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大企業の事業創造は次のステージへ ~スケール化への肝とは~

2024.12.09

多くの大手企業では、次世代のビジネスの柱をつくるべく新規案件への取り組みが盛んに行われている。しかし0→1(事業コンセプト策定)まではできても、その後の1→10(価値仮説、および成長仮説検証)において頓挫してしまうことが少なくない。 では、どのように新規事業をスケールアップし、事業化に結びつけていけばいいのか。
現在進行形で新規事業の創出にチャレンジしている三菱電機株式会社 名古屋製作所 オープンイノベーション推進部 次長 田中 哲夫氏に成長仮説検証での具体的な取り組みや、経営陣との関係構築や組織の風土づくりなどについて語っていただいた。本レポートは、2024年9月に行われた国内最大級のカンファレンス「JOIF OPEN INNOVATION FES 2024」で行われた講演内容を一部まとめたものである。

1→10の価値・成長仮説検証まで担えるイノベーション部門に進化

田中氏が所属している三菱電機株式会社 名古屋製作所では、既存事業としてFA(Factory Automation /ファクトリーオートメーション)と言われる「工場における生産工程の自動化」を実現するための制御機器、駆動機器、モータ、産業用ロボット、ソフトウェアなどを開発している。

三菱電機株式会社 名古屋製作所は、2024年9月に100周年を迎えた歴史のある大企業である。既存事業の業績は好調ではあるものの、次の100年を考えたときに、企業としてこのFA領域で生き残っていけるかが目下の経営課題になっている。それが契機となって田中氏が責任者を務めるオープンイノベーション推進部(以下、名OI推部)が立ち上がり、今年で7期目を迎えている。なお田中氏は、20年近く既存事業である汎用インバータの開発・設計に携わってきており、「自分の軸は製造業にある」と言う技術屋である。

名OI推部は、スタートアップとオープンイノベーションで新たなビジネスを作っていく新規事業開発組織である。2018年に前身の課レベル組織が創設され、2024年4月から部レベル組織に昇格を果たした。同部は既存事業から独立した出島部門として、スタートアップ企業などと有機的な結合を図り、FA領域で新しいビジネスを起こしていくことを目指している。

今期より部への昇格に伴い、方針を「事業企画から事業開発への進化」と再定義した。田中氏は次のように言及している。
「以前までは、事業企画のビジネスプランニングで終わってしまうケースが多く見受けられました。その理由は、新規事業をプランニングした後の1→10フェーズから既存事業部門に任せてしまっていたからです。そこで名OI推部では、事業の受け皿が無いと嘆くのではなく、自ら事業化を目指せるところまでインキュベーションしていくことにしたのです。具体的には、名OI推部内に事業開発チームを立ち上げ、我々自身が1→10の成長仮説検証まで行えるようにしました。」

これが、大きく進化したポイントである。

三菱電機のイノベーションを支える3つのポイント

名OI推部では、具体的にどのような取り組みを行っているのだろうか。3つあると言う。

1つ目は、「イノベーションのプロセス構築」だ。イノベーション活動はとかく属人的になりがちだが、組織として継続的に活動できる状態にするため、名OI推部で業務ルールや業務フローを策定し、運用している。
「簡単に言うと、アイデアを出した後は3人ほどのアクショングループ(AG)という小グループで検討し、その次は10人ほどのワーキンググループ(WG)を構成し、さらに検討を進めていきます。そして、最後は製作所の所長室を交えての事業化判断。3つのプロセスを段階的に踏むことにしたのです。」

2つ目は、新しい事業化・製品化につなげる取り組み、「イノベーションの挑戦」である。
「これは3つの取り組みのうち、最も本質的な部分だと考えています。より良いスタートアップ企業を見つけて共創し、事業化を目指すアクションプランを立案しています。具体的には、アクセラレーションプログラムの運営など、出会いの機会を創出する取り組みを行っています。なかでもユニークな取り組みは、北米にある我々の開発拠点と連携して実施した「Solve the Business Problem Challenge」です。一般的なアクセラレーションプログラムは、ある一定の技術領域でスタートアップを募集するイメージがあると思いますが、このプログラムでは我々から予め高難度の課題を設定し、その課題を解決できるスタートアップを募集します。課題解決できるスタートアップを、よりダイレクトに探したいと考えているのです。」

