テクノロジーの発達に伴い、人事分野にテクノロジーを活用する「HRテック」が注目を集めています。企業の競争力を高めるには組織のマネジメントに力を入れていくことが重要であり、そのためにはHRテックを導入して人事部門の高度化を目指すのが効果的でしょう。本記事では、HRテックを導入するメリットや手順、サービスの種類について解説します。
目次
HRテックとは、「Human Resource:人事」と「テクノロジー」を合わせた造語で、ビッグデータやAI(人工知能)、クラウドサービスなどの最先端のIT技術を活用して、人事領域の課題を解決するツールやサービスのことです。
人事が担う業務は、採用活動や人材育成、労務管理など多岐にわたります。これらの人事業務にテクノロジーを取り入れることで、業務の効率化をはかり、データを活用したより高次元な人事戦略の実現を目指すのがHRテックの役割です。
HRテックが注目を集めている背景には、労働力人口の減少や働き方の多様化といった外部環境の変化が挙げられます。
少子高齢化に伴って労働力人口は減少傾向にあり、外部から人材を確保することが難しくなっています。こうした状況のなかで企業の競争力を高めるには、限られた人的資本を有効活用し、戦略的に人事活動を行うことが重要です。
また、コロナ禍によるテレワークの浸透や働き方改革などの影響で、社員の働き方にも変化が生じ、在宅勤務や時短勤務といった新しい働き方が一気に普及しました。そのため、勤怠管理や人事評価が複雑化し、従来の人事制度では管理が難しい場面が増えています。
こうした背景から、高度かつ戦略的な人事業務を行うことが求められています。HRテックを導入すれば、人事の業務にデータを活用することが可能となり、データに基づく人事戦略が実現できるようになるのです。
HRテックの範囲は、採用や配置、育成、労務管理、健康管理、従業員情報管理など多岐にわたります。人・組織に関わる領域全般はHRテックの対象といえるでしょう。これらの人・組織に関わるデータを集約することで、企業の経営戦略に活用できるようになります。
人事が担う業務は多岐に渡るため、HRテックはそれぞれの業務領域に応じたさまざまなサービスが存在します。主に以下のようなサービスの種類があります。
勤怠管理システムとは、社員の始業時間・終業時間を管理するためのシステムです。従来はタイムカードに打刻したものをエクセルの表に移して管理するといった方法が一般的でしたが、労働時間の集計は手間がかかるうえ、入力ミスが起こりやすいなどの課題がありました。
勤怠管理システムを導入すれば、勤務体系が多様化しても一元管理ができるようになります。労働時間の集計や入力にかかる手間を削減して業務を効率化できるだけでなく、法定労働時間を越えていないかを自動で管理できるといったメリットもあります。
給与計算システムとは、勤怠情報をもとに給与の計算を行うためのシステムです。給与計算は各社員の就労条件に合わせて支給額や控除額を算出する必要があり、税金や保険料、年金など非常に複雑な計算が必要です。給与計算システムを導入すれば、これらの複雑な計算を効率化できるようになります。
特に、アルバイト・パートや派遣社員など、さまざまな勤務形態の社員を抱えている企業は給与計算が複雑化してしまうので、給与計算システムを導入するメリットはより大きいでしょう。
労務管理システムとは、勤怠管理や給与計算、社会保険や福利厚生の管理、労使関係の管理など、労務関係の管理を効率化するためのシステムです。先に紹介した勤怠管理システムや給与計算システムも、労務管理システムに含まれます。
人事の業務は非常に幅広く、特に社員の多い企業や社員の入れ替わりが激しい企業は労務管理業務が複雑化する傾向があります。労務管理システムを導入することで、業務負担を軽減して効率化をはかることができます。
採用管理システムとは、求人情報の公開や応募者の個人情報管理、選考の進捗状況、応募者の評価管理など、企業の採用活動を全面的にサポートするシステムです。
企業の採用活動は、複数の媒体やエージェントを利用して応募者を広く集めるのが一般的です。採用管理システムは複数の媒体・エージェントからの応募を一元管理し、比較・評価がしやすくなるメリットがあります。煩雑な採用業務を効率化することで、優秀な応募者を見極めるといった本来の業務に注力できるようになります。
タレントマネジメントシステムとは、社員の経歴や人事評価などに関する情報を集約・管理するためのシステムです。社員一人ひとりのスキルや経験を可視化して適切な人材配置に活用することで、組織力を向上させて経営目標の達成を目指すのが大きな目的です。
また、社員の育成にフォーカスをあてた活用方法もあります。全社員の経歴やスキル、キャリア意向などを登録しておくことで、サクセッションプランにおける候補者選抜の参考としたり、中長期的な育成計画の立案に役立てたりすることができます。
関連記事「タレントマネジメントシステムとは?目的・メリット・選定ポイントを解説」
学習管理システム(LMS)とは、社内のあらゆる研修や学習コンテンツなどを一元管理できるシステムです。学習の進捗管理、テスト・アンケートの結果集計管理、事前の提出物のアップロードなども可能で、社員の学習状況や理解度に合わせて個別にフォローも行えます。
