選抜研修を検討する際に、押さえるべき3つのポイント

2020.06.20

外部環境が急激に変化し、企業が変革の必要性に迫られる中、優秀な人材をリーダーへ成長させるための選抜研修のニーズが高まっています。本コラムでは人事担当者に着任されたばかりの方に向けて、選抜研修を検討する際に、押さえるべき3つのポイントをお伝えします。「戦略」「フォーカス」「巻き込み」について、ステップを踏みながら学んでいきましょう。

 

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選抜研修の事例 ~サクセッション・プラン編~

ポイント1:その選抜研修、自社の「戦略」につながっていますか?

選抜研修を実施する目的の多くは、企業の中長期的な戦略を実現する人材の創出にあります。よって、選抜研修を検討する人事担当者の皆さんは、まず自社の戦略の方向性をしっかりと理解することが求められます。そのうえで、戦略を実現するためには「どのような要件(スキル・マインド)」を備えた人材を、「いつまでに」「どのくらいの人数」育てる必要があるのかを考えていきましょう(図1)。

図1:まずは自社の戦略を実現するための人材要件を確認しましょう

図1:まずは自社の戦略を実現するための人材要件を確認しましょう

 

とくに研修企画をはじめて担当する人事の方は、つい、プログラムの内容ばかりに関心を持ってしまいがちです。たとえば筆者がよく耳にするご相談としても「他流試合を組みたい」、「有名な経営者の講演を組み入れたい」、「2日間で実施したい」など、内容面にフォーカスしたものが比較的多い傾向にあります。

 

もちろん、プログラム内容も最終的にはしっかりと詰めて考えるべき重要な要素ではあります。しかしながら戦略の方向性と、戦略を達成するために育成したい人材像が明確でなければ、適切なプログラムを作り上げることはできません。将来の自社の成長を支える大事な投資ですので、会社として描いている全社戦略と、その戦略を踏まえた育てたい人材の姿を具体化するところからはじめていきましょう。

 

また、研修はあくまで人材育成の手法のひとつであり、評価制度や配置戦略などと整合していることが前提です(図2)。企業として必要な人材創出に向けて、育成・評価・配置の仕組みを確認・整理し、一貫した人材開発プロセスを構築するという意識を忘れないようにしましょう。

図2:人材開発の仕組み全体を意識して研修を検討することが重要

図2:人材開発の仕組み全体を意識して研修を検討することが重要

 

ポイント2:選抜研修で「フォーカスしたいポイント」は明確ですか?

次に考えることは、検討する研修において「何を学んでもらうことにフォーカスすべきか」です。ポイント1で、自社の戦略を実現する人材の姿(最終ゴール)が見えてきました。しかしこの最終ゴールに一足飛びで到達することは、ほとんどの場合ありません。

まずすべきことは、決めた計画(いつまでに、どのような人材が、何人必要か)を実現するための中長期的な育成プランを描くこと。そのプランの中の1つの施策として、今回検討する研修で何をフォーカスすべきかを考えましょう。

 

筆者が時々いただく要望に「よりたくさんの要素を研修に組み込みたい」というものがあります。しかしながら研修には時間的制約があり、得られる学びには限界があります。多くの要素を組み込むことで網羅感は出るものの、受講者にとっての学びが薄くなる可能性もあるので、注意が必要です。

 

フォーカスするポイントを考えるうえでは、この研修における参加者の到達目標と現状とを比較し、その差分(GAP)に注目します(図3)。大切なのは、この差分(GAP)をできる限り具体的に考えることです。

図3:研修における到達目標と参加者の現状の差分(GAP)からフォーカスするポイントを考える

図3:研修における到達目標と参加者の現状の差分(GAP)からフォーカスするポイントを考える

 

以下に、差分(GAP)を捉えるために必要な到達目標の設定と参加者の現状把握について、もう少し詳しく記載します。

 

1:到達目標の設定(図4)

研修を終えた参加者がどのような状態であって欲しいかを考えましょう。

図4:最終的に目指す姿に整合した“この研修”の到達目標を設定する

図4:最終的に目指す姿に整合した“この研修”の到達目標を設定する

 

参加者が、どのようなことを知識として得ているか、どのような行動を取っているかなどを鮮明にイメージすることが重要です。言葉に落としてみることで、イメージしやすくなります。1人で考えるのは難しいので、各部門の関係者・経営陣、さまざまな企業研修をみてきた外部パートナーとも相談をしながら、時間をかけて納得のいくまで考えてみましょう。

 

2:参加者の現状把握(図5)

到達目標に対して、参加者の現状の状態を正確に把握することも重要です。

図5:研修参加者の現在の状態を把握する

図5:研修参加者の現在の状態を把握する

 

