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企業変革につながるリーダーシップ開発プロジェクトへの挑戦

ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社 2022.10.24

世界的な製薬メーカーであるブリストル マイヤーズ スクイブ(以下、BMS)様では、日本法人の組織により一体感をもたせ、強いものにしていく変革に向けたリーダーシップ開発プロジェクトを実施しています。次期経営層の候補者を対象とした「Success-Oriented, Action and Reflection」(以下、SOAR)と、次世代リーダー候補からの選抜メンバー層を対象とした「Raise Impact & Stimulate Excellence」(以下、RISE)について、同社の執行役員 人事部門長 内藤佳子様、執行役員 メディカル部門長 穴澤嘉雄様、戦略プログラム・マネジメントオフィス オフィス長 金森俊揮様にお話を伺いました。(役職はインタビュー当時)

はじめに:本プロジェクトの概要

BMS様は、アメリカに本社をもつ世界有数の製薬メーカーであり、BMSでアメリカに次いで大きな市場をもつ日本法人はグローバルにおいても重要な位置付けとなっています。日本法人の組織のエンゲージメントをさらに高め、企業変革を促すべく、2つの階層におけるリーダーシップ開発に取り組むことになりました。

SOARは次期経営層の候補者が、経営視点をもってイノベーションや組織変革をリードする人材になることを目的とした約半年間のプログラムです。経営リーダーとしてのマインドセットを行い、デザイン思考や組織変革のプロセス、リーダーとして持つべき倫理観・価値観など理解を深めたうえで、アクションラーニングで経営課題と解決策を提言する内容です。グローバル企業のリーダーとしての素養も磨くため、セッションの大部分は英語で行いました。

RISEは次期リーダーとなることが期待されるメンバー層から参加者を選抜し、SOARと同じく半年間で行うプログラムです。組織の変革を実践していく次世代リーダーとして必要になる課題設定や問題解決力、戦略思考、リーダーシップといった経営の基礎を学んだ上で、アクションラーニングに取り組みました。

<プロジェクトの概要>

インタビュー:プロジェクト実施の経緯

プロジェクト前に抱えていた問題意識

内藤さん:

世界のスペシャリティ医薬品/バイオロジックス市場において日本はアメリカに次いで2番目の大きさをもち、BMS全体においても重要なマーケットとして、さらなる成長が期待されています。

当社はグローバルで2019年にセルジーン社と統合し、日本でも2020年春から統合準備が始まりました。そのタイミングで日本法人としてのありたい姿をマネジメント陣で議論し、我々は優秀な人材を惹きつける魅力的な会社でありたい、そのためにリーダーシップ開発や能力開発の機会を積極的に作りたいという話になりました。当社は同業他社に比べてコンパクトな組織で、患者さんに貢献してきていました。この特徴を活かすためにも、社員同士がもっと積極的に連携していくことも必要でした。各自の業務だけでなく、1人ひとりが全社視点をもってコラボレーションすることで、ビジネス上の判断も加速されるだろうと思ったのです。

こうしたビジョンのもと、次期経営層の候補者を対象としたSOAR、次世代リーダー候補からの選抜者を対象としたRISEの2本を行うことになりました。両プログラムとも、全社のタレントプランニングを踏まえての施策です。SOARについては、次期経営層を早く育て、今の経営層と一緒にカルチャー変革も含めてビジネスを進めていってほしいとの期待がありました。RISEは、SOARに参加する現リーダー層の後継者を育成する意味合いとなります。

外部のパートナー企業を選定するにあたっては、参加者が「このビジネススクールを通じて学べる」というモチベーションが持てること、プログラムの内容、そしてフレキシビリティを重視しました。私たちが考えている方向性に調整していただきながら、一緒にプログラムを作り上げていきたいと考えていたためです。アクションラーニングも行いたかったので、その点でのサポートもできるパートナーを望んでおり、これらの観点からグロービスさんを選ばせていただきました。

