グローバル人材育成研修

デジタル・テクノロジーを駆使した、グローバル人材育成の新たな挑戦

日経225企業
取引実績

88 %
2024年4月グロービス調べ

企業内研修
有益度

4.6 5段階
評価
2024年3月「テーラーメイド型プログラム」を除く平均値

導入
企業数

3,300 社/年

受講
者数

43.8 万名/年

今回は、グロービスの、英語でのグローバル人材育成を担う、GIE(グロービス・インターナショナル・エデュケーション)の企業研修チームのご報告です。

本チームは、日本人のみならず、インドやリトアニア、韓国、中国など多国籍メンバーから構成され、直近3ヶ年だけで15ヶ国以上でグローバルリーダーの育成研修を行なっています。

確信した、デジタル・テクノロジーの可能性

ーーCOVID-19により、急速にグローバル研修のオンライン化が進みましたね。そこでの工夫や苦労をお聞かせください。

中島:
たくさんありますが、総論として強く確信したことがあります。それは、オンラインは“Face to Face”セッションの単なる置き換えではないということです。デジタル・テクノロジーを活用すると、“Face to Face” では出来なかったことが出来る。つまり、新しいラーニング・エクスペリエンス(学習体験)の創出が可能となることを実感しています。

ーー単なる置き換えではない、というのは興味深いですね。どんな学習体験が創出できるのですか?

中島:
端的にいうと、3つのポイントに集約されます。

一点目は、国境を越えた、かつ柔軟性の高い学習体験です(“Global and Flexible learning experiences”)。世界中の従業員に学習機会が提供でき、いつでも、世界中どこからでも、議論やコミュニケーションが可能になります。世界中から、講師やKeynote speakerを巻き込むこともできます。柔軟性という点では、例えばオンラインツールの録画機能を活用することで、コンテンツとして再活用できます。つまり、時間を超えた設計・学習が可能になるのです。

二点目は、学習体験のパーソナライズ化です(“Personalized learning experiences”)。一人ひとりが、自分の関心事や成長課題に最適化した学習が可能となります。例えば、豊富なコンテンツから自由に学べる動画学習の併用や、オンラインでのコーチング/メンタリングが可能になる点、などです。

最後に、受講者同士の協働学習と関係性深化です(”Collaborative learning experiences”)。世界中どこにいても、いつでも繋がることができるので、受講者同士が互いを理解し、相互に学び、切磋琢磨し合う学習環境が柔軟につくりやすくなります。セッションはZoomなどのビデオコミュニケーションツールに限らず、SlackやGoogleドキュメントなど、受講者同士のコミュニケーションや共同作業に便利なツールも活用します。さらに、チームビルディングやリーダーシップを学ぶオンライン・ビジネスゲームなども利用することができます。

“自己変革の理論×デジタル・テクノロジー”で、受講者の行動変容に挑む

ーー確かに、単なる置き換えではないことが伝わってきます。具体的に特に印象に残っているプログラムはありますか?

アイステ:
私が関わったプロジェクトをご紹介します。

製造業A社は、グローバルに活躍するトップリーダー育成のプログラムを数年間行なっています。参加者は6大陸から毎回15名程度、日本人は半分です。前半(5日間・オンライン)と後半(3日間・Face to Face)の間に、6か月間のインターバル期間を設け、そこで各自が立てた行動計画の実践をしてもらいます。

そして途中経過として、何が出来たのか?/出来なかったのか?/出来なかったのはなぜか?、を共有するオンラインセッションを行います。

その上で、後半フェーズでは、それまでのセッションや実践の学びを総括し、グローバルリーダーとしての成長目標と実現プランを、経営者にプレゼンテーションしてもらうのです。

ーーセッションでの学びだけでなく、実際に行動を起こして学びを得る、ということですね。しかし、人が行動を変えるのは、とても難しいですよね。それを、オンラインでどのように実現していったのでしょうか?

アイステ:
その通りで、人が行動を変えたり、組織にポジティブな変化を起こすのは、簡単ではありません。

そこでまず、”Immunity to change”という、ハーバード大学教育大学院ロバート・キーガン教授が提唱する、人が成長するためのメソドロジーを取り入れました。(日本では「なぜ人と組織は変われないのか?」というタイトルで出版されています。)

人間には、行動を変えようとしても、変えることに対抗する心理的要因がある。いわば、心理的な免疫機能が働くことで、なかなか行動を変えることができない。そこに自己認識を持つことで、自分の行動変容と成長に繋げるというものです。

ーー心理的な免疫機能とは、どういうことですか?

