経営者としての「思い」を日々の問題解決や社会課題に紐づけて メンバーに語れるように。 GESで学んだリーダーシップを生かし、海外拠点のマネジメントにも向き合う

Nitto,Inc.社 Corporate strategy部門 Enterprise Program Management Officer 原田 奈津子さん
受講科目:エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(2024)
※部署・役職はインタビュー当時
- 繊維/化学/薬品/化粧品
- エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)
- オンライン
- 経営をする立場になり、これまで以上に求められるスキルが広いことを痛感していた
- 確信を持って意思決定ができる経営者になりたいと思い、GESを受講
- 経営スキルに加え、経営者としての「思い」を持つ重要性に触れた
- ケースに登場するリーダーやクラスの仲間から、社会全体の視点から物事を捉える必要性を学んだ
- 高い視座と中長期の時間軸 を持ち、日々の問題と社会課題を紐づけて考える習慣がついた
- 自社に対する思いや、仕事の意義を言葉にしてメンバーに伝えるようになった
- 新天地のアメリカでも、GESでの学びを生かしてマネジメントに向き合っていきたい
背景と課題
アメリカの現地法人で、マネジメントの役割を担う
2025年度よりアメリカのNitto,Inc社に駐在し、北米エリアのSCM改善活動に携わっています。
前年度までは、業務改革推進部で全社の業務オペレーションの改善、およびNittoグループの物流機能やバックオフィス機能を担う日東ロジコム株式会社の代表取締役をしていました。
確信を持って意思決定を行う経営者になりたいと思い、GESを受講

GES(グロービス・エグゼクティブ・スクール)を受講したのは、当社の人財育成制度がきっかけです。部長層がスキルアップするにあたり、希望するスクールを各自が決めて申請する選抜制の制度になっており、私はGESを選択しました。
その理由は、2023年に日東ロジコムの代表取締役に就任し、経営を体系立てて学んでいないことの危機感を覚えていたからです。経営者は、重要な意思決定を日々行い続けます。必要に応じて周囲の諸先輩方に相談しながらビジネスを前に進めていたものの、確信を持って経営判断をする難しさを痛感していました。
Nittoに入社して以来、その時々の期待に応えようと懸命に仕事をしてきましたが、部長職と経営者とでは求められる要件が大きく異なるという壁にぶつかっていたのです。自分の専門知識や経験を生かしてマネジメントをしてきたものの、経営者になると戦略、財務、採用、組織づくりなど、全方位で決断を行うことになります。経営全体を捉える力と、「自社をこうしていきたい」という強い思いが自分に不足していると感じていました。
また、当社は女性の経営層がまだ少なく、自分がどのようにリーダーとして成長していくべきかを明確にイメージしきれないという悩みもありました。もっと心に余裕を持ち、確信を持って経営をしていくためには、一度腰を据えて学ぶ必要があると考え、GESに通学することにしたのです。経営トップとしてハードな生活が続いていましたが、会社からもらった学びの機会を生かさなければ自分の課題感はいつまでも払拭できないと思い、受講を決意しました。
事前準備と受講内容
経営を学ぶのに最適な環境を選択。クラス前に入念な準備をした
経営を学ぶなら、座学ではなくディスカッション中心で、講師や他の受講者からフィードバックをもらえる環境を望み、負荷が高いのは承知のうえでGESを選びました。ただ、受講前は「周囲についていけるだろうか」という不安があったのが正直な気持ちです。
少しでも前向きにクラスに臨むためには、しっかり準備をするしかないと腹を括りました。休日に予習・復習をする時間を取るほか、遠距離通勤をしていたので移動中にケースを読むことも多くありましたね。また、今回のGES受講は、学ぶスクールを自分で決める人財育成制度に基づいていたため、「私自身が、自分のためにGESを選んだ」という自主性が自然と芽生え、学びに対して能動的になれたと思います。
クラスが始まると、他の受講者と打ち解け合うにつれて当初の不安はいつの間にかなくなり、楽しく学んでいる自分に気づきました。毎回のクラスを終えた後は、充実感でいっぱいになったことを覚えています。
経営者として、世の中や自社に対する「思い」を持つ重要性

