本ブログでは、グロービス・コーポレート・エデュケーションのコンサルタントが交代で、人材育成・組織開発の現場で考え、感じた潮流や問題意識をお伝えします。今回は古くて新しい経営課題「ソリューション営業力強化」というテーマについて、実際の育成プロジェクト経験を踏まえて西村聡が考察します。
はじめに
世の中の環境変化に応じて企業の経営課題は変遷するものの、比較的長らく重視され続けている大きな経営課題のひとつに、組織のソリューション営業力の強化がうまくいかない、というものがある。今回はこのテーマに関していくつかポイントを考えたい。
ソリューション営業とは?
ここではソリューション営業を、顧客の課題を抽出しその解決に資するソリューションを提案する営業、ととらえる。 なお、課題と一言に言っても様々なレベルがあるが、ここではソリューション営業にて解決しようとする顧客の課題とは「経営レベルの課題」とおく。
なぜソリューション営業なのか?
多くの企業がソリューション営業力の強化を目指す理由は何か? 共通する理由は競争戦略上不可欠だからというものだ。 例えば、商品やサービスそのものに独自性や差異性が少ない場合、ライバルとの競争の中で自社が顧客に選択されるためには、いかに顧客の経営課題解決に資する商品・サービスであるかという点を訴求するのは一つの戦い方である。経営課題解決のソリューション提案を行える営業パーソンそのものをライバルとの差異化の要因にしようとする企業もある。 仮に顧客に深く入り込み競合を排除している状態でも、昨今の激しい環境変化は顧客の経営課題の変化を引き起こし、その課題を解決する商品やサービスを提案する、あるいは新たに開発していかなければ顧客との関係性を継続できる保証はない。 また、経営課題に対するソリューションの提案依頼が複数の企業に出てから(価格)勝負するのではなく、そもそも解決すべき課題は何かというより上流の議論に関与して課題解決のパートナーとして認められれば、ビジネスの成功確率は大きく変わってくるであろう。
ソリューション営業力を強化するために
では顧客の経営課題を抽出し、その解決に資するソリューションを提案するソリューション営業力を強化するには何をしたらよいのか? 今回は経営課題の抽出に話を絞る。 なぜなら、これまで多くの企業のソリューション営業力強化のお手伝いをしてきたが、ソリューション構築以上に顧客の経営課題抽出がソリューション営業力強化における難所となっている企業が明らかに多かったためである。 また、顧客はソリューションの検討以前に、まずは経営課題の特定に悩んでいるケースが多い。課題を特定できないからこそソリューションを特定できないのである。 以上から、ソリューション営業力を強化するには、まずは「経営課題を抽出する」力の強化が第一歩である。 ここで営業パーソンのつもりで考えてみていただきたい。疑問がわかないだろうか? コンサルタントでもない社外の自分が顧客の経営課題を抽出できるのだろうか? 自分が思いつくことなど当然相手は考えているのではないか? この疑問に対する回答は「できる。ただし都度都度の思いつきでは難しい」である。 顧客は当然その会社・ビジネスのプロである。だからこそ、会社や業界の常識や経験則に基づく思いこみ、あるいは狭い視点で議論がなされることも実は多い。ここに第三者が「事実(ファクト)」をベースに、「幅広い」角度から導き出した課題仮説をぶつけることは大いに意味がある。 その実現のためには3つの武器があると強い。
1.自分なりの経営の全体像をとらえる枠組み
まずは経営課題を幅広く抽出するための、企業や事業の全体像をとらえる自分なりの分析の枠組みを持つことが重要である。すなわち、ゼロからこの顧客の経営課題って何だろう?と思いつくままにパラパラと絞りだすではなく、経営課題を洗い出すにはこういうポイントを調べてチェックしたら見つけられる、という自分なりの課題抽出のための考える枠組みを持つことである。
2.分析の中で使える様々な考え方、フレームワーク
1の「経営課題を洗い出すにはこういうポイントを調べてチェック」する時には、これまでの研究で様々な経営の考え方やフレームワークが整理され、体系化されている。これらの考え方やフレームワークを頭の引き出しに入れておけば検討のスピードも大幅にアップできる。
3.経営の善し悪しを考える判断軸
自分なりの経営の全体像をとらえる枠組みをもち、既に整理・体系化されている考え方やフレームワークも活用しつつ企業の状態を様々な角度から見て、最終的にそれが課題なのか否かをチェックする軸である。
この3つの武器を身につけることは、どこの企業・事業、あるいは自社に関しても自分なりの課題仮説を抽出できる方法論を持つということに他ならない。別の言い方をすると、センス(=思いつきベース)で経営について考えるのではなく、再現性の高いスキルを持つということである。
最後に:個人だけでなく、組織としての観点も重要
ここまでは個人のソリューション営業力強化における経営課題抽出のための方法論に関する話であったが、組織のソリューション営業力強化の実現のためには、個人のスキル強化のみならず、組織としてのソリューション営業推進におけるネックをあらかじめ想定し、対策を打つことが肝要である。 組織としての観点とはどういうことだろうか? かつて筆者が関与したサービス業の法人営業部門のソリューション営業力強化プロジェクトを簡単にご紹介したい。 この企業では、顧客の御用聞き的な従来の営業からソリューション営業に営業スタイルを進化させたいという目的で人材育成プロジェクトを立ち上げた。そこで想定された、組織のソリューション営業推進におけるネックはシニア層であった。 シニア層はそもそも自ら手を動かして提案書をどんどん書くという役割を期待されているわけではなかった。自分なりの営業の方法論を既に確立しており成果もあげてきたが、ソリューション営業という視点はおそらく乏しい。部下が自身の知見のない新しいやり方=ソリューション営業=を始めると、それを否定しまう可能性も無きにしもあらずであった。 この想定されたネックを考慮した結果、法人部門の要員を大きく3つの層に分類して人材育成プロジェクトを構成することになった。
1.シニア層の期待役割:組織としてソリューション営業を推進する意義を深く理解した上で、ソリューション営業における提案内容のレビューを担う
●育成内容:部下のソリューション提案書に対するレビュー力の強化
2.ミドル層の期待役割:自ら手を動かし顧客に対してソリューション営業を推進する
●育成内容:経営課題解決力、提案書作成力、プレゼンテーション力の強化
3.若手の期待役割:将来の自ら手を動かし顧客に対してソリューション営業を推進する
●育成内容:顧客の経営課題抽出のための基礎力強化
層ごとの期待役割に応じた育成を通じて、組織としてのソリューション営業力強化を目指したのである。 このように、ソリューション営業力強化とは、営業パーソンのスキルアップに留まらず組織全体で仕事の仕方や役割の再定義を迫るテーマなのである。 本稿が貴社のソリューション営業力強化の検討の一助となれば幸いである。
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評価 2025年3月「テーラーメイド型プログラム」を除く平均値
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42
万名/年
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