5年で後任になれる人材」の3段階に分けて育成を実施
【何かあった際にすぐに後任となれる人材とは】
・該当ポジションの役割や使命を理解している
・責任を負えるだけの知識やスキルなどが身に付いている
【1年から3年で後任になれる人材とは】
・現在の業務や育成のためのプログラムを通して育成することで、1~3年で該当ポジションに必要なスキルなどが身に付くレベルの人材
【3年から5年で後任になれる人材とは】
・人事異動を伴う経験の蓄積と、育成のためのプログラムを通して育成することで、3~5年で該当ポジションに必要なスキルなどが身に付くレベルの人材
近年サクセッションプランが重要視されているのは、以下のような理由からです。
【サクセッションプランが必要とされる理由】
・企業が安定して業績を上げていくために欠かせないため
・投資家などからの信頼を維持するために必要であるため
巡ってきたビジネスチャンスを確実に掴み、経営判断の誤りや組織運営上の混乱を未然に防ぐことで、企業は継続して業績を上げることができます。このような正しい判断を下すには、経営や事業に携わる幹部ポジションに、適性の高い人材を配置することが大切です。
とりわけ、
・幹部人材の急な離職
・戦略の変化に伴う適任者不足
・外部人材の採用失敗
など、後継者不在にまつわる様々なリスクは、組織運営を混乱させる要因となり得ます。だからこそ、これらのリスクに備えて計画的に後継者を育成しておくことは、企業が安定して業績を上げ続けるために欠かせません。
また、2018年のコーポレートガバナンス・コード改定に伴い、「後継者をきちんと育てているかどうか」が企業価値を判断する基準の1つとなりました。このため、投資家や顧客などから信頼を得るためには、サクセッションプランを導入し、後継者育成に尽力していることをアピールすることが有効なのです。
※関連コラム:人事担当者が最低限知っておきたいコーポレートガバナンス・コードの要点とは?
2. サクセッションプランのメリットと注意点
サクセッションプランを適切に導入し、継続的に運用することで、企業は様々なメリットを享受できます。一方で、育成コストがかかることや、候補者の離脱、候補外となった社員のモチベーション低下など、人材マネジメント特有の難しさも伴います。
ここでは、期待できるメリットとあわせて、運用する際に知っておきたい注意点を解説します。
2-1. サクセッションプランのメリット
サクセッションプランを導入するメリットには、以下のようなものがあります。
【サクセッションプランの代表的なメリット】
・幹部人材の急な退職など、経営に大きな影響を及ぼすリスクに備えられる
・計画的に後継者を育成することによって、経営人材のパイプラインを強化できる
・過去の実績に基づいたハイパフォーマーだけでなく、ハイポテンシャル人材も可視化し、成長機会を広く提供できる
・経営と現場が協力することによって、育成が組織の文化として定着する
・社内で後継者を育てることによって、良き企業文化を受け継ぐことができる
サクセッションプランを効果的に運用すれば、重要なポストに適性のある優秀な人材を早くから確保し、育成できます。そのため、経営上重要なポストが人材不足により空席になるリスクを避けられるでしょう。また、優秀な人材に早い段階から重要ポストの候補であることを認識してもらえるため、転職や引き抜きにより他社に流れるリスクを抑えられます。
更に、経営層と現場が一体となって後継者育成に取り組むことで、前向きに育成に向き合う文化が根付いていきます。こうして社内で次世代の人材を計画的に育てる仕組みが回ることで、外部採用だけでは守りきれない自社ならではの価値観や企業文化を、次の世代へ自然に引き継ぐことができるのです。
2-2. サクセッションプランの注意点
サクセッションプランには多くのメリットがある一方で、留意しておきたい点もあります。
【サクセッションプランの注意点】
・育成に時間とコストをかけた候補者が辞めてしまい、計画の見直しや追加コストが発生する恐れがある
・選抜から漏れた社員のモチベーションが下がり、生産性の低下や離職に繋がる恐れがある
