- 経営チームの変革
セガサミーHD 里見社長、NEC 森田社長に学ぶ「強い経営チームの作り方」(後編)

持続的な企業成長を実現する強い経営チームを作るために、何をするべきなのか。前編では、セガサミーホールディングス代表取締役社長グループCEOの里見治紀氏、NEC取締役 代表執行役社長 兼 CEOの森田隆之氏より、両社においてどのように経営チームを作り上げているのか、具体的な話を伺った。
後編となる本稿では、セガサミー、NECの両社が取り組む「企業変革」や、未来の経営チームを作る「サクセッションプラン」に焦点を当て、議論の核心に迫る。
本レポートは、2025年3月に行われた「第5回 GLOBIS経営者セミナー」の講演内容を一部まとめたものである。
企業変革テーマ、難所と乗り越え方 ~最大の難所「企業文化」を変える取り組みとは
内田:続いては「企業変革」についてです。どのような変革テーマを掲げて向き合っているのか。どんなことを難所として考えているのか。まずは森田さんから、お話しいただけますか。
森田:NECは、2018年以降の中期経営計画に基づき、成長ストーリーを掲げて企業変革を進めてきました。
2020年以降はトップレベルの国内企業を目指し、2026年以降はグローバルでも通用する、世界から評価・尊敬される企業へと進化していく——そんな長期的な成長ビジョンを描いています。売上でいえば、2020年時点でのマーケットキャップ(株式時価総額)は1兆円を超え、現在は4兆円を突破(当時。2025年5月には5兆円超に)。2030年に向けては、10兆円規模の企業体も視野に入れています。
こうした大きな成長を支えるうえで、NECが重点テーマとして取り組んでいるのが次の4点です。「事業ポートフォリオの再構築」「キャピタルアロケーション(資本の再配分)」「ガバナンスの進化」「企業カルチャーの変革」。このうち、最も難所とされているのが「企業カルチャーの変革」です。
内田:自社のカルチャーを変えるときに工夫されているのは、どのような点でしょうか。
森田:私が社長に就任した際、それを「変革の絶好のタイミング」と捉えました。トップの交代は、社内に不安と同時に期待を生み出します。その機運を活かしきれないまま数カ月が経過すれば、いずれまた日常に戻ってしまいます。だからこそ私は、就任当初から「NECはどこへ向かうのか」「新たな社長は何を目指すのか」を、組織内に明確に発信し続けました。
今後は、M&Aを通じて加わった企業や人材をNECグループとしてどう統合し、どのように一体感を醸成していくかが問われます。多様な価値観を融合し、「NEC単体」から「NECグループ」としての強さへ昇華していくことが、最大のチャレンジだと思います。
内田:たしかにPMIも含めて、本当にカルチャーのあり方も変わってきますね。続いて里見さんは、いかがでしょうか。
里見:セガサミーでは現在の変革テーマに取り組む以前に、大規模な構造改革を断行しました。2020年4月の緊急事態宣言を契機に、半年後には改革の方針を発表し、翌3月末までに全ての施策を完了。投資家やアナリストからは「前例のないスピード」と高い評価を受けました。
この迅速な意思決定を可能にしたのは、従来から経営課題として認識していた論点に対し、コロナ禍という外部要因を“変革の正当化要因”として活用できたことが大きいと考えます。ノンコア事業の切り離し、グループ再編、さらにはセガサミーグループの祖業であるサミーでの希望退職の実施など、経営者として重い判断を迫られましたが、事業ポートフォリオの再構築に本気で取り組みました。
その後の中期経営計画では「Beyond the Status Quo」をテーマに、長期低迷からの脱却を掲げ、15年ぶりに売上4,000億円台を回復。現在は5,000億円台を視野に入れるなど、明確な成長軌道に乗りつつあります。
内田:今後、さらなる成長を目指すうえで、難所になるのはどのような点でしょうか。
里見:やはり、私たちも「企業文化の変革」だと思います。特に、変化に対する心理的な抵抗——すなわち“変化への恐怖心”をどう取り除くかが大きな課題です。人間は本質的に保守的で、昨日と同じ今日を求めがちです。しかし、経営は未来に向かって進まねばなりません。