加えて、同社では、成長企業に投資する“直接出資”と、CVCを使いながら行う“間接出資”の両方で、スタートアップへの出資を積極的に行っている。出資後は、出資したスタートアップと自部門の事業開発チームが共同で、プロトタイプやMVP(Minimum Viable Product)を開発し、それをお客様に提供し、お客様と一緒にPoC(Proof of Concept/プルーフ・オブ・コンセプト)を行いながら、新事業アイデアの事業化検討を実施している。

3つ目は、「イノベーションを産み出す風土醸成」である。三菱電機株式会社 名古屋製作所は「深化(既存事業の強化)」と「探索(新規事業の創出)」の両利きの経営を行っているものの、深化側は20部門以上ある一方で、探索側は1部門しかなく、約20対1のアンバランスな組織になっている。そこを少しでも埋めるためにも「風土醸成」というアクションを非常に重要視している。

具体的には、製作所内イベントという形で、さまざまなイノベーションの活動を紹介している。また既存事業にどっぷり染まったエンジニアも多いので、社員が新たなスキルを積極的に学べるよう、イノベーション研修やイントレプレナー研修などのリスキリングの活動もしっかり行っている。

<名OI推部の3つの取り組みと活動方針>

「作ってから売る」のではなく「作る前に売る」アプローチに転換

講演の最後には、名OI推部の考え方と事例を紹介した。
「三菱電機は歴史のある大企業なので、今でも私も含め、『作ってから売りなさい』という考え方が根付いています。それを、私たちの名OI推部では180度転換し、『作る前に売る』というアプローチに切り替えようとしています。」

まず先にお客様のところに行き、お客様と会話しながらお客様の要望(ニーズ)やお悩み(ペイン)を抽出し、解決する。それを体現した事例の1つが「IoT緑化シェード」である。制御機器を使ってパッションフルーツという植物を育成制御し、クラウド上にて遠隔監視できるソリューションで、長崎県大村市にある鈴田峠農園という農業系スタートアップと、三菱電機の異業種コラボレーションによるものである。
「こうして聞くと、従来にもありそうなサービスや技術に感じられるかもしれません。20年近く技術屋に従事してきた私から見ても、そういうふうに思います。でも、オープンイノベーション活動は、技術的に最先端でなくとも、お客様から『こういうものがほしい』『こういうサービスを作ってくれないか』という要望(ニーズ)があれば新事業として成り立ちます。その視点が大事なのだと思います。」

このプロジェクトは、大都市の高温化(ヒートアイランド)現象の緩和と人の集客貢献を目指し、取り組んでいるという(※1)。2024年4月〜10月まで、NEXCO中日本様と一緒に、新東名高速道路の岡崎サービスエリアにてPoCを実施している。このように、同社では次の事業の柱となる可能性にあふれた新規事業が次々と立ち上がりつつある。

共創関係を築くには、Win-Winの姿勢が必要

セミナーの後半は、三菱電機株式会社 名古屋製作所のオープンイノベーション活動を支援しているグロービス・コーポレート・エデュケーション ディレクター大崎 司と田中氏との対談が行われた。

大崎:

現在、さまざまなスタートアップ企業とお付き合いがあると思いますが、こういう企業は共創しやすいといった共通する特徴はありますか。

田中:

私は月に10社以上のスタートアップ企業とオンラインを含めて面談しています。その中で、付き合いやすいと感じるのは、技術的なブラックボックスがない企業です。私たちはさまざまな技術を扱っています。自社の技術と組み合わせるときに、「この技術のみで」といった「点」で合わせる共創は非常に難しいです。その企業が保有しているすべての技術が分かっているほうが、意外な技術の組み合わせが可能になります。それによって社会課題を解決することにもつなげやすくなるので、技術をオープンにしている企業は連携しやすいですね。

大崎:

1つは、技術をオープンにしている企業ですね。技術以外の観点では何かありますか。社風やスピード感などはいかがでしょうか。

田中:

一般的にスタートアップの皆さんのほうが物事を決めていくスピードが速いので、そこは全く問題ないと思います。それよりも互いがWin-Winになるような姿勢があるかないかは、継続的にお付き合いしていく上では重要になってきます。実は面談でお会いすると「これを使ってください」「買ってください」という企業が半分ぐらいあるんですが、一方的に売り込んでくる企業だとより良い関係を築くのは難しいのが現状です。

大崎:

オープンイノベーションでは、大手企業はよく「スタートアップ企業の立場になって寄り添いなさい」と言われます。その一方で「こういうところを手伝ってほしい」など、大手企業も困っていることがあると思います。そういったところに対してアプローチできたり、大手企業の気持ちを汲みとって取り組めるスタートアップ企業でないと、うまくいかないということですかね。

田中:

そうですね。お互いにWin-Winの関係を構築しようと考えて頂けるかどうかが大切だと思います。

PoCを段階的に設定し、現場と評価者の共通言語を作る

大崎:

私もいろんな企業を見てきて、どの企業も0→1のアイデア創出や風土醸成は、ある程度整ってきたように感じています。しかし1→10については、実証実験しながらトラクションを作っていく過程に苦戦している企業が多いように思います。PoCの無限ループから抜けられずにハマっていたり、いつしかPoCをやること自体が目的になっていたりするケースはよく耳にしています。三菱電機 名古屋製作所さんは1→10の過酷なフェーズをどのようにして乗り越え、工夫されてきたのでしょうか。

田中:

これは大崎さんに教わって始めたことですが、 実証実験(PoC)を段階的に設定しています。カスタマープロブレムフィット(CPF)からプロダクトマーケットフィット(PMF)に至るまで、段階ごとにPoCの目的を明確にし、それに対応するKPIを立てています。これらのKPIを達成することで、最終的に事業が成立するという流れで進めています。

従来であれば「100億円の事業を立ち上げなさい」と製作所の経営幹部に急かされます。しかし、そんなに急いで行っても無理が生じるだけなので、「必要なフェーズ(段階)がきたときにスケールさせましょう」と言って、議論を整理するようにしています。

大崎:

PoCが走り出すと、経営層の中には「いつ売上が上がるんだ」といったスケールアップを気にされる方も多いと思います。プロトタイピングでの価値仮説検証をすっ飛ばして、いきなりスケールに焦点を当てて進めてしまうと、大体うまくいきません。

田中:

本当にそうだと思います。また、これまで加わっていなかった製作所の経営幹部が急に現れて、これまで積み上げてきた取り組みを引っ掻き回して、イントレプレナーや若手のモチベーションを下げてしまうことがよくあります。そうならないように製作所の経営幹部には事前に協力を仰ぐ必要があります。

大崎:

しっかりと価値仮説検証から成長仮説検証につなげていく。それを現場で実行する人だけでなく、評価者側も理解した上で意見を提示していく。そういう製作所全体の仕組みづくりや意思統一を行うことが大切ですよね。

田中:

「今、価値仮説をやっているフェーズなので、ここでお客様の課題解決ができたら、すごいことなんですよ」ということを説明して、製作所の経営幹部からスケールアップなどを急かされても、「もう少し待っていてください」という話をするようにしています。

大崎:

まず PoCとして、どういう価値仮説を検証するのか。そしてその後、ターゲットとなる顧客に買ってもらうために、どうするべきなのか。こういうStep-By-Stepを現場も経営層も共通言語で対話ができるようになるといいですよね。

2カ月半でβ版を完成させた米国スタートアップのスピード感

田中:

そのなかでも、新規事業として速いスピードで進行しているのが、私たちが今年5月に追加出資したアメリカ ボストンのRealtime Robotics(※2)というスタートアップ企業です。6月に依頼して、今年8月末時点で、もうβ版のソフトウェアが完成しました。そのぐらいのスピード感でやっています。

先方のCEOは最初から「大丈夫!できるできる」と言っていたのですが、こちらは最初半信半疑でした。すると、8月の盆明けには本当に完成し、それで慌てて私たちも製造業のお客様に提案して、実証実験(PoC)を進めています。

大崎:

非常に速いスピード感ですね。

田中:

今回の私たちが依頼したソフトウェア開発は「4人工(作業する人の労働力)かかります」と言われ、現在の彼らの従業員の中で開発をするのかと思っていたら、「(私たちの)NRE(Non-Recurring Engineering/開発費)の契約金で新たに4名雇って、行います」と言っていました。なるほど、だからこのスピード感でできるんだと改めて痛感しました。こうした考え方は、日本とは違うところです。

