部長研修を成功させる鍵は「成長意欲(向上心)に火をつけること」

シニアマネージャー(部長)にさらに成長していただきたいが、実績もあり能力も高い方々に何を提供すればよいのでしょうか?そんな人事部のお悩みに向けて、「成長意欲(向上心)」にフォーカスする部長育成のコンセプトとアプローチをご紹介いたします。

部長層の育成に悩む人事部

「経験、年齢を重ねた人が変われるのだろうか」
「忙しい彼らを拘束してまでやる効果が本当にあるのだろうか」

日頃、我々がお会いする人事担当の方々から聞こえてくる「部長層」育成への悩みです。

そもそも部長とは、過去素晴らしい実績を残し、それを実現するためのスキル・意識を具備し、人間的にも優れた選ばれた方々がほとんど。しかし同時に、さらなる成長を求められる立場でもあります。

日本企業は既存のビジネスモデルからの転換やグローバル展開等、これまでの延長線上ではない戦い方が求められています。そのような中で現場と経営を結ぶ要となるのが部長層であり、彼らの「器」が全社の成長を決めるといっても過言ではありません。

部長層に変わってもらわなくてはならない、しかし、本当に変われるのだろうか。このような課題意識に対し、これまで取り組んできた育成アプローチをご紹介しましょう。

キーワードは「我々はまだまだ成長できる」「あがりではない」

部長層の育成におけるキーワードは「まだまだ成長」です。「もうあがりだ」と思ってもらっては困るのです。

部長自身が「リーダー(部長)の器が組織の器を決める」という認識と、その目指すべき器に対して自分自身がまだまだ達していないという健全な危機意識をもち、自分もまだまだ成長できるかも、という小さな成功体験と成長実感をもつことが、会社が今後も成長していくためには大変重要なことでしょう。

「まだまだ成長」を実現するための重要なコンセプトは「足らざるを知る」「学び方を学ぶ」です。

足らざるを知る

人が成長したいと思うためにはあるべき姿・なりたい姿を描き、自分とのギャップに気付くことが重要となります。

しかしながら、若手ならいざ知らず、シニアマネージャー(部長)層に「あるべき姿に足りていないので頑張りましょう」と説いたところで反発をかうだけでしょう。周囲からのガイダンスを最小限にし、自分自身で腹の底から“いかに自律的 に足らざる”状態を痛感してもらえるかが重要となります。

一つのアプローチとしては、本来の知るべきことの広さや深さをシャワーのように徹底的に浴びることが有効です。シャワーの範囲は、自分自身が担当している自社事業や機能を当然のことながら大きく超えます。たとえば以下のような流れです。

1. 他社事例を通じて経営の全体像や定石に触れ、それに比較して自分がいかに担当部門・機能のみに閉じているか認識する

2. 視野を “世界”(社会・経済・文化・民族等)にまで広げ、それらが企業経営に与える影響やつながりを考える

3. さらにはその裏に流れる“原理原則”まで深く考える

とにかく徹底的に視野を広げ、視座を高め、多様な視点に触れ、深く考え続けさせることに徹する。そのうえで彼らにとっての最後の砦であるはずの「担当事業・機能」について改めて考えると、本来の広さ、高さ、深さでは自分は何も知らない、ということが痛感されるのです。いい意味で自信が打ち砕かれ、健全な焦りが生まれてくるのです。

学び方を学ぶ

足らざるを知った上で次に大事なことは、それにどう向き合っていくべきかです。すべてに対して決まった答えがあるわけでもなく、誰かが知っているわけではない。重要なのは答えを探すのではなく、何を考えるべきか自ら“問い”を立てることなのです。

そこで徹底的にその問いの立て方を訓練します。例えば、ケース(企業事例)を何のガイドもなく読むよう指示し、「このケースからそもそも我々は何を学びとるべきなのか? 我々にとって示唆は何か?」を受講者に問うてみましょう。

質問された受講者は、当初何のことかわからず唖然とする。しかし講師は受講生の思考を広げたり、深めたりするための投げかけを徹底的に行うが、受講生の発言に対する良し悪しの判断や問いに対する答えは出さないようにし、 可能な限り自分達で何を学びとるのかを自分達で決めてもらうのです。

知識習得より成長意欲(向上心)にフォーカスを

これらの営みを通じて得られる成果は何でしょうか。研修終了時点で受講生は「すっきり答えがわかった」というのとは対照的に「知らないことが一杯ある」「考えるべき問いの山ができた」等、よい意味での焦りや、もやもや感で満たされています。

同時にこれまでの経験や断片的に知っていたことの関係性が一部整理・構造化され、徐々につながった・わかってきたという実感もうまれているでしょう。シニアマネージャー(部長)としてある種の「もうあがりだ」と思っていた自分の殻が破れ、まだまだ成長しなくてはならない、成長したい、という継続的な自己成長のエンジンを積んだ状態となっている。これが研修の成果なのです。