- 組織風土改革
- 経営チームの変革
組織づくりは働きがいのあるカルチャーづくりが重要
多くの企業で、事業部の人手が足りないため、思い通りに施策を実行できないとよくお聞きします。ただし、採用によって人員数が充足したとしても、組織が機能するわけではありません。社員が意欲をもち、能力を最大限発揮できる土壌を作らなければ、どれほどの人数がいても成果には結びつきません。
組織づくりは、事業部経営における重要なイシューだといえます。今回は、働きがいのあるカルチャーをどのようにつくるかについて、考えます。
「フェア」かつ「オープン」なカルチャーが、働きがいにつながる
スピードが求められる事業部経営において目指したいのは、努力して成果を出せば誰もが正しく評価される、誰もが能力を最大限発揮して努力して成長する、働きがいのある組織です。そのカルチャーをつくるための重要なキーワードの1つは、「フェアネス(公平性)」です。役割を問わず、努力した人や貢献した人を公平に評価する仕組みが必要になります。
最も避けたいのは、成果を出しているハイパフォーマーがしらける組織です。優秀な人が能力を発揮しきれない組織は、頑張っても正しく評価されないことがその根底にあるのです。たとえ採用ができても次々に社員が辞めていってしまうと、組織が大きく傷みます。今はインターネットで企業の口コミもオープンになってしまう時代ですので、ブランド力がある会社であっても、社員や退職者からの口コミが芳しくなければ、次第に優秀な人材の採用も難しくなるでしょう。
もう1つは、「オープン」なカルチャーであることです。メンバーが仕事に前向きな姿勢を持つようになると、事業への当事者意識が湧いてくるものです。その際、皆がオープンに意見を言えて、どのような意見も尊重される、意欲を発揮できるカルチャーが必要になります。変化が激しい時代においては、多様な人を採用し、多様な意見をオープンにできる組織が強くなります。逆に意見が出しにくく、限られた人だけが意思決定をする組織では、その人たちに都合のいい意見しか出てこなくなるでしょう。トップがどれほど優秀であっても、オープンな組織カルチャーがなければ良い経営の舵取りはできません。
カルチャー改革は、マネジメント改革から
組織づくりとはカルチャー改革であり、そのためにはマネジメント改革から着手すべきだと考えます。チームや組織を率いるトップであるリーダーの行動は、組織の行動として跳ね返ってくるものだからです。組織にフェアネスやオープンを求めるのであれば、リーダーが率先してフェアでありオープンでなければカルチャーとして根付きません。身近な例でいうと、挨拶が少ない会社だと感じるのならば、それはリーダーが挨拶をしていないからに他ならないのです。
リーダーのフェアネスとは、「組織として何を正しいと考えているかをオープンにすること」だと考えます。リーダーの判断にも正しさが表れますし、自身が正しいと思うことに基づいてビジョンを語ることで、その人らしさがあるストーリーになり、社員の共感を生みます。人は自分が共感するリーダーについていきたいと思うものです。リーダーがストーリーを語れる力は組織づくりにおいてとても重要な要素です。
さらに、マネジメント改革においては、リーダー自身の「説明責任」とも向き合わなければなりません。カルチャーを変えていこうとする時には、必ずリーダーの説明が求められるからです。
日本企業の多くは、人事制度そのものは既にフェアでオープンな仕組みが整っています。しかしながら、いざ運用となると、登用や評価においてはマネジメント側の説明責任が発生するため二の足を踏んでしまっている状態ではないかと思います。本来の仕組みにマネジメント側の意識が追いついていない現状を踏まえると、カルチャー改革の前に、マネジメント改革から着手することが必要です。
リーダーの意識と行動を変革するには、伴走者が必要
マネジメント改革にあたっては、たとえリーダー本人が「変わらないといけない」と自覚していても、自分自身がフェアでオープンな環境で育ってきていないことが大きな障壁になります。つまり、自分をどう変えていくべきかの具体的なイメージが持てていないため、自力で変わることはとても難しいといえます。
さらに日本企業の環境も、マネジメント改革の進行を遅らせる一因になっています。例えば、リーダー一人が行動を変えなくても、メンバーの半数が突然辞めてしまう……といったケースは滅多に起こりません。組織への大きな傷みが一度に生じにくく、この状態は“慢性疾患”になっているとも言えます。
リーダーが意識と行動を変えるためには、マネジメントレベルでの「伴走者」であるメンターが必要であると考えます。リーダーの立場になるほど、自分を客観的に見てくれて率直なフィードバックをもらえる機会は減ってきます。仕事上の相談相手も見つけにくいものです。その意味でも、伴走者はリーダーにとって貴重な存在です。
組織はリーダーを映す鏡です。組織はリーダーの器以上には大きくなりません。組織のカルチャー改革は、リーダーの意識と行動が変わることで実現され、徐々に進んでいきます。