アイステ:
例えば、リーダーが、部下の成長を促すために、もっと権限委譲して仕事を任せる、という目標を掲げたとします。

でも結果として、自分でやったり、細かい点まで指図したり、ということが起こります。その理由には、部下の成長という目標の裏に、「リーダーとして、常に問題の解決策を見出したい(未処理の課題を積み残したくない)」といった裏の目標があります。

そしてその根底には、「リーダーたる者は、他人に頼らず、率先して課題を克服する方法を見出す存在でなければならない」という強力な固定観念があるのです。こういった固定観念に気付くのは、簡単ではありません。

ーー変わりたいけど、変われない。その理由には、相反する裏の目標と、目標を支える強烈な固定観念がある、ということですね。 でも、インターバル期間なので、受講者は世界中に散らばっていますし、心理的な免疫機能に気付き、行動を変えるのは難しそうですが・・・。

アイステ:
そこで、オンラインの特性が活きました。

インターバル期間は、3-4名のグループを組成し、互いの近況をときどきオンラインでシェアしてもらい、中間時点では、クラス全員でそれまでの自身の行動について共有する、相互フィードバックセッションを行いました。その中で、出来なかったことに対して、「その背景には、裏の隠れた目標があるのではないか?その目標は、どういう固定観念に支配されているためなのか?」を、全員で語り合いながら深掘りしました。

自分の行動変化を阻害する”裏の目標”と”固定観念”に気付くことは、自分の行動を変える大きなきっかけとなりました。

世界中に散らばる受講者が、相互にコーチングすることで、一人ひとりのパーソナルな課題解決に繋げることは、オンラインだからこそ実現できました。まさに、“Global & Flexible”、“Personalized”、“Collaborative”な学習体験が創造できたと思います。

研修の枠組みを超えたコラボレーションの創生が、企業の財産となる

ーー受講者の皆さまにとって、素晴らしい体験になったようですね。心理学に加えて、デジタル・テクノロジーも活かして、世界中の受講者に成長の機会をつくる。グローバル人材育成に、新しい扉が開いていく感覚を覚えます。

ちなみに、受講者同士の関係性に、何か変化はありましたか?

アイステ:
はい、とても大切な変化がありました。受講者同士の心理的な関係性が深まったので、プログラム終了後もコラボレーションが継続しています。

例えば、プログラムを通じて、オンラインでのコミュニケーションにすっかり慣れたので、終了後もオンラインで近況をシェアしたり、仕事上の相談をしています。マレーシアとベトナムの受講者がオンラインで会話をした際、マレーシアの受講者の業務の工夫を、ベトナムの受講者が自分の拠点の課題解決に活かしていました。

もう一つ、本当に嬉しかったことがあります。このプログラムは毎年新しいクラスが立ち上がっているのですが、前年度の卒業生がボランティアとして、新しい受講者の役員発表の準備に対して、アドバイスをしてくださったのです。

このような取り組みは、卒業生にとっても大きな学びになると思いますし、こういったタテのコラボレーションが簡単にできるのも、オンラインならではだと思います。

研修の枠組みを超えた受講者同士のネットワークやコラボレ-ションは、強く拘りたいことです。Cross-region、cross-function、cross-layerのコラボレーションは、その企業にとって、大きな財産、強みになるのではないかと思います。

世界中の方々に、意義ある学習体験を創出していく!

ーー最後に、これからの抱負をお聞かせください。

中島:
グローバル人材育成のプログラムデザインは、デジタル・テクノロジーの進化・普及によって大きな転換点にあると思います。

・これまでのクラス当日を中心とした設計から、期間全体を通じたシームレスな学習経験のデザインへ。 ・講師から学ぶだけでなく、受講者が互いに発信・学び合うラーニングコミュニティへ。 ・そして、“Face to Face”と“オンライン”のそれぞれの特性を融合させた“Blended Learning”へ。

テクノロジーの特性をプログラム設計に存分に活用し、世界中の方々に、意義ある学習体験を創出していきたいと思います。

ーーこれから、どんなプログラムが生まれるのか、とても楽しみです。ありがとうございました。

※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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