迅速な意思決定ができる組織構造と、社内外の人たちが混じった透明性の高い会議で、大企業を変革する

大崎:

御社は大手企業なので、従来のやり方(決裁フロー)だと、管理職や役員のハンコが相当な数になると思います。その中で、どのように迅速に意思決定されたのでしょうか。

田中:

オープンイノベーション推進部は、名古屋製作所の所長室直下の出島組織になっています。最終意思決定者は私たちの所長ですので、それですぐ稟議が下りる、非常に単純化された組織構造になっています。つまり、意図的に意思決定ルールを変更しました。そうしないと我々の製作所はすぐに階層化してしまいますので。

大崎:

変革に対して抵抗勢力もあったと思います。そのあたりはどのようにして組織構造の変革を進めていったのでしょうか。

田中:

一番大きいのはトップダウンで決めたことです。ただしトップダウンだけだと、大企業の組織運営は行えません。運営においては透明性のある会議が必要不可欠ですので、定期的にメンバーを集めてオープンな会議を心がけました。

他の大企業ではあまりないかもしれませんが、我々の製作所にスタートアップのCEOに来てもらい、我々からは製作所の経営幹部に出てもらって、社外と社内の人材が入り混じる会議を月に1回実施しています。そういう工夫をしながら活動を透明化して、早期に決断を行えるようにしました。

大崎:

素晴らしいですね。会議体をどう設計するかは、経営イシューとしては非常に大事になってきます。トップダウンだけで進めないというのは、非常に重要なポイントだと思いました。

1→10は自組織で行い、現場のハレーションを解消

大崎:

製品ができたとしても、お客様がいなければ前に進めません。そこに対しては「作る前に売れ」という大号令をかけて取り組まれました。しかし、既存の営業の人たちは目の前に売上という目標数値があり、必ずしも新規事業の製品やサービスを売る必要性がないため、なかなか動いてもらえないなどのジレンマもあったと思います。そのあたりはどういうふうに乗り越えていったのでしょうか。

田中:

「作る前に売れ」を自身で体現したいと思い、自らお客様にアタックしました。営業部門とのハレーションは確かにあるのですが、それが起きやすいのは管理職層なんですよね。お客様にアタックする時は、代理店やフロントの営業も同行します。ですので、最前線にいる営業スタッフとは「お客様のご要望に応えられている、お客様のためになっている」という意識が共有しやすく、それゆえに良好な関係を築くことができるのです。

ただ、最近は社内も少しずつ変化してきました。管理職層に対して、「お客様がこう言っていて、こういう製品やサービスをほしいから作っているんです」と言えば、会議でも否定されなくなってきたのです。製作所全体が「お客様が言っているから、やろう」という方向に向いていると感じます。

大崎:

私もいろいろな企業を見ていますが、0→1で作ったモノを既存のBU(ビジネスユニット)に任せても、ほとんどの場合はうまくいきません。既存のBUは、0→1で作った部署ほどその製品・サービスに対して思い入れがないですし、他にやりたいことがあったりして、開発したときの思いがねじ曲げられてしまうこともあります。ですから、まず1→10までは新規事業部門で進めていくことが、新製品・サービスを形にする際の肝になっていると思います。

田中:

結局、誰かが1→10を埋めなければいけません。それをどこがやるのか。それなら、製品・サービスに愛着があり、モチベーションも高い最初に事業を考えた人がやるのが適任だと思い、私も取り組んでいます。

イントレプレナーの育成やジョブローテの仕組みづくりは、専門家・人事部門と連携する

大崎:

いくつかのPoCを通じて、事業化しそうなものができ始めていると思いますが、プロジェクトは名OI推部の全員が関わっているわけではないですよね。

田中:

基本的には、我々のメンバーはイントレプレナー(社内起業家)として1人1つずつ案件を受け持ち、責任を持って事業化に向けてアタックしていくスタイルをとっています。

大崎:

大手企業には、従業員のジョブローテーションがあると思います。メンバーが異動してしまうと、新たなメンバーの教育に時間を要するため、既存メンバーが顧客やスタートアップ企業など社外に向き合う時間が取りづらくなるリスクやジレンマがあるのではないでしょうか。組織として新規事業を拡大再生産するために、人や組織能力の観点から工夫していることがあればお聞きしたいです。

田中:

確かにある程度業務年数を重ねていくと、その人が若い人を教えるという構造になりがちですよね。ただ名OI推部では、一人ひとりがイントレプレナーとして「新たな事業を起こしたい」という思いで取り組んでいるので、そういう仕組みにしてしまうと、ご指摘のとおり、無駄な時間が増えてしまいます。
そうならないようにするために、メンバーには新規事業を立ち上げることに注力してもらっています。一方で私のような管理職層は専門家と協力しながら、メンバーのリスキリングを進めています。役割分担をしながら、少ない人員でも効率よく効果を上げていく体制を整えています。

大崎:

今後、御社はハイペースで組織拡大の構想があるとお聞きしています。

田中:

昨年まで8名のメンバーだったのを、今年25名まで増やしました。将来的には、ここ数年で50名体制にしていきたいと考えています。そのために、先輩メンバーが教えるのではなく、専門家によるリスキリングの教育体制を整えていく必要がありました。

また、イントレプレナーに適切な人材が入ってこないと事業化につながらないので、人事や研修部門と相談して、ローテーションのパスをきちんと決めるようにしています。そこも大きなポイントだと思います。

大崎:

そうですね、最後は“人”が肝です。新規事業部門がどれだけ人事と連携し、制度やローテーションを作っていけるかという点は非常に重要だと思います。最後に、田中さんから参加者の皆さんにメッセージをいただけますか。

田中:

私も毎日いろんな人と戦いながら、そして悩みながら新規事業開発に取り組んでいます。同じように新規事業の立ち上げに取り組んでいる方で、私のような悩みをお持ちの方、また相談にのっていただける方がいらしたら、ぜひお声がけいただきたいと思っています。今日はどうもありがとうございました。

大崎:

田中さん、ありがとうございました。最後に私から、組織として成果を拡大再生産し続けるために重要なことは何かというお話をさせていただければと思います。

組織全体の成果の質を高めようとすると、個々の行動の質を上げていけなければなりません。行動の質を上げるには、思考の質を上げる必要があります。では、思考の質を上げるには、何をするべきなのでしょうか。MIT大学教授のダニエル・キム氏の「成功循環モデル」では、関係性の質を上げる必要があると言われています。

<成功循環モデル>
(出所:『2020年人工知能時代僕たちの幸せな働き方』 藤野貴教 著 P147をもとに加筆修正)

「関係性の質を上げる」ためには3つの要素が必要です。1つ目が「共通目的」。部門として、どういう方向性・ミッションで頑張っていくのかを示すこと。2つ目が「共通言語」。新規事業の0→1や1→10それぞれを個人技でやりだすと、組織の共有知としてストックできません。ですので、0→1、1→10、10→100において共通の仕事の型をナレッジ化することが大切です。3つ目は「相互理解」。メンバー同士でリスペクトして相互理解できる状態を作ることです。この3つをどのように創っていくかが、成果を拡大再生産し続けるための重要なポイントだと思います。

<参考文献>
(※1)三菱電機のオープンイノベーション活動
(※2)三菱電機ニュースリリース 2024年5月27日

右:三菱電機株式会社 名古屋製作所 オープンイノベーション推進部 次長 田中 哲夫氏
左:株式会社グロービス コーポレート・エデュケーション ディレクター/グロービス G-CHALLENGE 投資担当 大崎 司

本レポートは、2024年9月13日に実施された国内最大級のカンファレンス「JAPAN OPEN INNOVATION FES 2024」におけるグロービスと三菱電機名古屋製作所様のセッション「大企業の事業創造は次のステージへ ~スケール化への肝とは~」の講演内容をまとめたものです。

[登壇者]
■ 田中 哲夫氏 (三菱電機株式会社 名古屋製作所 オープンイノベーション推進部 次長)
■ モデレーター:大崎 司 (株式会社グロービス コーポレート・エデュケーション ディレクター/グロービス G-CHALLENGE 投資担当)

※本記事に掲載のご所属・お役職はご登壇当時のものです

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