堀川 拓郎氏登壇セミナー「DX時代・これからの人材育成戦略~デジタル変革に向き合うリクルートの先進事例紹介~」【後編】

リクルート人材・組織開発室室長、ヒトラボ ラボ長を務める堀川 拓郎氏をお迎えして開催した、グロービスの研修管理システム「GLOPLA LMS」のプレスリリース公開記念セミナーの様子をお伝えします。後編では、グロービスマネジング・ディレクターの井上 陽介が、再統合した新生リクルートが特に「チーム」にフォーカスする理由や、ビジネスの方向に合わせて必要なケイパビリティを探求し続ける姿勢について伺いました。(全2回後編)

前編はこちら

厳しいビジネス環境では「チーム」の出来がカギを握る

井上:リクルートは、そもそも個人の自律性が非常に高い組織ではないかと思っています。対して、今回の統合にあたっての人材・組織開発では「チーム」という要素がかなり打ち出されています。この背景には、どんな問題意識があったのでしょうか。

堀川:これはリクルートの事業戦略が密接に絡んでいます。

まず、事業領域の拡大です。これまでリクルートは主にマッチングメディアとして事業を拡げてきました。現在は、顧客の業務生産性を高めるビジネスSaaSの領域に大きく踏み出そうとしています。日本の人口が減って生産性が落ちていく中、クライアントが本業により集中できる状態をつくるために、我々ができることはないかと考えたのです。よって社内では、マッチングビジネスとビジネスSaaSのそれぞれにおけるケイパビリティが一緒なのか、あるいは違うのかをディスカッションしている最中です。こうしてビジネスの方向に合わせて必要なケイパビリティを探求し続けるとともに、我々自身も変わり続けなくてはいけないと捉えているのです。

そしてもうひとつが更なる競争力向上への施策です。今回の統合に踏み切った意図のひとつとして、分社化していたフェーズよりさらに社内におけるナレッジの伝達スピードを上げるということがあります。新しい領域にも事業を拡大する中では、それぞれのドメイン内だけで戦うのではなく、事業を超えた情報共有を行いつつチームで戦っていかねば競争に打ち勝つことはできません。この考えから、今回の統合では「チーム」をより重視しているのです。

井上:ビジネスSaaSは、開発をしてプロダクトを磨くだけではなく、そこからいかに次のプロダクトへとアップセルするかといった発想も求められるでしょうから、よりチームとしての要素が求められますよね。

堀川:そうですね。たとえば、広告という枠をお客様に買っていただくスタイルと、SaaSビジネスで継続的に長く使っていただくというスタイルでは180度違いますよね。

我々の持っているケイパビリティの中でできる部分とできない部分があったときに、自分たちだけで抱えるよりは、社内外、また新しくジョインしてくる方も含めて、さまざまな個性や経験を持った方をどんどんCO-EN(※)という場に集まってもらう、そこで一緒にやっていくというイメージだと思います。

※CO-EN:事業会社や事業領域、社内外の垣根を超えた協働・協創が生まれる「CO-EN」(公園、CO-ENCOUNTER)のような場を目指していこうという、新生リクルートが掲げるキーワード。詳細は前編にて。

リクルートらしいマネジメントケイパビリティを広げていく

井上:非常に厳しい競争を想定しているのでしょうね。それを踏まえて、今回の人材開発や組織開発というテーマにおいて、堀川さんとしてはどんなことを意図して取り組んでいらっしゃるのでしょうか。今後についてのお考えもお聞かせください。

堀川:事業戦略が大きく変わろうとしている中で、事業戦略と人事戦略をきちんと統合できるケイパビリティとは何か、どれが正解なのかが全く分かっていないので、模索しながら進んでいるというのが正直なところです。

最近意識しているのは、事業の中での人事としてリソースや成果をどう測るのか、またどう投資をしていくのかです。これを考えないと、経営と現場から人事が乖離してしまいます。それには、事業戦略や組織体制に対して人事が貢献すべきこと、そのときプライオリティが一番高いのは何かといった点を意識しないといけません。

またリクルートは創業以来、内発的動機を大事にしている会社で、それは職種に限らず大事なポイントです。そのため、営業だから、スタッフだからと程度が変わるわけではありません。あらゆる従業員の内発的動機を育てるには、職種によって違うところがあれば職種ごとに支援の仕方を変え、さらに学び方そのものが個人によって違うのであれば、それにタイミングを合わせる必要があると思っています。

井上:最後に、マネージャーの定義を再整理したり、人材開発、組織開発、オンボーディングなどさまざまな施策を回したりという取り組みの原動力やそれに懸ける想いについてお聞かせください。

堀川:まず会社としての原動力については、今後、人口減少や高齢化が進んで小さくなっていくマーケットを見据えたときに、今のままで本当に生き残れるのかという危機感だと認識しています。

個人としての原動力は、私がリクルートに入社してからの21年間で、リクルートがこれまで実践してきた人と組織のマネジメントケイパビリティはきっと意味があると思えていることです。

一人ひとりが自分を理解して、顧客からの期待が何かを把握し、その中で自分がチャレンジすることを自己決定します。このサイクルが回っていくと、仕事のやりがいやワークエンゲージメントが高まっていき、それは働く一人ひとりの幸福度に繋がっていくと思います。もしそれがリクルートの1万6000人の中で実現できたら、非常に面白い組織になるのではないでしょうか。これはおそらくリクルートの中だけでなく、他のさまざまな会社にも共通する部分があると思います。

そこから、この一人ひとりが内発的動機に基づいて自己決定をし、仕事を楽しんで、価値に繋がるという動きが社会に広がっていったら、素晴らしい社会になるのではないかとも考えています。このサイクルをより広げていければといいと思います。

井上:ありがとうございます。おっしゃるような人事の皆様が社員一人ひとりの成長の支援を実現できるよう、効率化できる業務は「GLOPLA LMS」を活用いただき徹底的に効率化し、より人に向き合えるような支援ができればと思っております。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

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