eラーニングは、企業の新人教育やスキルアップ研修など様々な場で利用されている反面、「利用されない」「導入したものの形骸化している」など、運用面で多くの課題があります。今回はeラーニング運用におけるよくある課題と効果的な運用方法について解説します。
まずはeラーニング運用における課題を探るため、よく聞かれる失敗例について見ていきましょう。
eラーニングは高い効果が期待できる学習方法ですが、学習コンテンツが魅力的でなければその効果も半減してしまいます。
eラーニングの学習コンテンツを内製する場合、学習者を飽きさせないようなコンテンツの設計・制作が欠かせません。学習者が学ぶべき内容をただ羅列しただけでは、退屈な教材になってしまいます。例えば、動きのあるコンテンツ、理解しやすく記憶に残りやすいケーススタディ、テストによる記憶定着のサポートなど、集中して学習に取り組んでもらうためには設計の工夫が必要です。
また、学習者が忙しい業務時間内にeラーニングを利用するケースを考えると、学習者自身のタイムスケジュールに合わせて柔軟に学べるように、コンテンツをコンパクトに収めることも重要です。eラーニングのコンテンツは10〜60分程度のものが一般的ですが、内容を詰めすぎて長時間になると、読み飛ばされたり離脱されたりする可能性が高まります。
学習者の集中力が持続するような魅力的な構成で、かつ学習するべき内容をしっかりと盛り込んだ教材を作るためには、コンテンツ制作の専門的なノウハウが必要になります。
業務内容とeラーニングの学習コンテンツがかけ離れていて、学習者に学ぶ必要性を感じてもらえないというのも、よくある失敗のひとつです。
eラーニングの学習コンテンツは自社で独自の教材を制作する場合と、既成コンテンツを利用する場合があります。特に既成コンテンツを利用する場合は、必ずしも自社の業務内容に即したコンテンツが見つかるとは限りません。忙しい業務時間を割いてeラーニングを受講しても、業務の役に立たないと思われてしまっては、学習意欲が削がれてしまうでしょう。
また、eラーニングは基本的に座学であるため、実際に手を動かす実技習得よりも知識習得の学習に向いています。実技習得を期待する学習者のニーズはeラーニングだけではカバーしきれないため、適切な期待値調整が必要です。
このような学習方法としての特性も踏まえながら、学習者のニーズや実際の業務内容に合った学習コンテンツを用意しましょう。
eラーニングを利用するかどうかを、学習者のみに委ねているというのもよく聞く失敗例です。この場合、企業はeラーニングを導入はしているものの、実態としては管理・運用はできていないことが大半です。例えば、学習者自身が学ぶべきコンテンツに辿り着けるための広報ができていなかったり、学ぶ動機づけができていなかったりします。また、せっかくeラーニングを受講した後も、理解・定着を助けるためのフォローが行われず次の受講に繋がらないケースもあります。
こうした状況では、学習者もモチベーションを保つのが難しく、そもそも何のために学習しているのかわからなくなってしまいます。学習者が意欲を持って学ぶためには、役職や業務内容にあわせて受講するべきコンテンツを示したり、テストの結果を評価に反映させたりするなど、ある程度支援や制約を設けることが重要です。
せっかく導入したeラーニングが使われていない場合、ツールそのものの利便性が悪いというケースもあります。eラーニングは場所や時間を問わず、学習者の都合に合わせて学習できるツールです。しかし、特定のOSやブラウザ、デバイスにしか対応していない場合や、専用のツールをインストールする必要がある場合、学習者はアクセスに不便を感じて学習意欲を削がれてしまうかもしれません。
また、画面の操作性などUI/UXに問題があることが理由で、導入したeラーニングが使われないこともあります。日頃からスマホアプリの操作に慣れているユーザーにとっては、ビジネス用途のシステムは非常に使いにくいと感じるものが多く、操作に手間取ってしまうと、それだけで学習を諦めてしまうケースも少なくありません。
ここまで説明したような課題をクリアするためには、eラーニングをどのように運用していけばいいのでしょうか。eラーニングの運用を成功させるためにおさえておくべきポイントをご紹介しましょう。