サクセッションプランでは、候補者一人あたり数年~十数年と、長い期間をかけて人材を育成します。そのため、育成過程で候補者が辞めてしまうと、育成にかけた手間や時間が無駄になるだけでなく、計画の見直しや追加の育成コストが発生する恐れがあります。このような事態を防ぐには、候補者に期待する役割を丁寧に説明することで納得感を高めるとともに、定期的な面談などを通じてモチベーションを維持する仕組みが必要です。段階に応じて挑戦の幅を調整するなど、候補者が過度なプレッシャーを感じないように育成内容を工夫するのもよいでしょう。
また、候補者に選ばれなかった社員のモチベーションが下がることで、生産性の低下や想定外の離職が生じる可能性もあります。このリスクを抑えるためには、選抜や評価のプロセスをできるだけ透明にし、選ばれなかった社員にも成長の機会があることを示すなど、納得感を高める運用が求められます。
3. サクセッションプランで定めるべき内容
サクセッションプランを策定する際に必ず検討すべき内容は、次の5点です。
サクセッションプランで定めるべき基本的な内容 | |
---|---|
対象とするポスト | 今後の長期的な経営方針を踏まえて、重点的に後継者を育成すべきポストを選定する 【例】「経営幹部」「〇〇事業責任者」など |
候補者人材の要件 | 対象ポストごとに、必要な要件を定める 【例】「組織を束ねるリーダーシップ」「特定分野の深い知識・〇年以上の実務経験」など |
候補者人材の選出方法・選出基準 | 各ポストの候補者を選ぶ方法や基準を整理する 【例】「360度評価を実施し、企業理念の体現度合いを確認」「実務に近い課題に取り組んでもらい、現在のスキルや成長可能性を判断」など |
育成の内容・スケジュール | 対象ポストに必要なスキルや経験を、計画的に身に付けるための育成内容とスケジュールを明確にする 【例】「関連部署への異動によるOJT(On-the-Job Training)」「社外研修への参加」など |
候補者の評価方法 | 候補者のスキル・適性が対象ポストに相応しいレベルに達しているかを評価する方法を定める 【例】「アセスメントの活用」「上司やメンターとの定期的な面談」など |
これらの具体的な検討方法を、このあと、サクセッションプランの策定プロセスに沿って詳しく解説します。
4. サクセッションプランの策定プロセス
サクセッションプランを実効性のあるものにするには、策定から運用までのステップを着実に進めることが欠かせません。
サクセッションプラン策定の5ステップ | |
---|---|
ステップ1 | 自社のビジョン、戦略の確認と、その実現における重要ポスト・要件の明確化 |
ステップ2 | 人材の把握・評価と、経営人材育成候補者の選抜・確保 |
ステップ3 | 人材育成計画の策定・実施と、育成環境整備・支援 |
ステップ4 | 育成結果の評価と関連施策の再評価・見直し |
ステップ5 | 配置・登用 |
各ステップのポイントを、順番にご説明します。
4-1. 【ステップ1】自社のビジョン、戦略の確認と、その実現における重要ポスト・要件の明確化
サクセッションプランを形骸化させずに機能させるには、まず自社のビジョンや経営戦略を具体化し、その実現に不可欠なポストと求める人材像を明確にすることが重要です。なぜなら、後継者育成の対象や育成方針は、将来の経営リスクや事業の方向性と密接に結びついているためです。
【自社のビジョンや経営戦略を具体化するには?】
・5年~10年先を見据えたビジョンや中長期戦略を確認する
・経営理念を把握する
・自社の強みを分析する
・組織や企業文化について、どこを維持し、どこを変革すべきか検討する
更に、求める人材像は「期待される役割・成果」「必要なスキル・経験」「コンピテンシー」「人間性」など、多角的な観点で定義することが大切です。階層別に要件を整理し、どのポジションにどのような資質が必要かを具体化しておくと、後の育成計画や評価の精度が高まります。
加えて、要件を満たしていても候補者として不適切となる要因(ノックアウトファクター)も明文化しておくと、選抜の納得感を高めることができます。
【ノックアウトファクターの例】
・上位者と下位者に対して極端に態度が違う
・部下と競争してしまう
・派閥をつくろうとする傾向がある
・凝り固まった考えから離れられない傾向がある
・感情のコントロールができない
4-2. 【ステップ2】人材の把握・評価と、経営人材育成候補者の選抜・確保