ケースメソッドを通して戦略や財務などの経営スキルが得られたことはもちろん、経営者の意思決定の根底にあるのは「思い」であることを強く感じた3か月間でした。自社を成長させたいだけではなく、世の中をより良くしたいという志がベースにあり、それを自社でどう実現するのかを考えて行動するのが経営者だと感じました。
こうしたリーダーの姿に触れたことで、自分は目の前の課題をさばくことで精一杯になるあまり、近視眼的になっていたことにも気づきました。3か月間を通して最も深く考え抜いたことは何かと問われると、「私は自社をどうしていきたいのか」「世の中にどう役立っていきたいのか」という「思い」です。
また、確信を持って経営をしたいと思い受講を始めましたが、自分に100%の自信がある経営者なんていないのだろうとも感じました。誰もが苦しみ、悩み、葛藤を抱えながら意思決定に向き合っているのですよね。その中で、思いを達成するためのベストな決断を考え続けるのが経営なのだと考えさせられました。
常に社会全体の視座で物事を捉える仲間から、多くを学んだ
クラスの仲間からも、大いに学ばせてもらいました。自分の考えと仲間の意見が異なると、自分の視野の狭さや、他者の面白い着想など、多様な気づきがありましたね。利害関係のない受講者同士の真剣なディスカッションだからこそ得られたものだと感じています。
中でも印象に残っているのは、経営トップと頻繁に議論をしているという方の発言でした。クラス中の意見の端々から、地域や日本全体が将来どうあるべきかという視座で物事を捉えていることが感じられたのです。どのテーマで議論をしていても、社会課題解決に紐づけて考える姿を目の当たりにしたことで、自分ももっと視座を上げるべきだと気づけました。
もうひとつ、GESで自分の視座の低さを感じた経験があります。自分のあるべき姿と課題感、GESでの学びを書き記すレビューブックです。全12回のクラスのうち、Day1、8、12で書いたレビューブックの内容を改めて読み返すと、Day1の時点では、目の前の問題にばかり囚われていたことを感じます。ところがDay1と12の内容を比べると徐々に視座が上がり、3か月間で自分が何を学び取ってどう変化したのかを自己認識できるのです。その時々で自分が考えたことや感じたことを記録に残しておく有用性を感じました。
成果と今後の展望
視座を上げ、中長期の時間軸で意思決定をするように
GESでの学びによって、考え方の幅を得ることができました。日々起きる問題に対し、目の前で起きている事象だけに囚われなくなりました 。その背景には何があるのか、それを解決することで何に繋げるべきなのか、あるいは今すぐに着手すべき課題なのか。見えている事象に対して視座を上げ、複数の視点で、時間軸を長く捉えて決断する習慣がついたように感じています。この先、さらに経験を積むことで、自分の考え方の幅をさらに広げていきたいと思います 。
自分が抱く未来への課題感と、日々の問題を紐づけて考えるようにもなりました。私は、日本の人口が減少する中 、既存のスタイルで仕事をしていては限界が来るという強い課題感を持っています。今は困っていなくとも、人的リソース不足の壁にぶつかる時が必ず訪れるはずです。GES受講を経て、「この問題は、必要な社員数の確保が難しくなった際に備えて着手すべきことなのだろうか」というマクロな視点で考える場面が増えました。
日々の仕事がいかに社会の役に立っているのかを、言葉で伝える
自分自身のもうひとつの変化として、「この会社をどうしていきたいか」「自分の仕事が社会の何に役立っているのか」をメンバーに語りかけるようになったことがあります。仕事とは、人生の大半の時間を使う営みです。にもかかわらず、その目的が収益だけだと捉えてしまうのは寂しいことですし、収益をあげることしか考えていないリーダーに人はついてきません。これはまさに、私がGESのケースに登場したリーダーたちから学んだことでした。
代表取締役を務めていた日東ロジコムは、グループ内の物流やバックオフィス機能を担う会社であるため、お客様と直接コミュニケーションを取る機会はそれほど多くありません。 だからこそ、メンバーには「自分たちがこの仕事をしているのは、Nittoグループの製品を滞りなく世の中に届け、社会課題を解決するため」だと言葉でしっかり伝えるようにしていました。日々の仕事が社会貢献に繋がっていると感じてもらい、前向きに仕事をしてもらうことも私の重要な役割です。社内評価のために働いているのではなく、仕事をする目的やモチベーションをその一歩先に進めるために、これからもメンバーへ働く意義を伝えていきたいと思っています。
アメリカでも、GESの学びを生かしてマネジメントをしていきたい

日東ロジコムの経営は後任にバトンタッチし、現在はアメリカにあるNitto,Inc.社のEnterprise Program Management部門で、ローカル社員を含めた多様なメンバーをマネジメントするという新しいチャレンジが始まっています。
Nittoのメンバーは、自分の意思を持ち、チームで協力しながら価値を発揮することを好む人ばかりです。そして、好奇心が旺盛。プロパーの社員はキャリア入社の方に社外のことを積極的に質問し、知らない世界を知ろうとするんです。今後もこの大好きな文化を守りながら、GESでの学びを日東ロジコムで生かしたように、多様なメンバーがいる新天地でも仕事の意義を語り、多面的な視点で先を見通した意思決定ができるリーダーであり続けたいと思っています。