eラーニングにおけるトレーニングプランを作成する際は、自社の現状や課題を踏まえてプランニングを行う必要があります。組織の方向性と学習コンテンツの方向性がずれてしまっては、学習の意義が見出せず、学習者もモチベーションを保ちにくくなります。
例えば、営業力の強化に取り組みたいのであれば、営業職の社員を対象にヒアリングなどのコミュニケーション力、ロジカルシンキングなどの思考力に関するコンテンツを用意すると良いでしょう。また、組織として社員一人ひとりのキャリア支援をしていくために、実務に直結した学びだけでなく、経営やマーケティングなどの幅広いビジネス知識を学べるコンテンツを用意する事例もあります。
適切な学習コンテンツを用意できたら、次は学習に取り組んでもらうための環境づくりを行います。まずはeラーニングを使って学習できることを、社員に伝えましょう。イントラや社内メールで周知したり、経営層から直々に発信してもらったりと、一度だけでなくさまざまな手法で繰り返し伝達すると良いでしょう。
社員にeラーニングを認知してもらっても、実際に自分が何を学ぶべきかがわからず戸惑ってしまうことも多いです。育成体系やスキルマップと連動したカリキュラム一覧を提示するなど、誰にどのような知識・スキルを得てほしいかを体系的にまとめましょう。
学ぶ意義を理解してもらうために、社員が学ぶべきコンテンツを人事や上司から個別におすすめしてもらうのも良いでしょう。なぜ今これを学ぶべきかが明確になることで、学習意欲の向上にもつながります。
また、学習者の離脱につながらないように、直感的にわかりやすいUI / UXのシステムを選定することも重要です。
eラーニングの学習効果を高めるためには、学習者の受講進捗やテスト結果などを把握して、適宜フォローを行うことも有効です。学習が進んでいない場合は受講を促すだけでなく、就業時間内に学習するための時間が取れるかどうか、学習コンテンツの時間が適切かどうかなどのアンケートをとることで、運用の改善点がつかめる場合もあります。
eラーニングの学習管理システム(LMS)には、学習者に対するメール送信機能やアンケート機能を備えているものもあります。一人ひとりの学習状況をチェックしながら、アンケートやヒアリングなどで適宜フォローを行っていきましょう。学習開始後のフォローは効果的な運用においては欠かせないほど重要な一方で、継続的かつ一定の工数がかかる取り組みです。効率的なフォローができる体制をつくるために、ツールの利便性や使いやすさもポイントとなります。
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eラーニングの運用で効果を出すためには、学習の取り組みを評価することも有効です。
例えば、eラーニングの学習状況を人事評価と連動させる方法があります。eラーニングの学習管理システムで取得できる学習の進捗状況や理解度テストの結果を、人事評価に組み込むような方法です。学習の取り組みを人事評価の対象とすることで、よりeラーニングでの学習が促進されることに加え、称賛されるべき行いとして「学習する文化」を根付かせられるメリットがあります。ただし、会社で用意されたeラーニング以外で意欲的に学習している社員もいると考えられるため、一概にeラーニングの学習状況だけを人事評価に組み込むのは危険です。人事評価と紐付ける際には、細心の注意を払う必要があります。
また、例えば組織で自律学習を推進している場合、学習する姿勢が組織の文化形成に貢献したと見なし、学習行動そのものを評価するのも良いでしょう。組織開発の目的次第で評価項目は変わるため、目的に応じた学習データの評価方法を検討しましょう。
生活や仕事におけるオンラインの比重が増えている昨今、eラーニングはこれまで以上に重要な教育ツールとして注目を集めています。ただし、効果的に学習してもらうためには体系的なトレーニングプランの構築など、運用側のフォローが重要といえるでしょう。
「GLOPLA LMS」は、誰でも使える使いやすさにこだわった学習管理システムです。社員にとって学びやすい環境を構築することはもちろん、導入・運用サポートにより、学習者のフォローアップ体制構築をお手伝いします。eラーニングや内製研修など、研修管理にお悩みの方は、ぜひお気軽にご連絡ください。