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パーパスドリブン経営を力強く推進するグローバルリーダーの育成

ライオン株式会社 2023.12.01

ライオン株式会社様は、トイレタリー分野、薬品、化学品などさまざまな事業を展開する、日本を代表するメーカーです。中でも、ハミガキやハブラシなどのオーラルケア事業では日本トップのシェアを誇ります。

同社は2030年に海外売上比率50%を達成するという大きな目標を掲げ、その実現に向けて世界各地の経営幹部候補者に対してグローバル経営リーダーとなるための育成施策を行っています。本プロジェクトを企画した同社の人材開発センター グローバル人事グループ 永原 恭生様、シェイ・エイミー様にお話を伺いました。(所属・役職はインタビュー当時)

はじめに:本プロジェクトの概要

ライオン株式会社様では、中長期経営戦略フレーム「Vision2030」を掲げ、アジアを中心とした多くの人々の生活に貢献するべく、連結売上高6,000億円、海外売上比率50%を達成するという大きな目標を目指しています。

その実現に向け、世界各地の拠点で組織をリードする各国の経営幹部候補者に対して、グローバルビジネスを牽引するリーダーとなるための育成施策「AL(ALL LION)リーダープログラム」(以下、本プロジェクト)を実施しています。

本プロジェクトは、受講者がライオンのパーパスを理解し、自身の役割と重ね合わせたうえで、担当リージョンの戦略を描き、戦略実行にあたって必要となる各国のステークホルダーとの関係構築ができていることを目指します。

グロービスは本プロジェクトの冒頭にあたる「パーパスセッション」のパートに参画し、ライオン様と共同でプログラムを企画・実施しました。プログラム構成としては、会社のパーパスを体現して成果を出すためのリーダーの役割について学んだ後、宮城県石巻市へのフィールドトリップを実施してライオンの歴史と思想の源泉に触れ、パーパスを軸に行動するリーダーとの対話を行います。最終日には、会長や社長と対話し、受講者一人ひとりが会社のパーパスとリーダーとしての役割を重ね合わせ、その実現に向けたアクションを発表するという内容でした。

<本プロジェクト(パーパスセッションパート)の流れ>

インタビュー:プロジェクト実施の経緯

プロジェクト前に抱えていた問題意識

永原さん:

当社が中長期で目指す姿を実現するにあたり、世界各国の次世代リーダー育成が必要でした。

我々は、「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」というパーパスを起点として、2030年に向けた経営ビジョンと経営戦略を示した中長期経営戦略フレーム「Vision2030」を2021年に策定しました。ライオンだからこそできるヘルスケアを提供し、アジアを中心としたより多くの人々の生活に寄り添い、貢献することで、企業価値の向上を目指しています。

業績目標としては、2030年時点で連結売上高6,000億円水準を掲げ、その50%程度は海外事業で達成することを想定しています。この目標を達成するためには、これから当社の事業や組織を牽引する各国の次世代リーダーが、経営を担う人材として必要な知識・経験・人的ネットワークを獲得することが人材育成上の重要課題だと考えました。

この課題を解決するために、タレントマネジメントシステムの導入等と合わせ、本プロジェクトの検討を始めました。

本プロジェクトは、アセスメント・海外現地法人への訪問・ビジネススクールへの短期派遣・他流試合・現経営者のメンタリングなど、さまざま要素から構成されています。今回、プロジェクトの冒頭を飾るKickoffのパートを一緒に企画するパートナーとしてグロービスを選んだ理由は、大きく3つあります。まずは、リーダー育成に関する深い知見です。以前、グロービスが執筆した書籍「志を育てる」を読み、リーダーの能力開発だけでなく、内面的な成長についても経験が豊富であると思ったのです。

2つ目は、講師陣のスキルが高いこと。説明の明快さや幅広い経験値だけでなく、受講者が前向きに本プロジェクトに参加できるファシリテーションをしてくれるだろうとの期待がありました。

そして最後の理由は、丁寧なサポート体制です。ご相談の段階から、担当コンサルタントの中島さん・武井さんが弊社の視点に立ってくださり、親身かつ適切なアドバイスをしていただきました。提案の質も高く、このプログラムであれば受講者の心を動かすセッションが実施できると思い、パートナーとして選ばせていただきました。

人材開発センター グローバル人事グループ 永原 恭生様

プロジェクトで目指していたゴール

エイミーさん:

初回となった2023年は、中国、韓国、タイ、インドネシア、日本から計7名が参加しています。本プロジェクトを通じて、各国のリーダーがお互いに支え合い、Vision2030の実現に向けてパーパス経営を力強く推進している状態を目指しています。「パーパスセッション」においては、受講者がパーパス経営について理解を深め、より良いリーダーになるための気づきを得ることをゴールとしました。

具体的には、パーパス経営の理解という点においては、パーパスを単なる標語で終わらせず、実践する方法を学ぶことを重視しました。また、より良いリーダーになるための気づきを得るという点においては、リーダーのロールモデルとなる人物と直接対話をすることで自分自身を振り返り、仕事をする目的や社会に与えたい影響、人間的な成長について深く内省する機会として用意したいと考え、リーダーのあるべき姿について心で感じ、内省するためのフィールドトリップを実施しました。

フィールドトリップは、宮城県石巻市で震災復興に携わる方々から危機的状況におけるリーダーとしての判断力や、ビジョンを持つことの大切さを学ぶ内容です。創業者である小林富次郎のゆかりの地でもあることから、石巻市という地を選びました。人々の幸福と生活の向上に寄与することを重視した創業者の精神を肌で感じる場にしたいと考えました。

人材開発センター グローバル人事グループ シェイ・エイミー様

プロジェクトの主な内容

実施において大事にした点

エイミーさん:

パーパスセッションの中で、受講者同士・講師・現経営陣・フィールドトリップにおける現地のリーダーとの間で良い化学反応が起きるよう、準備段階から関係者と対話を重ね、しっかり認識を合わせることを重視しました。

特に、石巻市へのフィールドトリップの企画では、事前に現地を2回訪問し、本プロジェクトの目的や受講者に伝えたいメッセージについて、協力いただく方々へ当社の考えと想いを共有しました。

結果として、本プロジェクトに関わるメンバー同士、お互いに刺激を受け予想を超える良い化学反応を起こすことができたと思います。

逆に苦労したのは、言葉の壁です。海外からの受講者も含めた全員が本プロジェクトの内容を理解し、学びと気づきを得られるよう、セッションは英語で実施しました。そのため、英語力に不安がある一部の受講者は本プロジェクトの前に英語研修を受け、英語力を引き上げました。また、石巻市へは同時通訳の方にも同行いただくなどの対応をし、言葉の壁を乗り越えるための準備を重ねました。

人材開発センター グローバル人事グループ 永原 恭生様
人材開発センター グローバル人事グループ シェイ・エイミー様

実施してのご感想、受講者の変化

永原さん:

パーパスを学ぶセッションは受講者が初めて対面した場だったので、最初は少し緊張感も見られました。ですが、講師のファシリテーションのおかげで、1時間も経てば各自が積極的に意見を述べる状態に変わっていきましたね。全員が楽しそうに講義に耳を傾け、前向きに意見交換をしているのが印象的でした。

結果として、講師や受講者間のディスカッションを通じて、パーパスを実践する具体的なイメージをもち、最初のステップとして何をすべきかを学べたと思います。

人材開発センター グローバル人事グループ 永原 恭生様
エイミーさん:

石巻市へのフィールドトリップでは、受講者が深く内省し、自分の考えや感情を開示する場面が見られました。創業者ゆかりの地で創業者の生涯を振り返り、東日本大震災の被災状況を目の当たりにしたことで、改めて当社のリーダーとして何を成し遂げるかに想いを馳せることができたのだと思います。

また、通常とは異なる環境で多くの時間を共有することで、受講者の中に連帯感や信頼関係が深まっていくのを感じました。実際にある受講者から「本プロジェクトを通じてお互いの理解が深まり、アジアにおけるビジネスを一緒に拡大していくためのチームとして、期待が膨らみ、恵まれていると感じました」とのコメントもありました。参加者の真摯な姿勢や内省が進む様子から、日常から離れて思考を掘り下げることの大切さを改めて感じました。

そして本プロジェクトは、石巻で活動する公益社団法人3.11メモリアルネットワーク、福島県相馬市で人材育成を手がける一般社団法人あすびと福島、グロービス、そして当社が参画し、それぞれの視点から熱意をもって取り組みました。こうした姿を受講者に示せたことによっても、多くの気づきを与えられたのではないかと感じています。

グロービスの担当コンサルタントには、常に親身に対応・アドバイスいただきました。時には我々とは異なる観点から率直に意見をいただくことで、深く議論ができ、良いセッションを一緒に作ることができたと感じています。

