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リーダーとしての「信念と覚悟」を育む、SMBCグループの次世代経営人材育成

SMBCグループ 2025.12.01
SMBCグループ様


SMBCグループ様は、「人」が最も大切な財産であると考えています。「人」は、同グループが将来にわたって成長し、お客さまや社会にとってなくてはならない存在となるための競争力の源泉です。そのため、「多様でプロフェッショナルな社員が挑戦し続け、働きがいを感じる職場とチームの実現」を目指す姿とする人財ポリシーを制定し、会社と従業員の「選び、選ばれる関係」の実現に向けた取り組みを進めています。

<SMBCグループ人財ポリシー>

そこで同グループでは、グループを率いる経営リーダーとなりうるマネジメント層を対象にしたグループ各社合同の育成プログラムを、10年以上にわたってグロービスと共同で実施しています。

本プログラムの背景にある課題意識や実施内容、参加者や組織の変化などについて、株式会社三井住友フィナンシャルグループ 人事部研修所長 清水 邦宏様、所長代理 相原 由佳子様、所長代理 羽賀 法子様にお話を伺いました。(役職はインタビュー当時)

はじめに:本プログラムの概要

SMBCグループ様は、日本最大手の複合金融グループの一社として、銀行、リース、証券、クレジットカード、コンシューマーファイナンスなどの多様な事業を手がけています。

同グループでは、経営人材の計画的な育成を目的とした取り組みの一環として、グループ各社のマネジメント層を対象としたプログラム(以下、本プログラム)を10年以上にわたって実施。事業環境や組織課題に応じて内容をブラッシュアップし続けてきました。近年は、本プログラムにおいてもリベラルアーツやアクションラーニングを取り入れ、顕在化した課題だけでなく未知の事象にも対峙し、自ら問いを立て解決に導く力を養う内容になっています。

※本プログラムには、SMBCグループの三井住友銀行、SMBC信託銀行、三井住友ファイナンス&リース、SMBC日興証券、三井住友カード、SMBCコンシューマーファイナンス、日本総合研究所、三井住友DSアセットマネジメントからご参加いただいています。

<プログラム全体像>
<プログラム全体像>

インタビュー:プログラム実施の経緯

SMBCグループの持続成長を担う経営人材育成へプログラムを進化

清水さん:

人材は、SMBCグループにとって競争優位の源泉です。

当グループでは、2024年にグループ経営人材育成体系を見直しました。以前からグループ経営人材育成体系はあったものの、各事業会社がそれぞれ育成施策を担っていたため、整合性が取れていない部分もあったのです。

経営人材育成においては、当グループを持続成長させる次世代経営リーダーとなる人材の育成を目指しています。将来的にはCxOや事業部門長等の国内外の主要ポジションとして、当グループを率いていくようなリーダーシップに富んだ経営人材を育成するべく、サクセッションプランを策定し、年齢・背景にかかわらず成果・実績に応じた登用を推進しています。

こうした考えのもと、グループ各社の人事および人材育成部門と連携し、育成体系を整えました。この新たな方針に基づいて構築したプログラムが、将来の経営リーダーとなりうるマネジメント層を対象とした「Advanced Leader Program(ALP)」です。

グロービスと「ワンチーム」で人材育成に向き合い続ける

相原さん:

本プログラムは、その前身となるグループ合同管理職研修を行っていた時代からグロービスと共同で実施しています。グロービスとタッグを組み続けているのは、当グループ全体の傾向や組織課題を人材育成のパートナーとして深く理解したうえで、情熱を持って人材育成に向き合っていただいているからです。

本プログラムでも、担当の皆様には大きな信頼を寄せています。企画担当者としては気軽に話せる関係性がありがたく、曖昧な相談もよくさせてもらっています。各セッションを終えた後には振り返りを必ず行い、毎年内容をブラッシュアップして提案いただけることも心強いです。当社とグロービスが「ワンチーム」になり、人材育成に本気で向き合えていることに感謝しています。

プログラムの主な内容

経営リーダーとしての「信念と覚悟」を持つ

清水さん:

