- DXの実現
- 経営チームの変革
DXを推進するには、CXが必要
現代の変化の特徴は、「すぐに変わる」「変化の振り幅が大きい」ことだと、前回お伝えしました。今、日本企業が直面している変化とそこから発生している経営課題への対応は、“戦略シフトの度合い”がこれまでとは大きく異なります。
1900年代後半頃から、日本企業のグローバル化における課題が叫ばれてきましたが、グローバル化は企業変革や新規事業ではなく、あくまで既存事業の延長線上にあります。それゆえ、日本国内で取り組んでいることを複製し、移植できる勝ちやすいマーケットを見極めれば、難しい戦略課題ではなかった、といえます。
一方、今、日本企業が直面している経営課題は、これまでのグローバル化とは度合いが異なるため、大きな変革が必要とされています。
CXを通じて、DXを実現する
これまでと異なる変化に対応するために、変革は必須です。今、盛んに叫ばれているDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するには、CX(コーポレート・トランスフォーメーション)が必要です。事業を変え、会社の仕組みを根本から変えなければなりません。
よくDXはデジタル化やデジタライゼーションと混同されがちですが、デジタル化はリアルをデジタルに置き換えたり、現状の可視化、効率化したりすることにすぎず、DXとは別物です。DXとは、デジタルを通じた「トランスフォーメーション=変革」であり、デジタルによって既存の価値観や枠組みを根底から覆し、顧客に対して新たなサービスや仕組みを創出、生産性向上、ビジネススピードの高速化を図るなどを通じて、顧客にとってより高い価値を届けていくことです。
現在多くの日本企業がチャレンジしているDXやSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)は、かつてのようなグローバルへとエリアを広げる取り組みではなく、変革という次元の異なるチャレンジが必要になります。ゆえに、多くの企業経営者は、過去と比べて、難しい課題に向き合っているといえます。特に、平時であるタイミングでの変革は、慣性の法則が効き、難易度が上がってきます。
変革を主導するのは、経営企画と全社人事
では、こうした変革に企業はいかにして挑戦していくか。昨今、パーパス(企業の社会的存在意義)の再定義や刷新が重視されています。当然ながら、パーパスに沿って、社会や顧客への価値提供のあり方や、利益を生み出すモデルについても改めて見直すことが必要になるため、事業内容や事業活動にも大きな変化が生じることになります。先行事例として、ユニリーバやソニーは、パーパスドリブン型の経営、そしてリーダーシップが有名ですが、企業の存在理由・存在価値を根本的に見直すことは、企業の変革や成長戦略の実現に向けた強い意志ともいえます。
これらを自社でも検討し、確実に実行へと導くには、前回のコラムでもお伝えしたように、経営トップが事業部長を始めとした現場への権限移譲を進めて経営の柔軟性とスピードを上げること、そのために社内、社外の多様な人材が活躍できるダイバーシティーを進めることが必要不可欠になってきます。
私は、企業がこうした変革を担うチームは、経営企画と全社人事であると考えます。経営企画は、戦略を経営の羅針盤とし、アップデートし続けるものとして捉える必要があります。また全社人事は、適切に評価を機能させ、これまで以上に多様性を受容し、柔軟かつフェアに働ける環境を創る必要があります。
変革ができる企業と、できない企業では、近い将来、企業として生み出せる価値や生産性に大きな違いが生じ、その差はますます広がっていくと思います。たとえ他に対応すべきことが山積みであったとしても、今求められる変革を後回しにしてはいけない、待ったなしの状況に多くの日本企業が直面しているといっても過言ではありません。
次回以降、経営企画と全社人事に携わる方々が、いかにして変革を主導し、組織に落とし込んでいくかについて、考えたいと思います。