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自社を変革し続けるための組織づくりに挑む、世界最大級の総合人材サービス企業

ランスタッド株式会社 2023.09.29

ランスタッド株式会社様は、1960年にオランダで設立され、世界39の国・地域に4,400以上の拠点を置く世界最大級の総合人材サービス会社です。変化し続ける市場に対応すべく、ビジネスの創造や変革を起こしていくための取り組みが、日本を含むグローバルで進んでいます。

グロービスと共同開発した「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ・プログラム」(以下、本プロジェクト)は、この取り組みの日本での要となる施策です。本プロジェクトを企画したランスタッド ジャパン及びアジア・パシフィックCHRO(人事最高責任者) ヨス・シュット様にお話を伺いました。さらに、受講者のランスタッド スタッフィング事業本部 SPOT事業本部 試験監督事業部 部長 仁平 健様、同社 スタッフィング事業本部 首都圏第2本部 神奈川エリア エリアマネージャー 長部 智樹様からも本プロジェクトを通した気づき・変化等についてお話を伺いました。(所属・役職はインタビュー当時)

はじめに:本プロジェクトの概要

ランスタッド株式会社様では、現在の業績が好調であるがゆえに、将来に向けたリスクに気づきにくいという課題感がありました。そこで、リスクを早期に認識して自ら変革ができる組織になるべく、グローバル共通のプログラムが世界各国で実施されていましたが、日本の市場特性や言語の壁を踏まえ、独自でプログラムを行うことになったのです。

日本では、ディレクターとミドルマネージャーを対象とした選抜リーダー層へ、本プロジェクトを8~10か月間をかけて実施することになりました。経営陣からのスピーチやビジネススキルを習得するセッションを行った後、受講者が新規事業開発を検討し、提案するという内容です。経営陣が採択した新規事業については、その後も継続検討されます。

本プロジェクトのゴールは、受講者がリーダーとしてのマインドセットをし、全社レベルの視点を養い、自己理解を深めることとしました。

<本プロジェクトのステップ>

CHRO(人事最高責任者)ヨス・シュット様インタビュー:
プロジェクト実施の経緯

プロジェクト前に抱えていた問題意識

当社は業績が好調であるがゆえに、変革の必要性に気付きにくいというリスクを抱えていました。この先、業績が悪化し始めてから変革に着手するのではなく、本来であれば好調期である今から、社員一人ひとりが自ら変化を起こして前進していかなければなりません。

そのためには、社員が変革への意識と理解を深めるための施策が必要だと考え、具体的なプログラムを検討し始めました。

変革の必要性はグローバル共通の課題でしたが、日本は他国に比べると変革が起こりにくいのではないか、という懸念がありました。社員が少しずつ不安になって初めて、変革に着手する傾向があると感じていたのです。こうした日本の特性を踏まえ、施策はグローバル共通のものではなく、独自で企画して行うことにしました。

企画にあたっては多くの企業にお声をかけましたが、グロービスを選んだのは、当社に最適なプログラムをカスタマイズして提案していただけることでした。グローバル視点で日本を客観的に見ていただきつつ、日・英の両言語でセッションをできる点も心強かったです。何よりも最終的な決め手は、私たちと共創するという姿勢を強く感じたことでした。

プロジェクトで目指していたゴール

管理職としてリーダーシップを発揮すべき社員に、変革をリードすることへの理解を深めてもらうことがゴールでした。

そのために、本プロジェクトは戦略やその背景、財務についてのスキルを高めるとともに、顧客体験や顧客中心主義の考え方も学ぶプログラム構成としました。中でも戦略を学ぶパートは、当社のグローバル戦略への理解にも通じるため重要視しましたね。

もう一点、私が期待していたことは、実社会のテーマで新規事業を検討するアクション・ラーニングによる学びです。実在する課題に向き合って市場機会を見つけ、どのようなビジネスを創造するかを議論することは、新しい知識や視点を得るために最適だと考えました。

