社員が学びたい時に学べる環境づくりを目的として、2023年1月より『GLOPLA LMS』を導入。各部門での専門教育コンテンツや人事部が主催する研修などをLMSへ集約し、運用面ではLMSへアクセスする習慣をつけるよう意識した。社員の学ぶ意欲が向上するとともに、部門間で人材育成に関する連携が行われるといったポジティブな変化もみられるように。
株式会社PALTACは、創業125年の歴史をもつ、化粧品・日用品、一般用医薬品の卸売業における日本トップ企業です。社員が学びたい時に学べる環境づくりを目指して『GLOPLA LMS』を導入し、人事部が実施する研修および各部門での教育で活用しています。LMS導入のきっかけや活用方法、研修運営や学習状況の変化などについて、お話を伺いました。
高田さん(以下、敬称略):自発的に学ぶ社員を増やすために、学びたい時にいつでも学べる環境をつくる必要がありました。
当社では10年ほど前に社員の育成体系を整え、新入社員研修や役職者研修といった、階層別研修、選抜型研修などを実施してきました。ただ、研修内容が年次や階層・役職・職種毎に対象者を限定している場合が多いため、階層や役職、職種にかかわらず広く身につけて欲しいポータブルスキルを学ぶ機会を増やしていきたいと考えていました。
また、この10年の間に社員の学びへの意欲が少しずつ上がっていることを感じ、その期待に応える機会を設けたいと思っていたのです。さらに時期を同じくして、現場の各部門からは専門教育に力を入れたいという意向もあがっていました。
人事部では通信教育などでの機会も用意していたものの、募集時期が決まっていて、いつでも学べるものではありませんでした。そこで、社員が学びたい時にすぐ学べる環境を社内につくりたいと思ったのです。
こうした考えの背景には、当社の事業環境の変化があります。かつて人口が増えていた時代は、顧客となる小売業のチェーン化・合従連衡などによる拡大戦略に沿って、当社は他社に先行して、物流センターの高度化・エリアの拡大を図り順調に成長してきました。
ところが、市場が成熟した現在においては、消費者が求める潜在ニーズにも着眼し、新しい商品や仕組みをメーカーや小売業と協業して作ることも必要になります。さらには海外展開や事業モデルの見直しなど、答えがなく前例もないことを新たに考えて実行していかなければなりません。
当社が継続して成長するために、現場で起こっている変化を素早くキャッチし、ビジネスに落とし込んでいく人材の必要性が高まっているのです。
高田:2020年頃から、社員教育へのオンライン活用を検討し始めたことがきっかけでした。もともと各部門で専門教育に力を入れたい、積極的に進めてきたキャリア(中途)採用者の早期戦力化というニーズがあったことに加え、コロナ禍で既存の集合型研修をオンラインに切り替えたことでオンライン学習にも慣れてきたことも大きいと思います。そういった状況の中で、社員に学ぶ機会を提供し、自ら考える人材を育てたいと思ってさまざまな方法を検討していたところ、LMSの存在を知ったのです。社員が学びたいときに学べる環境を実現できるのはこれしかない、と考えました。
費用面や操作性などの観点で多数のLMSを比較検討し、最終的にGLOPLA LMSに決めた最大の理由は、ユーザーインターフェースが優れていることでした。各部門からも専門教育のコンテンツを展開する場がほしいとの要望があったため、部門の教育担当者や社員にとっても使いやすいよう、直感的に操作できるLMSであることを重要視しました。
高田:具体的な運用を始める前に、各部門の教育担当者と実現したい世界観をすり合わせることから着手しました。外部環境および現場で感じている課題の両面から、なぜ社員教育が重要であるのか、何を目指すのかについて対話を重ねたのです。人事部と現場が一緒になって世界観を実現していきましょう、と何度も話しました。
私から各部門へは、ゆくゆくは社員が自らキャリアを切り拓いていけるようにしたいという将来像を伝えました。そのため、社員が興味のある分野を幅広く学べるよう、特別な理由がない限り、部門別の専門教育も基本的にLMS上で全社公開にしてほしいという要望を出しました。
さらに、各部門にLMSのニーズを詳しくヒアリングしたり、どのように運用を進めるとスムーズに浸透できそうか相談したりもしました。
導入前にこうして時間をかけてコミュニケーションを取ったのは、LMSがどれほど優れた機能を持っていたとしても、システムを通して最適なソリューションをつくるのは人だからです。社内で課題認識が共有されていなければ、LMSが形骸化しかねないという危機感をもって準備を進めました。
この事前の認識合わせが功を奏し、今では各部門が自律的にLMSを運用してくれています。
佐藤さん(以下、敬称略):人事部や各部門で作成した教育コンテンツを搭載し、社員が理解しておくべき知識をLMSで得られる仕組みを目指しました。さらに、階層別研修や公募研修など、人事部が実施している既存の集合型研修の大半もGLOPLA LMSで管理しています。
導入直後は、業務に活かせるスキルを身につける学習コンテンツよりも先に、健康管理や確定拠出年金の概要といった情報や、各部署で社員が知っておくべき知識に関する資料、業務マニュアルなど、社員の関心が高いコンテンツからLMSへ搭載し始めました。