近年では、タレントマネジメントの仕組みが充実し、社員の能力の見える化が進んでいる企業も増えてきました。自社で保有するデータも含め、多面的に情報を収集して、現状把握をしましょう。

現状把握のコツは到達目標と同じく、できる限り鮮明なイメージをもつことです。鮮明なイメージをもつためには、たとえば以下のようなアクションがおすすめです。

  • ・自社の社風やビジネスモデルに起因した、社員に共通する特性の分析
  • ・参加者の仕事経験(部署、業務内容など)の確認
  • ・参加者の上長へのヒアリング
  • ・参加対象者との面談

 

3:到達目標と現在の状態とのGAPを整理する(図6)

最後に、今まで分析してきた研修の到達目標と参加者の状態を比較し、そのGAPを具体的に洗い出し、整理します。

図6:到達目標と現在の状態とのGAPを整理する

図6:到達目標と現在の状態とのGAPを整理する

 

ポイント3:選抜研修の関係者の「巻き込み」はできていますか?

選抜研修のフォーカスポイントも決まり、いよいよプログラム内容を詰めていく段階となりました。このタイミングでつい忘れてしまうのが、関係者の巻き込みです。関係者を上手に巻き込むことで、研修の成果・受講者満足度を高めることができます。研修開始前の早いタイミングから、計画的に関係者へアクションを取っていくことが重要だと覚えておきましょう。

誰をどのような形で巻き込む必要があるかは、研修の目的により変わります。しかし一般的には、1:経営トップ・経営陣、2:参加者の直属の上司を巻き込むことが重要です。

 

1:経営トップ・経営陣

選抜研修の効果を高めるには、経営トップや経営陣が十分に選抜研修の目的を理解して強いコミットメントを示すことが効果的です。経営トップや経営陣に研修の意味合いをしっかりと理解していただくためのコミュニケーションを、早い段階から取っていきましょう。

選抜研修で多いパターンとして、中長期的な自社の課題と解決策をまとめ、最終日に経営陣へ提言するものがあります。提言の場は、参加者が経営陣と直接対話できる貴重な機会です。加えて経営陣への提言は、結果次第では参加者の評価、今後の人生に影響を与える可能性もある大事な場です。

そのようなことも認識したうえで、経営トップや経営陣と受講者との限られた時間を有効なものにするべく、早い段階から経営トップや経営陣を巻き込む意識が重要です。

 

2:参加者の直属の上司

選抜研修は中長期的な期間(6ヶ月程度)を確保して行われることが多く、参加者にかかる負担は重いものです。同時に、日々活躍している選抜人材が研修に長時間拘束されるため、現場への影響も懸念されます。

このような状況下で選抜された方が研修に集中できず、中途半端な参加で終わってしまったケースも少なくありません。どんなによいプログラム内容であったとしても、これでは効果を発揮しないでしょう。

大切なことは、参加者の関係者、とくに直属の上司に協力してもらうことです。こころよく選抜研修へ送り出してもらうには、丁寧なコミュニケーションを繰り返し、現場との協力体制を構築することが不可欠です。

研修後のサポートも重要です。研修で得た学びを現場で活かし、継続的な成長のサポート体制を作っていくためにも、事前に認識を擦り合わせておくとよいでしょう。

 

最後に

本コラムでは選抜研修を検討する際に、押さえるべき3つのポイントについてお伝えしてきました。つい忘れがちなポイントでもありますので、ぜひ意識してみてください。

多くの場合、人事担当者の皆さんは人材開発専任ではなく採用や評価などの業務も担っており、忙しい中で研修を検討しなければなりません。一方で選抜研修は、その会社の未来を支える人間を育てていく重要な営みでもあります。

「自分が会社の未来を創る担い手なのだ」という気持ちを忘れず、よりよい育成の場を模索していただければ幸いです。選抜研修について更に学びたい方は、お役立ち資料を用意してありますので、ぜひダウンロードしてご覧ください。

 

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選抜研修の事例 ~サクセッション・プラン編~

執筆者プロフィール
尾花 宏之 | Hiroyuki Obana
尾花 宏之

学習院大学経済学部卒業、グロービス経営大学院修士課程(MBA)修了。
大学卒業後、三菱UFJ銀行に入社し、企業に対する融資支援業務や再生コンサルティング業務に従事。現在はグロービスにおいて、経営課題解決を目的とした、人材育成体系の構築支援、経営人材育成、新規事業開発支援等のプログラムの企画・実施を担当する傍ら、アカウンティング領域の研究やコンテンツ開発、論理思考領域の講師を担う。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。