現在、セガサミーグループは「WELCOME TO THE NEXT LEVEL!」をテーマとした新たな中期経営計画を掲げ、ゲームなどを手掛けるエンタテインメントコンテンツ事業を成長領域として重点的に取り組んでいます。ゲーム市場はグローバルに拡大しており、ゲームそのもののグローバル展開に加え、映画やグッズ展開など、ゲームIPをマルチチャネルに幅広く展開する「トランスメディア戦略」を推進しています。こうした、グローバル展開の加速やゲームIPの新たな領域での活用に対して、社内でも一定の戸惑いがあるのは事実です。しかし、日本市場の縮小を見据えるなかで、グローバルに打って出ることは、避けては通れない戦略上の必然だと捉えています。
経営陣としては「変化の先にこそ、明るい未来がある」というビジョンを提示し、社員一人ひとりが前向きに踏み出せるよう働きかけていくことが求められます。
内田:
経営は常に変革を続けていかなければなりません。なかでも企業文化は、見えにくい存在でありながら、変革を実現するために意図的に変えていくべき重要な要素のひとつです。
企業文化の変革に向けて、どのような工夫をされているのでしょうか。
当社には、「積極進取(サミー)」「創造は生命(いのち)(セガ)」という2つの企業理念があります。これらを統合し、“チャレンジングな姿勢”を組織の軸として再定義しています。私たちはもともと、新しいことに挑戦するのが好きな企業風土を持っていました。だからこそ、今はその記憶を呼び起こし、再び動き出せるように“背中を押してあげる”ことが大切だと考えています。
また、現在グループ本社では「ACT as a Global HQ(Headquarters)(まず行動でグローバルを体現しよう)」を掲げています。外国籍社員の登用が進み、社内には英語が飛び交うようになっていますが、これは10年前では考えられなかった光景です。コロナ禍を経てZoomやTeamsの活用が広まり、時間や場所を問わず世界中の仲間とリアルタイムで仕事ができるようになったことも、社員の意識改革を後押ししています。
事業会社のセガでは、すでに「グローバルが当たり前」という意識が根づきつつありますが、今後もこの流れをさらに加速させ、グループ全体に浸透させていきたいと考えています。

内田:
森田さんも同じように変革を続けるうえで、大切にされていることがあると思います。経営陣や社員に対してどのようにメッセージを発信されていますか?
森田:「変化し続けることが最も重要である」というメッセージは、社内外に一貫して発信しています。NECの中興の祖である小林宏治氏が「安定な企業は不安定で、不安定な企業は安定であると心得よ」という言葉を残しています。私たちのようなテクノロジー企業にとって、変化を恐れることは“死”を意味します。
今のように業績や株価が好調なフェーズでは、社内に「そろそろ落ち着いてもいいのでは」という空気が生まれがちですが、むしろこの時期こそが最も危険だと考えています。企業や組織は、完成した瞬間から硬直し始める。硬直化すればサイロ化が進み、閉じた文化ができてしまいます。これを防ぐためには、継続的な変革が不可欠です。
例えば、組織が自分たちだけに通用する“言語”で閉じてしまうと、社会のスピードとズレが生じます。これを修正するには、変化に抵抗感を持つ人たちにも、変わる意義を伝えていくしかありません。ときに厳しい判断を伴ってでも、変わるべき理由を理解してもらう努力を惜しまないことが、経営の責任だと考えています。
未来の経営チームを作る「サクセッションプラン」 ~後継者の選定や育成へのコミットメント~
内田:最後のテーマは「サクセッションプラン」です。持続的な企業成長のためには、次世代の経営リーダーを計画的に育て、選抜していくことが欠かせません。いわば“経営リーダーのパイプライン”をどう築くかが問われています。そのなかで、両社ではどのような仕組みや工夫が取り入れられているのか。まずは里見さんからお話しいただけますか。
里見:最も難しいのは、自分自身、つまり経営者のサクセッションプランです。これを誰が考えるのか。現在は独立諮問委員会を設け、取締役レベルで議論してもらっていますが、自らの後継者に関しては、依然として容易なテーマではありません。
一方で、グループ全体としての経営人材育成はかなり体系的かつ計画的に取り組んでおり、8年ほど前から「セッションS」という後継者育成制度を導入しています。この制度では、すべてのグループ会社の社長・役員・本部長に対し、毎年、自らの後継候補を3名提出することを義務づけています。