中長期ビジョンを支える後継者を育成するには、まず社内にどのような人材がいるのかを正確に把握し、客観的に評価する仕組みを整えることが必要です。過去の実績を見るだけでなく、将来のポテンシャルや、リーダーとしての資質を多面的に見極めましょう。
一例として、コーン・フェリー社が提唱する「ハイポテンシャル人材の7つの指標」なども有効な参考フレームです。
【ハイポテンシャル人材を見極める7つの指標】
ドライバー | リーダーシップという役割そのものを好み、楽しみ、自身の原動力としている 〔昇進意欲・キャリアプラン・役割に関する志向性〕 |
経験 | リーダーとしての主要な職務経験を積み、自身の能力を伸ばしている 〔中核となる経験・視点・重要課題〕 |
認識 | 自己の強みと能力開発ニーズ(弱み)に対する自己認識、自分が置かれている状況、自分が他者から受ける影響・他者に与える影響の状況認識を持っている 〔自己認識・状況認識〕 |
ラーニング・アジリティー | 経験から素早く学び、その学びを初めての状況に応用し、望まれる結果を手にすることができる 〔メンタル(探求心・前向きさ)・ピープル(対人関係の洞察力)・ チェンジ(前向きさ・リスクを負う姿勢)・リザルト(新しく、難しい仕事への意欲)〕 |
キャパシティ | 雑多な情報の中から、共通性や隠れた関連性への気づきを得る論理思考力、概念化能力を有している 〔論理思考力・概念化能力〕 |
リーダーシップ特性 | 個人が生来持つ特性がリーダーとして求められるものと一致している 〔集中・粘り強さ・曖昧さの許容・積極性・前向きさ〕 |
阻害リスク | 順調なキャリアを歩んでいた人材が、リーダーシップ階層を上がるにつれ、過剰に物事をコントロールしようとしたり、私欲から傲慢さが出るなど、個人のキャリアを損なう恐れのある特性を持っている 〔不安定さ・微細管理・閉鎖性〕 |
評価を行う際は、現場の上司だけでなく、同僚や部下による360度評価や外部アセスメントツールを活用し、評価の客観性を高めましょう。実務に近い課題に取り組んでもらったり、プロジェクトを通じて能力を検証する方法も有効です。
グロービスのアセスメント・テスト「GMAP」では、ビジネスパーソンの能力を客観的に測定することが可能です。論理思考(クリティカル・シンキング)と経営の定石(ビジネス・フレームワーク)の領域で、理解度と実践度合いを測定します。累計78万人(2025年3月時点)の受験データをもとに、日本のビジネスリーダー層と個人のスキルレベルを比較することができますので、後継者候補の現状把握や育成方針の検討に、ぜひお役立てください。
人材の把握と評価を終えたら、次は実際に「誰を後継者候補に選び、どのポストに、何人プールして備えておくか」を具体化します。
候補者の選抜方法には、大きく分けて「リスト方式」と「プール方式」があります。上位のポジションにはリスト方式を取ることが主流となっていますが、近年では事業展開が過去の延長線上にないという問題意識もあり、上位ポジションにプール方式を活用するケースも増えています。
【「リスト方式」と「プール方式」の違い】
リスト方式 | 確実な補充を重視し、対象のポジションに後任候補を結び付けて管理する方法 【例】A部長のポジションに対して、3人の課長を後任候補として育成する |
プール方式 | 一定の階層に対する後任候補をグループで管理する方法 【例】複数の部長ポジションに対して、課長クラスの人材で候補群を形成し、将来的にいずれかの部長ポジションに就く可能性のある人材として育成する |
人選にあたっては、上司からの指名に頼らず、人事部門の推薦や公募、過去の選抜研修の修了者リストなど、多様なチャネルを組み合わせることで偏りを防ぎましょう。
4-3. 【ステップ3】人材育成計画の策定・実施と、育成環境整備・支援
後継者候補を選抜した後は、誰に、どのようなスキルを、どのような方法で身に付けてもらうかを具体化することが重要です。対象者ごとに、育成のゴールと到達レベルを定めたうえで、必要な職務経験や学びの機会を計画的に提供していきます。
リーダーシップ開発研究の世界的権威である米国の団体 Center for Creative Leadershipによると、リーダーの成長は約60%が実務経験を通じて形成されるといわれています。そのため、異動やプロジェクトへのアサインなどのOJTを積極的に設計することが欠かせません。
