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第6回:採用で失敗しない見極めのポイント
~学力では判断しきれない論理思考力~

執筆:小林 舞良

近年、企業の人事担当者様から、採用に関してのお悩みをご相談いただく機会が増えています。期待を込めて採用した人材が期待したパフォーマンスを発揮してくれない、既存の採用プロセスで候補者の活躍の可能性を見極めることが難しい等、お悩みの内容は様々です。本コラムにアクセスいただいた皆様の中にも同様のお悩みをお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。

本コラムでは、企業で活躍するために求められる3つの能力と見極めのポイントについてご紹介します。

企業で求められる3つの能力「社会人基礎力」とは

・前に踏み出す力(アクション)
指示待ちにならず、一人称で物事を捉え、自ら行動できる力

・考え抜く力(シンキング)
現状を分析し、自ら課題提起する力。解決のためのシナリオを描き新しい価値を生み出す力

・チームで働く力(チームワーク)
グループ内の協調性だけに留まらす、多様な人々との繋がりや協働を生み出す力

これらの能力は激動の時代においてより一層重要性を増しており、2018年に「人生100年時代の社会人基礎力」として再度提唱されています。

【社会人基礎力とは】

グラフ1

出典:経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力」説明資料

企業はこれら3つの「社会人基礎力」を採用段階で見極め、活躍の可能性の高い優秀な人材を獲得することが重要です。なぜなら入社後の教育は不可欠ですが、最低限の社会人基礎力を満たしていない人材は立ち上がりに時間を要する、また受け入れ側の負担が増加するなど、組織に想定以上のコストが生じるためです。いかなる採用難の状況下でも、目先の採用目標達成のために採用基準にそぐわない人材を採用してしまうことは、企業の成長に繋がりません。

また、これらの基礎力が重要なのは新入社員に限ったことではなく、重要なポジションほど社会人基礎力がベースに必要です。採用の際にその力を見抜くことが一層求められます。

必ず自社の採用プロセスで社会人基礎力である3つの能力を見極められているか確認しましょう。

弊社によせられる人事担当者の採用に関するお悩み

ここで、冒頭で触れた人事担当者の採用に関するお悩みについて、もう少し具体的にご紹介したいと思います。弊社にいただくお悩みで多いものは以下の通りです。

【弊社にいただく採用に関してのお悩み】

  • ・書類選考と面接で人材を採用しているが期待通りのパフォーマンスをしてくれない。
  • ・論理思考力・コミュニケーション力を重視しているが、学力や経験だけでは特に論理思考力・地頭力まで見極められない。
  • ・採用時に学力を測るテストを実施したが、実務のパフォーマンスとの関連性が薄い。
  • ・自律的な思考力の高低は学歴の高い人材と必ずしも一致しないため、見極めが難しい。

こうしたお悩みは、一般的に「学歴が高い」、「筆記テストの成績が良い」人材が、ビジネスシーンで活躍するとは限らないことを示唆しています。

また、リモートワークの普及により上司や同僚とのコミュニケーション機会が減り、先輩社員が手厚くサポートして立ち上がりを促すオンボーディングが機能しにくくなっていることも影響しています。テキストベースの指示を読み解く力・結果から分析して自ら仮説検証を行う力などベースとなる基礎力と自律性の高い人材を採用したいという意向が採用現場でも高まっているのです。

「社会人基礎力」の有無を採用段階で見極めるには

では、「社会人基礎力」の有無を採用段階で見極めるために、実際にどのように選考プロセスで確認すればよいのでしょうか。弊社からのおすすめは、採用選考の各プロセスにおいて、何の能力を見極めたいか明確にすることです。

書類選考や面接では、「前に踏みだす力(アクション)」・「チームで働く力(チームワーク)」を中心に見極めることをおすすめします。この2つの能力は過去の経験や実績からある程度見極めることが出来るからです。成果にコミットするために重視することはどのような要素か、リーダーを任された時与えられたミッションをメンバーにどのように割り振るか、チーム作りのために何を大切にしているか等、候補者が予め準備していない質問を投げかけると良いでしょう。企業独自の文化や特有の人間関係に依存しない個人の本質を明らかにするために効果的です。

一方で、書類選考や面接では「論理思考力」までは見極めきれないケースが多いと言われています。書類と面接で見極める場合は、自身の主張に対して根拠を明確に示すことが出来るかどうか、課題とゴールを認識して、ゴールに必要なことを考え行動した経験を数多く踏んでいるかを中心に、過去の実績やエビデンスを深堀していくようにしましょう。

必要に応じて適性検査や模擬試験などの採用テストを活用することもおすすめです。AIが漢字の変換や計算など基本的な学力を代替してくれるようになった今、適性検査や採用テストで単に学力や記憶力を測定するのは、時代にそぐわないかもしれません。実際に実務に活かす事のできる機会が少ないからです。論理思考力や地頭力を中心に「考え抜く力」を見極められているか意識しましょう。

グロービスのGMAP-CTなら実務をベースとした情報の理解(インプット)や情報から適切な選択肢を判断する力(アウトプット)などを「見える化」し、過去の受験者と相対的に比較することが可能です。適性検査や採用テストを新たに取り入れる場合、既に取り入れている場合は、候補者の何の能力を「見える化」したいのか、その能力を本当に「見える化」する事が出来ているのか今一度再考してみることをおすすめします。

【選考プロセスで「社会人基礎力」を見極める際のポイント】

グラフ2

まとめ

弊社に数多くいただく採用に関してのお悩みが、自社の採用活動にも当てはまる部分はないでしょうか。就業環境が大きく変化している今、それぞれの選考プロセスで何を重点的に見極めるべきか、その手法は本当に有効なのか、再考するタイミングに差し掛かっています。

今一度、自社の採用選考プロセスは求める人材要件を適切に評価できているのかを確認してみてください。採用した人材が期待以上のパフォーマンスを発揮する、そんな理想の結果に繋げていきましょう。