学ぶモチベーションは”本人にお任せ”は大間違い
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ここ数年、人材育成においてはオンライン研修の割合が大きくなり、eラーニングをはじめデジタルツールでの自主学習を取り入れる会社も増えています。
一方でオンライン化・デジタル化の流れに伴い、人材育成担当者の悩みが増していることがあります。それは、「学ぶ機会を設けたにも関わらず、社員が前向きに学ばない」ことです。過去から存在していた課題ではあるものの、いっそう根深い悩みになっているのです。
第1章
今年は研修の在り方の転換点
2020年、新型コロナウイルスの影響により人材育成の在り方が大きく変わりました。集合研修をオンライン研修に切り替える流れが、各社一斉に進んだのです。また基礎知識の習得においては、eラーニングや動画などデジタルツールの導入が盛んになっています。
グロービスへも、オンライン研修や動画学習サービス(GLOBIS 学び放題)へのお問い合わせが急増しました。昨年まで集合研修で行なっていた内容をオンラインで学べるようにしたい、とのご相談も多く寄せられています。
人材育成におけるオンライン化・デジタル化は、メリットが多くあります。物理的に集合する必要がなくなり時間やコストが削減できますし、eラーニングや動画は自分のスケジュールに合わせて学べます。
また、オンライン研修はチャット機能によって講師や受講者全員の考えがテキストで可視化され、理解しやすいとの感想をいただくこともあります。
このように、オンラインやデジタルはメリットが多い学習方法ですので、人材育成の手法がコロナ前の状態に完全に戻ることはないでしょう。
第2章
人材育成担当者はオンライン化そのものに
意識が集中。その一方で抜けがちなこととは?
オンライン・デジタルでの研修を導入するにあたって、人材育成担当者の負担は大きなものがあります。自宅で学ぶための機材やネットワークの手配、トラブル時の問い合わせ窓口設置など、環境面の準備を進めなければなりません。慣れないオンラインで学ぶことによって、内容の理解度が薄くなるのではないかという不安もつきまといます。
これらの対処に追われるあまり、受講者が学ぶ目的を理解してモチベーションを保つための施策が二の次になりがちです。
モチベーションを保つための施策例として、集合研修であれば、人事部長が研修会場で講話する、あるいは上長面談で本人と目標設定をするといった施策を取り入れることがあるかと思います。全員がオフィスへ出社している企業が多かったので、これらの施策を行いやすい環境でもありました。
先に挙げた施策例はオンラインでも行えますが、リアルとの違いは、表情や身振り手振りなどの「非言語コミュニケーション」を削がれる可能性です。
コミュニケーションには図2のように、言葉・聴覚・視覚の3要素があります。
リアルで行う研修においては、研修会場の雰囲気や講話をする経営陣の立ち居振る舞いから、受講者が「この研修は重要なのだな」と感じることはあったでしょう。ところがオンラインでは、リアルと同じように話すだけでは、研修の目的や重要性が受講者に伝わりにくいと言えます。
第3章
受講者本人も学びにくくなっている
オンライン研修やデジタルツールで学ぶ場合、受講者も慣れるまでに苦労が伴います。オンラインツールの設定や操作をしなければならないことに加え、一緒に受講する人の顔が見えず、場の雰囲気が分からないまま研修に参加する戸惑いもあるでしょう。つまり、受講者は学ぶ内容ではないことへの不安を抱えているのです。
このような心理状態の中で、集合研修と同じように研修の目的について説明を受け、研修を受講しても、モチベーションを保って学習に集中しにくいのは当然です。
オンライン特有の環境をふまえると、学ぶモチベーションを持てないのは受講者側の責任であるとは言い切れません。
さて、皆さまの会社の人材育成においては、学ぶモチベーションは”本人にお任せ”の状態に陥っていないでしょうか?
第4章
これからの研修企画は、
研修を用意して終わりではないことを意識したい
オンライン・デジタルで学ぶ場合こそ、研修の場づくりに加えて「あの手この手」で受講者に学ぶ必要性を感じてもらい、モチベーションを高めるための施策の重要性が増しているといえるでしょう。
オンラインでは非言語コミュニケーションが伝わりにくいからこそ、言語で補うことが必要かもしれません。
例えば、オリエンテーションでは資料や画像を使って具体的に示したり、受講者の記憶に残るよう繰り返し伝えるなどの工夫が考えられます。
さらに、社員の自宅などリモート環境で受講する場合には、人材育成担当者の顔が受講者に見え、「きちんと気にかけていますよ」という気持ちが伝わることも大切です。人は、誰からも見られていないと感じてしまうと「学習してもしなくても同じ」と思ってモチベーションがダウンしてしまうものだからです。
「あの手この手」の施策例としては、人材育成担当者や人事部長からのオリエンテーションの他、過去受講者の声を共有する、現状把握のためのテストを実施したりすることなどが挙げられます。これらの施策を複数組み合わせて取り入れると効果が増します。
その一例として、A社の選抜課長職研修では以下の施策を取り入れました(図3)。
研修前
人事部長からのオリエンテーション、および現状把握のためのアセスメント・テスト「GMAP」を実施
研修中
数回にわたる研修の期間中、「GLOBIS 学び放題」を予習復習のツールとして利用
研修後
成長度を確認するためにアセスメント・テスト「GMAP」を再度実施
このプログラム内容を実施した結果、研修前のGMAPで結果が芳しくなかった科目があった受講者は「GLOBIS 学び放題」を自発的に学習し始めたことや、大半の受講者が研修前より研修後のGMAPのスコアが良くなっていたという成果がありました。受講者が学習の必要性を感じ自発的に学習した結果、テストのスコアという可視化された結果によって成長を感じられ、自信にもつながったようです。
第5章
最後に
これからの時代の研修企画とは、研修当日の場の設定だけではなく、その前後や学習期間中の施策も入念に企画することが当たり前になります。
受講者が学ぶ意欲を保てる環境を整え、オンライン化・デジタル化のメリットを最大限に享受できるような企画をぜひご検討ください。
※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。