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技術力を糧に発展し続ける老舗企業の組織変革へのチャレンジ

新日本理化株式会社 2022.09.05

創業から100年以上の歴史を持つ総合化学メーカーである、新日本理化株式会社様。これからも末永く成長し続けるための組織変革に挑んでいます。今回、会社の未来を担う次世代メンバーの行動変容を目指して実施した「次世代リーダー研修」(以下、本プロジェクト)の企画者である、同社の代表取締役 社長執行役員 三浦 芳樹様にお話を伺いました。(役職はインタビュー当時)

はじめに:本プロジェクトの概要

新日本理化株式会社様は、高い技術力を原動力に、長年にわたりオレオケミカル、可塑剤(かそざい)など優れた製品を生み出す総合化学メーカーです。その既存事業の強さゆえに、新たなチャレンジよりも安定を求める組織風土が強く、時代の変化に合わせながら成長し続ける企業であるためにはリーダー層の行動変容が必要でした。

三浦社長は2020年6月の社長就任後から様々な風土改革に取り組まれており、その一環として本プロジェクトを実施。現場の牽引役となるメンバー13名を対象に、志を高め、経営スキルを習得した後に自社への提言を通じて、意識変容と行動変容を促すことを目指しました。

1年弱に及ぶプロジェクトは、大きく3つのフェーズに分かれています。Phase1では三浦社長との対話や社外講演、個別面談を実施し、受講者の参加意欲を高めます。Phese2は他流試合の形式で経営スキルを習得。Phase3は実践フェーズとして、自社の課題を設定しソリューションを提言する内容でした。

<プロジェクトの概要>

三浦社長インタビュー:プロジェクト実施の経緯

プロジェクト前に抱えていた問題意識

私が当社に入ってから、社員に対して感じたのは「いい人が多い」ことでした。逆に言えば、熱意やモチベーションをもっと前面に出してほしい、そして自分の意思で結論を出し、積極的に意見する行動を望んでいました。

当社はこれまで総合化学メーカーとして既存製品に支えられてきました。その一方で、世の中の激動ともいえる変化を踏まえると、このままでは生き残っていけないのではないかと危機感を覚えたのです。

会社の変革とは、人の力あってこそだと考えています。私はまず、社員との関係構築のために対話を積み重ねました。社長室のドアは常に開きっぱなし。社員との1対1の面談も、オフィシャルな場以外での対話もウェルカムです。とにかくオープンコミュニケーションを実践してきました。

代表取締役 社長執行役員 三浦 芳樹様

ここから更なる行動変容を促すために、社員の視座を高くし、視野を広くする機会をつくりたいと考えていました。その際、社員にとって内輪という認識の役員陣よりも、第三者の方から促していただくほうが当社の場合は効果的だと思い、外部の力をお借りすることにしました。外部の刺激を受けて、社員1人ひとりが安定した日常に落ち着いてしまうことなく、自分の中に波風を立たせることを期待していました。

本プロジェクトの対象者は、40歳前後としました。その理由は2つあります。1つ目は、風土改革の時間軸です。組織風土を変えるには10年はかかるでしょう。10年後、当社の中心にいる世代に今回学んでほしいと思いました。もうひとつは、この世代は実務経験を十分に積んでおり、これから具体的に活躍するタイミングであるという点でも最適だと考えたのです。

今回グロービスさんにお願いしたのは、我々の課題を踏まえ、意識変容を促す手伝いをしていただきたいという期待値に最も近い提案内容にしてくださったからです。丁寧に言語化された説得力のある提案書を毎回ご準備いただき、それをたたき台として議論を重ね、最終的なプログラム内容を固めていただきました。そのプロセスも、我々の意識とマッチしていたように思います。

プロジェクトで目指していたゴール

一連のプロジェクトを通して目指していたのは、意識変容、行動変容です。自分達で物事を考え、結論を出し、意見を具申する。こうした行動が生まれることをまず目指しました。社員が何かを仕掛けて事業化し、成功するための第一歩です。