こうしたコンテンツからLMSに載せたのは、学ぶことへのハードルを下げるためです。社員が少しでも関心をもつ内容がLMSにあれば、それを視聴した後で、「他のコンテンツもちょっと覗いてみよう」と思いやすいのではないかと考えました。
高田:この方法は、各部門でもコンテンツを作成してLMSを活用してもらいたいという意図もありました。そのため、まずは私たち総務本部で多くのコンテンツを作っていたのです。人事部の他チームや総務チームにも「LMSに搭載するコンテンツをあらかじめ用意しておいてほしい」と協力を仰いでいました。
LMSを使って学習することを最初から目指すのではなく、運用をスタートした直後は社員が視聴しやすいコンテンツから提供し、まずはLMSへアクセスする習慣をつけることを優先しました。
佐藤:導入から1年強が経った今、何かを学びたい、知りたいと思ったらLMSにアクセスする社員が少しずつ増えてきました。
以前は、教育コンテンツは決められた社内イントラ内の格納場所に保存しているだけで、活用するための施策が打てておらず、社員が自主的にこれらのコンテンツを使う風土醸成ができていなかったので、変化を感じています。
人事部で開催している公募研修の参加希望者も増える傾向にあります。ある支社からは「若手社員を中心に必要な知識を身につけてほしいので、支社向けに研修を実施できないか」と人事部へ相談がありました。こうした状況からも、自発的に学ぼうとする雰囲気が芽生えていることを感じます。
また、動画や資料の閲覧状況も見られるようになり、社員が興味をもっている分野が把握できるようになったことも、LMS導入による成果のひとつです。
佐藤:リアルの研修管理にもLMSを活用しています。LMS活用により、研修管理業務の負担が減りました。はじめに感じたのは、事前課題の管理が格段に効率化されたことです。
これまで、研修の事前課題の送付・提出などの管理作業に時間が相当かかっていましたが、LMSを活用することで提出状況が一目でチェックできますし、提出されたファイルも一括ダウンロードして管理しやすくなりました。また、未提出者へのリマインドも自動送信できるので、結果として期限内の課題未提出者は大幅に減りました。
以前は、研修日が近づくたびに課題の締め切りを頭の片隅に置いて仕事をしていたのですが、LMSから課題提出の締め切りを知らせるメールが送信されるので、他の業務に意識を向けられるようになったと感じます。研修の実施報告や、他の研修をLMSで運用するための準備時間を捻出できるようになりました。
佐藤:直感的に使いやすいユーザーインターフェースのおかげで、各部門の教育担当者もLMSをスムーズに使いこなせています。人事部では、最初に操作説明会を開き、簡単なマニュアルを作って配布しただけで、その後は各部門で運用できている状況です。教育担当者からは、使いやすいというポジティブな声があがっています。
高田:導入してからしばらくの間は、各部門からの問い合わせが多く来るだろうと思っていたのですが、良い意味で予想が外れました。
また、LMS導入による嬉しい変化として、先ほど挙げたように各部門が自律的に運用していることに加え、部門間で教育に関する対話が自然発生的に起き、横の連携が生まれていることがあります。
ある部門で教育コンテンツを作った際、他部門で同じ課題感があるかをヒアリングしたり、足りない知見を他部門へ聞きに行ったりする動きが起きているのです。作成したコンテンツが他部門でも活用できそうであれば、複数部門へ展開されています。
こうした動きが見られるのは、LMS導入前に関係者全員で世界観をすり合わせた成果の表れかもしれません。以前は他部門でどのような教育をしているかは共有されていなかったので、これも大きな効果だと思っています。
そして、これらの効果が得られているのは、グロービスのカスタマーサクセスのサポートあってのことだと思っています。人事部に限らず全社でLMSを活用する構想や、私たちが実現したい世界観をご理解いただいたうえで、疑問点にはスピーディーに答えていただけますし、一緒にLMSを作っていく感覚で、密にご相談しながら運用を進められています。
佐藤:次の一歩は、自発的に学ぶ風土づくりです。そのために学習の全体像をマップのような形で表示して、学べる内容を一目でわかるようにするとともに、学びたくなるような仕掛けを増やしていきたいと考えています。また、社員のニーズに応えるコンテンツも拡充していきたいと思います。
高田:社員がスキルアップしたい、仕事の幅を広げたいなどと思った際にLMSにアクセスすれば、頼れるコンテンツが揃っている状態を作りたいですね。
そして将来的にはLMS活用の幅を広げ、キャリアのポータルサイトを作りたいと構想しています。社員が自らキャリアを考え、学びの機会を獲得していくためには、会社が用意した育成体系に則って学ぶだけでなく、学ぶ内容を個別にリコメンドしていけるとよいですね。
この将来像を実現するにあたり、社員同士の繋がりも促進していきたいです。学びは個人でやるものではないと考えています。社員が刺激し合うことで学びが促進されますし、人生が豊かになっていくと思うのです。
同じ興味をもつ社員同士で勉強会をして、そこで学んだことが現場でシェアされ、それに刺激を受けた人が新たに学びを得る。このようなサイクルが自然発生的に起こるようなポータルサイトとして、LMSが存在する状態を実現したいと考えています。