一方で、現場経験だけでは補えない知識や視野の拡大には、Off-JT(研修・エグゼクティブコーチングなど) を組み合わせ、学びを体系化しましょう。
【OJT・Off-JTを通して学ぶべきこと(一例)】
OJTで学ぶこと | ・実務を通じた基礎的な思考力 ・業務でのリーダーシップ発揮 ・プロジェクト遂行による変革実行力 ・関係者を巻き込むコミュニケーション力 |
Off-JTで学ぶこと | ・経営知識 ・ビジネスフレームワーク ・リーダーシップ理論 ・自己理解の深化 ・志の醸成や価値観の言語化 ・他社事例や最新トレンド |
また、こうした育成を実効性のあるものにするには、経営層や部門責任者を巻き込み、組織全体で後継者育成を支える土壌をつくることが不可欠です。
・育成計画の社内浸透
・部門内での人材の抱え込み防止
・育成に適した人事制度や異動の仕組みの整備
といった環境整備にも目を向け、候補者が成長できる機会を継続的に確保しましょう。
4-4. 【ステップ4】育成結果の評価と関連施策の再評価・見直し
育成施策は一度きりで終わらせるのではなく、計画通りに進んでいるかを定期的にモニタリングし、必要に応じて修正することが重要です。候補者がどの程度成長したか、対象ポストを担う適性が備わったかどうかを確認・評価しましょう。この評価が曖昧だと、候補者自身の納得感も薄れ、後継者育成が形骸化するリスクが高まります。
評価にあたっては、多角的な視点と方法を組み合わせることで、客観性と精度を高められます。
【評価項目と評価方法(一例)】
評価項目 | ・思考力 ・ビジネス知識 ・リーダーとしての行動 ・仕事やキャリアの実績 |
評価方法 | ・行動観察 ・360度フィードバック ・個人インタビュー ・知識や思考力の測定診断ツール ・資質、適性を把握する心理テスト |
こうした評価の結果を踏まえて、選抜や育成のあり方、時には環境整備の仕組みそのものを再評価・見直すことも必要です。状況によっては候補者をリストから外す判断が求められる場合もあります。
なお、サクセッションプランの一環で用いられるアセスメントの一例として、グロービスの行動観察評価「プロセス・オブザベーション」があります。これは、経営人材育成を主目的とする研修の中で、リーダーのポテンシャル(能力・資質)を測る行動観察評価です。育成と人材評価を同時に行う方法として、その人の可能性を見出し、成長を支援するために活用されます。
詳しくは以下のコラムをご覧ください。
4-5. 【ステップ5】配置・登用
ここまで来たら、いよいよ実際のポストに配置・登用するフェーズです。この段階では、候補者の最終評価を改めて行い、適性や準備状況を多面的に確認することが欠かせません。人材委員会などを通じて関係者が議論し、評価を確定するプロセスを設けることで、登用の納得感と客観性を高めることができます。
配置・登用を進める際には、単にポストを引き継ぐだけでなく、後継者と前任者の間で十分な連携が行える環境整備や、関連部署への説明、支援の依頼も重要です。登用された本人が新たな役割を円滑に担えるよう、就任後もメンタリングなどを通じたフォローを続けることによって、現場の混乱を防ぎ、スムーズな定着に繋がります。
なお、後継者の適性が十分に備わっていないと判断される場合や、組織の状況が変わった場合は、登用のタイミングを見送ることも検討しましょう。焦って配置・登用を進めるのではなく、最適なタイミングを見極めることが、サクセッションプランを実効性のあるものにする大切なポイントです。
グロービスでは、戦略の確認から計画策定、育成、評価、配置・登用に至るまで、一貫してご支援しています。ぜひお気軽にご相談ください。
5. サクセッションプランを成功させる3つのポイント

サクセッションプランの導入効果を高め、成果に繋げるためには、3つのポイントを押さえることが重要です。
サクセッションプランを成功させる3つのポイント |
---|
1. 経営トップ・部門責任者を巻き込む 2. 単発のイベントではなく、一連の継続的なプロセスであることを認識する 3. サクセッションプランの鮮度を保つ |
5-1. 経営トップ・部門責任者を巻き込む
