営業力強化研修を企画する際に考えておきたい4つのポイント

2021.09.30

毎年多くの企業から「営業力強化につながる研修を企画したい」というご相談をいただきます。会社の収益に多大な影響を及ぼす営業は、経営層や人事が検討すべき重要な研修テーマ・対象者としてよく取り上げられます。

 

特に昨今は、「対面商談」から「オンライン商談」への移行により、営業力強化研修の必要性や重要度は格段に高まっています。

 

本コラムでは、営業力強化研修を企画するにあたって押さえておくべきポイントを解説していきます。

「どの営業力強化研修を選べば…!」~新任研修企画担当者の戸惑い~

経営層もしくは人事部長から「営業力強化研修を企画せよ」という指令が下ってきた時、皆さまなら何から始めますか?多くの方は、まずはインターネットで情報収集をするのではないでしょうか。

インターネット上で営業力強化研修について調べてみると、さまざまな研修があると分かります。

 ・トップセールスマンが考案したメソッドを学べる研修
 ・商談の質を高めるための研修
 ・心情理解を通し、顧客との関係構築を強化するための研修 など

 

選択肢が沢山あると、多くの方は「どれも良さそうで選ぶのが難しい」、「自社に一番合っている研修はどれだ?」と戸惑ってしまいます。これは、研修選定の基準があいまいだから起きてしまうことです。

この状態で研修を企画してしまうと、流行りものに飛びつく、前年踏襲する、価格の安さで決める、など営業が抱える課題とは関係のない選択してしまいがちです。

結果、「求めていた研修内容と違っていた」と営業マネジャーからクレームをもらってしまう。このような不本意な結末は避けたいものです。

意図せぬ結果を生み出さないために、研修企画担当者として考えておくべきポイントを、次項にて紹介します。

営業力強化研修を企画する際に考えておきたい4つのポイント

営業力強化研修を企画する際に、考えておきたいポイントは4つです。

1:自社で営業力強化が求められている背景を、正しく理解する

2:「あるべき営業像」を行動ベースで定義し、課題を洗い出す

3:課題のすべてを研修のみで解決しようとしない。HRMシステム全体の視点を持って解決策を検討する

4:何を研修の効果と置き、どのように効果検証を行うかを検討し、経営層及び人事部内と合意形成する

それぞれの具体的な内容や取り組みを、図1の全体プロセスを使いながら確認していきましょう。

 

図1:効果的な育成施策を立案するためのプロセス

図1:効果的な育成施策を立案するためのプロセス

 

1:自社で営業力強化が求められている背景を正しく理解する

まずは自社の営業力強化が求められている背景や、営業力強化研修を実施する目的を押さえましょう(図2)。ここでのインターネット検索は、御法度です。

 

図2:営業力強化が求められている背景を理解する

図2:営業力強化が求められている背景を理解する

 

企業には実現したい戦略があり、その戦略に則って売上目標・利益目標が存在します。つまり売上・利益の達成が積み重なることで、戦略実現が達成されるという関係性です。

営業はプロフィットセンターであり、営業の目標達成が自社戦略の実現に直結します。営業行動の1つ1つが重要であり、自社戦略の方向性と整合している必要があります。

だからこそ、なぜ今、営業力強化研修を企画するのか。自社戦略からその意図・背景を正しく読み解くことが、研修企画をする上での出発点となります。

 

2:「あるべき営業像」を行動ベースで定義し、課題を洗い出す

自社が実施すべき研修プログラムを正しく見定めるには、自社戦略実現の視点に立った時、「あるべき営業像」を行動ベースで定義することが肝要です(図3)。

 

図3:あるべき営業像を定義する

図3:あるべき営業像を定義する

 

たとえばあるべき営業像を、「営業力がある」と定義してはなりません。聞く人によって、営業力のイメージが異なるからです(例:常に目標を達成している、人間力があって愛されている、業界の専門知識に長けている、など)。

あるべき営業像のイメージが抽象的なまま研修を企画すると、自社に相応しい研修を特定することが難しくなります。具体的に行動ベースで定義して、研修を通じて解決すべき課題を洗い出すことがポイントです。

では、あるべき営業像はどの程度具体的に定義することが望ましいのでしょうか。

図4は、某SIer企業の案件で定義した、あるべき営業像の一例です。あるべき営業像を、誰しもが同じくイメージできるよう、精度高く定義することを心がけましょう。

 

図4:あるべき人材像の行動定義(例)

図4:あるべき人材像の行動定義(例)

 

あるべき営業像を具体的に定義することにより、研修企画者には「受講者に響く」「受講者の課題に合致した設計が可能になる」といったメリットがもたらされます。さらに、受講者にとっては「行動再現性が高い」「チェックしやすい」といった効能が期待できます(図5)。