ゴールを目指すにあたり、私も集合研修には、毎回アテンドすることにしました。普段、社外と深く接する機会が少ない社員にとって、社外の刺激は多いほうが学びになるだろうと考えたからです。社員にとっては、私も社外から来た「異分子」です。グロービスさんに加えて私という異分子も加わり、多くの異分子の中で、今まで見たことがない世界を見て学んだほうがゴールに近づけるのではないかと思いました。

このような考えから、最終発表会にも2人の社外取締役をお呼びしました。お2人とも非常に見識が高く、役員はじめ社員が皆、信頼を置いています。こうした外部の人がいる席で自分の提言内容を発表し、社内とは異なる視点のフィードバックをいただいたり、多様なリーダー像を目の当たりにすることが、今後の糧になるだろうと考えました。

プロジェクトの主な内容

実施において大事にした点

受講者には、本音で議論する経験をしてほしいと考えていました。そのため、セッションの現場で私は受講者に何度も「これが足りない」「これが欠けている」と率直に意見しました。中でも評論家のような意見には、かなり厳しく指摘しましたね。その理由は、先ほど申し上げたように、営業を除く当社の社員は、社外との接点に乏しいメンバーが多いからです。そこに当社のこれまでの風土も影響し、業務で結果が出なくても厳しい意見は飛んできません。このままでは、意識も行動も変わるきっかけがないのです。私もアテンドするからには、全力で受講者とぶつかりました。人に変わってもらおうと思ったら、こちらも全力で行く必要があります。隙があったら見透かされてしまいますから、何かを教えたり学んだりするなら、どちらも全力であるべきですよね。自分で逃げ道をつくらず、全身全霊でぶつかることで良いものが生まれる体験を受講者にもしてほしかったのです。

グロービスの大嶋講師には、受講者の気づきを促すセッションを行っていただきました。当社の現状を踏まえると、もう少し厳しく進めていただいてもいいと思い、途中でご相談してチューニングいただきました。これは大変ありがたかったです。担当コンサルタントの大矢さん、高津さん、そして当社の経営企画のメンバーを含めたOne Teamとして、このプロジェクトを引っ張っていただきました。本プロジェクトを通して、関わった幹部メンバーも刺激を受け、意識変容したことも収穫でした。

受講者も、回を重ねるごとに真摯に取り組んでいたように感じます。やらされ感は消え、能動的に動き、ためらうことなくコミュニケーションするようになっていきました。この場が新鮮だったことも作用したのでしょう。受講者も「本音で意見し合うことで、アウトプットの出来がどんどん良くなっていった」との実感を持てたようでした。

実施してのご感想、受講者の変化

私が毎回のセッションにアテンドしていた理由の1つに、受講者が変わっていく様子を逃さずにしっかり見たかったというのがあります。受講者の中には中途で入社して間もない社員もいましたので、他のメンバーとどのように影響を与え合って変容していくのか確認したかったのです。そこで感じたのは、成長曲線とは人それぞれだということです。皆が一本調子で伸びていくわけではないんですね。成長したりつまずいたり、前回までできていたことが上手く進まなくなってしまったり。グループ内でリーダーシップをとる受講者が変わっていく様子も見られました。人の成長とは面白いものですね。

具体的な成果はこれからだと思っています。プロジェクトを通して意識変容が起き、それが行動変容に結びついた時に、初めて我々第三者に見えるわけですし、すぐに変化が起きるものでもありませんから。ですが、対象の13人を1年弱見続けて、仕事の進め方や発言内容が変わったと感じるメンバーが出てきました。視座や視野が変わってきたのでしょうね。

劇的に行動変容したメンバーも出てきました。人が変わったのではないかと思ってしまうほどです。プロジェクトでスキルがついたのはもちろん、一度、自信を完全に打ち砕かれたのが良かったのではないかと思っています。この受講者のチームのアウトプットは、途中の評価が芳しくなく、そこから発奮したんです。過去の自分を一旦捨てたのでしょう。自分で決断し、意見を言い切るようになりました。業務でも私に対して「この後、どうしますか?」ではなく「こうします」という話し方に完全に変わりました。

