論理的思考がますます必要になっている~曖昧に仕事を進めると致命傷を負う時代~
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論理的思考は多くの企業で必要なスキルであり、グロービスが提供している企業内研修やスクール型研修では最も受講者数が多い分野です。昔も今も、ビジネスパーソンにとって論理的思考が役立つことに変わりはありませんが、その重要度と、論理的思考が必要な背景は変化しつつあります。これからの時代における論理的思考の必要性について解説します。
第1章
論理的思考は、ビジネスの土台
論理的思考とは、物事を筋道立てて考えることを指します。論理的思考の詳細は、こちらのコラムをご覧ください。
仕事において、論理的思考は大きく分けて2つの観点で活用できます。
1-1. 効率よく状況を把握することができる
多くの会社では、業務に必要な情報が社内のあちこちに点在していることは珍しくありません。それぞれにアクセスできても、情報をつなぎ合わせて理解することは難しいものです。
このような状況に直面した際に役立つのが、「情報を構造的に整理する力」です。構造的に整理するとは、複数の情報の関係性(並列の関係なのか、包含される関係なのか、因果関係にあるのか、など)を把握し、物事の全体像を掴むことです(図1)。
このスキルがないと今の状況を理解できず、「自分で考える」「自分なりの意見を持つ」という段階に進むことができません。また、状況把握に時間がかかるため仕事の効率が上がらず、業務時間が増えます。
1-2. 相手に分かりやすく物事を伝えることができる
どのような仕事でも、コミュニケーションは必須です。コミュニケーションとは、口頭やメール、資料などで自分の考えを関係者に伝えて理解してもらうことを指します。
上司に自分の考えを理解してもらったり、顧客に提案した内容を納得したりしてもらわないことには、仕事が前に進みません。相手に分かりやすく物事を説明できないと、何度も質問をもらうことになり、お互いの時間的・心理的負担が高くなってしまいます。
このように、論理的思考は仕事をスムーズに進めるための土台であり、強力な武器となります。できる限り若手のうちに論理的思考を鍛えておくと、早期に成長できるでしょう。
さらに最近のビジネス環境においては、論理的思考の必要性が増しています。論理的思考ができないと、まったく仕事を進められない場合さえあります。誤った判断を繰り返し、結果として致命傷を負ってしまうかもしれません。致命傷とは、成果の上がらない状態が続き、会社の経営を危うくする可能性が高まるという意味を込めて表現しています。
論理的思考の必要性が急激に高まっている背景を、詳しく見ていきましょう。
第2章
誰も経験したことのない課題に、論理的思考はどう活かせるのか?
近年、ビジネス環境が激しく変化していることは多くの方が感じている通りです。将来の変化が予測しにくくなった意味を表す「VUCA」も、すっかり聞き慣れた言葉になりました。変化が激しくなった要因は、例えば図2のようなものがあります。
ビジネス環境の変化①:スピードが速くなった
テクノロジーの進展は著しく、ビジネスが動くスピードも各段に速くなっています。顧客からもスピード感ある対応を求められ、様々なサービスが即日提供される時代となりました。
ビジネス環境の変化②:社外との協業が増えた
若手社員でも、社外のステークホルダーと協力して業務を進める機会が増えています。この理由は自前主義が薄れ、より自社の強みが活かせる領域への集中が求められているからです。大企業とベンチャー企業との業務提携や、フリーランサーと協業することも当たり前になりつつあります。
ビジネス環境の変化③:予期せぬ新規参入や天災など
昨今、業界の垣根が無くなり異業種だと思っていた会社が競合になることは珍しくありません。グローバル化が進む中、世界のどこかで発生した大規模な天災、新型コロナウイルスのような感染症も、ビジネスに大きな影響を及ぼします。
このように誰も経験したことのない課題が次々に起こる状況下では、上司に答えを求めても解はありません。なぜなら、上司も初めて直面することだからです。
人は経験のないことに直面すると、確固たる理由もなく過去の経験を模倣して対応してしまいがちです。「何か対応しなければ」という焦りや責任感ゆえの行動であるものの、これは曖昧に仕事を進めている状態に他なりません。
曖昧に仕事を進めてしまうと、以下のようなことが起きてしまいます。
- 自分と相手の前提が違うことに気づかないままコミュニケーションしてしまい、後になって認識の齟齬(そご)が起きる。
- 業務の一つひとつについて上司に指示を仰いでから顧客対応するため、顧客が求めるスピード感に対応しきれない。顧客の不満が溜まり、競合に顧客を奪われることも。
- 組織を率いる管理職以上は、未経験の課題でも対応しなければならないが、何となく決めている感覚が拭いきれず、自信を持って意思決定ができない。
筆者がお客様からいただくご相談も、このような内容が多くなりつつあります。皆さまの会社では、このような問題は起きていませんか?
第3章
未経験の状況でも仕事を前に進められる人材、社内にどのくらいいますか?
これからの時代は役職を問わず「未経験の課題であっても成果を出すこと」が必須になっています。
社内に前例もなければ解を持つ人もおらず、自分で考え抜くしか方法はありません。その時に、
- 起きている事象どうしの関係性を考えられること(因果関係を捉える)
- 仮説を立てて、データや事実をもとにして検証し、意思決定できること(仮説検証)
- 類似する事象との共通点を見出し、ヒントを探ること(具体化と抽象化)
といった考え方が役立ちます。これらは論理的思考の技術です。論理的思考は、今後も起き続ける変化に対応して生き残るための武器であるといえます。
経験がないことであっても、自分で考え行動に移せる人材が組織内のあらゆる階層にいると、時代の変化にも柔軟に対応して成長し続けることができるでしょう。有事でも、現場のメンバーが自律的に行動できれば、組織の上位層は重要な意思決定にしっかり時間を割くことができます。
逆に前例や解がないからといって、なんとなく過去の経験を当てはめて曖昧に仕事をしていると、成果が出ずに致命傷を負い続けてしまいます。その結果、会社が経営破綻に陥ってしまうことさえあるでしょう。
未経験の状況であっても自分で考え行動できる人材は、社内にどれくらいいるでしょうか?
第4章
最後に
論理的思考は、日常業務の質を高めることのみならず、経験がないことに対処する際にも大いに役立つスキルです。今後もビジネスを取り巻く環境の変化は起き続けるでしょう。だからこそ、論理的思考を武器として持つ人材が多くいる組織は、致命傷を負わずに生き残る可能性が高まります。
成長し続ける組織作りに向けて、論理的思考を鍛えられる環境整備をぜひ進めてください。その際は、自社の社員一人ひとりの現状の思考力の計測や、OJT・Off-JTの使い分けも重要なポイントになります。下記の資料も参考になるはずなので、ぜひご一読ください。
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。