候補者は部下に限らず、社内外問わず選出可能。あわせて「その人物がすぐに後任として機能できるか」「どの程度の準備期間が必要か」「必要な研修や配属経験は何か」といった情報も共有してもらいます。
こうして集約された情報は、社外取締役も含めた取締役会で共有され、候補者の可視化や育成計画のブラッシュアップに活かされています。また、「後継者を選ぶ目利き力」の観点でも評価の材料となっており、指名の質にも一定の示唆が得られています。
さらにこのプロセスを通じて、次世代経営層候補を対象とした「里見塾」「治紀塾」「未来塾」といった社内育成プログラムへの参加者の選定にもつなげており、後継者育成を仕組みとして定着させています。
初期には「自分の立場が脅かされるのでは」と不安を抱く幹部もいました。しかし、この取り組みを継続してきた結果、今は「この人間にぜひ別の場で経験を積ませたい」といった前向きな提案が自発的に挙がってくるようになりました。
内田:NECではどのような取り組みをされていますか。
森田:NECでも、主要なポジションについては短期・中期・長期、それぞれの視点でサクセッションプランを設計しています。「今すぐ交代が必要になったら誰が代われるか」「2〜3年で育成可能な人材は誰か」「そのさらに先は誰が候補か」といった形で、すべての重要ポジションにおいて、候補者を挙げることを義務づけています。
さらに、2〜3年後以降の候補には、必ずダイバーシティ要素を含めることもルール化しています。最初の頃は「該当者がいない」と返す人もいましたが、繰り返していくうちに、きちんと候補が挙がるようになってきました。
そして、今年から新たに始めた取り組みが2つあります。1つは、役員ポジションに対する任期制限です。原則、同じポジションに就けるのは最大4年。つまり、3回の任期更新までと定め、その間に後継者を育て、引き継ぐ責任を担ってもらいます。
もう1つは、社長である私が、自分の「今すぐの後継候補」「中期的な候補」「将来的な候補」を明示して指名委員会に提出しています。CEOとして「候補者の選定」だけでなく「育成」も含めて責任を持ってコミットするという考えを、制度として明文化しました。
加えて、後継者候補にはタフアサインメント(難易度の高い役職経験)を積極的に与えるようにしています。それも任せっぱなしではなく、私自身が状況を把握し、必要に応じてサポートを行います。また、その人の強みや伸ばすべき点に応じて、異業種交流、短期留学、コーチング、メンタリングなど、カスタマイズ型の育成支援も行っています。育成は一律ではなく、個別最適を重要視しているわけです。

経営変革を支える「パーパス」・「経営者の覚悟」・「対話」
セミナーの終盤では、参加者との質疑応答が行われた。その一部を抜粋して紹介する。
Q NECの変革を進めるうえで、経営陣として大切にしていることがあれば教えてください。
森田:企業が変革していく中で、経営陣として何より大切にしているのは「パーパス(存在意義)」と「価値観(Code of Values)」です。私たちは、NECという企業が「何のために存在するのか」、そして「どのような価値観を大切にしていくのか」を、経営陣一人ひとりが心から納得し、腹落ちするまで真剣に考え抜くことを重視しています。これは変革を進める上で決して揺らいではならない、最も重要な土台だと考えています。
NECでは、この問いに対する一つの答えとして「技術による社会価値の創造」があります。これは1977年に打ち出した「C&C(Computers & Communications)」という技術ビジョンにも通じており、当時ハーバード・ビジネス・レビューにも取り上げられたほど、革新的なコンセプトでした。C&Cは、テクノロジーを基点に“モノからコトへ”と発想を転換し、単なる製品開発にとどまらず、社会にインパクトを与える価値を生み出すという思想です。
このように、技術を通じて社会に価値を提供することこそがNECの存在意義であり、そこには「他の会社にはできない役割」があると私たちは捉えています。そして、この価値創造を支えるうえで重要なのが、「インテグリティ(誠実さ)」です。さらに、私たちはこれを“利益のサイクル”と呼び、正当な利益を得て、それを次なる投資へとつなぎ、最終的に社会的価値の創出へと循環させていくという考え方を大切にしています。