執行役員 人事部門長 内藤佳子様

プロジェクトで目指していたゴール

金森さん:

プロジェクトを通して、企業変革と人材育成の両方を目指していました。アクションラーニングで、各部門で活躍する参加者の視点から導かれた解決策が企業変革につながることがあるでしょう。そして参加者には、プロジェクトで養った全社視点の考え方を各部門に持ち帰ってもらい、風通しのよい組織を作ってほしいと考えていました。

内藤さん:

SOARの参加者は、すでに大きな組織のリーダー層である方々ですので、全社へ影響を与えてほしいとの期待がありました。逆にRISEの参加者はメンバー層になりますので、自分自身を成長させつつ、ボトムアップ的に組織を変革していってほしかったのです。

参加者の選定基準としては、全社のタレントプランニングとの整合やダイバーシティを考慮しました。SOARはタレントプランニングを踏まえて、将来経営層としての成長をより期待する人材を選んでいます。検討の結果、金森さんや穴澤さんにはSOARの第1期に参加してもらうことになりました。RISEは対象者数も多くなるので、現場の各部門長や人事部門とも話し合って人選しています。

そして、このプロジェクトのテーマのひとつに部門横断的な視野を持つことがありますので、参加者の部門の偏りが出ないよう、さまざまな部門から選出するようにしています。さらには次期経営層のジェンダーダイバーシティも担保するために、男女比も念頭に置いて人選しました。

プロジェクトの主な内容

実施において大事にした点

金森さん:

アクションラーニングのテーマ設定と、グループワークへの関わり方を重視しました。

設定したテーマはいずれも、社内のエンゲージメントサーベイの結果を踏まえて設定されており、経営として会社のカルチャーを作っていくための重要なものを選んでいます。SOARの第1期は『Sense of Belonging』、第2期は『Collaboration』。RISEの第1期は『Engagement』、第2期は『Speak my mind』です。参加者にはこのテーマをもとに課題を設定し、解決策を提言してもらいました。

内藤さん:

両プログラムとも共通して、テーマから具体的課題を設定するにあたっての細かい指示は敢えて出さないようにしました。特にシニア層になれば、大きなテーマをもとに課題を自分で定義してアクションしていかなければなりません。指示がないほど参加者の苦労は大きくなりますが、まさにそのトレーニングが必要だと考えたのです。

金森さん:

逆に、RISEの方では進捗に関してはこまめにガイダンスしました。半年間に渡って複数人でのプロジェクトをリードするのは、人によっては初めての経験です。グループ内で目線が合わなかったり、議論が拡散したりする中でも、期限内でいかに成果を出せるようサポートするかは、グロービスさんと一緒によく悩みましたね。

提言までのプロセスを細かく分けて「この時期までには課題を明確にしよう」「このタイミングには、実行に向けたタスクを確認しよう」といったガイダンスを丁寧に出しました。プログラムの回を重ねるうちに、「サポートしようか」と私たちが手を差し伸べると、どういう形でサポートしてほしいかを参加者から発信してくれるようになりました。一方的にやり方を指示するのではなく、一緒に考えながら進められた点は良かったと思います。

戦略プログラム・マネジメントオフィス オフィス長 金森俊揮様

実施してのご感想

内藤さん:

アクションラーニングでの提言内容では斬新なアイデアが多く出てきましたし、その後の実際の経営にも活かされています。

両プログラムのアクションラーニングへの期待として、経営層では思いつかないような、斬新な切り口でのアイデアを出してほしい、ということがありました。絵に描いたような綺麗な戦略ではなく、実際に行動して結果が出るような提案をしてほしいと伝えていたこともあり、おもしろいアイデアがいくつも出てきたことは嬉しかったですね。特にSOARでは、グロービスさんに1人ひとりの様子を細かく見ていただき、フィードバックいただいたことも成果に影響していると思います。