プロジェクトが終わった後も最終発表会での提言内容をブラッシュアップし続け、実現に向けて今もなお奮闘しているメンバーもいます。そのうちの1人は私のところへ、私と対話したことがない社員を連れて話をしに来るようにもなったのです。プロジェクトメンバーが他の社員の意識をも変えていっているのですね。私に物怖じせず意見を言う、当社では貴重なタイプでもあります。プロジェクトメンバーの多様性をできるだけ意識したからこそ、このような変化が生まれたのではないかと思っています。

また、会社全体としても、経営陣が出す新たな施策に対して拒否反応を示すのではなく、「どうやったらできるのだろう」とやり方を考えるようになってきたと感じます。

そして私は意識していなかったのですが、お客様から「新日本理化さん、雰囲気変わったね」と言われるようになったんです。これは嬉しい出来事でした。当社はお客様がご来社されることも多いのですが、当社オフィスを訪れた際に、明るくなったと口々におっしゃってくれます。1人ひとりのモチベーションが少しずつ上向いている表れなのかもしれません。その要因は、やはり現場のリーダーですね。メンバーは無意識であってもリーダーの振る舞いに引っ張られるものですから。

今後の展望

意識変容、行動変容が起きてそれが風土として根付くまでの過程では、これからも、気づきを得るための節目やきっかけが必要だと考えています。そのためには研修は非常に有効な手段です。

今回受講した13人に対しては、さらなる実践編として、社内で何か取り組めないか検討中です。1回のプロジェクトに参加しただけで、その後ずっと自分自身でフォローしていくのは大変ですから。学んだことを無駄にせず、考え方や行動を変えたら、それはその人の財産になるとも思うのです。受講者たちも「選んでもらった責任を果たさなければならない」と意欲が増しています。10年後、20年後に当社の中心人物となるメンバー達が成果を出せるようになるまで、行動変容の営みは続きます。

当社では、これからも研修等のいろいろなチャンスを作り続けていきます。その際、同じことを繰り返すのではなく、世の中の情勢や当社の状況によって目的が変わり、内容も変わっていくでしょう。その時の社員の節目やきっかけにつながる内容であることが、やはり大事だと思います。今回参加できなかった社員も、発奮して自分でチャンスを掴むことを期待しています。

社員との対話の時間は、これからも優先的に取っていきます。何回も話をしているうちに、私にも率直に意見する社員が増えてくれれば本望です。研究本部では「何がやりたい、なぜやりたい、やったら世の中や会社がどう変わる」といったことを発表する場を作りました。研究者が『主体的』なマインドで、情熱を持って研究に取り組んでほしいと思っての企画です。

会社の仕組みとしては、評価制度をこの4月に変えました。失敗を恐れず、チャレンジした人を大いに評価する制度内容です。チャレンジすれば評価され、それが働く意欲につながります。評価以外の人事制度もこれから少しずつメンテナンスして、自社に最適な内容にしていきたいと考えています。

こうして当社を、社員1人ひとりが自分の意思を持って、ポジティブに物事を考え、決断し、チームへ貢献する、「本当の意味での一人称」を実行するメンバーの集団にしていきたいです。そういう人づくりを、たゆまずやっていきたいというのが私の永遠のテーマです。そして、新日本理化を、もっと良い会社にしたい。良い会社とは、社員が家族へ自慢できるような会社であること、そしてお客様に「とりあえず新日本理化に相談してみるか」と思ってもらう会社だと考えています。当社には、昨年経営企画部がつくってくれた素晴らしい経営ビジョン『Be the best SPICE!』と行動指針がありますので、次は社員の意識変容、行動変容あるのみですね。
人を創ってビジネスを創る、この繰り返しの正循環を私の時代につくり、次の時代のメンバーへバトンを渡したい。一歩一歩進んでいきたいと思います。