Q オーナー企業は通常、保守的になりがちだと思いますが、セガサミーは、なぜ大きな転換を行えたのでしょうか。
里見:その背景には、「上場企業としての責任」と「変化を受け入れる覚悟」があったと考えています。もともと、オーナー企業という形態であっても、守りに入るか成長を選ぶかは、経営のスタンス次第です。私自身、父がセガサミーを上場させた時点で、それは「家業として守る」のではなく、「社会に開かれた企業として成長していく」ことを選んだのだと受け止めてきました。
実際、上場企業である以上、株主や社会に対する説明責任が常に求められます。特に安倍政権下で導入された「スチュワードシップ・コード」によって、機関投資家に対しても説明する責任が発生し、議決権の行使のあり方も大きく変わりました。それは私たち経営者にとって、常に外部の目にさらされるという強いプレッシャーになり、良い意味での緊張感を生むことにもなっています。
海外投資家からも、「今の東証が一番のアクティビストだ」と言われるほど、企業に対する成長圧力は増しています。だからこそ、私は上場企業の経営者として、「成長し続けること」を前提に経営に向き合っているのです。守りに入るのではなく、むしろ攻めに転じることで企業価値を高めていく。それが、セガサミーの大きな転換を可能にした理由だと考えています。
Q 「経営層に求める5つの力(突破力・共感力・決断力・自制力・徹底力)」 のうち、里見社長個人としてはどの力を特に大切にされていますか。
里見:私自身が特に大切にしているのは「徹底力(グリッド)/やりきる力」です。いまの時代IQやEQよりも、この“グリッドが高い人”こそが生産性が高く、最も評価されると感じています。
新入社員にもよく伝えているのですが、この「やりきる力」は、覚悟を決めることで鍛えられます。よく「ポジションが人をつくる」と言われますが、私は「そのポジションに就いたときに覚悟したかどうか」が、後の成果を大きく左右すると考えています。
もちろん転職や昇進といった人生の転機には自然と覚悟が生まれますが、それ以外の普通の日々でも、自分で意識して“覚悟”を持つことが大切です。例えば、毎朝起きたときに「今日1日やりきろう」と自分に言い聞かせる。それだけでも自然と気持ちが引き締まり、その小さな積み重ねが“やりきる力”を高めていきます。
Q サクセッションプランにおいて、NECの人事グループはどのように関与していますか。
森田:
NECでは、サクセッションプランにおいて人事部門が極めて重要な役割を担っています。特に役員クラスになると、それぞれの課題や成長テーマに応じてプログラムを個別にカスタマイズする必要があり、人事は本人の希望や状況も踏まえて、最適な育成機会を設計しています。
また、全体の評価、育成プログラム、さらには入れ替えの検討まで含めた後継者育成のインフラづくりと運用も人事部門の責任範囲です。
NECでは従来の人事機能を超えて、「People & Culture」という名称のもと、組織カルチャーの醸成やインターナルコミュニケーションにまで積極的に関与しています。
さらに、人事部門は「HRビジネスパートナー(HRBP)」として各事業部門にも深く入り込み、経営と人材育成をつなぐ橋渡しの役割を果たしています。これは欧米企業では一般的ですが、日本企業においてはまだ珍しい取り組みであり、NECでも強化を図っている領域です。
こうした取り組みを支えているのが、人事部門の役割の進化です。近年では「CHRO(最高人事責任者)」の重要性がこれまでになく高まっており、人事は単なる管理機能ではなく、企業の成長戦略に直結する中核的な存在と位置づけています。
人的資本経営が注目されるなかで、人材は単なるコストではなく、企業価値を生み出す源泉としてとらえる考え方が広がるなかで、「人の価値をいかに最大化するか」が経営における重要テーマとなっています。こうした視点からも、人事部門にはより一層、戦略的貢献が求められています。
Q 現場の本音や提言を吸い上げるために、NECで取り組まれていることはありますか。
森田:さまざまな仕組みや機会を意識的に設けています。例えば「スキップレベルミーティング」で、直属の部下を一段飛ばしてその下の層と対話を行うことで、現場のリアルな声を吸い上げています。
