役員育成/役員研修の選抜方法

執筆者
川崎 美保

グロービス・コーポレート・エデュケーション シニア・コンサルタント
大学卒業後、総合建設会社にて、人事並びに人材育成の企画・管理・運営に従事。その後、グロービスの法人部門にて、電機・医薬・流通・サービス・自動車等幅広い業界を担当し、人材育成体系構築支援、経営人材育成、中期経営計画や戦略実現の支援を目的とした研修プログラムの企画・設計・実施を行う。また、人材マネジメント・織行動研究グループに所属し、主にリーダーシップ開発や学習プロセス研究に携わる。
関西学院大学文学部卒業。青山学院大学大学院社会情報研究科博士前期課程修了/学術修士

CHAPTER
01

役員の選抜方法に不安を覚える理由とは?

「次期社長候補でもある役員をどのように選出すべきか?」は、多くの企業からご相談を受けるホットテーマです。特に多くいただくお悩みが、「社長が目をかけている人物が選ばれる傾向にあり、このままで大丈夫なのか不安だ」というものです。なぜ不安に感じるのでしょうか。そこに解法への糸口があります。

社長のお眼鏡に適って役員に選ばれるのですから、これまで、しっかりと実績を上げてきた優秀な方々でしょう。しかし欠かせないポイントは、これからも成果を上げられるかどうかです。不安の根源にはその視点があるのではないでしょうか。

今の経営環境は、VUCA(Volatility/変動性、Uncertainty/不確実性、Complexity/複雑性、Ambiguity/曖昧性)と言われるように、不透明で不確実性の時代にあります。しかし社長も役員も、安定した既存市場において、確立した既存事業を調整型マネジメントによって成長させてきた「成長時代の功績者」が選ばれていることがまだまだ多い。それが実態なのではありませんか。

経営陣がそうした方々ばかりで占められていたとしたら、どうでしょうか。新たなビジネスモデルを構想し、企業や業界の枠を超えた協働によって全く新しい事業を立ち上げて行く――ということは、なかなか進みそうにありません。

CHAPTER
02

経営層を選抜する判断軸

では、何を判断軸として経営層を選抜すればよいのでしょうか。

1つの視点を提供したいと思います。私が所属するグロービス・コーポレート・エデュケーション(法人部門)では以前、企業における経営者育成の現場で活躍中のコンサルタントと研修講師20名を選び、『これからの経営リーダーに求められる要件とは何か?』というテーマで調査を行いました。

年間1200社に対して経営人材育成の支援を行い、延べ6万人のビジネスリーダー育成を手掛けてきたグロービスの知見を抽出することによって、現代的リーダー像や評価軸を浮き彫りにしようと考えたのです。

まず、コンサルタントと講師に「これからのCEO、CXOに必要な要件は何か?」について3~5項目を挙げてもらい、そう考える根拠を記述してもらいました。それらのデータから要素を抽出、整理を進めたところ、「11の要件」に一次集約されてきました。

CHAPTER
03

先見性に基づく構想力 と志・信念

さて、この「経営リーダーに求められる11の要件」の中から、個人的に重要度が極めて高いと考えるものを2つご紹介しましょう。それは、以下の2つです。

    • 「先見性に基づく構想力」
      「志・信念」
  • VUCA時代においては、将来を正確に予測することなどできず、どれだけ精緻なシミュレーションをしたとしても、想定外の事態が次々と発生してくると言われています。しかも、テクノロジーの飛躍的な進化によって既存ビジネスモデルが次々に書き換えられる「テクノベート」(テクノロジー+イノベーション)の時代でもあります。

    こうした時代の経営を担うリーダーは何をすべきか――。

    まずは、アンテナを高く上げ、変化の方向性を掴み、社会の未来を見通す。そして、時代の流れにただ身を委ねるのでなく、自分はどのような社会を創っていきたいのか、自社はどんな存在でありたいのか、誰に対してどのような価値を提供したいのかを「一人称」で考え、語り、伝える。

    そんなリーダーが求められると私は強く思うのです。「先見性に基づく構想力」 と「志・信念」は、そのための必須要件だと思います。

    何を軸として次世代リーダーを選ぶのか、そして、育てるのか、という視点がますます重要になっているのです。

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    ※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。