ジャパン及びアジア・パシフィックCHRO(人事最高責任者) ヨス・シュット様

プロジェクトの主な内容

実施において大事にした点

あくまで受講者の成長を第一に考えつつ、アクション・ラーニングで独創的なアイデアを生み出して事業企画に落とし込み、意義のあるソリューションにすることを重視しました。提案された新規事業のうち、経営陣が承認したものについては、実行に向けて継続検討することにしました。そのため、本プロジェクトは経営陣も深く関わることになりました。

また、実施期間中に新型コロナウイルス感染症が流行していたため、セッションはオンラインで実施することになりました。リモートでも受講者に十分学んでもらえるよう、グロービスと協力しながら企画を進めました。

実施してのご感想、受講者の変化

グロービスの講師陣やコンサルタントのおかげで、受講者の理解が深まり、実務で活用するイメージを持つことができたと思います。常に我々に伴走いただき、当社の経営陣ともしっかり連携しながら良いセッションを実施いただきました。期待通り、共創することによる価値を十分に提供してくださったと思います。

経営陣と受講者が対話をするセッションにはグロービスの講師にも入ってもらい、経営陣の話をビジネスの観点から解説いただきました。こうした場にしたことで、受講者の理解がより進んだと思います。また、財務の分野は実務での活用がイメージしにくいものですが、知識を得るだけでなく、当社のCFOから自社の財務状況も説明したため、ランスタッドにおける財務のあり方や考えるべきポイントを理解できました。

結果として、受講した選抜リーダー層が変革の必要性をこれまで以上に意識するようになったと感じます。当社では経営陣が年2回、社内の各拠点に足を運んでリーダー陣と戦略について対話をするのですが、本プロジェクトの受講者は積極的に質問をしてくれました。

以前は、経営陣からの説明に対する意見はあまり出なかったのです。ところが今は、さまざまなミーティングにおいて経営について質問が増えただけでなく、その質も向上したように思います。本プロジェクトによって、受講者が大きな学びや手応えを得たようです。

受講者の中には昇進したメンバーもおり、新たな役割において本プロジェクトでの学びが役立つだろうと思います。また、ランスタッド ジャパンも引き続き成長できており、その一因として本プロジェクトがあるのだと捉えています。

今後の展望

本プロジェクトに参加した選抜リーダー層だけでなく、全社員が変革への意識を高めてほしいと思っています。変革は良いことであり、持続的な成長に繋がるという意識が社員に醸成されると、期待されていることに応えるだけでなく、常に好奇心や勇気を持って自主的に学ぶようになると考えています。

私から見て、日本人は「上司は、私の意見を求めていない」などと思い込んでしまい、自らの行動を狭めてしまう傾向があると感じます。そうではなく、自らの役割に縛られずに意見やアイデアを持って、行動を起こしてほしいと思うのです。今回、グロービスの質の高いコンテンツを用いて、素晴らしい講師陣のもとでプログラムを実施できたので、それを自分のものにしてほしいです。そして、もっと主体的に、自由に行動していくことを受講者に期待しています。

組織全体の観点では、女性リーダーを増やしたいと考えています。これは当社に限らず社会全体のテーマでもあり簡単に解決できるものではありませんが、女性社員をはじめ全社員が能力を最大限に発揮してもらうために、今後も組織開発に向き合っていきたいと思います。

これらの取り組みを通して、共感力をもってチームを束ね、変革を推進できるリーダーを増やしていきたいと考えています。メンバーへの関心を持つとともに可能性を引き出し、活躍する機会を作れるリーダーを育成することで、事業をさらに成長させていくことを目指します。

グロービスには、今後も市場動向をキャッチしていただき、当社のCEOも含めて議論を重ねながら、私たちが変化のスピードに対応できるようサポートいただきたいと思います。アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)など、新たなトピックでのプログラム開発にも期待しています。お互い現状に満足することなく、常にチャレンジし続けるパートナーでありたいですね。