また、「タウンホールミーティング」も月に1回のペースで全社的に実施しています。ここでは私自身が登壇し、1時間のうち半分ほどをQ&Aの時間に充てることで、社員からの率直な質問や意見に直接応えています。海外拠点についても、Zoomなどを活用して、制限なしで自由に質問できる場を設けるようにしています。
さらに特徴的な取り組みとして、「アシミュレーション」と呼ばれる仕掛けも導入しています。これは主に本部長クラスを対象としたもので、対象者が部下や同僚などを同席させたうえで、自身へのフィードバック(良い点・悪い点)を受け、それに対してその場で答えていくという形式の対話プログラムです。単発的な施策ではなく、人事部門が仕組みとして組織的に実施しているもので、本部長レベルのほとんどが参加しています。

経営者として大事にすべきこと
最後に、里見氏と森田氏から本セミナーに参加した経営者へのメッセージを送り、セッションを締めくくった。
里見:私は、CEOとして心理的安全性を非常に大切にしています。働きやすい環境をどうつくるか、常に意識してきました。その一環として、私たちは2016年より従業員満足度調査を継続的に実施していますが、最近その成果が明確に表れてきています。持株会社のセガサミーホールディングスと、事業会社のサミー、グループのうち2社が、従業員エンゲージメントの高い企業を表彰する「ベストモチベーションカンパニーアワード2025」の中堅企業部門(1,000名未満)の中でトップ10入りを果たしたのです。これは、組織づくりへの継続的な取り組みが、着実に成果として表れ始めている証だと感じています。
また、組織運営においては「パーパス経営」の考え方をベースに、私たちは「ミッションピラミッド」というフレームワークを導入しています。これは、Mission/Purpose(存在意義)、Vision(ありたい姿)、Goal(目標)、Strategy(戦略)、Organization(組織)、Tactics(戦術)という階層構造で成り立っており、全社レベルから本部単位まで、それぞれが自分たちの言葉で定義し、実行可能な形で整理しています。
このフレームワークの良さは、社員一人ひとりの業務と上位概念がつながっていることです。グループレベルの抽象的な理念だけでなく、自分のタスクが本部レベルの戦略にどう結びついているかが可視化できるようになっています。
だからこそ私は、新入社員にも「もし上司がこのピラミッドに反することを言っていたら、『会社のビジョンと違いませんか?』と言っていい」と伝えています。これは、現場の誰もが組織の方向性に責任と自覚を持ち、対話を通じて良い組織を育てていく文化をつくるためです。
ミッションピラミッドは、現場で生きる「対話の共通言語」です。こうした仕組みや風土づくりを、今後も経営の中核として進めていきたいと考えています。
森田:経営に携わる立場として、まず「把握する」ことが非常に重要だと思います。数字やデータという「ファクト」をしっかり見ることで、それまで見えていなかった新たなピクチャー(全体像)が浮かび上がってくる──これは非常に大きな意味を持ちます。
一方で、それと全く矛盾しないもう一つの視点として、現場を自分の目で押さえることも欠かせません。いわば「現場百遍」です。データを鵜呑みにするのでもなく、現場を感覚だけで語るのでもなく、この二つを両輪で見ることが、真実に近づくための基本だと感じています。
そして、何よりも大事なのは、経営の本質的な部分を“人任せ”にしないこと。自分が経営に関わる以上、重要なことは「誰かが言っていた」ではなく、自分自身がファクトと現場の両面から確かめ、納得する──その姿勢が、やはり経営者としての責任だと思います。
内田:里見さん、森田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
【第5回 GLOBIS経営者セミナー「持続的な企業成長を実現する、強い経営チームの作り方」開催概要】
■開催日:2025年3月6日 ※オンラインにて開催
■登壇者:
・セガサミーホールディングス株式会社 代表取締役社長グループCEO 里見 治紀 氏
・日本電気株式会社 取締役 代表執行役社長 兼 CEO 森田 隆之 氏
・株式会社グロービス マネジング・ディレクター 内田 圭亮