次世代リーダー育成研修(若手・中堅)

若手経営者の選抜育成に必要な人材要件・タレントマネジメントとは

日経225企業
取引実績

88 %
2024年4月グロービス調べ

企業内研修
有益度

4.6 5段階
評価
2024年3月「テーラーメイド型プログラム」を除く平均値

導入
企業数

3,300 社/年

受講
者数

43.8 万名/年

選抜教育の中核である「経営者育成プログラム」の対象を若手に引き下げようという企業様が近年増えています。
なぜ「若手化」なのか、その背景や条件、そして実際に若手化を推進する際のポイントを小島和也が考察いたします。

経営者育成の「若手化」「長期化」

近年、30代、企業によっては20代のうちに選抜研修のルートをつくり、40代前半までに経営者育成を終えるといったように、経営者育成の選抜対象を若い世代に移し、同時に各育成プログラムとOJTを計画的に連動させ長期的に取り組む傾向が増加している。

一例をあげれば、筆者が知る企業ではかつては30代後半~40代の課長層にのみ実施していた選抜育成を、20代・30代・40代前半の各フェーズに対してかなり負荷の高い取り組みに変更し、40代前半までを経営者育成の期限とした。各層向けの研修だけでなく、各世代のインターバル期間では海外赴任や部署間異動等、学びと業務でのチャレンジを連動させながら、研修・評価・配置を意図的に連動させたエリートコースを再構築されている。40代になってから急いで育成を行うといった流れよりも、より経営側の本気度が如実に表れる取り組みでもである。

本稿ではこのような傾向の背景と、対応において押さえておきたい論点を考えてみたい。

選抜研修の「若手化」の背景とは

選抜育成の「若手化」の重要な背景として次の3点が考えられる。

①「現40代の育成状況を踏まえた示唆」
②「タレントマネジメントが可能な環境の整備」
③「経営者に求められる人材要件の変化」

①「現40代の育成状況を踏まえた示唆」

人員構成としての40代は人が豊富な一方で、人材プールとして見たときに、これまでの育成の仕方に疑問を持つ経営者がいることも事実である。
「現場のOJTでたたき上げてきた。彼らの若い時期は経営数値が落ち込んだこともあり、体系的な育成を実施していない期間が長い」「要素技術が異なることや、語学力等の問題により、部門間での異動などの多様な経験はさせていない」等の問題意識を耳にすることが多い。

この問題意識は、昨今のグローバルなビジネスの展開や、ビジネスのイノベーションによる競争環境の変化により具体的な人材要件のギャップとして顕在化する。「経営学等の体系的な知識も十分に備えている海外の競合の若い経営層と伍して戦っていくことができるか?」「今後、より未体験な領域で戦うにあたり、経験のみに頼ることなく新たな方向性を描き、また現場においても新たなミッションを柔軟に突破していくことが出来るか?」といった課題である。OJTでたたき上げながら、発生ベースで必要なチャレンジをさせてきた今の40代への育成の反省が経営者・人事部を若いうちからの経営者育成に向かわせている。

②「タレントマネジメントが可能な環境の整備」

これまでも若手選抜を行いたくても、誰を選ぶのかという公平性の観点や、様々な経験をさせるような活躍の場がないといった理由から「できなかった」という事情もあった。しかし近年、人事としてタレントマネジメントが急ピッチで整備されたことで、このような長期的・計画的に育成をしていくための物理的、組織能力としての環境が整ってきた。

 - 人を選ぶ前提として評価基準・要件の整備
 - 選ぶための人材の見える化 
 - 実際に評価・再配置を決定するサクセッションプランニングの場作り

といった動きである。日立製作所やパナソニックのように、年功序列の撤廃を発表する企業も報道で見られるようになってきたことにも注目したい。


③「経営者に求められる人材要件の変化」

事業の継続性や成長を前提とすると、部門のキーマンは現場・業務に誰よりも詳しい人が求められる。となるとシニア・ベテランを順次重要なポジションに就けていくことが合理的だろう。しかし変化の激しい環境においては、一つの領域の専門性の高さよりも、新たな領域においてもマネジメントスキルを駆使して方向性を描き、計画策定や進捗管理をして結果を出すことが求められる。つまり、人材要件が以前に比べて変化しているといえる。その場合はマネジメントスキルに加えて適応力・柔軟性、可遡性の高い人材が適していると考えられ、シニア・ベテランに対して経験の少ない若手にもどんどん門戸・機会が開かれることにつながっているのではないか。

「若手化」を進める上で押さえたい論点

このような流れで経営者育成の「若手化」「長期化」のニーズが生じているが、その動きを現実化する際に気をつけておきたい点がいくつかある。

「前提としてのHRMの設計」

前述の背景の一つとして「タレントマネジメント」の整備を上げたが、その環境を活かすにはやる気と能力のある若手がどんどんチャレンジできるような制度、人事のポリシーがあるかが大事である。

例えば、各階層向けの施策が個々人の成長プロセスとして繋がるように、一人ひとりにフォーカスを充てた育成とすること、また、その意図を異動や海外赴任等の人事施策に明示的に反映する等、制度に「魂」を入れる取り組みが重要である。

「各プログラムのデザイン」

20代や30代から選抜育成を開始するということは、当然だが育成後の会社人生の先が長いということである。単に危機感を与えて、必要な能力を詰め込んだりすれば良いということではない。本人がプレッシャーで辛い思いをして、逆に周囲と協調しづらくなっては本末転倒である。
長期的・自律的な成長を促すために、プログラムの中で“憧れ”や“手ごたえ”を持たせること、また井の中の蛙にならず自分が知らないといけない世界があるという視界を広げる施策を盛り込むことが重要になる。
例えば、筆者が携わっているプログラムの中には、『MBAの知識だけでない、知見を広げるための刺激』や、『個人の想いに火をつける刺激』などを取り入れているものもある。

「40代以上への対処」

選抜層の若年化という話をしてきたが、一方で上の世代への目配りが重要であることを挙げておきたい。むしろこの世代へ配慮して、人事制度の大幅な改訂や育成プログラムの大改訂に踏み出せない企業もあるほどである。
40代以上のいわゆるベテランの成長と活躍のビジョンを描くことは、彼らが企業へのロイヤリティを持ちながらその後の10年20年で価値発揮してもらうのみならず、組織全体の士気を維持する上でも大切な話である。
例えば、経営者育成の門戸を20代に広げるが、40代でも能力と意欲次第で、参加することができる仕組みや、40代の成長を促す短期長期のプログラムを用意する等の打ち手が必要であろう。

組織の内外の変化に伴い経営者に求められる人材要件は変化する。その要請に柔軟に対応しつつ、組織全体の健全な成長に向けた運用が求められているといえよう。

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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