学習管理システムを導入することで、各社員の学習がどこまで進んでいるか、よく受講されている満足度が高い研修は何かなどを可視化でき、個々に応じたアプローチが可能なため、学習管理の効率化だけでなく学びの効果向上も期待できるでしょう。
関連記事「LMS(学習管理システム)とは?基本機能や導入メリットを解説」
このように、HRテックにはさまざまな種類がありますが、すべてのシステムを導入しないといけないわけではありません。必要ではないシステムまで一度に導入してしまうと、社内に浸透させるまでのコストが高く、かえって手間がかかり本来の業務が滞ってしまうでしょう。HRテックを導入する際は、自社の課題や目的に合わせて導入するシステムを検討することが重要です。
HRテックを導入することで、人事の領域においてさまざまなメリットを得られます。HRテックを導入するメリットには、主に以下のようなものがあります。
人事の業務は非常に幅広く、給与計算や労務管理などマンパワーを必要とする事務作業が多い傾向にあります。HRテックを導入することで人事業務を自動化・効率化でき、人事が人事戦略に時間を割けるようになります。
また、人事における事務作業には手入力が必要なケースも多く、入力ミスや計算ミスなどのヒューマンエラーが起こりがちです。HRテックを導入すれば、人力で行う入力や計算を自動化でき、業務の正確性を確保できるというメリットもあります。
社員に関するデータを集約し、一元管理ができるようになるのもHRテックのメリットです。データの一元化によって、特定のデータを探すコストを大幅に削減できます。
また、社員のスキル・経験や学習履歴、勤怠、人事評価などのデータを可視化できるため、自社の状況を客観的に把握しやすく、今後の人事戦略の策定にも役立ちます。今後強化していくべき人材要件や組織・チームの課題を、データをもとに導き出せるようになるでしょう。
HRテックはただ導入しただけでは効果を十分に発揮できません。HRテックを導入する際は、以下の4つのステップに沿って進めていきましょう。
HRテックを導入する際は、自社がHRテックを導入する目的を明確にしましょう。導入目的が曖昧なままでは、HRテックの効果が薄れてしまう可能性があります。自社に必要なシステムを導入できなければ、かえってコストも増えてしまうので注意が必要です。
まずは現在の業務を棚卸しして、課題や問題点を洗い出していきましょう。課題が明確になったら、「どうすれば改善できるか」「改善するには何が必要か」を検討します。
導入目的と課題を明確にできたら、自社に最適なシステムやツールを選定しましょう。HRテックといっても、上述した通りサービスの種類は多岐にわたり、提供会社によってシステム・ツールに搭載されている機能やサービス内容なども異なります。そのため、自社の導入目的や課題解決に適したものを選ぶことが大切です。
なお、システム・ツールを比較する際は、機能だけでなく使いやすさやサポートの有無なども検討材料に含めておきましょう。自社ですでに導入しているシステムと連携できるかも確認しておくと安心です。また、導入前にトライアルを行っておくことで、ミスマッチを防ぎやすくなります。
新しく導入したシステムを運用するためには、今まで行っていた既存のオペレーションフローを再構築する必要があります。まずは既存のオペレーションフローを洗い出し、「システム導入によって削減・自動化できるフロー」「変わらないフロー」「システム導入によって増えるフロー」の3分類で整理しましょう。どのようにフローが変更するかが明確にできたら、マニュアルを作成して社内に展開を進めます。
システム移行後のオペレーションフローをしっかりと検討することで、無駄な業務の削減や社内のシステム定着率の向上などが期待できます。
HRテックの導入後は、定期的に効果測定を行いましょう。「課題の進捗状況はどうか」「業務の効率化はできているか」「使いにくくないか」など、導入によってどの程度効果が得られているかを確認し、必要に応じて改善や見直しを行うことが大切です。
導入から1年が経過してもあまり効果が得られない場合は、別のツールへの変更や機能の追加などを検討し、早めに改善していきましょう。
企業競争が激化するとともに働き方が多様化している現代において、人事業務もデータに基づいた効率化が求められています。HRテックを導入すれば人事業務を効率化でき、データに基づいた人事戦略を実現できるでしょう。なお、人事戦略の一環として人材育成を行う際には、HRテックの一つである学習管理システム(LMS)の導入がおすすめです。
「GLOPLA LMS」は、業務効率化や学習データを一元化・可視化でき、人事戦略の実現をサポートする学習管理システムです。シンプルなUI&UXによって管理者も受講者も迷わず操作でき、社内へのツール定着を可能にします。人事戦略のためにシステム導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご連絡ください。