<新日本理化様のVision2030>

新日本理化三浦社長はじめ経営企画部の皆様と講師及び弊社コンサルタント

担当コンサルタントの声
大矢 雄亮

私は本プロジェクトの全体企画、そして、初日や最終日などいくつかのセッションでファシリテーターとして関わらせてさせていただきましたが、とても印象的だった場面が3つあります。

1つ目は、初日の終了間際に事務局から受講生の皆さんに「このプロジェクトにこれ以降も参加するかどうか、皆さん自身が選択してください」と判断を委ね、本気で当社変革に携わりたいメンバーだけに参加継続を求められたこと。
2つ目は、プロジェクト内で何度か実施した「社長とのフリー質疑(1時間以上)」において、どんな質問に対しても三浦社長が全身全霊、ご自身の言葉で惜しみなくお話をされていたこと。
3つ目は、最終発表の当日、社外取締役を含む経営陣からの様々な質問に対して、受講生の皆さんが堂々たる立ち居振る舞いで自分たちの考えを述べられていたこと。

これらはいずれも、本プロジェクトの位置付けが「当社の変革を推進していく場そのもの」であったことに起因するものだと思います。
これだけ企業変革にダイレクトな取り組みに携わる機会をいただけたことを大変光栄に思いますし、社長や事務局の皆さんと二人三脚で進めてきた過程は私たちにとっても大きな意義・やりがい、そして学びに満ちたものでした。
受講生の皆さんの更なるご活躍や、当社が更に進化していかれる今後がとても楽しみですし、私たちもその当事者としてこれからも応援・伴走させていただきたいと思っています。

高津 渚

本プロジェクトの伴走を通じて、企業・組織の変革の実現には、関わる一人ひとりが『主人公』のごとく、それぞれの役割の中で本気でひたむきに行動することの大切さを改めて実感しました。

ご参加者、経営陣、ミドルマネージャー、人事担当者、そして私たち共創パートナーも含めて、全員が真剣に取り組み、 互いをスパイスのように引き立て合うことで大きなうねりが生まれました。まさに、新日本理化様の経営ビジョンである「Be the best SPICE!」を体現されていました。これからも、本プロジェクトに関わった方のみならず、たくさんの『主人公』が登場し、皆で力を合わせて変革を成し遂げられるのだと確信しています。

私たちグロービスのミッションは、チャレンジングな局面に対峙する方々を応援し、共に組織変革を実現していくことであり、今回伴走させていただいたことは何事にも代え難い喜びです。
この記事を読んだ方々にも、この熱量が伝播し、諦めずに積極果敢に活動するための原動力の1つになればと、心より願っています。

担当ファシリテーターの声
大嶋 博英

本プロジェクトのアンカー講師を担当しました大嶋です。
通常こうした自社課題プロジェクトにおいては最終発表会に社長向けにプレゼンを実施する形が殆どでしたので、社長にすべての回にご参加いただくプロジェクトは私にとって運営面で相当チャレンジングなものでありました。
しかし、社長や経営層の皆様の会社を良い方向に変えていきたいという強い思いや、グロービスのコンサルの熱い想いに共感し、「これは私も一人の人間として胸襟を開き、恥をかいてもいいから対峙しないといかないな」と腹をくくることができ、結果として私の能力・経験をフル動員して運営してまいりました。

本プロジェクトでは、関係者全てが評論家・傍観者になることなくコミットしたことが、良い意味で受講生に逃げ道を与えず受講生の行動変容に繋がったと思います。最終発表会において社外取締役の方から外部からの厳しい視点やアドバイスを提示頂いた点も大変有益でした。

経営資源はヒトモノカネといわれますが、結局すべてを人が動かしていると考えますと、ヒトヒトヒトと言っても過言ではありません。
今後、三浦社長のようにヒトという経営資源の質的向上(=人材育成)にご自身の時間を多く振り分ける経営者が増えてくるべきと強く感じたプロジェクトでした。

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