次世代リーダー育成には、どのような研修パターンがある?

2020.02.20

次世代リーダー育成とは、次世代のリーダー候補者に研修や難易度の高い仕事を割り当てることを通じて育成する取り組みを指します。経営人材育成とも呼ばれ、次世代のリーダー(経営幹部)を継続的に輩出するために行うものです。

 

本コラムでは育成のうち、次世代リーダー研修にフォーカスします。そもそも次世代リーダーを育成するために、どのような研修を行えばよいのか? を筆者の経験をもとに、代表的な3つの研修パターンを紹介しながら、この問いについて考えていきます。

 

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次世代リーダー研修の王道パターン

まず、次世代リーダー研修の王道パターンから見ていきましょう。王道パターンの構成では、冒頭にマインドセットを行った後、経営の定石を押さえ、自社の経営課題解決に取り組みます(図1)。

次世代リーダー研修の王道パターン

図1:次世代リーダー研修の王道パターン

 

具体的には、マインドセットのパートでは経営陣などの講話を通じて研修に臨む姿勢を作ります。インプットのパートではビジネスに必要な「ヒト・モノ・カネ」の3領域を学び、アウトプットのパートで既存事業の変革、新規事業の立案、理念・ビジョン策定などをテーマにした課題に取り組みます。半年~1年ほどの期間、3週間~1ヶ月に1度の頻度で集合セッションを行うパターンが多いです。

 

王道パターンの特徴は「アクション・ラーニング」の実施です。アクション・ラーニングとは、実際の経営課題を題材として、少人数のグループで解決策を立案・実施する研修スタイルです。アクション・ラーニングには2つの効果が期待できます。

効果1:”わかる”と”できる”のGAPが埋まる

アクション・ラーニングでは実際の経営課題に対して課題を分析し、解決策を立案することが求められます。そのプロセスを通じて、知識やスキルの修得(=わかる)に加え、現場に帰ってから再現しやすくなる(=できる)という効果が見込めます。”わかる”と”できる”には大きなGAPが存在し、そのGAPを少しでも埋められるのが、アクション・ラーニングの効果です。

効果2:ストレッチ課題へのチャレンジを通じて視野が広がり、視座が高まる

アクション・ラーニングで扱うのは”経営課題”です。受講者にとっては、日常の責任レベルや過去の経験範囲を超えたストレッチな課題でしょう。1、2段上のレベルの課題に取り組むことで、受講者は次世代リーダーとしての視野を拡げ、視座を高めることができます。

 

刺激・対話・内省でぶれないリーダーとしての「軸」を磨くパターン

リーダーとしての「軸」を磨く研修も、代表的なパターンの一つです。軸とは自らの行動を決定する際のぶれない判断基準、あるいは自分自身が大切にしている考えや譲れないものを指します。

 

軸を磨く研修では外部から多様な刺激を受け、参加者同士で対話し、自問自答を繰り返します。多様な刺激の例としては、歴史観や人間観など各領域の有識者からの講演が一般的です。その後、ファシリテーターからの問いを受け、仲間との議論を繰り返します。

議論で大切なことは、多くの事柄の共通解や昔から変わらない考え方・価値観を見つけ、自分の言葉で話せるレベルまで納得・腹落ちさせることです。その後、経営への活かし方を洞察するとともに、研修中に感じた違和感や矛盾に向き合います。

 

軸を磨く研修の特徴は、「刺激」「対話」「内省」を繰り返すことです(図2)。

刺激・対話・内省でぶれないリーダーとしての「軸」を磨くパターン

図2:刺激・対話・内省でぶれないリーダーとしての「軸」を磨くパターン

 

自分とは異なる価値観・背景の人と対話することで、自分自身を客観的に見つめなおし、自己否定と自己肯定を繰り返します。現状に安住してはいけないという危機感(自己否定)に気づき、目指すリーダー像を選択し、自分がやらねばならないと当事者意識を高めていく(自己肯定)ことを繰り返すのです。この反復により、リーダーのあり方について悩み抜きます。その結果、リーダーとしての問題意識に目覚め、自身のリーダー像を深化させ、根底にある考え方や価値観を明確にして確固たる「軸」の確立につなげるのです。

 

他流試合で視野を拡大するパターン

他流試合を通じて、次世代リーダー研修を行うパターンもよく見られます。たとえば、大学や研修会社などが運営するオープンスクールに、仕事の合間に一定期間通学するパターンです。学ぶ内容は、将来経営に携わる人間として必要な「ヒト・モノ・カネ」の3領域が主流です。

他流試合の懸念点は、多くの企業から受講者が集まるため、研修内容が自社や受講者の課題にマッチしない可能性があることです。そのため企業によっては、オープンスクールへの通学前後に集合研修を組み合わせることで、研修全体として自社や受講者の課題感にマッチするように工夫をしています(図3)。