今後の展望

今後の展望

永原さん:

本プロジェクトでは、受講者がパーパスへの理解を深め、リーダーとしての在り方を内省しながら信頼関係を築くという目的を達成できたと考えています。受講者は今後、世界の各拠点でパーパスの実践に取り組むことになります。

会社全体がパーパスの認識を変化させるためには、受講者が本プロジェクトで学んだ内容を自分自身の役割と業務にしっかり落とし込み、継続的に実践することが重要だと捉えています。セッションでの気づきを行動に変え、その行動が組織・会社を変えていけるよう、我々事務局としては現経営者がメンターとして、アクションプランの進め方やリーダーとしての成長についてアドバイスする場を設ける等、適切なフォローアップの体制を整えたいと考えています。

本プロジェクトは、第2回以降も継続予定です。将来的には、パーパスセッションを海外で実施し、世界中の優れたリーダーや企業から学びを得る、よりグローバルなプログラムに進化させたいと考えています。

第1回を終えての課題は、過密スケジュールの改善です。受講者がしっかり学びに向き合えるよう、コンテンツの取捨選択が必要だと思っています。

また、本プロジェクト以外では、より若い世代の各国リーダー候補にも当社のパーパスや取り巻く環境、リソースを理解し、リーダーとしての在り方や目指す姿を深く考える機会を設けたいと構想中です。

グロービスには、当社の人材開発を長期に渡り多面的にサポートいただいています。ビジネス教育におけるサービスの幅の広さや、人材育成課題に対する解決策の提案能力の高さが強みだと感じていますので、今後も幅広いテーマで当社の人材開発を支援いただきたいと考えています。

担当コンサルタントの声
中島 淑雄

本プロジェクトにおいて、グロービスパートで拘ったのは、「ライオンのリーダーとして大切にしたいことは何か?」を、本社及び各国のリーダー1人ひとりが、自分の本心に向き合い、問い続けることでした。その問いを、その後も続くプログラムを通じても考え続け、他の受講者とも語り合う。それらを通じて、自分なりのパーパスとして研ぎ澄ましていく状態を創ることを狙いました。本社からのパーパスの押し付けではなく、答え合わせでもない点が重要です。そうでなければ、自分の言葉で語り、行動し、意思決定できるリーダーは生まれません。

そのために、1人ひとりが自分の心と対話する場を創ることが大切であり、ライオン様と何度も議論を重ねながら、妥協せずに練り上げていきました。最終的には、ライオン様の創業者の想い、東日本大震災からの新しい再生に挑むリーダーの行動と志、ライオン社員の震災後の復興ボランティア活動、今回プログラムの参加者の視点や考え方等、それらと自分自身の価値観を交錯させながら「自分が大切にしたいことは何か?自分のパーパスとは何か?」を問い続けていただいたと思います。

参加されたリーダーの皆様1人ひとりが、これからもパーパスを研ぎ続け、世界の市場でリーダーシップを発揮し続けることを願っています。

武井 原野

本プロジェクトは、企業パーパスを体現し、リージョン戦略を推進するグローバル経営リーダーの育成を目的に、ケースメソッドだけでなく、フィールドトリップや経営陣との対話の場も含めて設計を致しました。

このテーマは、今後企業がイノベーションを起こし、グローバルで成長していくうえで重要であり、多くの企業でニーズがある一方、同テーマをグローバルで実施するには、多くのチャレンジもあると考えます。

本プロジェクトの成功要因として印象に残っているのは、事務局の皆様の拘りと、本音のディスカッションです。オンラインの打ち合わせを繰り返すだけでなく、実際に石巻市に事前訪問し、ファシリテーターや現地で活躍するリーダーの方も同席し、どのような場を創るべきか本音で協議し、プロジェクトの目的やスケジュールを念入りに確認し合いました。
このように、各ステークホルダー間で目的・想いを丁寧にすり合わせ、受講者の皆様にどのような変化を起こしていきたいのかを明確にすることで、2年間に渡るプロジェクトの船出となる、有意義な場が作れたのではないかと考えています。

最後に、私自身、ライオン様の創業・パーパスの背景にあるストーリーに触れて、心を動かされました。本プロジェクトについては、今後も継続されていくとお伺いしております。ライオン様、そして受講者の皆様の更なる成長を実現できる場が創れるよう、今後も全力で伴走させて頂きます。

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