プロジェクト参加者へのインタビュー

本プロジェクトに参加した感想と、自身の変化

仁平さん:

まずは、とても素晴らしい機会を与えていただいたことに感謝しています。本プロジェクトで学んだことは業務で役立てられている実感があり、今でも当時の資料を度々見返しています。

当社では、CEOが日頃から”WHY?”(なぜ?)を問う重要性を伝えていますが、本プロジェクトを経てより一層、”WHY?“を深掘りして考え、ロジックを確認する習慣がついたと感じています。

また、自分自身の大きな変化として、視野が広がりました。これまでは、事業機会を検討する際も、自分が関わっているビジネスの範囲内でしか考えられなかったのです。ところが、本プロジェクトでさまざまな部門の受講者と議論したことで、自分が想像していなかったような新たなビジネスチャンスを発見できました。

スタッフィング事業本部 SPOT事業本部 試験監督事業部 部長 仁平 健様
長部さん:

私は、これまでにさまざまな研修を受けてきましたが、最も学びが多くあったのが本プロジェクトでした。その理由は、まず社員同士の共通言語ができたことが挙げられます。当社は事業部ごとに独立して業務を進めているため、事業部を超えたコミュニケーションが取りにくかったのですが、違う事業部にいても同じ考えを持つメンバーもいるのだとわかり、本プロジェクトを通して人的ネットワークが築けました。

セッションでは、今、取り組むべき課題であるイシューを意識することを繰り返し伝えてもらいました。そのおかげで、議論する際はいつも「今、取り組むべき課題は?」「何から着手すべきか?」を自分に問いかける習慣がついたと思います。

スタッフィング事業本部 首都圏第2本部 神奈川エリア エリアマネージャー 長部 智樹様

アクション・ラーニングでの提案内容と得られた学び

仁平さん:

私のチームは、たとえば優秀でモチベーションも高い女性が結婚や出産、育児で退職した後、再度活躍できる機会を作るビジネスを提案しました。チームメンバーの家庭の話がきっかけとなり、働く意欲にあふれながらも仕事と家庭との両立に悩む方々へサービスを提供したいと考え、具体的なビジネスプランに落とし込んでいきました。

提案内容を検討するにあたっては、マーケティングやデザイン思考のセッションで学んだことが役立ったと思います。具体的なターゲット像を「子育て中だが、本当は働きたいと思っている女性」と設定して、どのようなニーズがあるのかを細かくシミュレーションしました。私は人材を専門として仕事をしてきましたが、今回学んだビジネスの基本原則も活用して市場分析をしてみると、新たな発見がありましたね。

この事業内容を経営陣へ提案したところ、「ぜひやるべきだ」という話をもらい、現在も継続検討しているところです。提案内容が会社に認められ、効果が生まれ始めていることを嬉しく思っています。

長部さん:

私たちは、農業分野をテーマに選びました。就労者の高齢化をはじめ多くの課題がある農業分野ですが、まず、当社が解決すべき課題と事業機会を検討しました。調査を進めると、たとえば北関東では流通プロセスの課題解決に関する取り組みがあり、九州では他社が進んでいることがわかったのです。

この分析結果をもとに、特定地域の流通プロセスの問題を解決するに当たって、ランスタッドの国内拠点をどのように動かせば全国規模のビジネスにできるか、といったことを議論しました。農業分野に関心があるメンバーを集めて、各地域の課題や取り組みを共有しながら、成果を出す方法を検討していったのです。また、ステークホルダーを巻き込むことが重要だと考え、農家である私の実家に行って、協力者を募るための動画も作成しました。

この事業を経営陣へ提案したところ、5~10年後を見据えて、事業計画をもっと大きく描こうというアドバイスをもらいました。経営陣は、私たちよりもずっと高い視座で物事を考えているのだと痛感しましたね。経営陣と話したことで、現場とは違う景色を見られたのは有意義でした。提案した事業については、今も毎月ミーティングを行い、検討を続けています。お客様からの要望もいただいたことから、実現に向けて動いているところです。