サクセッションプランは、単なる人材育成プログラムではなく、経営戦略を支える全社的な取り組みです。そのため、人事部門だけに任せるのではなく、経営トップや部門責任者が主体的に関与し、強いコミットメントを示すことが欠かせません。
経営陣の協力が不十分なまま進めてしまうと、各部門が優秀な人材を囲い込んだり、候補者を選抜するために必要な情報が集まらなかったりと、社内調整の壁にぶつかりがちです。取締役会による後継者計画の策定・監督を求めるコーポレートガバナンス・コードの観点からも、経営層の関与は今や当然の責務といえます。
「主体は人事ではなく、経営である」という意識を持ち、人事部門はその実現を支える役割を果たす――この分担が、形骸化しないサクセッションプランをつくる大前提です。
※関連コラム:人材戦略とは? 戦略と人材を連動させる5ステップ・難所の乗り越え方を徹底解説
5-2. 単発のイベントではなく、一連の継続的なプロセスであることを認識する
サクセッションプランは、単なる「一度きりの育成施策」ではなく、計画策定から育成、評価、配置・登用、振り返りを繰り返す、継続的なプロセスです。
候補者を選定し育成計画を立てたものの、その後の進捗管理や評価が疎かになってしまい、次の配置や登用に活かされないままになっている組織も少なくありません。
候補者となった人材に対して、具体的な育成プランや配置を計画し、実行し続けることが最重要であり、これが単なるOff-JTと大きく異なる点です。
この取り組みを継続した結果、研修プログラム受講者から役員を輩出した企業事例を「6. サクセッションプランを機能させ、成果に繋げた事例2選」でご紹介していますので、ぜひご覧ください。
5-3. サクセッションプランの鮮度を保つ
サクセッションプランは、一度策定したら終わりというものではありません。外部環境や経営戦略は変化し続けるため、策定したプランが現状に合っているかを定期的に見直し、常に最新の状態に保つことを心がけましょう。
例えば、半年ごとに直近の状況を確認し、候補者リストや育成計画を更新する仕組みを整えておくことで、退職や異動などの急な変化にも慌てずに対応することができます。
また、鮮度を保つために大切なのは、部門責任者や人事が日頃から「誰がどのポストを担えるか」を意識し、人材の把握と育成に継続して取り組むことです。この日常的な努力こそが、組織としての備えを強固にし、サクセッションプランを「絵に描いた餅」にしない最大のポイントといえるでしょう。
6. サクセッションプランを機能させ、成果に繋げた事例2選
ここでは、実際にサクセッションプランを策定・運用し、成果を出されている企業様の事例を2つご紹介します。
6-1. 明治安田生命保険様

経営者としての高い視座と広い視野を養うために、『経営塾』と称した次世代リーダー育成プログラムを行っている明治安田生命保険相互会社様。取り組みを10年間続けてきた結果、現在の経営陣の大半は本研修の受講者という状況になりました。
- 導入前の課題
-
- 時代の変化に合わせて戦略が変わり、リーダーのあるべき姿も変化
- それに伴い、リーダー育成のあり方を見直し
- 研修内容
-
- 半年間ほどをかけて様々な経営哲学に触れ、受講者同士で議論
- 最終日に自らの経営哲学を自らの言葉でプレゼンテーション
- 成果・効果
-
- 全社視点・業界全体の視点で物事を考えられるように成長
- 「見える世界が変わった」と感じ、日々の発言の水準も向上
- 10年間続けてきた結果、現在の経営陣の大半は本研修の受講者
※インタビュー全文はこちらから:現経営陣の大半が受講者。次期役員候補者向けプログラムで「見える世界が変わった」
6-2. 三菱重工業様

次世代経営人材の育成を目的に、課長層・主任層へ3種類の人材育成プログラムを実施している三菱重工業株式会社様。初期のプログラム受講者から役員を輩出し、継続の重要性を実感されています。
- 導入前の課題
-
- 脱炭素社会を実現し、安心・安全・快適な社会づくりを担う次世代リーダー育成が経営の重要課題
- HR戦略「HR Innovation 2030」においても、次世代経営人材育成を重要テーマに位置付けている
- 研修内容
-
- サクセッションプランのもと、課長層・主任層へ3種類の育成プログラムを実施
