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経営人材の自律的・主体的な成長を支援するために(前編)~“ラーニングジャーニーのデザイン”とは~

2024.02.16

事業を力強く牽引する経営人材の育成・確保は、多くの企業にとって重要な課題です。
これまでグロービスは、約6,700社、約6万人の経営者候補に対して、育成の場を提供してきました。その経験から本コラムでは、経営人材・次世代リーダー人材の育成プログラムを検討する上では何を重要視すべきか、対象者が学び・成長を遂げる過程・道のりをどのように支援していけるのか、私たちの「ラーニングジャーニー」の考え方についてご紹介します。

企業と社員(個人)双方にとって望ましい“成長機会”を作る

これまでの経営人材・次世代リーダーの育成は、既に管理職として高い業績を上げている集団から候補者を選定し、一定期間の研修プログラムを通して必要な知識や心構えを学ばせたうえで、戦略的配置へと進むという形式が主流でした。
しかしながら、事業環境の変化が激しい今、現場業務・OJTを通したゆるやかな成長を待つ余裕がなくなり、スピード感のある育成が求められるようになっています。また、年齢や実績に過度に捉われることなく、ポテンシャルも含めて早い段階から対象者を選抜し、研修と実践を連動させ、成長を加速させることが求められています。

さらには、2021 年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードに「中核人材における多様性の確保」が盛り込まれるなど、ダイバーシティの重要性が高まっています。経営人材・次世代リーダー候補も、新卒入社の日本人男性だけでなく、女性や外国人、中途入社者などが名を連ねる状態へと変化していくことが想定されます。さらに、個人のキャリア観が変化し、働くことへの価値観も多様になるなか、性別や国籍といった表層的な属性にとどまらない多様性を持った人材が、これからの育成の対象となっていくでしょう。
また、学習ツールの進化・活用により、従来の集合・対面形式にとらわれず、オンラインでの研修参加や、動画コンテンツで基礎知識を学ぶ等、新しい学び方も可能になっています。

こういった背景を踏まえずして、社員(個人)に会社が求める人材像を押し付けたり、納得感の無い育成プログラムへの参加を要請したり、といったアプローチを取ることは、会社へのエンゲージメントを下げかねません。

このように、多様な人材をリーダーとして確保していきたい企業と、自分らしさを発揮し価値を生み出していきたい個人、双方にとって望ましい成長機会となるように、育成施策を企画・設計することが求められます。

育成プログラムを考えるうえでアップデートすべき7つの視点

では、これからの経営人材・次世代リーダーの育成は、どのように検討していけばいいのでしょうか。

グロービスでは、育成対象者の主体性を尊重し、自律的な成長を支援するために、対象者が学び・成長を遂げる過程・道のりを「ラーニングジャーニー」と捉え、ラーニングジャーニーをデザインする、という考え方を軸に、育成プログラムを設計しています。

ラーニングジャーニーをデザインするにあたって、まず組織において、育成対象者にどのような能力が求められているのか、それはどのような行動として発揮されるのか、「あるべき姿」を定義します。そして、現在はどのような状態であるのか、それはどういった要因によるものなのか、できる限り具体化します。その上で、「あるべき姿」に向かって、育成プログラムを通してどこまでの変容・成長を目指していくのか、研修で出来ることと、組織内での取り組みが必要なことを整理します。
なお、社員一人ひとりが成長する過程・道のり(=ラーニングジャーニー)は、「研修の中」や「個人・ひとり」で完結するものではありません。実務やプロジェクトワークの場面、同じ研修に参加するメンバーや現場の上長、役員、人事担当者など、他者との関わりを通じて得られる発見・達成感や充実感をどのようにつくるかも重視しています。

このラーニングジャーニーの考え方を経営人材・次世代リーダー人材育成プログラムの設計に落とし込んでいくことで、これまで陥りがちな設計上の課題に対してアップデートすべき視点が見えてきます。

ラーニングジャーニーをデザインする上で活用したい「スパイラルアップモデル」

グロービスでは、これらの課題解決のための7つのポイントを「スパイラルアップモデル」として整理し、設計・運営に活用しています。ひとえに「ラーニングジャーニーをデザインする」と言っても、自社の育成プログラムが企業と社員(個人)双方にとって望ましい学習・成長の機会として設計できているか、確認することは難しいものです。「スパイラルアップモデル」を通じて、社員(個人)が主体性を原動力に、育成プログラムを機会として活用しながら学習・成長していくことを支援することを目指しています。

<スパイラルアップモデルの7つの要素>
スパイラルアップモデル7つの要素

この7つの要素は、プログラムの目的と現状に合わせ、組み合わせて設計します。
実際にプログラムの中で、どのように設計されているかは、次回のコラムでご紹介したいと思います。(後編に続く

グロービス経営大学院グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)主任研究員 澤田 茉莉

グロービス経営大学院
グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)
主任研究員

澤田 茉莉 / Mari SAWADA

大学卒業後、システム会社にて幅広い業界のクライアント向けに人事システムの導入開発に携わる。その後コンサルティング会社にて、人事施策の評価や人材像定義といったコンサルティングプロジェクトのほか、ビジネススキルやプロジェクトマネジメントに関わる研修の開発、運営に従事。グロービス入社後は法人向け人材育成・組織開発部門にて、コンサルティング業務、チームマネジメントを担う。
現在は、ファカルティ本部・グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)にて、AIを活用した次世代の経営教育に関するプロダクトマネジャーとして活動。
マネジメントスクール、法人研修において、リーダーシップ、人材マネジメント等の講師を務める。また、女性のエンパワメントをテーマにNPOや一般社団法人にて活動している。
早稲田大学第一文学部卒業。青山学院大学大学院社会情報学部 ヒューマンイノベーションコース修了。MBTI認定ユーザー。

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