リアル研修とオンライン研修をどう組み合わせる?~複数の育成手法を組み合わせるメリットとポイント~

2021.04.20

集合研修の企画担当者の方から、リアルとオンラインの組み合わせについて相談を受ける機会が増えました。きっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大です。コロナが収束しても、企業研修のオンライン化は定着するでしょう。一方コロナの影響で延期されていたリアルの集合研修も、再開してきています。集合研修を企画する際、私たちはリアルとオンラインの場をどう組み合わせていけばいいのでしょうか。本コラムでそのヒントをお伝えします。

▼コラムに関連するお役立ち資料はこちら▼
人材育成のNewNormal(新しい日常)とは

 

コロナによって問われた、リアルで研修を開催する意義

2020年4月の緊急事態宣言発令後、全国的に外出自粛や店舗休業などが要請されました。2021年1月には緊急事態宣言が再度発令され、「3密の回避」など感染予防の徹底と、「新しい生活様式」による暮らしは続いています。職場でも、リモートワークや時差出勤、オンライン会議など新たな働き方の取り組みが継続しているのではないでしょうか。

こうした変化は、人材育成の現場にも起こっています。そのひとつが、集合研修のリアルからオンラインへの切り替えです。本コラムを読まれている人材育成担当の皆さんも、集合研修のオンライン化に挑戦されているものと思います。そして、多くの方は「想像していた以上に良かった」という受講者の反応をもらい、手応えを感じておられるのではないでしょうか。

これまでリアルとオンラインは主従の関係にありました。企業研修は長年、リアルを前提に開催されてきたからです。しかし、コロナをきっかけに、リアルとオンラインは同列の選択肢になりつつあります。私たちは今後、リアルとオンラインをどう組み合わせて研修を行えばいいのでしょうか。この問題について、ブレンディッドラーニングという観点から考えていきましょう。

複数の育成手法を組み合わせる、ブレンディッドラーニング

ブレンディッドラーニングとは、「集合研修やeラーニングなどの複数の育成手法を組み合わせた学習形態」のことを指します。

育成手法に完璧なものは存在しません。どれを選択しても必ずメリットとデメリットがあります。しかし、複数の育成手法を組み合わせることで、それぞれのデメリットを最小化できるのがブレンディッドラーニングの特長です。

ブレンディッドラーニングが日本国内で注目されたのは2006年。HR-Techの第一人者 ジョシュ・バーシン氏の著作『ブレンディッドラーニングの戦略』がきっかけでした。本書の内容を参考にすると、育成手法の組み合わせ方は大きく5つに分類できます(図1)。

図1:5つのブレンディッドラーニングモデル(バーシン, ジョシュ、"ブレンディッドラーニングの戦略 eラーニングを活用した人材育成"、東京電機大学出版局、2006年 を基に著者作成)

図1:5つのブレンディッドラーニングモデル(バーシン, ジョシュ、”ブレンディッドラーニングの戦略 eラーニングを活用した人材育成”、東京電機大学出版局、2006年 を基に著者作成)

 

読者の皆さんは5つのモデルを見て、ある点にお気付きでしょうか。それは、リアル集合研修以外の育成手法もトレーニングの軸になりえるということです。オンライン集合研修やeラーニングを軸にすることで得られるメリットも存在します。

では次項で、育成手法の詳細を見ていきましょう。

育成の手法と8つの選択視点

表1に育成手法(一部抜粋)をまとめ、3つの切り口で分類しています。
・ライブ型か?それともオンデマンド型か?
・インタラクション性は高いか?低いか?
・目的の到達度をトラッキング(追跡・分析)しやすいか?

図2:育成手法(一部抜粋)とその特徴(バーシン, ジョシュ、"ブレンディッドラーニングの戦略 eラーニングを活用した人材育成"、東京電機大学出版局、2006年 を基に著者作成)

図2:育成手法(一部抜粋)とその特徴(バーシン, ジョシュ、”ブレンディッドラーニングの戦略 eラーニングを活用した人材育成”、東京電機大学出版局、2006年 を基に著者作成)

 

図2から、育成手法にはそれぞれ特徴があることが分かります。テクノロジーの進化によって、育成手法は進化し、数も増えていくでしょう。現に、AR/VRや人工知能の教育的利用が進んでいます。たとえば米国小売り最大手のウォルマートでは、AR/VRを用いた接客研修を行っています。

今後も選択肢が増える中で、私たちは何を意識して育成手法を選択していけばいいのでしょうか。1つの参考として『ブレンディッドラーニングの戦略』では、8つの視点を考慮すべきとしています(図3)。

図3:複数の手法を選ぶときの8つの視点(バーシン, ジョシュ、"ブレンディッドラーニングの戦略 eラーニングを活用した人材育成"、東京電機大学出版局、2006年 を基に著者作成)

図3:複数の手法を選ぶときの8つの視点(バーシン, ジョシュ、”ブレンディッドラーニングの戦略 eラーニングを活用した人材育成”、東京電機大学出版局、2006年 を基に著者作成)

 

①プログラムタイプ:経営上のどんな課題を解決するのか?それに対してどんな目的でトレーニングを行うのか?

②文化的なゴール:副次的効果として、どんな文化形成を期待しているのか?

③学習者:受講者の特徴は?

④人材:どんな人材をトレーニングに巻き込めるのか?

⑤学習コンテンツ:学習コンテンツの鮮度/複雑性/対話性はどのぐらいで考えるのか?

⑥技術:プログラムに導入する技術は何か?また、その制約条件は何か?

⑦時間:プログラム開発から終了までどのぐらいの期間で行うのか?

⑧予算:どの程度の金額が投資できるのか?