社長をはじめとした経営層が、アクションラーニングの最終発表に同席したのもよかったと思っています。他のビジネス会議において「SOARやRISEで出ていたアイデアを組み込んではどうか」などと、プログラムでの提案内容がきっかけで経営の議論が進むことが実際に起きています。

穴澤さん:

具体的に実行されているアクションラーニングの提案内容もあります。『Sense of Belonging』をテーマとしたSOAR第1期で提案された、「BMSラジオ」という活動です。オンライン会議ツールを使って、ピープルマネージャーが考えていることをカジュアルに社内に発信しています。初回は200名もの社員が参加してくれ、「BMSラジオの活動が、『Sense of Belonging』に寄与すると思うか」という質問に対しては76%がポジティブな回答でした。これから1年間、発信を続ける予定です。

こうして実際の行動に移せているのは、プロジェクトの当初からの目標でもありましたし、あらゆる階層のメンバーがリーダーシップを持とうという、我々の企業カルチャーも影響していると思います。

執行役員 メディカル部門長 穴澤嘉雄様
金森さん:

両プログラムのアクションラーニングの様子を見ていると、SOARとRISEで違う目線のアウトプットが出てくることも興味深かったですね。次期経営層であるSOAR参加者が抱く課題感と、もう少し現場に近いRISE参加者が出す課題とでは、視点が少しずつ違っていました。経営からトップダウンで課題を示すのではなく、複数の階層のメンバーに会社のカルチャーに関する課題を考えてもらうことにも、このプログラムの価値があると感じました。

受講者の変化

内藤さん:

参加者は、オーナーシップを今まで以上に持って行動するようになったと感じます。参加者の変化を見ていると、主催者である私たちが元気をもらえるほどです。

会社の方向性への理解も深まったように思います。これまでも戦略や方針については折に触れて説明していましたが、アクションラーニングを通じて主体的に議論するプロセスを通じて、さらに深い次元で理解したのでしょう。こうして認識が揃うと、リーダー陣が手を取り合って進みやすくなりますね。

金森さん:

私はBMSへ入社して半年ほどでSOARへお声がけいただきました。コロナ禍に入社し、限られた人としか交流していなかったので、SOARでいろいろな部門の次期経営者候補の方々と一気にネットワークが築けたのは、今後の仕事にも活きますね。そして、部門を超えてもBMSのオープンな雰囲気は共通しているのだと感じ、BMSがとても好きになりました。

穴澤さん:

私も参加者として、BMSには素晴らしいメンバーが多くいることを改めて感じましたし、より多くの人を巻き込むコミュニケーションのハードルが下がりました。SOARに選ばれたことによってモチベーションもアップしますね。

SOAR、RISEともに第2期目となり、私の部門のメンバーからも参加者がいます。プログラムで学んだ内容をさっそく組織全体に波及してもらっているので、このプログラムは組織に与える効果が高いと実感しています。

今後の展望

今後の展望

金森さん:

本プロジェクトは、BMSのグローバルでも注目されています。経営課題に対して、複数の階層のメンバーがボトムアップで提言し施策を実行している点で、うまくいっている育成施策として見られているようです。先日も米国本社のリーダーから詳細を聞かせてほしいとの相談があり、内藤と一緒に説明したところでした。

第3期以降のSOARやRISEでは、対面でのセッションとオンランセッションをうまく組み合わせていきたいですね。第1期はコロナ禍のため全てオンラインで実施し、苦労した面もありました。BMSでは対面コミュニケーションを重視しており、50%以上はオフィスに出社することにしています。対面での価値が活かせるセッションは、対面でやるようにできればと考えています。

そして、このプロジェクトの価値は、出てきた提案をどれだけ実行して組織を変えられるかにかかっていると思います。プロジェクト終了後の実行フェーズでは、私が社内での相談役となっており、そのサポートの仕方は今後の課題だと考えているところです。グロービスさんの力も借りながら幅広く行っていけたらと思っています。