 

図5:「抽象的な定義」と「具体的な定義」の効能の違い

図5:「抽象的な定義」と「具体的な定義」の効能の違い

 

その上で、あるべき人材像に現状を照らして人材開発課題を明らかにします。緊急度・重要度と制約条件を踏まえて研修のコンセプト(ゴール・対象・開発するスキル/マインド)を設計し、具体的な研修プログラムに落とし込んでいきましょう(図6)。

 

図6:人材育成施策の設計

図6:人材育成施策の設計

 

3:課題のすべてを研修のみで解決しようとしない。HRMシステム全体の視点を持って解決策を検討する

時々、人材開発課題を研修プログラムだけで解決しようと試みる方がいらっしゃいます。しかし研修は、HRMシステムの一領域(育成)に過ぎないため、課題のすべてを研修のみで解決しようとしてはなりません(図7)。

 

図7:HRMシステムにおける育成(研修)の位置づけ

図7:HRMシステムにおける育成(研修)の位置づけ

 

人材開発課題を洗い出したら、「課題のうち育成によって解決できる部分はどこか?」を検討します。そのうえでHRMの枠組みに照らし、育成で解決可能な部分とそれ以外に分別してみてください。

育成で解決可能と想定される部分についても、Off-JTとOJTをどのように使い分けると効果的か、という視点を持つことが望ましいでしょう。

 

4:何を研修の効果と置き、どのように効果検証を行うべきかを検討し、経営層及び人事部内と合意形成しておく

研修設計時に効果検証方法を含めて検討し、関係者間で認識合わせをしておきましょう。

効果検証で大切なことは、何を持って効果とするのか=何を持って研修が成功だったと判断するかの軸を、あらかじめ決めておくことです。

軸を決める際の参考になるのが、カークパトリックの4段階評価表です(図8)。

 

図8:カークパトリックの4段階評価表

図8:カークパトリックの4段階評価表

 

たとえば以下のようなことを検討し、経営層および人事部内で合意形成しておきましょう。

  • ・レベル1~4のどこまでを、研修効果として求めるのか
  • ・その場合、どのような検証方法が必要か
  • ・その検証方法には、どれくらいの工数・予算が必要なのか

オンライン(リモート)商談が主流の今、押さえておきたいポイント

新型コロナウィルスにより、オンライン商談への適用が求められています。筆者もお客様から、オンライン商談をうまく運ぶためにどのような知識・スキルをインプットすべきか? という問い合わせをよくいただくようになりました。

問い合わせの背景として、オンライン商談ならではの難しさがあります。たとえば以下の点を課題だと感じている方が多いようです。

・対面の時のような空気感が生まれにくいため、(初回訪問は特に)議題をしっかりと設定しておかないと間が持たない

・カメラ越しだと相手の表情がつかみづらく、相手がプレゼン内容に納得しているのか自信が持てない

・熱量が伝わりにくいため、話している内容のみで相手からの信頼を獲得しなければならない など

 

これらの難点を克服するには、どのようなスキルが必要でしょうか。筆者は、特別なスキルが必要だとは考えていません。ベーシックな「ファシリテーション力・論理思考力」が身に付いていれば、十分に対応が可能です。

たとえば上記の難点には、以下のような能力で対応可能です。

・議題の設定ができない⇒商談のゴールに行き着くまでの論点を設定する力(ファシリテーション力)

・相手を納得させられたか自信が持てない⇒説得力のある論理構造をつくる力(論理思考力)

・相手からの信頼を獲得する⇒相手に寄り添ったコミュニケーション力(クリティカル・シンキング)

オンライン商談が主流だからといって、特別なスキルや研修が必要なわけではありません。対面営業の際にも求められていたスキルが、オンライン商談になったことで一層必要になっているのだと考えます。営業力強化研修を企画する際の論点として、ぜひ押さえておいてください。

最後に

環境変化が激しい中で、企業が持続的な成長を遂げるにあたり、営業の役割が重要性を増していることは言うまでもありません。自社の営業が抱える課題にダイレクトにアプローチできる、投資対効果最大化につながる、そのような営業力強化研修を企画するためのエッセンスとして、このコラムをお役立てください。

執筆者プロフィール
今西 友子 | Imanishi Yuko
今西 友子

名古屋大学大学院国際開発研究科卒業後、広告代理店にに入社。
媒体管理業務や自社メディア・新規媒体開発業務に従事。
その後、ITベンチャー専門のヘッドハンティング会社にて採用支援業務に携わる。
現在は、グロービスにて企業の組織開発・人材育成支援を行う法人営業部門のチームリーダーを務める。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。