選択肢が増えたとしても、選ぶときの視点は大きくは変わりません。コロナをきっかけに選択できる育成手法が増えた今、私たちは普遍的な8つの視点を考慮しながら、複数の育成手法を組み合わせていくことが求められるでしょう。

複数の育成手法の組み合わせ事例

本章では、グロービスで実際にご提供したブレンディッドラーニングの事例をご紹介します。いずれの事例も、複数の育成手法を組み合わせることで、より高い成果をあげることに成功しています。

1:リアル集合研修主導モデルの例:A社
組み合わせた育成手法:リアル集合研修eラーニング

図4:リアル集合研修主導モデルの事例

図4:リアル集合研修主導モデルの事例

 

今後の成長戦略を実現するため、事業部間の連携を強固にしていく必要があるA社。まずは事業部間でのコミュニケーションを円滑にすることを目指しました。そこで「グロービス学び放題(eラーニング)」「企業内集合研修(リアル)」によるクリティカル・シンキングの学習機会と「事業部を跨いで議論できる場」を用意しました。

eラーニングとリアル集合研修で徹底的に学んだ社員は共通した思考プロセスや共通言語を持ち、議論の場に臨みます。その結果、研修後の社内議論も非常にスムーズに進めることができています。

2:eラーニング主導モデルの例:B社
組み合わせた育成手法: eラーニングアセスメント・テストリアル集合研修

図5:eラーニング主導モデルの事例

図5:eラーニング主導モデルの事例

 


管理職の昇格試験としてGMAP(アセスメント・テスト)を導入したB社。事前学習教材としてグロービス学び放題プラス(動画/eラーニング)も導入しました。試験前に事務局がグロービス学び放題プラスの学習履歴を確認したところ、多くの管理職がアカウンティングの動画を複数回視聴していました。

管理職複数名にヒアリングしてみると、アカウンティングに対して想定以上に苦手意識・課題感をもっている事が判明しました。現在は、管理職手前の階層からアカウンティングの研修を実施することで、苦手意識を払しょくするための機会を提供しています。

「教育」から「学習」へ。変わる人材育成の考え方

さて、ここまでの話から、どの育成手法をどのような視点で選べばいいのか、イメージを持てたのではないでしょうか。その上で、更に皆さんと考えたいのは、Afterコロナにおける人材育成に対する考え方です。

リモートワークが増え、オフィス出社が減ると、時間管理型から成果主義型へと評価制度が変わってくるでしょう。一人ひとりが目標を立てて、仕事のペースをコントロールしながら成果を出す「自律」が一層求められてきます。そのとき、人材育成に対する考え方はどのように変わるのでしょうか。

手がかりは、教育業界で起こっている変化にあります。教育学の世界では、教育パラダイム(講師は何を伝えたか)から、学習パラダイム(受講者は何ができるようになったか)へと考え方の転換が起きています(図6)。同じ変化が、企業の人材育成にも起きつつあります。

図6:人材育成に対する考え方の変化(Barr, R. B., & Tagg, J.、"From teaching to learning: A new paradigm for undergraduate education." Change, 27(6) , 1995年, P.12-25. を基に著者作成)

図6:人材育成に対する考え方の変化(Barr, R. B., & Tagg, J.、”From teaching to learning: A new paradigm for undergraduate education.” Change, 27(6) , 1995年, P.12-25. を基に著者作成)

 

これまで企業における人材育成は、教育の観点で捉えられてきました。主な育成手法は企業研修であり、講師(あるいは事務局)を中心に運営され、知識は講師から与えられるものという前提がありました。いわゆる教育パラダイムです。教育パラダイムでは、評価項目も「研修は有益だったか、難易度は適切だったか」「講師は理解させようとしていたか、情熱をもって伝えていたか」など、研修の場に対する評価が中心でした。

しかし今後の人材育成の主流は、学習パラダイムへ移行していくでしょう。学習パラダイムでは、人材育成の場は研修だけでなく、職場まで拡げられます。中心は受講者であり、知識は自ら獲得されるものという前提が敷かれます。この知識観では、テストやアンケートで評価できる能力は限られるため、パフォーマンス評価(職場においてどの程度実践されたか)が中心になります。

教育パラダイムから学習パラダイムへ。コロナをきっかけに変わるのは育成手法だけではありません。人材育成に対する考え方も変わることを認識しておきましょう。

最後に

人材育成の手法・考え方が変わる中で、人材育成に携わる私たちの役割はどうなっていくのでしょうか。筆者の考えでは、人材育成担当が担う役割は拡がり、仕組みや制度の整理・運用だけに留まらないと見ています。「個々の仕事を通じて成長する環境づくり」や「職場内の対話を促し関係性を改善する関わり」など、より現場に踏み込む機会が増えてくるのではないでしょうか。そして、その先にある個の成長にも、今まで以上に目を向ける必要が出てくると思います。

こうした変化を、皆さんはどう捉えますか。私は、人材育成の在り方を変えるチャンスだと思っています。そのチャンスを活かすかどうかは、私たち次第。そう思うと、何だかワクワクしてきませんか。

▼コラムに関連するお役立ち資料はこちら▼
人材育成のNewNormal(新しい日常)とは

 

執筆者プロフィール
太田 昂志 | takashi ota
太田 昂志

グロービス法人コンサルティング部門にて、全社育成体系の構築支援、社長直轄の組織開発プロジェクト、事業戦略の立案・実行や新規事業創出を目的とした能力開発プログラムの設計および実行支援を手掛ける。また、高知工科大学大学院博士課程にて人材・組織開発をテーマに研究を進めている。グロービス入社前は、SIerにてシステムソリューションの提案やパートナー企業とのアライアンス活動に従事。
大阪大学人間科学部卒業、グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(成績優秀者表彰)。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

コラム/レポート TOP

人材育成
メルマガ登録
人材育成
無料セミナー
人材育成資料
ダウンロード