本プログラムは、マネジメント層を対象としています。将来の経営リーダーとしての「信念」を自分の言葉で示し、SMBCグループを持続成長させる存在になるという「覚悟」を持った状態になることがゴールです。

「信念と覚悟」は、本プログラムを含め、当グループ経営人材育成における重要なキーワードです。己を知らないと、「信念」を言語化するのは難しいものです。ですから本プログラムでは、自らを理解して「信念」を言語化し、困難から逃げずに実行する「覚悟」を決め、経営リーダーに求められる全社目線を養います。

羽賀さん:

「信念」と「覚悟」の醸成にあたってはマインドと経営知識の2軸が必要だと考え、プログラムを構成しました。最終日には、プログラム全体を通じて得た学びや気づきを総動員し、アクションラーニングの最終発表と自身のリーダーとしてのコミットメント宣言を行います。その他、任意のカリキュラムとしてビジネススクールを導入し、経営リーダーに求められる知識に触れる機会を設定しています。

相原さん:

実は、この「信念」と「覚悟」をどのように本プログラムに織り込んでいくのかというのが、最も苦労したポイントでした。ゴールに到達するためにどう設計していくかというのは非常に難しいものですが、どうしたら実現できるか、どうしたらもっと提供価値を高められるか、ディスカッションを繰り返しました。時には意見がぶつかることもありましたが、チーム一同で細かい部分までこだわって作りあげたプログラムです。

人事部研修所 所長代理 相原 由佳子様
人事部研修所 所長代理 相原 由佳子様

未知のものに触れるためのマインドセットが肝心

羽賀さん:

本プログラムでは、リーダーシップ講義の他に、リベラルアーツをふんだんに取り入れています。現在は、これまでの経験が通用せず、経営リーダーに多角的な視点が求められる時代です。当グループの社員は発生した問題を解決する力に長けていますが、今後はますます自ら問いを立て、答えを見出し、対応する力が欠かせなくなるでしょう。ですから本プログラムでは、仕事で触れることの少ないリベラルアーツという分野に向き合い、あらゆる視点から物事を捉え、課題を発見する経験をしてほしいと考えました。

清水さん:

とはいえ、実際にプログラムに取り入れるのは難しいなと考えていました。業務とは直接的な関係がありませんので、参加者が受け入れにくいのではないかと。

相原さん:

そこでプログラムの企画では、リベラルアーツに初めて触れる参加者が多いことをふまえ、プログラムの順番や設計にこだわりました。人は経験がないことには拒絶感が出てしまうものです。加えて、参加者はビジネスの最前線で業務に邁進しているので、一見すると価値があるか不明瞭な物にはアンテナが向きにくくなっています。実際の参加者においても「どう向き合って学べばよいのか」と戸惑う様子が見られました。

そこでこの点を改善するべく、リベラルアーツという未知のものに触れるマインドセットから入り、自己理解をした後に広い世界を学ぶという、段階的に視野を広げていくプログラム構成にしました。具体的には、まず現代アートに触れ、対話を深めることで、自身や他者のものの見方や価値観に触れるとともに、視野を広げる必要性を感じていただきます。次に、中国古典からリーダーに普遍的に求められる姿勢や覚悟を知り、その上で、リーダー講演を通じて、現役で活躍するリーダーからよりリアルな経営哲学を学びます。その後、テクノベートや地政学で世界における日本を捉え直すという内容です。まずは自分の内面やリーダーシップスタイルに向き合い、徐々に外へ外へと目を向けていく構成を取っています。

清水さん:

加えて、今回のような新たな企画を通すには、社内への伝え方も大事だと思っています。なぜリベラルアーツを取り入れるのか、そして誰とやるのか。そこを事前にしっかりと説明できたことで、経営陣含む社内にも受講者にもスムーズに受け止めてもらうことができました。

相原さん:

プログラムのうち、最初に行うリベラルアーツのセッションは「現代アート」です。現代アートは、そもそも触れる機会が少ないという受講者が多くいました。そこでオリエンテーションを実施し、所定のアートを見てどう感じたかを言葉にしてもらい意見交換をしています。ひとつのセッションに対してオリエンテーションを行うことは当グループ内でも珍しいのですが、このオリエンテーションによって、受講者は現代アートを含むリベラルアーツを勉強するにあたってのマインドセットがしっかり出来たと感じています。