穴澤さん:

私も同意です。いろいろな会社を見ているグロービスさんから、SOARやRISEに参加した個々人が今後どう育っていくのか、どう育てていくべきかといったアドバイスをいただけるとありがたいですね。

内藤さん:

プログラム内容としては、グローバル人材育成の観点で進化が必要だと考えています。BMSの日本法人はグローバル本社からも重要な位置付けになっていることもあり、海外の方との会議が多くあります。日本人の特性として、謙虚で、正解が出るまで発言しないところがあるように思いますが、それではグローバルの世界で通用しません。文化が異なる人たちと議論をしてビジネスを進められる人材になるためには、今のプログラムからあと一歩改善が必要です。今後もいろいろなことを試しながら、進化させていきたいと思います。

担当コンサルタントの声
中島 淑雄

本プロジェクトの参加者には、将来経営リーダーとしてのビジネススキルやマインドセットを磨くだけでなく、“Sense of Belonging”や”Collaboration”, “Engagement”, “Speak my mind”など、定められたテーマに対し、自分たちで具体的な課題を設定し、仮説検証を繰り返しながら解決策を考えていただきました。

その解決策は具体的な一歩、BMS様の変化に繋がることが求められ、経営陣との議論を経て、実際に実行されます。つまり、経営トップや人事/企画部門、事業部門の責任者、そしてさまざまな部門から選抜された参加者のコラボレーションによる、BMS様の組織変革プロセスそのものです。ここに、SOAR/RISEプロジェクトがリーダー育成にとどまらないユニークさがあります。

経営陣のコミットメントの下、人材育成と組織へのインパクトの両輪を追求していくBMS様のアプローチは、組織変革が求められる多くの企業に示唆があるのではないでしょうか。グロービスとしても、パートナーとして携わらせていただくことに責任感と誇りを感じるとともに、多くの学びを得ています。

武井 原野

私はSOARプログラムの担当コンサルタントとして、企画の初期段階から携わらせていただいております。
とても印象に残っているのは、日本社長を含め、関係者それぞれが、プログラムに対する想いや考えをしっかりと持たれており、プロフェッショナルとして良いものにしていきたいという姿勢を強く感じられたことです。私自身、その姿勢に刺激を受けながら、社内のチームメンバー、社内外の講師とディスカッションをし、どのようなゴール設定/プログラム設計で受講者の変革を導いていくのか、徹底的に議論を重ねて参りました。

プロジェクトチームの皆様のお力添えもいただきつつ、最終的には、受講者1人ひとりに変化が見え、経営陣の期待するようなアウトプットを出すことができ、大変嬉しく思っています。
弊社のサポートさせていただいているプログラムは、グローバルからも注目されているとお伺いしております。ぜひその期待に応えられるよう、今後も全力で伴走させていただきたいと思っています。

稲田 康太郎

BMS様は、「優秀な人材を惹きつける魅力的な会社でありつづける」ことを目指す。そのために、自身の想いと全社視点をもって組織のコラボレーションを推進し、変革を実行するリーダーたちを育成し続ける。この目指す姿を実現していくために、私たちグロービスは、パートナーとして共に悩み、共に最適解を探し続けています。

本プロジェクトに伴走させていただく中で、私が最も印象的だと感じることは、プロジェクトへの「BMS様の組織全体としての支援」です。半年間に及ぶ本プロジェクトの最後に、経営層に対して組織変革の提言を行います。経営層や組織全体が、その提言を練り上げる段階から提言案の実行まで支援し続けようとされています。次世代のリーダーを育成していくために、組織全体としての支援を惜しまないという強い想いを感じます。

プロジェクト成功の背景には、BMS様のこの育成に対する「想い」と「支援」が大きく影響していると感じています。
今後も、BMS様と共に悩み抜き、パートナーとして寄り添い、伴走し、新たなチャレンジにご一緒できればと思っています。

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