- 経営チームの変革
不確実性の高い時代は、強い組織ではなく、変化対応できる組織が必要
私たちは、リーマン・ショック、東日本大震災、新型コロナウィルス感染拡大など、これまで「100年に一度の危機」と言われていた未曾有の危機に、近年はおよそ5年おきに遭遇しています。今回は、こうした未曾有の危機が起きても生き残っていける組織について、考えます。
(出所)Ahir, H, N Bloom, and D Furceri (2018), “World Uncertainty Index”, Stanford mimeo.(2020年4月5日更新)、
Scott R. Baker, Nicholas Bloom, Steven J. Davis, Stephen J. Terry“COVID-INDUCED ECONOMIC UNCERTAINTY”を基に作成。出所:経済産業省 第3回産業構造審議会 基礎資料 (2020年5月)
世界の不確実性は年々高まり、経営の舵取りは難しさを増しています。更に、日本企業は、グローバル化、デジタル化、SDGs対応、70歳定年、働く価値観の変化、コロナ対応といった様々な課題に直面しています。
これまでは、経営会議で時間をかけて策定した戦略をトップダウンで組織に落とし込み、確実に遂行していく組織で対応できていました。しかしながら、取り組むべき領域・テーマは格段に広がり、またすぐに取り組むべきテーマも変化するなど難易度も上がる現代においては、かつての組織のあり方は、計画した内容の推進力に長けている一方、方向転換しづらいことが弱点になっている、と言えます。
組織能力こそが真の競争優位性の時代に
現代社会の変化の特徴は、「次の変化が起きるまでの間隔が短い」「変化の振り幅が大きい」ことです。それゆえ、例えば自社でリソースをすべて抱えたうえで戦略を遂行するよりも、複数の外部組織とパートナーシップを組みながら、状況に応じてリソースを調整できる柔軟性をもつ組織は強いといえます。こうした変化に迅速に対応できる組織能力をいかに持つかが真の競争優位性を築く鍵となります。
変化対応できる組織能力を獲得するために必要なこと
では、変化対応できる組織能力を獲得するためには、どうすべきか?私は、“経営トップを変えて大きく戦略シフトさせるか”か、“内側から柔軟にアジャストしていく”かのどちらかだと考えています。ガバナンス構造が明確になってない企業で経営トップを変えることは現実的な手段ではないので、“内側から柔軟にアジャストしていく”方法が現実的だと考えます。具体的には、企業文化や権限移譲のあり方を見直し、事業経営を担える事業部長を創ることで、組織の仕組みを変えていくのです。特に、自社はどのような価値を提供していきたいのか、自社の存在目的(パーパス)は何か、それに基づく戦略、企業文化を一貫したものにするといった方向性や軸を定めることは、極めて肝要です。事業部長は、事業を一つの企業と捉え、経営者のように思考、行動することが求められます。戦略を立て、その遂行に必要なリソースを自らの責任で調達し、売上や利益を上げるまで、一貫して取り組む必要があります。このような事業部長がいると、組織能力は高められ、変化対応力が早くなります。経営トップが権限移譲された状態をいかにつくるかが、肝になります。
また、若手や優秀な人材が活躍できる組織であることが大切です。年功序列ではなく、世代を超えて優秀な人材がやりがいを持ってきちんと活躍できる組織をつくるためには、フェアに評価する仕組みが必要です。そのためには、経営トップは、国籍や性別、ジェネレーションを超えたダイバーシティーも実現しなければなりません。
未来に備え、企業変革を今、着手する
現在、多くの日本企業が抱える構造的な問題として、就職氷河期といわれた2000年前後、リーマン・ショック後の2010年前後で採用を一気に絞ったことで、この間の採用数が例年に比べ極端に少なく、次期部長候補、次期課長候補が圧倒的に足りないことが挙げられます。10年後、経営を担う人材が足りなくなることは明らかです。
今後も予想し得ない問題に私たちは直面するでしょう。その時に、スピーディーかつ柔軟に対応できる組織となっているよう、変化対応力を身に付け、変革していくことが、不確実性の高い時代で、成長を遂げる鍵だと考えます。