人事部研修所長 清水 邦宏様
人事部研修所長 清水 邦宏様

プログラムの成果

自分を深く知り、多様な意見を受け止めるリーダーへ

相原さん:

参加者の反響が特に大きかったのは、現代アートのセッションです。「新しい自分を発見できた」「わからないものに対峙したときの姿勢を見直すきっかけになった」という感想が多くあり、自身のあり方を問うきっかけになっています。同じアートを見ても、人によって感じ方が全く異なるということに対する驚きもあったようです。ファシリテーターが繰り返し「頭で理解しようとするのではなく、感じたことを率直に言葉にしよう」と促したからこそ、多くの学びや気づきが得られたのだと思います。

このセッションは本プログラムの序盤で行うので、その後の参加者の姿勢にも良い影響を与えたと思います。実際に、他のメンバーの意見を積極的に吸収しようとする姿勢が見られました。さらに、その後のセッションにおいても、一見ご自身の業務とは関係がない内容にも、関心を寄せる傾向がうかがえました。また、日常業務でも部下のどのような意見も否定せず受け止めるようになったなど、行動変容に繋がっているようです。

清水さん:

日常業務では課題に対するソリューションを求められる場面が多いので、参加者は答えを見つけようとする思考が習慣化しています。しかし、今後のリーダーに求められるのは課題設定力です。「何もないところに何か問いを立てる」という経験を通じて、課題を見つける力が養われていくと考えています。

羽賀さん:

業務から離れ、オフサイトの場でじっくりリベラルアーツに触れるからこそ、無意識に染みついた「規範」のようなものから自由になり、自分自身の信念と覚悟に向き合えるのだと、我々企画者も実感しています。

本プログラムはグループ各社のさまざまな部門から参加者が集まっています。リベラルアーツで他者の意見を受け入れる柔軟さを磨いた後に、参加者同士で議論をすると、提言内容の質が高まると感じました。

例えば、多様なバックグラウンドを持つ他者に対しても柔軟に意見を聞くことができていたり、一つの物事に対してあらゆる角度から解決策を考えられるようになっていたりしたのです。当グループは組織規模が大きく保有するリソースも多いため、社員はどうしても自社起点で「当社として何ができるのか」というところから考えてしまう傾向があります。ですが、こうした点からも「視点を変える」というリベラルアーツの学びが効いて、SMBCグループのビジョン実現のために求められる顧客起点や社会起点での発想に繋がっていくのではないかと感じました。

人事部研修所 所長代理 羽賀 法子様
人事部研修所 所長代理 羽賀 法子様

プログラム終了後も、業務や学びの習慣化に繋がっている

相原さん:

本プログラム終了から2か月後に参加者との人事面談を実施しているのですが、プログラムを通して磨かれた思考が業務にも生かされていることがうかがえます。自分の知識不足や視野の狭さを痛感し、美術館に足を運んだり、読書習慣を身に付けたりするなど、行動の変化も見られているのです。プログラム参加はあくまできっかけに過ぎないので、その後の業務や学びの習慣に繋がっていることを嬉しく思います。

清水さん:

本プログラムでリベラルアーツを豊富に取り入れるチャレンジができているのは、グロービスが当社を深く理解している信頼感と、最先端の知見を持つファシリテーターに担当いただけるという心強さがあるからだと改めて実感しています。芹沢さんをはじめとするファシリテーターが参加者から意見を引き出し、双方向のコミュニケーションをしながら学べる雰囲気を醸成してくれるので、参加者も本音でディスカッションできていると思います。実施後のアンケートでは、「もっと議論したかった」という感想が挙がるほどです。だからこそ、その後も自ら学ぼうとするのでしょう。

今後の展望

配置や業務アサインも含め、学びをアウトプットする機会を作りたい

相原さん:

本プログラムは、2025年も実施中です。リーダーとしての信念と覚悟をより確固たるものにするために、自己理解のセッションをプログラム序盤で行う構成に変え、毎回のセッション終了後には自分自身のありたいリーダー像を内省する時間を設けています。また、経営リーダーとしてリベラルアーツの学びをどう生かすかを考えるために、ビジネスの第一線で活躍する経営者からリーダーの哲学を学ぶセッションを追加しました。

