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マネジメント層の自己変革を通じて、ハイスピードで自社の変革に挑む

サントリーウエルネス株式会社 2023.02.20

ヘルスケアやスキンケアの事業を手がけるサントリーウエルネス様は、健康食品業界のトップランナーとして長きにわたり成長し続けてきた企業です。しかしながら、近年は取り巻く環境変化によって、自社の変革に取り組む必要性に迫られていました。

同社は、自社の変革を目的とし、選抜されたマネジメント/リーダー層が経営者としての視座と覚悟を得るための「ウエルネス経営塾」(以下、本プロジェクト)を2021年より実施しています。本プロジェクトを企画・運営している同社の経営企画本部 部長 小北 拓己様、課長 連達 彰様、杉田 幸平様にお話を伺いました。(役職はインタビュー当時)

はじめに:本プロジェクトの概要

サントリーウエルネス様は、「セサミンEX」をはじめとするヘルスケアやスキンケア商品の開発・製造・販売を行う企業です。健康食品事業において業界を牽引する企業として成長し続けてきた一方、デジタル化の進展などによる消費者の変化、さらには競合他社の参入による競争激化に直面しており、2020年に就任した沖中直人社長のもと、自社の変革に本格的に取り組むこととなりました。

成長するウエルネス市場にスピード感をもって対応するために、既存事業のビジネスモデル変革、その主要施策としてDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に取り組む戦略を策定。さらに人事面において、高度専門人材(DX人材)の採用とともに、本プロジェクトを最重点の変革プロジェクトとして位置づけました。

本プロジェクトは沖中社長の強いコミットメントのもと実施されており、サントリーホールディングスの新浪剛史代表取締役社長をはじめとしたグループ経営陣の協力も得ながら進める体制を組んでいます。受講者は約半年間をかけて、ビジネス良書を通じた学びや講師・仲間との対話を通して自己認識を深め、ホールディングス経営陣へのインタビュー、沖中社長も参加しての「擬似経営会議」などによって自己変革に向き合い、経営者の視座と覚悟を得ていきます。

2021年春にスタートした本プロジェクトは、2022年末までの時点で既に4回実施され、マネジメント層やマネジメント層手前の選抜リーダーを含め、全社員の2割超が受講。変革の早期実現に向け、類例を見ないハイスピードで実施を重ねていることも特徴のひとつです。

<本プロジェクトの全体像>

知の獲得(Knowing)と行動(Doing)の反復を通じてありたいリーダー像・大目的(Being)を磨き上げる

インタビュー:プロジェクト実施の経緯

プロジェクト前に抱えていた問題意識

小北さん:

当社は事業スタートから20年近くサプリメントを通じて多くのお客様に支えていただきながら、事業成長を続けてきました。ところが近年、業績自体は伸びているものの、2015年の機能性表示食品制度導入により競合他社が相次いで健康食品市場に参入、さらには生活者の購買行動がデジタル化によって大きく変化しました。このまま同じ戦い方をしていてはシニア以外の世代のお客様には支持されず、今後の成長も見込めないことが明白になっていました。

そのような状況下で、2020年に就任した沖中社長のもと、ビジネスモデルを変え、自社を変革するプラン「アンビシャスビジョン2025」が描かれました。大きな戦略転換もスピード感も求められるこのビジョンの実現は、社長1人では到底できるものではありません。

一方で自社の現状に目を向けると、各機能が過去の成功体験をもとに培ってきた「業務プロセスを効率よくやり切ること=オペレーショナル・エクセレンス」が行動様式として組織に根付いていたのです。

右肩上がりの成長を経験してきた当社の社員は、能力が高く、素直、且つ真面目に仕事に向き合うメンバーばかりです。ですが、成り行きでは達成できないアンビシャスビジョンの実現に向けては、マネジメント層のマインドや行動を変革し、組織としての経営力や実行力を大きく高めなければなりませんでした。

そこで、沖中も企画に入る形で、選抜マネジメント層を対象とした本プロジェクトの検討が始まったのです。目指すスピード感を踏まえると、じっくり検討する時間の猶予はありませんでした。そこでグロービスさんにお声がけし、経営課題と解決の方法論について議論を重ねる中で、当プロジェクトのご提案をいただきました。初回面会が2021年の初頭、本プロジェクトのスタートとなる第一期はその3か月後の4月に開始するという速さでした。

しかも、プログラム内容は当社の課題意識に沿ってすべてカスタマイズいただいたものであり、ホールディングスの経営陣まで巻き込む大きなプロジェクトです。トップである沖中のコミットメント、そしてグロービスさんのスピーディーなご提案と実施準備がなければ実現できないものでした。

経営企画本部 部長 小北 拓己様

プロジェクトで目指していたゴール

小北さん:

マネジメント層が当社の経営をリードする強い覚悟をもち、経営者の視座を得て自己変革できるようになることをゴールとしました。

自己変革をテーマにしたのは、社歴が長い社員ほど強くもっている固定概念を変えてほしいとの考えからでした。業務プロセスを効率よく進める「オペレーショナル・エクセレンス」を良しとしてきた価値観から脱却し、自己変革をしてほしかったのです。その上で経営の視座を得て組織をリードする存在になることを目指しました。

連達さん:

ゴールに到達するために、講師と受講者が教え教わる関係だけでなく、人対人の関係で向き合い続けるのも本プロジェクトの特徴です。受講生の足りない点についての講師からの率直なフィードバックや、思考を促すための繰り返される問いは、受講者の成長や自己認識を促すためには大事な要素でした。私も仕事柄さまざまな研修企画をしてきましたが、本プロジェクトはこれまでにはないタイプの内容でした。当社にとっても、私たち企画側にとっても、前例のないチャレンジだったのです。

経営企画本部 課長 連達 彰様

プロジェクトの主な内容

実施において大事にした点

杉田さん:

ゴールとする自己変革に至るまでの「自己認識」に時間をかけることが、本プロジェクトの特徴のひとつです。自分に向き合うことは時に苦しい営みですが、これを乗り越えないと自己変革にはつながらないと考えていました。

何によって自分の仕事に対する姿勢や思考が形作られているのか、根底にある価値観は何か、そして今後の変革にコミットメントするための阻害要因は何か。ここに徹底的に向き合うことが、その後の行動変容の土台となります。この自己認識の深さによって、本プロジェクト終了後の実行力の質が左右されると思っていました。

連達さん:

ホールディングスの経営陣へのインタビューや擬似経営会議での経営トップへの提言を通して、今まさに経営を実践している人たちの考えに触れ、フィードバックをもらって、自分にもう一度向き合うというプロセスにもこだわりました。これは多くの経営陣の協力を得ないと実現できないことですので、準備は大変でしたが、実際の行動の質を上げる取り組みとして必要だと考えました。

新浪をはじめホールディングスの経営陣には、惜しみない協力をもらっています。第一期から第四期まで、各期から1回1時間のインタビューの時間をもらっており、経営陣も人材育成を重要な経営イシューと捉えていると思います。

沖中も、本プロジェクトの初日と擬似経営会議、最終答申には必ず同席し、期待を伝えると同時に厳しいフィードバックもしています。経営トップから直接投げかけられるフィードバックによって、受講者の思考のレベルが上がっています。

実施してのご感想、受講者の変化

杉田さん:

私は事務局として企画・運営に携わりながら、第四期の受講者として参加しました。自己変革という難しいテーマであっても、方法論が存在すること。そして学びを行動に移すことができれば自己変革はできるのだと体感できたことは、自分の大きな糧になりました。

ホールディングス経営陣へのインタビューは、複数の役員へ行いました。人によって言葉は違えども背景にある思想は同じであり、さらには読書会での書籍とも共通点を見出すことができました。書籍をただ読んでいるだけでは、その内容は遠い存在のように思えますが、自分達の身近にいる経営者がまさに実践していることだとわかったのです。本プロジェクトで学んでいることを実践し続ければ、自分も経営リーダーに近づいていけるのだろうと感じましたし、すべてのインプットが頭の中でつながりを持って整理できました。

これまでも当事者意識をもって仕事に向き合ってきたつもりですが、経営の視座で物事に向き合うとは、ここまで様々な角度から考えることや気を配ること、行動を変える事が必要なのだと気づき、自分自身をもっと変革しなければいけないと感じました。

経営企画本部 杉田 幸平様
小北さん:

書籍を読むだけでは「自分ごと」になりきれないことはありますよね。本プロジェクトでは、講師が「味読(みどく)」という言葉を使います。「味わいながら読む」という意味です。杉田の経験は、まさに「味読」ができたのだと思います。

講師からは、その他にも受講者にとって指針となる多くの学びを、キーワード化して伝えていただきました。といっても単語を伝えるだけではなく、受講者の考えを深くするための問いを幾度となく投げかけていただいたうえで結晶化されたキーワードです。そのため、一人ひとりにとって腹落ちした状態で記憶に残るのです。

こうしたマネジメント層の「共通言語」があると、日々のコミュニケーションコストが下がり、コミュニケーションの質が上がります。本セッションは今もなお継続しており、全社員の2割以上が受講済となった今、この共通言語は、組織変革の原動力となる手応えがあります。言葉や思考、基準、目線が揃っていると組織力が上がりますから。

また行動面では、会議での発言やリードの仕方が明らかに変わったメンバーが増えています。変革の傍観者から当事者に変わったのでしょう。企画者としては素直に嬉しいですし、この変革の灯火をもっと広げていきたいと改めて思っているところです。

コンサルタントの風間さんには最初の企画段階から伴走いただいており、もう同僚や戦友のような存在です。当社について深くご理解いただいています。

今後の展望

小北さん:

本プロジェクトはたった2年弱で第四期までを終えるハイスピードで実施を重ねており、我々は企画と運営を一年中続けているという苦労はあります。ですが、沖中も私も、当社の変革はこのスピード感でやらなければならないとの意識を強くもっています。

2023年初頭からは、第五期がスタートします。さらに今後は国内にいるマネジメント層のみならず、海外駐在員やローカルのビジネスリーダーにも受講してもらうことを検討中です。企画者としては、オンライン、且つ英語という言語の壁を乗り越えるチャレンジが待っています。

また、本プロジェクトをきっかけに自己変革したマネジメント層の意識を維持し、アップデートし続けなければなりませんし、それを組織全体へ波及する取り組みも必要です。

受講者一人ひとりにとっては、過去の習慣が根付いている自分と、本セッションで得られた学びとのせめぎ合いが心の中で起きていると思います。その中で自己変革に取り組み続け、当社の変革に向き合うようになるには時間がかかるでしょう。この葛藤を乗り越え、経営の視座で戦略を描き、メンバーを巻き込んで戦術を実行する、真のリーダーになっていくことを期待しています。

杉田さん:

その一環として、本プロジェクトはアフターフォローにも力を入れて取り組んでおり、部長層は沖中との1on1コーチングを行っています。自己変革に至らない場合は、繰り返し行うなど丁寧に行っています。

連達さん:

加えて、今後重要になるのは新たな組織カルチャーの醸成と定着です。この2年の間に、グループ他社からの異動や特にデジタル人材の中途採用によって当社に入ったメンバーが急激に増え、ひとり一人の社員のバックグラウンドが多様化している今こそ、組織カルチャーを醸成する絶好のタイミングだと捉えています。

これからの当社は、チャレンジを認め、失敗してもそこから学んで次の成功に活かすカルチャーを作り、多様性を認めながら一体感を醸成していかなければなりません。当社は、マネジメント層や社員の努力もあって成長し続けてきたことに変わりはありませんが、その成功体験が自社の変革の邪魔をすることのないよう、カルチャー醸成に取り組んでいきたいと思っています。

杉田さん:

カルチャー醸成の具体的な取り組みは、2023年の大きなテーマです。当社のビジョンを再定義したので、それを浸透させるセッションを実施中です。今は部長層向けに、ビジョンの言葉に向き合い、自分にとっての意味合いを見出し、腹落ちするためのセッションを実施しており、2023年からは課長層やリーダーに対象を広げて行います。このセッションは1回で終えるものではなく、2回、3回と繰り返し丁寧に実施していきます。

並行して、「アンビシャスミーティング」と称した全社員で語り合う場でも、ビジョンについて対話する予定です。ここでは、経営塾を受講済みのマネジメント層が場をリードする形式を取ります。ビジョンが自分達にとってなぜ大切なのか、どう行動に落とし込んでいくのかを、対話を通じてメンバーが腹落ちすることを目指します。

小北さん:

カルチャーの醸成にあたっては、「規律」も大事にしていきたいですね。これはルールに対して自らを律するという厳しい意味ではなく、変革への当事者意識をもって、自らを律して動き続けよう、という意味合いです。

社員一人ひとりの成長なくしては、変革は成し遂げられません。そのためにはマネジメント層がメンバー一人ひとりと向き合い、成長をサポートし、その結果として組織のアウトプットを高める人材育成の意識をもつことが不可欠です。そうしたマネジメント層が社内の至るところで活躍し、変革を実現するにはまだ道半ばです。本プロジェクトをこれからも継続するとともに、新生サントリーウエルネスのカルチャー醸成にも力を入れ、多くのお客様が健康な生活を送るためのプロダクトやサービスを提供していきたいと思います。

担当コンサルタントの声
風間 信宏

私は第一期の企画から関わらせていただいていますが、どの期の受講生も自分の価値観に根差した目指したいリーダー像を明確にし、最終日に経営の視座で自分がやるべきこと/やりたいことを力強く語っていることがとても印象的です。

ウエルネス経営塾では、自身の価値観やウエルネスで成し遂げたいこと、リーダーとしての成長などの問いに向き合い続けます。セッションで新たな学びを得て、自身の考えをアップデートした上で、仲間と対話し、組織で考動する中でまた問いに対する考えをアップデートする。このサイクルを回し続けることが自己認識を深め、リーダーとしての軸を確立し、自身を変革していくことに繋がります。最終日に自分の言葉で語れるのは、プログラムの中で徹底的に自分と向き合った結果だと思いますし、負荷の高いプログラムに真摯に取り組まれた受講生には改めて尊敬の念を抱いてます。

今まさに変革に取り組まれているウエルネスさんにおいて、各組織で活躍されている受講生の話を聞くたびに、事業への貢献、人・組織の成長支援という我々の仕事の意義を感じます。今後もアンビシャスビジョンの達成に向け、外部パートナーとして全力で伴走させていただきます。

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