明光ネットワークジャパンでは2022年に中期経営計画が策定され、イノベーション人材や自律的な人材を育成する方針が立てられた。目指す人材育成の実現とともに、学習体験・効果の向上のために、2022年7月より『GLOPLA LMS』を導入。集合研修やeラーニングに留まらず、入社者のオンボーディングや事業部ごとに行うOJTにも『GLOPLA LMS』を活用している。頻繁に対面でコミュニケーションが取れない環境においても、効果的な学習ができる仕組みを整えた。
株式会社明光ネットワークジャパンは、個別指導学習塾である「明光義塾」をはじめとした教育事業と人材事業を多角的に展開する企業です。新たに制定したパーパスの実現に向け、人材育成の質を高めていくために『GLOPLA LMS』を導入。個々の研修内容を改善するだけでなく、オンボーディングやOJTでも活用するなど、人材育成全体の質が向上しつつあります。LMS導入後の学習状況や研修運営の変化などについて、お話を伺いました。
奥村さん(以下、敬称略):当社は、個別指導学習塾「明光義塾」を基幹事業として、教育事業と人材事業を軸に、グループ会社16社(2023年9月時点、海外含む)から成り立っています。エリアは日本全国、および台湾と韓国、ベトナムにも進出しています。
2022年に策定した中期経営計画の中で、パーパスである“「やればできる」の記憶をつくる”の実現に向け、既存事業の深化と新規事業の探索の両方を行い、ファンづくりを推進し、持続的な企業価値を成長させるという方針を立てました。
“「やればできる」の記憶をつくる”は、当社が明光義塾事業以外にもビジネスの幅を広げる中で、全事業に共通したパーパスとして、これまでの理念を再定義したものです。
その上で、この中期経営計画を実現するために、多様な人材を活かすマネジメント人材、パーパスを自ら体現する自律的な人材、そしイノベーションを起こす人材という3つの観点で社員の育成をすべきだと定義しました。
奥村:人材育成の企画・運営において、PDCAサイクルを回せていない状態から脱したいと考えたためです。それまでは、各研修の実施結果や全社員の育成状況のデータが一元化されておらず、育成をより良いものにするための仕組みが確立できていませんでした。
小野寺さん(以下、敬称略):当時は、各社員の研修受講履歴などのデータを、今後の施策にどう生かしていくのかを考えられていなかったことに課題感がありました。受講者アンケートも、紙に書いてもらったものをPDFにして保管してあっただけで、その後は手付かずの状態だったのです。こうした状況から脱却し、人材課題を解決するために我々の時間をより多く割いていきたいと考えていました。
実務面でも、これまでは研修のたびに受講者一覧を表計算ソフトで作り、社内イントラで案内を出し、連絡ごとに案内を送る……といった業務負荷は少なくありませんでした。
奥村:さらに当時は、昇級条件の一つである等級別認定試験をスタートするタイミングでもありました。全国にいる社員をひとつの会場に集め、ペーパーテストを行い、採点をするといった運用は現実的ではないので、認定試験をスムーズに実施するための対応も必要だと考えていたのです。
そこでシステム導入を検討し始めたのですが、当初はLMSではなく、タレントマネジメントシステムを想定していました。ところが、いずれも機能が多すぎる印象で、今の当社の体制では運用しきれないという判断になりました。
こうした経緯があり、今の課題意識にフィットしているLMSの導入に舵を切ったのです。目的に特化したシステムで学びに関するデータを蓄積し、人材育成のPDCAサイクルをしっかり回していこうと考えました。
小野寺:数あるLMSシステムの中でGLOPLA LMSを選んだのは、無駄な機能がなく直感的に使えそうだと思ったことが理由です。操作しながら機能を覚えていけると感じました。
奥村:まずは、トライアルで小さく運用をスタートしました。導入と同じ時期に実施したパーパスの対話会に関して、パーパスドリブンプロジェクトでアンバサダーを担う社員にLMSを使ってもらい、反応を聞くことにしました。
小野寺:その後は、階層別研修があるタイミングで、受講者にLMSを体感してもらいました。導入してから5か月ほどで、全社員の半数弱がLMSを一回は触ったことがある状態になったと思います。
奥村:トライアルの期間は、グロービスのカスタマーサクセス担当に運用面でかなり相談に乗ってもらいました。我々が最初にぶつかった壁は、LMSを使うこと自体が目的化してしまう点でしたね。この機能はこう使うと便利だ、といった個別の機能面ばかりに着目していたように思います。
しかしながら、カスタマーサクセスの方々と話し合う中で、我々が実現したい人材育成の世界観が明確でなければ、LMSはうまく運用できないと気づかされました。LMSは、あくまで実現したいことを表現するための手段なのですよね。受講者に研修の案内を出したり、課題を提出してもらったりするだけであれば、従来のイントラでもできることです。
この点に気づいてからは、LMSとイントラの相違点を意識しながら、実現したい世界観に向けてどう運用するべきかを考えるようになりました。
小野寺:事前課題やアンケートの提出状況の管理といった業務工数が削減されています。また、直感的に操作できるシステムなのですぐに理解できましたし、社員からの操作面での問い合わせも基本的にはありません。
