スキル/思考力の可視化と測定

アセスメント・テストの結果を、人材育成に結びつける

日経225企業
取引実績

88 %
2024年4月グロービス調べ

企業内研修
有益度

4.6 5段階
評価
2024年3月時点。テーラーメイド型プログラムを除く平均値を掲載

導入
企業数

3,300 社/年

受講
者数

43.8 万名/年

人材を正しく評価するには、正しく測定(アセスメント)することが重要です。正しい測定には、測定ツールの理解が不可欠。今回はアセスメント・テストについて取り上げます。アセスメント・テストを実施する前に考えておくべきポイントや、アセスメント・テストの結果と人材育成を結びつけるためのポイントをご紹介します。

※2020年7月1日に第2版投稿

第1章 
アセスメント・テスト実施前に、
測りたいものを考える

アセスメント・テストを実施する前に、測りたいものを具体的に考える必要があります。以下の3つを言語化しておきましょう。

  • アセスメント・テストを行う目的は何か?
  • 目的のために測りたい数値は何か?
  • 図りたい数値に則した最適な測定ツールは何か?

上記の3点をセットで考えないと、適切なテストは実施できません。たとえばご自身の健康維持のため、体調を調べたいとします(=テストを行う目的)。測定すべき数値として、身長・体重・体温などが考えられるでしょう(=測りたい数値)。その際、身長を測るなら身長計、体重を測るなら体重計、体温計を測るなら体温計を用います(=最適な測定ツールは何か)。

人の能力を測定する場合、測定内容は抽象的になりがちです。たとえばマネジメント能力・学ぶ力・ポテンシャルなどは抽象的で、測定が困難。そのため、測定する人材が活躍する場面を、具体的にイメージしてみることが重要です。たとえば下記のようにイメージすることで、測りたい内容も具体化できることがわかります。

  • 一つ上の職位でも通用するだけのマネジメントスキルを保持しているか
  • 若手の社員として今後成長していくため、学ぶ意欲・学習能力や潜在能力は十分か

第2章 
アセスメント・テストで、
正確に測定する

アセスメント・テストでは、社員の能力を正確に測定したいものです。しかし、社員のマネジメントスキルや意欲などは、目に見えません。cmやkgのような国際標準の単位もありません。それでは、社員の能力を正確に測定するには、どうすればよいのでしょうか。

一般的なアプローチ手段として、社員それぞれの能力・スキルを相対的に測定するというものがあります。このアプローチにより、社員それぞれの能力・スキルの相対的な違いを表現できます。社員間の違いを正確に表現できるアセスメント・テストが、正確に測定できるテストだといえるでしょう。

認識すべきは、絶対評価ではないということです。本アプローチで算出されるのはあくまでも相対評価であり、解釈の仕方には余地があります。テスト結果で表された違いをアセスメント担当者が正しく解釈することで、テスト結果は有意義に活用できるのです。

解釈には必ず、担当者によるばらつきが生じます。複数人もしくは時間を置いて複数回行うのが望ましいでしょう。

第3章 
アセスメント・テストの結果を、
人材育成に結びつける

グロービスでは、アセスメント・テストを社員の人材育成で活用する企業を数多く見てきました。各企業の目的を整理してみると、2つに分ける事ができます。学習意欲の喚起と、学習効果の測定です。

3-1. 学習意欲の喚起

アセスメント・テストの結果を受験者にフィードバックすることで、学習意欲の喚起を促します(図1)。アセスメント・テストを通じて、受験者のスキル・知識・意欲は数値化されています。そのデータを客観的指標として本人へフィードバックすることで、学習目標の具体的な設定をしてもらうのです。

図1:アセスメント・テストで学習意欲を喚起する

3-2. 学習効果の測定

研修やeラーニングの後に行われるアセスメント・テストの多くは、学習効果の測定のために行われます(図2)。インプットを目的とした研修によく使われるパターンです。研修後の確認テストとしての位置づけです。

図2:アセスメント・テストで学習効果を測定する

教育施策と連動しない場合もあります。たとえば「昇進昇格試験」のように職掌・資格要件の基準を満たしているか否かを評価することも、学習効果の測定といえます。

学習意欲を喚起する場合、アセスメント・テストの結果の良し悪しはそれほど重要ではありません。重要なのは受験結果から自身の内面を読み解き、成長・開発計画を具体的に立て、実行することです。そのため、大切なのはフィードバックの方法です。アセスメント・テストの結果を受験者と共に解釈し、受験者の意向とすり合わせながら未来の計画を立てる必要があります。

点数が出るようなアセスメント・テストでは、どうしても点数が気になってしまうものです。そのためフィードバックをする方(受験者の上司や経営者であることが多いでしょう)は、点数の良し悪しに終始してはいけません。組織として期待していることや改善すべきことなどを伝え、受験者の行動を後押しする必要があります。

第4章 
アセスメント・テストの活用事例

アセスメント・テストと研修を組み合わせ、実施した事例をご紹介します。

社名:A社
研修の種類:選抜研修
期間:10か月間
研修の目的:次世代リーダーの育成
アセスメント・テストの目的:学習意欲の喚起

A社では、研修前にアセスメント・テストを実施し、研修初日のオリエンテーションの時に、結果をフィードバックしています。

図3:アセスメント・テストの活用事例

フィードバックの際には、以下の内容を合わせて伝えています。

  • アセスメント・テストの結果が、受講者の能力をすべて可視化できているわけではない
  • 本研修の受講者はA社の中核を担うことを期待されており、本テスト程度の知識は必須である
  • 現時点の数値であり、今後の学習を通じて伸ばすことができる

このようなフィードバックを受けると、A社の受講者は優秀な方が多いため、現在の自分の能力を客観視し、会社から期待されていることを認識します。そのうえで、研修で学ぶべきこと・考えるべきことを理解し、研修の目標を自分事として設定し、学習意欲が高まった状態で研修をスタートさせることができるのです。

アセスメント・テストは客観的データであることが強みです。客観的なパーソナルデータを利用することで、個人の気持ちや感情に強く訴えかける事ができます。

このような使い方をすることで、能力開発の目的でもアセスメント・テストを強力なツールとして活用することができます。

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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