- 経営スキル習得だけでなく、リーダーとしての覚悟や志と向き合い、世の中のトレンドにも触れるプログラム内容とした
- 成果・効果
-
- プール人材が増え、各事業部門の人事との連携により育成後のタフなジョブアサインメントを行う体制を整備
- 本取り組みを6年以上継続してきた結果、初年度のプログラム受講者から役員を輩出している
- 今後もこの取り組みを続けることで、タレントマネジメントを着実に実行していきたい
※インタビュー全文はこちらから:受講者から役員を輩出。ジョブアサイン連動型タレントマネジメントで「未来を起動する」次世代リーダーを早期育成
7. サクセッションプランの策定・運用はグロービスにご相談ください

ここまで解説してきたように、サクセッションプランを成功させるには、経営戦略を実現するための重要ポスト・要件の明確化、候補人材の発掘、更には育成後の配置など、非常に幅広い領域をカバーする必要があります。
グロービスは様々な業界の企業様へサクセッション・プランニングのサポートを行い、運用の事例や独自の知見を蓄積しています。このため候補者の育成はもちろん、導入から運用まで、全てのプロセスを支援することが可能です。
【グロービスのサクセッション・プランニング支援の特長】
1. 経営や人材マネジメントを熟知した担当コンサルタントによる包括的な支援
2. アセスメントやLMSによる人材の把握・評価選抜のサポート
3. 複合的な研修プログラムを設計し選抜人材を育成
詳しくは以下のページでご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
・各策定プロセスにおける具体的な支援例
・サクセッション・プランニングに資する人材育成プログラムの内容
・サクセッション・プランニングの対応に関するQ&A
・グロービスのご支援に対するお客様の声
等をご確認いただけます。
8. まとめ
最後に、本記事でお伝えしたポイントは以下の通りです。
- サクセッションプランとは、経営や事業の後継者を育成するための計画のこと
- サクセッションプランは、以下の理由から重要視されている
- 企業が安定して業績を上げていくために欠かせないため
- 投資家などからの信頼を維持するために必要であるため
- サクセッションプランの代表的なメリットは以下の通り
- 幹部人材の急な退職など、経営に大きな影響を及ぼすリスクに備えられる
- 計画的に後継者を育成することによって、経営人材のパイプラインを強化できる
- 過去の実績に基づいたハイパフォーマーだけでなく、ハイポテンシャル人材も可視化し、成長機会を広く提供できる
- 経営と現場が協力することによって、育成が組織の文化として定着する
- 社内で後継者を育てることによって、良き企業文化を受け継ぐことができる
- サクセッションプランの注意点は以下の2点
- 育成に時間とコストをかけた候補者が辞めてしまい、計画の見直しや追加コストが発生する恐れがある
- 選抜から漏れた社員のモチベーションが低下し、生産性の低下や離職に繋がる恐れがある
- サクセッションプランで定めるべき基本的な内容は、以下の5つ
- 対象とするポスト
- 候補者の要件
- 候補者の選出方法・選出基準
- 育成の内容・スケジュール
- 候補者の評価方法
- サクセッションプラン策定の5ステップは以下の通り
- ステップ1 自社のビジョン、戦略の確認と、その実現における重要ポスト・要件の明確化
- ステップ2 人材の把握・評価と、経営人材育成候補者の選抜・確保
- ステップ3 人材育成計画の策定・実施と、育成環境整備・支援
- ステップ4 育成結果の評価と関連施策の再評価・見直し
- ステップ5 配置・登用
- サクセッションプランを成功させるには、3つのポイントを押さえることが重要
- ポイント1 経営トップ・部門責任者を巻き込む
- ポイント2 単発のイベントではなく、一連の継続的なプロセスであることを認識する
- ポイント3 サクセッションプランの鮮度を保つ
サクセッションプランの効果的な策定・運用方法について、具体的なイメージをおもちいただけたでしょうか。
後継者育成について何かしらのお悩みを抱えている場合は、グロービスにお気軽にご相談ください。
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