今後への期待

仁平さん:

本プロジェクトは、私たちだけでなく多くの社員に参画してもらいたいですね。社外の講師陣とディスカッションをしながら学び、リーダーとしての当事者意識が芽生える社員が増えれば、組織文化は変わっていくのではないでしょうか。外の世界を知る機会は、とても貴重だと思います。

長部さん:

今回のような新規事業に取り組むと、社内で率先して物事を進める人が明確になると思います。リーダーシップを発揮できる社員がわかることは、経営にとってもプラスになるはずです。今後も本プロジェクトのような機会が増えるとともに、スキルマップなど人材の可視化が進むとより効果的に人材活用できるようになり、組織がさらに強くなると考えています。

ヨス・シュットCHROはじめプロジェクト関係者
担当コンサルタントの声
Iulia Tucma

経営陣の皆様が社員の育成に熱心に取り組んでいることに感銘を受けています。人材サービス業界のグローバル・リーダーであり、社員を本当に大切にする企業であることを表しているように思います。このプログラムに対するコミットメントは、初日からこのプログラムの作成に携わってきたCHROのヨス様だけでなく、プログラム内でのスピーチやディスカッション、参加者への貴重なフィードバックなどを通じて、このプログラムをサポートしているランスタッド・ジャパンの経営陣全員によるものです。

外部環境が想像を絶するスピードで変化している今、このプログラムは、環境の変化に対応するのではなく、主体的に変革していく必要性を認識しながら、業界のトレンドの一歩先を行く挑戦をし、会社を革新していく変革型リーダーのネットワークを作り出しています。

このプログラムの一員になれたことを光栄に思うとともに、これからもリーダーの皆様、そして組織の変革をサポートできることを楽しみにしています。

中島 淑雄

本プロジェクトのもっとも重要な点の一つは、「業績が悪化し始めてから変革に着手するのでは遅い。社員一人ひとりが常に変化を起こし、前進していなければならない」という経営陣の考え方です。多くの企業は、外部経営環境変化による変革の必要性に迫られてはじめて、変革に着手しがちです。そうではなく、常に準備をしておく。具体的には、現場を動かすリーダー陣が自ら経営・ビジネスについて学び、事業環境変化にアンテナを立て、市場機会を探り、小さくても仮説検証を回し続ける。このリーダー陣の意識と行動が、周囲に変革への意識を自然な形で定着させ、組織としてのモノの見方・考え方をアップデートし続けています。つまり“ラーニング・オーガニゼーション(学習・成長し続ける組織)”が実践されています。

「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ・プログラム」はそれをドライブするための要の施策であり、グロービスがパートナーとして関わらせていいただくことは大変光栄です。ランスタッド様のパートナーとして、共にチャレンジし続けたいと思います。

小林 綾

私は今年から本プログラムに携わらせていただいています。
ご一緒して驚いたことは、参加者だけではなく、経営陣の皆様の本プログラムに対する関心の高さとコミットメントです。

本プログラムは事業アイデアを考案し、提言して終わるわけではありません。プログラム参加者の方は、ゼロから新規事業のアイデアを考え、実際にインタビューなどの主体的な活動を通じて具体化させていきます。アイデアが認められれば、実際に事業化に向けて進んでいきます。そして、その事業化に向けて進める際には、経営陣の方が伴走されているとうかがっております。

トップや事務局の皆様の、ビジネスの創造や変革を起こす組織をつくりたいという強い想いが、本プログラムへのコミットメントにつながっていると感じます。

ランスタッド様の変革に向けた真摯な姿勢と、本プログラムへの期待にお応えできるよう、引き続きパートナーとして、さらなる変革に向けてご一緒できることを楽しみにしております。

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