こうした工数が減ったことで、「社員はこの課題をどう取り組んでいるのだろう」などと、受講者の学習の様子を意識するようになったと感じています。
奥村:以前なら、研修の対象者を表計算ソフトでリスト化して、送り先を抽出して必要な資料を送付する作業は数時間かけて行っていましたが、LMSによってワンクリックで完了できるようになりました。事務的な工数が減ったことによって、企画者として考えるべきことや、人材育成のPDCAサイクルを回すことに意識を向けられている実感があります。LMS導入時の課題意識が改善されており、とても良い傾向だと思っています。
振り返ると、LMS導入前は社員の学習体験を良いものにするという発想が乏しかったように思います。研修当日だけでなく、その前後の仕掛けや受講者の状況把握にも気を配ることが重要だと気づきました。
小野寺:その一例として、社長から受講者へ期待を伝えるメッセージ動画をLMSに搭載しています。クリックひとつで社長の期待を聞くことができ、受講者は目的意識をもって研修に参加できるようになりました。
我々企画側としては、動画の視聴有無など事前準備の状況がわかるので、たとえば未視聴者が多ければ、研修の冒頭で動画を見ることから始めるなどの工夫ができます。これまでは、情報を発信してもその後の反応が見えにくかったのですが、受講者の状況に合わせた研修運営ができるようになりました。
奥村:小野寺が挙げたポイントは、LMS導入における大きな価値だったと思います。文字だけで案内していた無機質なものから、LMSを通して動画なども配信することで、研修に温かさを作り出すことができました。当社の社長は、熱意をもって社員にメッセージを伝えます。社長が語りかける動画を研修前に見てもらうことで、学ぶモチベーションを上げられる仕組みをつくることができました。
奥村:明光アカデミーとして社員に身につけてほしいスキルと、学習を推奨する内容を等級ごとにまとめた「学びルート」をLMSに掲載しています。社員は学びルートを見れば、会社から自分への期待が具体的に理解できるようになりました。
学びルートを作るきっかけは、自主的に学習してほしいと思って導入したeラーニングの視聴率が芳しくなかったこと、そして社員がLMSとeラーニングを混同してしまう傾向が見られたことでした。
現場のエリアマネージャーにeラーニングについてヒアリングしたところ、「動画の本数が多すぎてどの動画から見るべきかわからず、最初の一歩を踏み出せない」という意見が聞かれたことも背景にあります。自主的な学習を促すためには、最初にある程度の方向性を示すことが必要だと考えました。
小野寺:学びルートは、人事が定めている人材要件や等級認定試験と紐付けて作成しています。また、LMSにログインして初めて目に触れるものなので、この存在を社員に浸透させるために、各部の会議に参加して説明することを繰り返しました。
学びルートを掲載してから社員にアンケートで感想を聞いてみたところ、「ここを見れば何を目指すべきなのかがわかるし、各研修で学ぶ内容も一目でわかるのが良い」というポジティブな声が多く挙がっています。
奥村:各事業部のOJTや、新入社員のオンボーディングにもLMSを活用しています。当社の事業モデル上、新入社員と先輩社員が頻繁に顔を合わせながら仕事を進めていくことが難しい場合があるので、入社者からは心細さを感じるといった声を聞くこともありました。
こうした背景からメンター制度を導入し、LMSでオンボーディングの運用をしています。入社者とメンターがオンラインで1on1をした対話の内容もLMS上に残し、上長や他のメンバーも見られるようにすることで、育成のブラックボックス化を防ぎました。新入社員と先輩社員が物理的に離れる時間が多いからこそ、LMSで同じ情報を見ながら育成ができる効果は大きいと考えています。
小野寺:1on1の運用においても、グロービスのカスタマーサクセス担当に相談し、メンターからの問いの例をLMSに掲載しました。こうした工夫の積み重ねで、オンボーディングを現場に任せきりにせず、当社の業務環境に適した仕組みを作れていると思います。
実は、オンボーディングにLMSを活用する案は、事業部から相談があって実現したことなのです。現場のアイデアでLMSの活用が広がっていることを嬉しく思います。
奥村:大切にしていきたいことは、教育事業を展開している当社だからこそ、社員育成にも本気で向き合っているという熱量を全社に伝えていくことです。全国各地、そして海外にも社員がいる当社では、この熱量を届けるためにLMSが必要不可欠です。このシステムに教育への思いを乗せて、これからも運用していきたいと思います。
小野寺:当社の社員の多くは、子どもたちの学びに真剣に向き合っているメンバーです。ただ、子どもたちの成長に意識を集中しているため、自分自身の幅広い学びに対しても同じような真剣さで取り組むことがなかなか難しいと感じています。
だからこそ今後もGLOPLA LMSを通して、視野を広げる機会を社員に提供し、成長の軌跡も見られるようにしていきたいと考えています。社員にとっては、自分が学んだ記録を見ることで成長実感が湧き、次へのチャレンジもしやすくなるのではないかと思うのです。
社員一人ひとりが学びを通して自信を育み、パーパスを体現できる存在になれるよう、これからもGLOPLA LMSを活用して学習体験の質を上げていきたいと思います。