清水さん:

直接的なビジネススキルではないリベラルアーツを育成施策に取り入れているので、これまでの研修以上に、それを職場でアウトプットする難しさがあると考えています。プログラム終了後も学びをアウトプットにつなげるには何らかの仕組みが必要ですし、その成長や変化も確認していくことを検討中です。

また、研修で学んだとしても、職場に持ち帰った時に今までと環境が変わらなければ、アウトプットしなくても業務を遂行できてしまうからこそ、なかなかアウトプットしようと思わなくなってしまうんですよね。研修で学んだ内容については上司側もしっかり理解したうえで、研修受講後の組織における業務上の役割を工夫してもらうことが重要だと考えています。いかにOJTとOff-JTを連関させていくかは重要なポイントですので、人事主導のプログラムではあるものの、所属する部店・部門の上司にも理解をしてもらう必要があると思っています。

我々もなかなか難しいと思っているのは、外部目線での厳しい指摘をどのように得ていくかということです。人材育成のパートナーとして、今後も外部視点を持った厳しいフィードバックをいただくとともに、さまざまな議論をさせていただきながら、言うべきことを率直に言い合える関係性でありたいと思っています。

事務局の皆様と弊社コンサルタントにて
事務局の皆様と弊社コンサルタントにて
担当ファシリテーターの声
芹沢 宗一郎 芹沢 宗一郎
芹沢 宗一郎

何のためのグローバルソリューションプロバイダーなのか? それが当グループの掲げる「幸せな成長」の実現とどう繋がるのか? これらを心底腹に落とす=信念と覚悟をもち、自らの志をもって具体的な提供価値まで提案していくというのが本プログラムです。毎年グループ間のナレッジ共有による化学反応が起こることで、ユニークなソリューションが次々と生まれてきています。
そのための場の設計については、企画される皆さんと我々グロービス双方がプロ意識をもった「ワンチーム」として侃々諤々の議論を繰り返し、毎年進化させてきました。企画側からのご要望一つひとつに対しても、その意図するところ(成功基準)をしっかり確認しながら、本当に重要なイシューなのか? 当グループに約30年間伴走させていただいてきた我々の知見から何が難所になるのか? ファシリテーションでどのような工夫が必要なのか? 企画側にアクションしていただくべきことは何なのか?などを設計に落とし込んでいます。プログラム期間中であっても、チームで協力して軌道修正を繰り返してきました。
我々にとって何よりも力になるのは、企画側の皆さんの強い思いです。いつもたくさんの刺激をいただけること、とても感謝しています。同社で働く皆さん一人ひとりが心のエネルギーに灯をともし、進化する社会課題解決に自ら挑戦しやり抜く文化を醸成すべく、これからも「ワンチーム」でフルスィングしてまいりましょう。

担当コンサルタントの声
森 崇容 森 崇容
森 崇容

当プログラムは、毎年事務局の皆さんと我々が、「ワンチーム」で議論を重ね、グループを取り巻く環境変化や、経営方針、組織を牽引する管理職の皆さんに具備いただきたい能力や気概は何かを丁寧に定義しながら磨き上げています。将来を見据え、今提供すべき最善解は何かをともに模索しながら、チームで協力して場づくりをしている点が特徴です。
これは事務局の皆さんと我々が「受講者の皆さんに、より良質な学びを提供し、グループの成長に益々貢献いただきたい」という組織観点のみならず、「仕事を通じた人生がより豊かなものとなるよう、この場が少しでも寄与するものでありたい」という個々人への想いもともに抱きながら、企画しているがゆえに成り立っているものだと感じています。常日頃、想いを持ち、議論の場をいただけることに心から感謝しております。
受講者の皆さんもフルスイングで向き合ってくださり、発言や行動にも前向きな変化を感じています。熱意に身の引き締まる思いでございますが、グループを力強く牽引される皆さんの飛躍に貢献できますよう、今後も全力で、「ワンチーム」にふさわしいご支援をさせていただきます。

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