他流試合で視野を拡大するパターン

図3:他流試合で視野を拡大するパターン

 

他流試合パターンの特徴は、異なる業界や組織で活躍する受講者同士が切磋琢磨することです。異業種の相手と議論するには、相手に伝わるように説明しなければなりません。そのためには相手の前提と自分自身の隠れた前提を認識し、論理的かつ効果的に話をする必要があります。

また、自分とはまったく異なる組織・業種の人間からの素朴な意見や疑問は、自身の常識・考え方を客観視するきっかけになり、固定観念を解きほぐして視野を拡げることにつながります。このような経験・知見は、グローバル化やダイバーシティが進む日本企業のリーダーには、必須といえるでしょう。

 

次世代リーダー研修の新しい潮流として「越境学習」も注目されてきています。越境学習とは育成機会を社外に得る考え方のことです。たとえば複数の企業が共同で研修を運営し、各社から選抜された候補者で異業種混合のチームを組成してアクション・ラーニングに取り組む研修などです。越境学習も多くの次世代リーダー研修に導入されてきています。

 

次世代リーダー研修は課長になってからでは遅い?

これまで3つの代表的な研修パターンを見てきました。最後に、次世代リーダー研修を行うタイミングについて考えてみましょう。

今までの次世代リーダー研修は、ミドルリーダー(課長層)を対象に行われることが多かったようです。この理由は、「現場の中核人材として事業成長に及ぼす影響が大きいこと」や「一定の経験を持ちつつ、更なる成長が見込める年代であること」などです。この理由は今も変わりません。

しかし近年は、次世代リーダー研修の対象が若手へと拡大しつつあります。なぜでしょうか? 理由は、多くの日本企業が直面している人材課題「いびつな人口ピラミッド」により、課長になる前から次世代リーダー研修を行う必要が出てきたためです。詳しく見ていきましょう。

現在、多くの日本企業の人口ピラミッドは「逆ピラミッド」や「ワイングラス型」などといわれ、いびつな年齢構成になっています。原因の一つに、バブル崩壊やリーマンショックなどにより、企業が新卒採用を大幅に縮小したことがあります。

多くの日本企業の人員構成は、バブル世代は多く就職氷河期世代が少ないという状況です。この結果、多くの企業が危惧しているのは、バブル世代の退職後に働き手がいなくなってしまうことです。組織としては何かしら手を打たなければなりません。

 

人材の登用方法としては、「外から採用するか」「中で育成するか」です。採用氷河期といわれる昨今、人材確保よりも中で育成する方が現実的と考える企業は多いでしょう。しかし育成には時間がかかるため、課長になってから研修をしていては遅いのです。したがって多くの日本企業では、ミドルリーダーの育成に加えて若手人材も育成するケースが増えています。

 

どの研修パターンを選択するか迷ったときに立ち返るべき場所とは?

ここまで、次世代リーダー研修の代表的なパターンと対象者の変化について考えてきました。あらためて最初の問いに戻ると、「次世代リーダーを育成するにはどんな研修を行うべきか」でした。この問いに答えるためには、我々は何について考えればよいのでしょうか。

もっとも重要なことは、「自社の置かれた状況を正しく認識した上で、戦略実現において人材・組織で何が課題なのか? その課題を、人材育成を通じてどのように解決するのか?」を明確にすることです。

 

当然のことながら、自社が属する業界や業態、取り巻く内外環境や戦略によって課題は異なり、必要な人材像も大きく変わります。ビジネスに必要な「ヒト・モノ・カネ」の3領域の知識やスキルが必要なこともあれば、ぶれないリーダーとしての「軸」を磨くことが必要なこともあるでしょう。自社が内向き組織であれば、環境変化に取り残されないように視野を拡げる研修が効果的かもしれません。このように、目的によって取り組むべきことは変わります。

自社の状況と、人材・組織の課題と解決法について考察を深めることが次世代リーダー研修において極めて重要です。ぜひ考察を深めたうえで、今回ご紹介した研修パターンに適したものがあるか考えてみてください。

 

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執筆者プロフィール
太田 昂志 | takashi ota
太田 昂志

グロービス法人コンサルティング部門にて、全社育成体系の構築支援、社長直轄の組織開発プロジェクト、事業戦略の立案・実行や新規事業創出を目的とした能力開発プログラムの設計および実行支援を手掛ける。また、高知工科大学大学院博士課程にて人材・組織開発をテーマに研究を進めている。グロービス入社前は、SIerにてシステムソリューションの提案やパートナー企業とのアライアンス活動に従事。
大阪大学人間科学部卒業、グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(成績優秀者表彰)。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。